透き通った世界の下の嫉妬心   作:хорошо!

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書き溜めが尽きました、ハイ…



幕間
酒は呑んでも呑まれるな


ヒマリとの夕食の後、私は千鳥足になりながらも何とかヒナの家まで辿り着く事が出来た。

飛行中のふらつきの事を千鳥足というのかは知らないが、聞く相手もいないので特に気にしないでおく。

お風呂に入ろうとも思ったのだが、どうしても疲れが勝ってしまい入るのを諦めたのを覚えている。

酔っぱらいにお風呂…なんかもう、字面を見るだけで事件の予感しかしないし。

それで、朦朧とした意識のまま布団へと潜りそのまま眠りについた記憶がある…のだが。

 

「っねぇ、ヒナ…そ、の…そろそろ…」

 

「…聞こえない…」

 

原因不明の苦しさに目を覚ました私は、いつの間にか布団に潜り込んでいたヒナから抱きつかれていた。

別に抱きつかれてる事にどうこう言うつもりはない、私にも羞恥心という感情はあるが、今更だ。

それよりもっと、物理的な問題があった。

 

───ミシッ

 

先程からずっと、私の身体からミシミシという、鳴ってはいけないような音が鳴っているのだ。

キヴォトスの人々は力が強いと聞いたが、まさかここまでだとは思ってもいなかった。

流石に勇儀に比べれば弱いものだが、私の身体は別に頑丈な訳ではない…つまり、つまりだ。

とんでもなく痛い、なんなら折れそうである。

 

だが離してもらえない、現実は非情である。

私が悪いのは分かっている、帰って来ると言っていたのにミレニアムに滞在し続けたのは私だ。

でも理由があったじゃないか、私にだって弁解の余地はある筈なのだ…ぁ、ちょっと待って死ぬ、死…

 

「…ぁ、大丈夫…?」

 

…セーフ!!!!生きてる!!!!

いや、この世界に嫉妬心ある限り私は何度でも蘇るのだが…それはそうと、事切れる感覚はあるのだ。

出来る限り避けたい、痛いものは痛いのだから。

その痛みの原因…私が死ぬレベルの圧迫をしてきたヒナに内心驚愕が隠せないが、表情は変えずに問う。

 

「…それで、もう登校時間じゃないの?」

 

今日は休日ではない、普通に平日である。

当然学校はあるし風紀委員の仕事もある筈だ…いや、ヒナは休日登校をしてばかりなのだが。

だがその問い掛けに対しヒナは首を振る…そして、私の服の裾を掴んでこう言うのだ。

 

「…今日は、パルスィも来て…?」

 

反則である、その顔は反則である。

幼い少女がそんな上目遣いで此方を見てきたら、私に断る力なんてない、それ程までに威力が高い。*1

私は、その提案を受け入れるしかなかった。

だが…だが、いや、その…ね…?

 

「ヒナ、ぁの…ちょっと…」

 

「…どうしたの…?」

 

柄にもなく顔を赤らめ、呟く。

 

「…お風呂、入って来ても良い?」

 

「ん?」

 

「…お風呂、入っても良いかって…」

 

「…でも、入らなくても良い匂「入ってくる!」」

 

パルスィだって一人の女性なのである。

恥じらいというものは、存在しているのだ。

 

 

◇◇◇

 

 

「…ねぇ、ヒナ…」

 

「ん…どうしたの?」

 

もはや付け慣れた風紀委員会のリボンをヒラヒラと棚引かせながら、ヒナと共にゲヘナへと向かう。

ヒナが強いという事は知っていたが、道を歩くだけで他の生徒達が露骨に避ける程だとは…

君達が恐れるこの子は、案外シナシナだぞ。

だが、そんな生徒達は距離を取りながらも、明らかに此方を困惑したような瞳で見つめてきていた。

それもその筈、いつもは威厳に溢れた風紀委員長…

 

「あの…手を繋ぐ必要はないんじゃないかと…」

 

「でもパルスィは此処らへんを歩くの始めてでしょ?なら、迷わないように私が案内しないと…」

 

「…そっか、そうね…」

 

その人が、誰とも分からぬ者と手を繋ぎながら登校していたら誰だって困惑するだろう。

当の本人たる私だって困惑してるのだ、尚更だろう。

先程から何度か振り払えないか試しているのだが、キヴォトスの人のパワーは凄いものだ…全く抜けれそうにない、無意味な抵抗である。

なんだか、勇儀を相手にしてる時と同じ感覚だ。

鬼と張り合える力を持った人って一体何なのよ…

 

そんなこんなで、私は今ヒナと手を繋いでゲヘナへ向かう道中を歩いている。

最後に誰かと手を繋いだのはいつだったか…

…意外と最近かもしれない、私がいれば誤魔化せると言って外に出たコユキと繋いだ記憶がある。

まぁ、結局ユウカにバレて叱られていたのだが。

っと、話が逸れてしまった。

 

今、私の立場はどうなってるのかよく分からない。

ヒナの家の居候というのは確かなのだが、風紀委員としての立場を受け取っている以上、私は何なのか。

生徒ではない私は、風紀委員にとってどんな立場に立っているのか…そこが、私は分からなかった。

まぁ、それはすぐに分かった事なのだが。

 

「ヒナ委員長!?その人は誰ですか!?」

 

「あぁ、アコ…この人はパルスィ、うちの顧問よ」

 

「…ぇ、そうなの?」

 

思わず素で声が出たが、どうやらそうらしい。

ミレニアムの生徒会長の協力者だとか、風紀委員会の顧問だとか…なんか、色々と立場が重い。

私はただの一般妖怪なのにこんなに立場を押し付けられても、私に出来る事は少ないのだが…

…まぁ、今回はヒナの立場もあるだろうし…仕方が無いから、別に良いとしよう。

というより、居候がとやかく言える立場じゃない。

 

「顧問ですか…そんな、何処の誰とも分からないような怪しい人に、風紀委員会の顧問を?」

 

「知ってるから…私と、同居してるし」

 

ぱんぱかぱ〜ん!パルスィは居候から同居人へと…

…ごめんなさいアリス、歳食ってる私にこのノリはちょっとばかし辛いわ、折角教えてくれたのにね…

 

「どっ…同居!?委員長と、その人が!?」

 

「どうやら、そうらしいわ」

 

いや、今の私の立場は完全にヒモでしかないのだが、ヒナがそう言ってくれたのだからそうなのだろう。

本当にヒナには頭が上がらない、どうしてここまでよくしてくれるのかは分からないが、本当に助かる。

その優しさが妬まし…これを口に出したら本格的にシナってしまいそうなので、やめておこう…

 

「あの噂は本当…いえ、私は認めません…!」

 

アビドスで見かけた時以来だろうか、初めて生で会ったアコという少女は狼狽えていた。

そして、同時に嫉妬していた…何故…?

軽く覗いてみれば、ヒナと一緒に暮らしている私への嫉妬心らしい…珍しい、私に対する嫉妬なんて。

そう感心していたら、バタンと扉を開けてアコは何処かへと走り去って行ってしまった。

 

「私は認めませんからねーッ!!」

 

…なんでそんな服装をしているのか聞きたかったのだが、どうやらそれは今すぐには聞けない質問らしい。

溜息を零すと、失踪してしまったアコの代わりにヒナの仕事を手伝うのだった。

*1
パルスィは決してロリコンではない…ただ、キスメを含めた見た目が幼い子に弱いだけである。

トリニティ編の同行者

  • ケイ
  • トキ
  • イチカ
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