「…外の世界から来た貴方が、私に何の用ですか?」
「つれないわねぇ…折角来てあげたのに…」
私が此処にいるのは誰かから頼まれたからとか、そういう役目があるからとか、そういう理由ではない。
ただ私が…私の中の僅かな善性が、彼女を救えと訴えてきたから此処にいるのだ。
「…何の用かと聞いているのですが?」
だが、それだけが理由という訳ではない。
「あらら、怖い怖い…そうねぇ、嫉妬心を察知して此処に参上したとでも言っておきましょうか?」
私の能力が、心に巣食う嫉妬心を察知したのだ。
それは、アリスの持っている感情ではない。
「嫉妬心?それは王女の…」
「いいえ、貴女の中にある嫉妬心よ」
私の能力は割と限定的なものである。
私が心を読んだり干渉したり出来るのは嫉妬心あってのもの、アリスが外に出た今、私が此処に居続けられているのは彼女が嫉妬心を抱いているからなのだ。
「…私が嫉妬心を抱いていると?王女の鍵である私が、何に嫉妬していると言うのですか?」
彼女が自覚しているかは別の話として、私は嫉妬に関してだけならどんな人よりも理解出来る。
それは、さとり妖怪共と比較しても、だ。
だから私は、彼女の嫉妬を理解する事が出来る。
「…その
少女は、アリスに嫉妬していた。
「…有り得ません、私は世界を滅ぼす為に王女の鍵として作られた鍵…その私が、他ならぬ王女に嫉妬するなどと言う事が有り得る訳が…」
「…何、役目とか生まれた意味とかの話?それはたった今アリスが否定していったばかりだと思うけど?」
世界を滅ぼす為に生まれた、アリス。
だが、その前提は先程先生達に覆されたばかり。
役目を放棄して新たな役目を見つけた少女が、此処から出て行ったばかりなのだ。
彼女の主張は、矛盾していた。
「貴女はアリスに嫉妬している、自分を置いて行ってしまったアリスに…えぇ、嫉妬しているのよ」
「いえ、私に嫉妬心などという感情は…」
頓知のような形になってしまうが、今私の目の前にいるのは機械であって人間ではない。
…ならば、少しばかり意地悪をしても許される筈だ。
先生は全ての生徒の味方だと言っていたが、まだ生徒ではない彼女は…まぁ、例外だろう。
だから、私も『本気』を出す。
「…ッ!?」
能力をフル稼働させて、相手に干渉する。
嫉妬の象徴として忌み嫌われる緑眼を最大限活用して、相手の嫉妬心を曝け出させる。
今、少女の目には私の事が緑色の目をした怪物として映っているだろう。
「さぁ…その心の内、洗いざらい吐き出しなさい?」
会長にやった事が『嫉妬を教える事』ならば、今行っているのは既に知っている『嫉妬を自覚させる事』。
荒い方法にはなってしまうが、やむを得ない。
自覚せずに悪役として片付けられてしまうよりは、私みたいに足掻いたほうが何倍も良い。
復讐しようが、思い悩もうがどうだって良い。
私としては、嫉妬するという過程が重要なのだから。
少女の紫の瞳が、僅かながら蕩ける。
あまりこういう形は望んでいないのだが、それも彼女に対する一種の罰となるだろう。
というより、そういう事にしておかないと私が彼女に行う行為に罪悪感を抱いてしまう。
この能力は私の感情がモロに影響する、誰かに嫉妬し続けていないと上手く作用しないのだ。
そんな私の嫉妬に当てられた少女は、ポツポツと呟く。
「…私は、王女の付属品として作られた鍵です…」
「ですが…私は、見てしまいました…」
「あの者達と話す王女は、笑っていました…役目に反する行動の筈なのに、活き活きとしていました…」
役目というのは、キヴォトスを終焉に導くとかいう、世界を滅ぼすとかいう使命の事だろう。
少女が生み出された理由であり、生きる意味。
少女は、その生き方しか知らなかったのだろう。
ただ、アリスは違った…アリスはゲーム開発部という、勇者という他の生き方を見つけたから。
「…これは、羨んでいるのでしょうか…あるいは…」
「嫉妬…それが、嫉妬よ」
それは、少女からしてとても妬ましい事の筈だ。
立場が違えば…何らかの因果が違えば、そこに立っていたのはこの子だったかもしれないのに。
