透き通った世界の下の嫉妬心   作:хорошо!

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亡き王女の為の七重奏(貴女に送るセプテット)

「んっ…ぁあ…意識飛ぶ所だったわ…」

 

本来のパルスィ…幻想郷にいた頃ならば、こんな多大な妖力を使えば間違いなく倒れていただろう。

ただ、此処はキヴォトス…負の感情渦巻く世界、それ故にパルスィの力は以前より増していた。

そのお陰で、パルスィは動く事が出来る。

そして、パルスィは気付く事が出来る。

 

「…アリスの反応が、戻って来たわね」

 

正面にある、エリドゥの中心に立つビル。

その中で眠る筈の、アリスの感情の揺らぎに。

 

「…さぁて、役目は終わった事だし?…私は私のやりたいようにやらせてもらうとしましょうか…」

 

パルスィはその場に座り、両目を瞑った。

 

 

◇◇◇

 

 

「モモイにミドリ、ユズ…それに、先生…」

 

「アリス!私達が来たよ!」

 

アリスの心の中、そこはアリスと彼らが初めて出会ったあの廃墟の風景がそのまま投影されていた。

アリスを見つけた彼女達は、嬉しそうに駆け寄る。

 

「…どうして、ここに…?」

 

「家出したアリスを迎えに来たんだよ!」

 

「アリスちゃん、早く帰ろう…!」

 

なんて美しいのだろうか、これが不滅の友情?

妬ましい、あぁ妬ましい、妬ましい…

 

「ぁ…アリスは、アリスは…」

 

「王女よ、貴方が見てきた光景を忘れましたか?」

 

虚空から響く声と共に、徐々に姿を現す少女。

アリスと瓜二つなその姿…ただ、瞳の色だけがアリスと違い紫色に煌めいていた。

 

“Key…”

 

彼女は王女の鍵(key)、アリスの中にいるもう一人の、幼い少女。

アトラハなんちゃらとかいう、キヴォトスを終焉に導く凄い兵器を起動するための鍵。

つまり、例えるなら何でしょうね…

…アリスの姉とか、そういう解釈かしら?

 

「つまり…アレが…!」

 

「アリスちゃんを此処に閉じ込めた元凶…?」

 

勝手な予想になってしまうが、アリスがこの…桃色の方を怪我させたってのも、Keyがアリスの事を乗っ取って行った事なのだろう。

 

“アリスが見てきた光景って?”

 

「文字通りの意味です、王女様がこの空間で見開きした光景の数々…」

 

映し出されるのは、先程の光景。

アリスを助け出さんと乗り込んで来たこの子達が、防衛ロボ…AMASだかと戦う様子。

エンジニア部が、ゲーム開発部が、C&Cが。

チビメイドさんがトキとの戦いで、多くの怪我を負って倒れる様子…いや、トキ強いわね?

 

「エリドゥの監視網から見てきた光景…何故、このような事が起きてしまったのでしょうか?」

 

「その答えを『王女』は既にご存知なのでは?」

 

正直に言わせてもらえば、私が悪いと思う。

私はアレを止める力があった…だが、メリットが無いからという理由でそれを放棄した。

まぁ、私にそれを止める義務は無かったので罪を償ったりする気は無いのだが。

 

「…アリスは…アリスは、帰れません…アリスの傍にいたら皆が傷付いてしまいます…」

 

…アリスは悪くない、貴方に罪はない。

そう言ってあげたい所ではあるが、この役割は私が担うべきものではない。

私は今回『悪役』を演じていたのだ。

アリスの敵を、アリスみたいな言い方をするなら魔王の補佐をしていたのだから。

…それだと会長が魔王になっちゃうわね?

 

だが、アリスに罪がないのは本当であろう。

あれもこれも、Keyが仕込んだ事でありアリスが自分の意思でやった事ではないのだから。

わざとだとか、わざとじゃないとか…そういう話ではなく、これはKeyが起こした事なのだから。

妬ましい、他人に罪を押し付けるその姿が…

 

「アリスちゃん、違うよ!私達はそんな事…」

 

「でも、アリスのせいで皆怪我をしてしまいました…」

 

「…モモイも…ミドリも、ユズも…」

 

モモイ…双子の桃色の方の子は、アリスの暴走騒動の時に大怪我を負ってしまったらしい。

詳しい事は分からないし、基準がどうなのかは未だによく理解出来ていないが…何やら、暫く寝たきりになってしまう程の重症だったらしい。

キヴォトスの人々は頑丈なのだから、相当だろう。

 

「…ネル、先輩も…」

 

チビメイドさんも、怪我を負っていた。

弾幕ごっこをしていてもあまり見ないレベルの出血量…銃弾で怪我をしないこの世界の人々の基準なら、だいぶ大きな損傷なのだろう。

…尤も、本人は気にしていなかったが。

 

「…アリスは、勇者ではなく魔王ですから…」

 

「いつか世界を…キヴォトスを滅ぼすかもしれない、魔王として生まれたから…」

 

「アリスの傍にいる事で…大切な人が傷付いて、苦しんでしまうなら…いっそ、アリスは…」

 

「アリスは…このまま消えるのが正しいのです…」

 

