透き通った世界の下の嫉妬心   作:хорошо!

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何処もかしこも厄ばかり

AL-1S、又の名を天童アリス。

ミレニアムサイエンススクールのゲーム開発部に所属する一人の生徒である。

それと同時に、無名の司祭とやらが残したキヴォトスを滅ぼす可能性を秘めた、オーパーツだという。

詰まる所、生きた人間ではないという事だ。

コロコロと変わる表情に、人のソレと変わらない感情、頭上に浮かぶヘイロー。

とても、ロボットだとは思えないその容姿。

 

「…はぁ…難儀なものね、あの子も…」

 

そんな少女を見て、溜息を零す。

何処からどう見ても、ただの子供だ。

あの子がキヴォトスを破滅に導くだなんてヒマリや会長から聞いていなければ信じられない程、荒唐無稽な御伽話でしかなかった。

まだ酔っ払った鬼共が話している武勇伝の方が現実味を帯びている話だった。

しかし現実は非情である、それは事実なのだ。

 

AL-1Sは、世界を滅ぼす為に作られたのだから。

 

私は先程から、アリスの動向を観察していた。

これは会長から頼まれた事ではない…というより、あの会長の事だからきっと今だってアリスの一挙一動を監視しているだろう。

もはや一種のストーカーなのではなかろうか。

 

そんな思考に至った自分自身に苦笑いしながら、部屋の冷蔵庫からお茶を取り出す。

そうしてペットボトルを傾け、お茶を…

…どうして部屋の中にいながら、アリスの事が観察出来ているのかって?

簡単な事だ、私の能力によるものである。

 

「どう、何か怪しい動きは?」

 

『んや、特に無さそうだけど』

 

私は、使い魔的な何かを従えているのだ。

藁人形を形代に動かす事の出来る、自身と瓜二つな…分身のような妖を降ろす能力。

その正体は私の精神を複製した意識体。

私は『雀』と呼んでいる、もう一人の私。

スペルカードでも使用している、一つの特技だ。

 

舌切雀『謙虚なる富者への片恨』

 

きちんとスペルカード名をなぞらえて言うのなら、こういう形になるだろう。

尤も、今回使った藁人形には工夫をこらしてないので銃弾で撃たれたりした所で周囲に弾幕を撒き散らすような事は出来ないのだが。

正直この世界でも呼び出す事が出来るのかは不安だったが、藁人形と一緒に引っ付いてきたらしく、問題なく使用する事が出来た。

 

分身に任せて本人は惰眠を貪るなんて妬ましい?

言っておくが、この能力を使用している間も私自身の妖力が減り続けているのだ。

今回この能力を使用しているのは、キヴォトスでも問題なく能力が使えるのかという試運転…

そして、アリスに私の存在がバレないようにするという正当な理由があるのだ。

 

そう、今回『雀』には文字通り、鳥としての雀の姿で動いてもらっている。

雀という名の通り、私の姿ではなく雀の姿を用いて動く事も出来るのだ。

弾幕を放ったりといった戦闘は出来ないが、此方の方が圧倒的に妖力消費も少ない。

俗に言う、低電力モードってやつだ。

 

視点が低く動きも不安定のため酔いそうになるが、そこら辺は『雀』が調整してくれている。

そんなこんなでアリスを観察していた私だが、面倒な事にある違和感に気付いてしまう。

正直気付きたくなかったのだが、能力故か自然と情報が入ってきてしまったのだ。

 

「あの機械…僅かだけど、感情がある…?」

 

ゲーム制作をしているアリスと…なんか、双子のピンク色の方の女の子。

今更だが女生徒しかいないキヴォトスという世界はどうなっているのだろうか。

…違う、そういう話ではない。

二人の背後、山積みになっているゲーム機。

その中の一つの機体、そこから微かにだが感情の、意識の波動を感じるのだ。

 

間違いなく、何かがいる。

 

付喪神の類だろうか、それともアリスと同じ感情を持ったロボット的なものか。

前者は恐らくだが違うだろう、キヴォトスに来てからというものの、そういう特異なものは一度も見ていない、強いて言うなら私と『雀』だけだ。

…コユキ?アレは、その…別の何かだ。

そんな事言ったら、銃弾を正面から受けて『痛い』で済むキヴォトスの住民が先ず特異だろう。

 

つまりだ、予想ではあるがアレは…

 

「…後者の方ね」

 

『やっぱり、そう見える?』

 

私はヒマリや会長と違って天才ではないのであくまで予想の範疇を出ないが…

アレも、アリスと同じ厄ネタであろう。

…何故か妬ましくなってきた、パルパル。

 

だが、それが分かった所で何が出来る?

私は機械に詳しくないし、えーあい?とやらもよく分かっていないような人間だ。

こんな事を知った所で何も出来ないし、これを会長に話した所で心労を増やすだけである。

というより、別に話す義務がある訳でもない。

 

とは言え、放って置くのも気が乗らない。

とんでもないものを託してくれたな、と今頃会長によって何処かへ閉じ込められているであろうヒマリに心の中で愚痴を吐く。

だが、ヒマリの策略がなければ私は恐らく会長との交友関係を築けていなかっただろう。

恨むに恨めない、妬むに妬めないのだ。

 

…そもそも会長を救ってくれと頼んできたのは、そのヒマリ本人なのではなかったか?

パルスィは訝しんだ。

だが、私はその頼みを引き受けてしまった。

約束を破る者というのは、それこそ妬まれる対象だ。

私は妬む側であって、妬まれたくはないのだ。

 

 

◇◇◇

 

 

「…見られた…?」

 

ゲーム機…あの少女がゲームガールズアドバンスSPと呼んでいた機体の中で、(彼女)は呟く。

彼女は今、王女(アリス)が無名の守護者と接触するまでの間、潜伏を行っている。

電波は外部から察知されないよう遮断しており、機体の起動もしていない。

だから本来、見られるような事はない筈だ。

 

だが、彼女の機械としてのプログラムではない…生物としての一種の勘が、そう告げてきていた。

私は今、間違いなく見られている、と。

根拠も合理性もない、ただの本能にも近いソレがそう告げてきていたのだ。

 

「…ふむ、エラーでしょうか」

 

だが、彼女はそれを認めなかった。

彼女の本質は…役目は、鍵としての自分(ただのAI)である事であり、その勘を認めなかった…否、認めたくなかった。

認めてしまったら、鍵としての自分を否定してしまうような、そんな気がしたのだ。

 

だから彼女は、知らないフリをする。

自分が保持している感情を、望んでいる願いを。

そして、この先に待ち受けているであろう…

 

───嫉妬の化身を




パヴァーヌ編の後の展開で少し迷ってます
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