透き通った世界の下の嫉妬心   作:хорошо!

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鍵であった少女と少女であった橋姫

私は、キヴォトスに来る直前の記憶が少し曖昧だ。

何らかの記憶操作を受けたとかではなく、酔っていたという単純な理由なのだが。

つまり私は、何も分からない、何の準備もしていない状態でキヴォトスへと飛ばされたというわけだ。

その結果、私の持つ道具のストックはミレニアムの騒動もあり、カッツカツになっていた。

 

Divi:Sionだかの対処に使った藁人形はもう使い物にならないし、五寸釘の貯蔵も心許ない。

金槌はまだまだ使えそうなので問題ないが、これは深刻な問題であった。

 

私は正直、キヴォトスに来てから自身より明確に格上だと感じる相手に会っていない。

今の所会った中で一番強いと思うヒナでさえ、スペルカードを使って良いのなら勝つ事が出来るだろう。

そもそも、ヒナが私に銃弾を当てた所で、私にとってそれは致命傷にならない。

 

だが、何事にも例外は存在する。

今後、ヒナより強い生徒に遭遇する事があるかもしれないし、何らかの私を殺す手段を持った者が急に現れるかもしれない。

そうなった時に、何の武器も持っていないというのは私にとって危険な状態なのである。

私は非力というわけではないが、キヴォトスの者達は私達と比べて力が強すぎるのだ。

近接武器としても、五寸釘は用意しておきたい。

 

そんなこんなで、私は藁人形を作る為の藁と、新しい釘を買いにショッピングセンターに来ていた。

キヴォトスは凄いものだ、こんな所に藁や釘が売っているのだと言うのだから信じられない。

少しばかりの期待を胸に、他の所も見て回ろうかと私は足を踏み出したのだった。

 

「水橋様、私はゲーム売り場へ行く事を望みます」

 

…何故か着いてきた、ケイと共に。

藁と釘が何処で買えるか、それをヒマリに聞いたのが良く無かったのであろう。

どうせ一人なんだから二人で行って来いとケイの事を押し付けられ、今に至るというわけだ。

文句の一つや二つを言ってやりたいところだが、ケイがいなかったら此処に辿り着けていたかすら怪しいので、余計なことが言えなくなってしまった。

これを見越した上で預けたなら、大したものだ。

 

そんな事を考えながら、ケイの方を見る。

…改めて見ると凄いものだ、普通に見ればその姿は人間とほぼほぼ変わらない。

いくらアリスというお手本があったとは言えど、これを作り上げたエンジニア部は凄いと思う。

私が依頼してから数日、もう義体が完成したと聞いた時は本当に驚かされた、早すぎるだろう。

その才能と技術力が妬ましい…機械に関して私は全く知らないので、妬む権利はないのだが。

 

「…私の用事が終わった後ね、全く…ヒマリは私の事を託児所か何かだと勘違いしてないかしら…」

 

ケイと言い、会長と言い、ヒマリは暇さえあれば私に彼女達の面倒を見ろと押し付けてくるのだ。

別にその事自体が嫌だとは言わないが、なんだか下に見られているようでこれまた妬ましい。

ケイの方は確かに無理矢理外へと連れ出した私に責任があるかもしれないが、会長は違うだろう。

救えと頼んできたのはヒマリなのだから、自分で対処してもらいたいものである。

 

トキの方は別に良い、個人的に付き合いを持っているし、単純に友人として関わっているので私としても一緒に出掛けたりするのは楽しいと思っている。

いや、ケイや会長と外出するのが嫌だと言っている訳ではない、別に二人と遊ぶのも…何故私が弁解をしなければならないのか、妬ましい…

 

因みに、ミレニアムに赴いた時はコユキの所にも時々顔を出すようにしているが、彼女のやらかした事の責任を私にも押し付けるのはやめてほしい。

何故無関係の私が怒られなければならないのか…

会長の時といい、なんだか損をしている気がする。

その分誰かを妬んでくれるというのなら、私としてもやぶさかではないのだが。

 

「…駄目、なのですか…?」

 

「ッ…ぁ〜・・・もう、先で良いわよ…」

 