少女は、こんな役回りしか出来なかったのだから。
「…何故、私は『感情』を抱いているのでしょうか…私の役目に、それは必要ないものな筈なのに…」
「抱いてるから抱いてるんじゃない、深く考えたって無駄よ…貴女にゃ感情がある、それで良いのよ」
何度も言うが、私は機械の事はからっきしである。
アリスが感情を持ってる事も、それと同じく彼女が感情を持ってる事も、理由はよく分かってない。
何ならAIとかいうものと彼女達の違いというのも、いまいち納得出来る説明を聞けていない。
ただ、理由など分からなくても良いではないか。
「妬ましいなら妬ましいなりに行動を起こしなさい、鍵だか役目だか知らないけど…したい事をしなさい?」
感情を持っているという事は、大事な事だ。
いくら重要な事があろうと、たまには感情に従ってその役目を無視しても良いのだ。
逃げるは恥だが役に立つとはよく言ったものだ。
「…理解不能、何故、私に道を提示するのですか?」
「ん、ん〜・・・そうね…貴女が、嫉妬していたからよ」
確かに、私に彼女を助ける義務はないが…
「私は嫉妬を放っておけないのよ…それ以外に特に理由なんてないわ、ただの感情論だもの」
「…目に見えたメリットがある訳でもないのに…何故、貴方はそんな事を…」
そもそも、それが間違っているのだ。
私は橋姫…嫉妬心の塊、嫉妬の化身と言っても過言ではない存在である。
そんな存在なのだから、感情で動くのは当たり前だ。
「それこそアリスと同じじゃない、損得で考えるタイプじゃないのよ私達は…貴女も、そうなんじゃない?」
「…私も…?」
「貴女にだって役目があったのかもしれないけど…今、貴女が感情を抱いてるならそれに従えば良いのよ」
まぁ、それでもやらねばならぬ事はあるのだが…
今は、感情の方が重要視するべき事であろう。
「感情ってのは、人が持つ権利みたいなものだから」
「…私は、人なのでしょうか?…私は
また出た、無名の司祭とかいう奴ら…
詳しい話は聞いていないから分からないが、取り敢えず悪い奴らだと言う事は分かる。
だから、そんな奴らの言う事なんか聞く必要はない。
「司祭だか住職だか知らないけど…貴女にはKeyじゃなくてケイって名前があるじゃない?」
「やらぬ愚者よりやる愚勇…妬んでいるのなら、貴女も行動を起こせば良いのよ」
彼女は確かに、Keyとして生み出されたかもしれない。
だが、今の彼女には感情があるし、名前がある。
モモイが付けた…読み間違えた、ケイという名前が。
「ですが、私には役目が…」
「捨てちゃいなさいよそんな役目、私が切ってあげるわよ…こんなんでも、私って縁切りの神様なのよ?」
橋姫の縁切り、これは案外馬鹿にならない加護がある。
言い伝えと信仰というものは多大な力を発揮するものだ、きっと彼女の縁切りの助けになるだろう。
そう思って、私は彼女にそう伝える。
「…捨ててしまっても、良いのでしょうか」
「良いのよ、何もかも捨ててやり直しましょう?」
私だってキヴォトスでやり直してる真っ最中なのだ。
そんな私でも、いつ帰れるかも分からないこんな状況だが、案外どうにかなっているのだから。
彼女だって、きっとやり直せる筈である。
「私は、私は…」
「…私は、王女と…アリスと、彼女達と共に、あの場所で過ごしたいです…!」
少女は叫ぶ、先程のアリスと同じ様に。
役目や立場に縛られず、その言葉を口に出す。
「…最初から聞きたかったんだけどねぇ、その言葉」
少女の本心を聞けた私は、その安堵からか、はたまた気が抜けたからか…そのまま、意識を失った。
パルスィ以外の東方キャラを出しても良い?
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別に良い
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やめて欲しい
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結果を見たい人用