悲しそうに、何処か辛そうに…今にも消えてしまいそうな、儚い声で彼女は笑う。

こんな幼い子供が何故こんな運命のもとに生まれなければならないのか。

どうして、こんな思いをしなければならないのか。

 

…妬ましい、妬ましいにも程がある。

この世界が、この運命が、無名の司祭とやらが。

いっその事、私が全て壊して…

 

「『テイルズ・サガ・クロニクル2は…!』」

 

「私達が一緒に作ったゲームは!!特別賞を貰ったよ!!」

 

そんな思考をし始めた所で、双子の桃色の…そろそろ名前を覚えないと…えぇ、モモイね。

モモイが、アリスに向かってそう叫ぶ。

 

「キヴォトスの終焉?何言ってるの?」

 

「アリスがいるだけで皆が傷付く?」

 

「誰がそんな馬鹿な事を言っているの!?」

 

「アリスがいたから…私達は、ゲーム開発部は部活動を続ける事が出来たんだよ!」

 

…良い事を言うじゃない、全く妬ましい。

でも…今は、褒めてあげるわ。

 

「うん、そうだよ!」

 

「…うん…!」

 

“そうだね、アリスがいたから出来た事だよ”

 

底無しの明るい子ってのは、誰かを救う事がある。

言い方を変えればただの(バカ)だけど、だからこそ後先を考えずに人を助ける事が出来る。

この子は、そういうタイプの子だった。

 

「モモイ…?」

 

「なのにアリスが魔王だとか何だとか…何それ、全ッ然意味分かんない!!」

 

「消えるのを放っておくなんて…出来ないよ…」

 

アリスは、一人で消えようとしている。

だが、アリスにそんな事をさせるつもりはない…彼女達は、そう主張する。

 

「な、何故ですか…?…みんな、どうして…?」

 

「だって、アリスは!」

 

「アリスちゃんは…大切な、仲間だから…!」

 

「…どんなゲームでも、主人公達は…」

 

“決して、仲間を諦めない”

 

仲間というものは、面倒で妬ましいものだ。

…だって、仲間を絶対に見捨てたりはしないから。

 

「アリスは、自分がなりたい職業を選んでジョブチェンジすれば良いんだよ!」

 

「…もちろん、勇者でも良いんだよ…?」

 

人というのは、なりたいものになれる。

人には…子供には、その選択肢がある。

私だって人の身から鬼女になって、最後には橋の守護神にまで成り上がったんだ。

人には、無限の可能性がある。

 

「アリスは、魔王なのに…こんな、アリスなのに…それでも良いんですか…?」

 

「みんなと一緒に、冒険を…クエストを続行しても、良いんですか…?」

 

“うん、もちろん”

 

…やはり、先生に任せて良かった。

とても、えぇ…とっても妬ましい事に、私の頼みを、予想を上回る形でアリスを救ってくれた。

 

「それなら…アリスも、アリスも勇者になって…」

 

「モモイ、ミドリ、ユズ…それに先生と冒険を続けたいです…!」

 

アリスの本音、それはただの、子供の願い。

魔王だとか勇者だとか関係ない、ただただ純粋な…

心の底から、出た本音。

 

「大丈夫、任せておいて!」

 

「私達は…自由に、その道を作る事が出来る…!」

 

───ゲーム開発部だから!!

 

「…なら、許されるのなら…アリスは勇者に…アリスは、アリスになりたいです…!」

 

アリスがそう語ると、目の前の台座に古びた様子の…なんだか、大きな機械が現れる。

あれは確か、アリスの装備していた…持っていた銃。

確か、その名前は…

 

「アリスちゃん!勇者の剣を!」

 

「抜くんだよアリス!!」

 

「…はいっ!」

 

『光の剣:スーパーノヴァ』だとか、何とか。

 

「それは…王女、貴女のその能力は…!」

 

そんな様子を見た少女…Keyは、焦り叫ぶ。

だが、そんな言葉を今更聞き入れるような彼女じゃないだろう…アリスは、もう自由なのだから。

 

「アリスは王女じゃありません!アリスです!」

 

「アリスがそう決めましたから!…ですから、アリスは光属性の勇者です!」

 

その銃口を天高く掲げ、こう叫ぶ。

 

「…光よっ!!!!」

 

白い光に空間が包まれ、音を立てて崩れさる。

アリスは、此処から出てゲーム開発部としてキヴォトスを生きる事を選んだ。

 

「王女よ…あなた、は…」

 

「…理解、不能…」

 

自分の役目を捨て、新たな役目を得たのだ。

ゲーム開発部のプログラマーという、役目を。

 

 

◇◇◇

 

 

「…さてと、私だけ仲間外れ?妬ましいわねぇ…」

 

先生達がいなくなった事を確認し、光が収まったその空間に私は降り立つ。

ただただ、真っ白なその空間に。

 

「…貴女は…?」

 

そこに残るのは、たった一人の少女のみ。

 

「私は水橋パルスィ、貴女を妬む(救う)嫉妬の化身…」

 

これは、私の役目だとか頼まれたからやるだとか、そんな理由のあるものではない。

 

「さぁ、貴女の心に巣食う嫉妬心に注意しなさい?」

 

自分の役目に囚われた一人の少女を救いたいという、私の感情に従った…勝手な、我儘だ。

 

 

【挿絵表示】

 

パルスィ以外の東方キャラを出しても良い?

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