また逆も然り、他人が出来る事は自分も出来て当然だと思っているのでしょう。
だからこそ他人に嫉妬を抱く事も少ないし、妬むといった事もあまりないのではないでしょうか。
まぁ、絶対に抱かないとは言っていませんが。
「…組織のトップってのは、あんなに心を擦り減らしてまでやるものなのかしら?」
生徒会長への挨拶を済ませて、少し後。
私は校内にあった自動販売機とやらで買ったお茶を飲みながら、壁に寄りかかり溜息を零した。
キヴォトスに来てから、こうして溜息を零す事が多く…いや、思い返すと元からかもしれない。
それにしても、こうやって即席で買えるお茶がここまで美味しいとは、外の技術も凄いものだ。
…っと、話を戻そう。
ミレニアムの生徒会長である調月リオ、彼女もまたヒナと同じく心に隙があるように見えた。
統治者というものはやはり胃を痛める仕事なのだろう、哀れなものである、南無南無…
ただ、ヒナと違ったのは私の能力による精神干渉が本来の形で働かなかった事である。
ヒナはヒナで効きすぎた感覚があったが、逆に効かないというのは珍しい。
ならば、考えられる事というのは…
「合理主義者…ってやつね」
私の能力は、心の隙に付け込んで嫉妬の感情を肥大化させ、自分の有利な方向に事を進めるという使用用途で使う事が多い。
ヒナやリオに使ったのもコレ、というより意識せずとも常時発動しているのだが。
だが、これが効かない人間が幾らか存在する。
そのうちの一つが、合理主義者というやつである。
私の能力は、あくまで元々ある嫉妬心を煽って肥大化させるという、一種の精神干渉である。
詰まる所、元々嫉妬心を抱いていない者…感情論を軽視している者や、自己肯定感が高く図太い者には効きづらいという性質があるのだ。
あとは…嫉妬を知らない、バカとか。
本気で能力を酷使するというならば、無理矢理にでも嫉妬心を抱かせる事も可能ではあるが、それは私が望む形の『嫉妬』ではない。
私の見立てだと、今回の例は前者であろう。
とは言え、私の目にはそれと同時にあの者の心にはだいぶ余裕がないようにも見えた。
これはよろしくない、私が望むのは皆平等に嫉妬し合い、私もそれを妬む世の中なのだ。
…此処は幻想郷じゃない?細かい事は気にしない。
「ねぇ、何ブツブツ呟いてるの?」
っと、私とした事が…色々と考え思慮に耽りすぎて横に立っていた人物に気が付かなかったらしい。
邪魔になっていたのだろうか、と顔を向ける。
そこにいたのは、ピンク色の髪…の…
「…ち、ち…」
「…ち?」
「痴女がいる…っ!?」
◇◇◇
場面は変わって、場所はある部屋の奥。
近未来的とでも言おうか、そんな雰囲気の部屋の中にいるのは私を含めて、三人。
言い換えると、私は二人の女性の前に立っていた。
一人は先程話しかけてきた痴女こと、和泉元エイミ。
そして、車椅子に座っているもう一人は…
「えぇ、貴女を呼んだのはこの私…超天才であり病弱な清楚系美少女、明星ヒマリです!」
そう、先程話した話の
私の本質は優れた人を妬む事であり、弱っている者は例外にしても、こういう人は好きではない。
妬む要素しかないし、本人が誰かを妬む事はない。
つまり、目の前の人物は私の苦手なタイプだった。
勇儀のような友人もいるが、アレは関係が長いから馴染めているのであって、初対面の人と明るく話すような話術を私は身に付けていない。
つまり、つまりだ。
私は目の前で自身の優れた所を語り続けるこの自称天才相手に能力を使えず、かと言って気の利いた返答をする事も出来ないというわけだ。
控えめに言って、地獄であった。
「…ごめん、部長の自慢話は長いから」
そんな時に私に舞い降りた、救いの手。
あぁ、ありがとう痴女…コホンッ、エイミ…
…仕方無いと思う、こんな真っ昼間からあんな服装で外を出歩いている方がおかしいだろう。
痴女と呼んでも問題ないのではなかろうか。
「えぇ…大丈夫よ、心配しないで?」
だが、助け舟を出してくれたのは事実だ。
このまま自慢話を延々と聞かされていたら、思わずジェラシーがボンバーしてしまうところだった。
キヴォトスの住民に私が本気で撃つスペルカードがどの程度効くのか分からないのだから、変なトラブルを起こすのは出来るだけ避けたいのだ。
そんな様子を見て、ようやく本来の目的を思い出したといった顔で、車椅子の彼女は話を止める。
…改めて真剣な顔になられると、確かに美少女ね。
自分の顔を誇れるその自信と、それに見合ったレベルの美貌が妬ましい…妬ましい…
「本題に入りましょう…水橋さん、私は貴女にお願いがあって此処へと招き入れました…」
最初から人に物事を頼もうとしているその態度が妬ましい、と言ったところだろうか。
…だが、私はミレニアムの人間ではない。
単なる善意とヒナのコネで此処に立っている私なのだ、お願いの一つや二つくらい聞くのが礼儀だろう。
それに相手は、まだ幼い子供なのだから。
…幼い、と言うには随分と豊かなエイミの胸部装甲からは目を逸らす、妬ましい…
「水橋さん…貴女には、あの薄汚い下水道水の事をフォローしてあげてほしいのです」
「…ん?…ごめんなさい、なんて?」
下水道水、下水道水とは…下水道水?
それは下水道を流れる水の事だろうか?
それとも、キヴォトスで流行している何らかの隠語か何かなのだろうか?
「おっと、すいません…貴女も先程会ったであろう、調月リオの事ですよ」
…あの人、下水道水だなんて呼ばれていたのか。
そりゃぁ…心が弱っても仕方が無い、流石に私もそんな事を言われたらヘコむと思う。
それでもあの威厳を保てるのは凄いと思うが。
ヒナなんて速攻でシナシナになったのに…っと、関係のない話は止しておこう。
「貴女も分かっていると思いますが、あのドブ水は一人で抱え込む癖があるのですよ」
散々な言いようである、可哀想になってきた。
私から見れば貴女も…そう、そうね…
良い渾名…キヴォトス版11点の女?
…これ嫌味になってるのかしら、なんだか何処ぞのさとり妖怪が流れ弾を受けただけな気がするわ。
嫉妬を通り越して目の前の女性の人間性を疑い始めた所で、頼まれていたお願いの内容を思い出す。
…あぁ、これは、彼女を気遣っているだけだ。
言葉の節々からも感じ取れるが、目の前の彼女は単純に会長の事を心配しているだけらしい。
…所々、悪意はあるように感じるが。
「水橋さん…貴女にしか頼めない事なのです」
「先生とは違った立場の大人であり…私にも理解する事の出来ない存在の、貴女にしか頼めません」
…へぇ、成程…
「私の事を知った上で、頼んだってわけね」
「えぇ、お願いします…異世界からのお客様?」
日間ランキングに橋姫様がッ!?
という訳で、この作品が載っていました!
それにお気に入り数が100の大台を突破!
連載が始まってからまだ数日…拙い文章…
こんな趣味を垂れ流すような作品ですが、何卒楽しんでいただけたら幸いだと思っております故…
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