ケイはズルい、というかコユキもズルい。

自身の容姿が幼い子供のソレだという事を理解した上でこういう動作をしてくるのだから、たちが悪い。

上目遣いで涙目とか、断れる要素がないだろう。

これをやってきたのがヒマリだったら単に苛つくだけで済むだろうが、彼女達はそうもいかないのだ。

本当、こういう事が出来る子供というのは妬ましい。

 

コユキのアレは多分、今まで生きている中で自然と身に付けた技術なのだろうが、ケイは違うだろう。

教えたのは誰だろうか…アリスはもっと素直だし、考えられるのはモモイ辺りだろうか。

案外、先生やヒマリ辺りかもしれない…どちらにせよ妬ましい、後で問い詰めてやろうか。

 

そんな愚痴を考えながらも、言ってしまったからには今更撤回する事は出来ないのだ。

やれやれと溜息を零しながら、ケイの腕を取り私達はゲーム売り場とやらに向かったのだった。

 

…私も見入ってしまったというのは、内緒である。

 

 

◇◇◇

 

 

「水橋様は、友人とは何だと思いますか?」

 

目的の物も買う事が出来、この出費はヒマリに請求しようかと本気で考えていた帰り道。

そんな中で、ケイは私にそんな質問をしてきた。

何故そんな事を、と聞き返してみれば、彼女は困ったような…寂しそうな表情で、こう言うのだ。

 

「…ゲーム開発部の一員となり、活動している私は…本当に、彼女達を友人だと認識しているのでしょうか」

 

元々、アリスと違って自分の目的を認識した上でそれに縛られて生きてきた少女なのだ。

急に自由を与えられ、仲間を得たとしても、それに戸惑ってしまうのは仕方が無い事なのかもしれない。

 

だが、その悩みを私に相談するのは色々と間違っている気がしてならない。

私は縁切りの神であり、妬みの化身…友人は少ないし、人付き合いも良いとは言えないのだから。

だが、聞かれたことには答えたほうが良いだろう。

彼女だって子供なのだ、子供の悩みには真摯に向き合ってあげるのが大人というものである。

 

「…私は友人が少ないし、私なりの意見になってしまうけど、それでも言える事はあるわよ」

 

「その人の…その人達の隣が、居心地が良くて…一緒にいたいって感じるような…そんな人が、友人と言えるような人なんだと私は思ってるわよ」

 

そもそも友人の定義を答えられる人ってのは少ないと思うが、私としてはこういう答えになる筈だ。

…あのバカ()の隣が居心地良く感じている自分が、少々妬ましいが…これが、本心なのだろう。

私は、そう考えているのだろう。

 

その言葉を聞いて納得したのか、はたまた納得していないのかは分からないが、ケイは此方へ向き直る。

少し考えるような仕草を取った後、困ったような表情を浮かべながら、私に口を開く。

何だか変な事を言われるんじゃないかと身構えたが、彼女が口に出した言葉はいたって真面目なものだった。

 

「…では、水橋様も友人という事ですか?」

 

思わず、ポカンとして口を開けてしまう。

そんな事でわざわざ考えていたのか…などと、そう思うとじわじわと笑いが込み上げてきた。

 

「…ふふっ、そうかもね?」

 

大人びた、アリスとは真反対の様子のケイだが、結局のところ中身は幼い子供なのだ。

彼女はきっと、これから色々な者と出会い…色々な事を学んでゆくのだろう。

私は彼女の親という訳では無いが、彼女をこうして引っ張りだしたのは私である。

些細な言葉ではあったが、私はどうやらその言葉を言ってもらえた事が思ったより嬉しかったらしい。

 

私は珍しく他人を妬まずにその帰り道を、ケイと手を繋ぎくだらない話をしながら歩いたのだった。




アンケートの結果に関係なく、幕間でやる本編に関係ない番外編では時々東方キャラ出すと思います。
本編の方は〜・・・まぁ、結果次第ですかね…

トリニティ編の同行者

  • ケイ
  • トキ
  • イチカ
  • マシロ
  • 宇沢レイサにお任せください!
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