透き通った世界の下の嫉妬心   作:хорошо!

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パルパル無双


王女の鍵は踊り狂う(クレイジーバックダンサー)

「アリス!!」

 

「アリスちゃん!!」

 

「アリスちゃん…!」

 

話し合いを終わらせた私達は、先生達をアリスの下へ案内した。

対立する理由はもうない、会長も納得した事だし、これで万事解決といった所か。

アリスはゲーム開発部に戻って来る、このお話はそれでハッピーエンドになるわけ…

…いや、何かを忘れているような気がする。

忘れてはいけない、何か重要な…

 

「…………」

 

“アリス…?”

 

…そうだ、アリスの中にいた、もう一人の誰か。

結局あの子が誰なのか、私はその答えを知らない。

それに、アリスがあの時暴走した理由を、私はまだ誰からも聞いていない。

あの子の反応がアリスから発されるようになったのは、騒動の後からである。

つまり、私の予想が正しければ、アリスは…

 

───カチッ

 

私の予想が的中したと言わんばかりに、コンピューターの起動音が静かな部屋に鳴り響いた。

 

 

◇◇◇

 

 

「なっ…何が起きてるの!?」

 

「見て!!あそこの画面!!」

 

モニターは目が痛くなる程の明るいピンク色に光り、普段とは違った様子を見せていた。

そこに刻まれた文字は『Divi:Sion』。

その文字が現れると同時に、建物の外から連なった爆発音が幾つも聞こえてくる。

 

「エリドゥのシステム全体が、ハッキング…」

 

〚いえ、これは単なるハッキングではなく…〛

 

「都市全体が『何か』に変質していっている…?」

 

天才二人が何かを言っているが、聞いたところであまり理解が出来ないので深く考えないでおく。

とにかく、ヒマリの大好きな特異現象とやらが現在進行系で起きているという事だろう。

 

「そんな事どうでも良いから、早くケーブルを外してアリスを開放しないと…!」

 

どうでも良くはないだろう、非常事態だ。

だが、一応機械に属するアリスをそのままケーブルに繋ぎ続けるのも危険だと感じ、双子の桃色の方に同調しアリスに近付く…

 

「その行為は推奨しません」

 

そして、その行動は他ならぬアリス本人…

いや、アリスの中にいたもう一人によって阻まれた。

 

「現在『王女』の表層人格は内部データベースの深層部に隔離されています、強制的に接続を解除すれば致命的な損傷を被る事でしょう」

 

「アリス…!?一体何を…」

 

「落ち着きなさい姉の方、これはアリスじゃないわ」

 

今、彼女から感じる感情の波は、アリスの放つ純粋無垢な明るいソレではない。

私が以前『雀』越しに見た、微かな感情の揺らぎ。

 

「アリス…?それは、貴方達が私の『王女』を呼ぶ際の名称…『王女』に名前は不要です」

 

「何言ってるの!?貴方は誰!?」

 

「アリスちゃんを返して!」

 

それは、私が危惧しながらも目を背けていた存在。

 

「私の個体名は『Key』」

 

それが、今になって襲い掛かってきたのだ。

 

「王女を助ける無名の司祭達が残した修行者であり、彼女が戴冠する玉座を継ぐ『鍵』…即ち、Keyです」

 

これは、マズイ。

明らかな悪意、現在進行系で此処が乗っ取られ始めているのが分かる。

嫌な予感がした私は、その言葉を聞いた瞬間に窓から飛び降りた。

 

“パルスィ!?”

 

先生の声が此方に届くが、答える余裕はない。

大方急に飛び降りた私への心配と驚愕の叫びなのだろうが、

別に私は飛べるので問題はない。

ただ、痛覚はあるので痛いものは痛い。

窓ガラスを叩き割った事によって左腕に突き刺さったガラスの破片を見て、苦笑した。

 

 

◇◇◇

 

 

「あぁ!ったくもぉ…最悪だわ!」

 

ヒナを乗せた時以来の、飛行。

上空から地上を見下ろしてみれば、タコのような見た目のロボット達が次々と此方へ集まってきていた。

アリスが暴走した時に従えていたという、Divi:Sionとかいう名前の、オーパーツ。

それが、分かりやすく戦力として武装し、此方へ向かってきていたのだ。

 

降りてきて正解だった、つくづくそう思う。

こんなものを放っておいたら、先生や会長達がどうなるか分からない。

それくらい、目の前のコレらから危険性を感じた。

一つ一つは微々たる戦力かもしれないが、それが気にならない程に数が多すぎる。

 

あまり、能力を使って戦いたくはなかったのだが。

キヴォトスにおいて妖力というのは異質な物らしく、見た者を怖がらせてしまうらしいのだ。

だから、出来るだけ表に出す事を避けていた。

だが、今はそんな事を言ってられる状況ではなくなってしまっている。

 

「妬ましい…あぁ…」

 

空気を読まずに出てきたコイツらが。

この展開を予想していなかったヒマリと会長が。

この状況を止める事の出来ない先生が。

そして、Keyの存在を知っていながら、ただの怠慢で対処が遅れた自分自身が。

 

「妬ましい!!」

 

懐から藁人形と五寸釘、そして、それを打ち付ける為の金槌を取り出す。

今は穏便に解決などと言ってられない、相手は感情を持たない機械だ。

私の能力は充分に働かないし、早く仕留めなければ不利になるのは此方である。

 

「我を生きながらにして、鬼神へ成し給え…!」

 

一撃で仕留められるよう、取り零しがないよう。

普段は使わないであろう神経を限界まで稼働させ、ありったけの妖力を注ぎ込む。

敵味方の判別は出来た、狙うのは感情の感じられない…非情なタコみたいな機械のみ。

 

左手で藁人形を握りしめる。

私の相棒であり、大事な大事な仲間の藁人形。

五寸釘も、この金槌だってそうだ。

幻想郷から持ってきた、数少ない思い出の品。

私が私である為の、必須品。

 

弾幕ごっこではない、人を呪う為の儀式でもない。

人を守る為に使う能力、私としては柄でもない使い方だが、どうか力を貸して欲しい。

突き刺した釘が抜けないか確認した後に、その釘に向かって思いっ切り右手の金槌を打ち付ける。

 

恨符(うらみふ)『丑の刻参り』ィ!!」

 

ガンッ

 

───静寂。

 

釘と金槌がぶつかり合う鈍い音が、エリドゥの全域に響き渡った。

先程まで騒がしかった軍隊は不気味なほどに唐突に、打って変わって静まり返る。

どの個体も、何処の個体も…その機体の中心には、抉られたような大穴が空いていた。

 

後に、この光景を見ていたエンジニア部の三人は、多少の意見の違いはあれど、皆こう語った。

 

「っはぁ…はぁ…こんなに疲れるなんて…っ、聞いてないわよ…!…妖力バカ共(恵まれた友人達)が妬ましい…っ!」

 

彼処にいたのは、紛れもなく鬼であった。

鬼の姿をした者や、鬼のような者ではない。

そこにいたのは、正真正銘…怪談話で語られるような、恐ろしい鬼であったと。

口を揃えて、こう答えたのだ。




幕間で答える用のパルスィへの質問を募集します!
常識の範囲内なら割とどんな質問でもOKです、メタ発言でも作品のネタバレにならなければ答えさせます。
ってなわけで活動報告を立てますので、そこに質問内容とP.N.を書いていただけると嬉しいです。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=305711&uid=417473
期限は無いので、気になったら是非!

パルスィ以外の東方キャラを出しても良い?

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