透き通った世界の下の嫉妬心   作:хорошо!

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行き当たりばったりのアビドス編、始まります



2章.語られざる星の夢
治安の悪さは地底も負けていない


学園都市という体制を取るキヴォトスにおいて、酒類というものはあまり出回っていない。

当然というべきか、未成年の生徒達が酒類を口にする事などあってはならないだろう。

 

だが、私にとってそれは死活問題である。

 

勇儀程ではないが、幻想郷出身である以上私だってお酒は好きだ、飲める事ならキヴォトスでも飲みたい。

それに、ヒマリと共に夕食を取った時久々に酒類を口にしたせいで、余計に我慢の限界が近付いていた。

そういう訳で、私はどうにか酒類を入手をしようと各地を回っていたのだが…

 

「案外、探せばあるものね…」

 

ブラックマーケット、そこで目当てのお酒を見つける事が出来たのだった。

中々値は張ったが、少し前にケイを預かった報酬としてヒマリから貰っていたお金があったので、何とかある程度の量は確保する事が出来た。

軽々とその料金を払える所が妬ましい…

まぁ、ヒナや会長も楽々払えそうではあるが。

 

───バンッ、バンッ

 

それにしても、ここは治安が悪い。

先程から銃声が絶えず聞こえるし、変なバッグを背負った子供が不良に追いかけ回されてるのも見た。

普段なら口を出す所だが、此処で問題を起こすとヒナの胃がまた痛むだろうと予想し、やめておいた。

あの子は可哀想だが、そもそもこんな所に来ているのが悪いし、私に助ける義務があるわけでもない。

 

そんな理由で無視していたが、まぁ…なんだ…

キヴォトスの一般常識として、銃を持っていない無防備な者は格好の餌と言えるのだろう。

そんな中、私はどのような武装をしているだろう。

藁人形や釘は服の中に仕舞ってあるし、特に目立つような武器は何一つとして持っていない。

さらに、ヘイローも付いていないときた。

 

そう、私は不良からすると格好の的なのである。

 

それに、私は…自分で言うのもアレだが、中身を知られていなければ、年端もいかない少女に見える。

そんな少女が、キヴォトスではそこそこの値段であるお酒を片手に一人で歩いていたら、どうだ?

 

「おい、お前…ちょっと飛んでみろや」

 

まぁ、当然不良達に狙われるわけだ。

見た所相手の人数は二人、特に実力者でもなんでもなくただのカツアゲといったところだろうか。

この程度なら能力を使わずとも、釘と金槌だけでも容易に対処が出来るレベルだ。

 

ただ、私が風紀委員会に所属している事を知っている者がこの近くにいた場合、色々と問題になる。

それに、こんな所で目立ちたくはない。

どうするべきかと悩んでいた所で

 

───バンッ

 

…その音と共に、不良の片方が意識を失った。

 

「…うわっ!?な、なんだおまっ…」

 

───バンッ

 

そして、もう一人も。

 

「…あら、お久しぶり?」

 

「久しぶり〜、また、会ったね?」

 

二人を撃ったショットガンを降ろし、此方を見るピンク色の髪の少女…小鳥遊ホシノ。

ヒナ曰く、キヴォトスの中でも上から数えた方が早い程の実力者である、アビドスの生徒。

…余裕ぶっているが、私も銃声が聞こえるまでは彼女の接近に気付く事が出来なかった。

 

「…その、お礼くらいはするわよ?」

 

素性の知れぬ、実力者。

勝てないという事はないだろうが、今ここで余計な事をするのは悪手だろう。

ここは素直に助けてもらった礼をするべきだ。

というわけで、私は偶然視界に入ったたい焼き屋を見て、そこへ行こうと提案するのだった。

 

 

◇◇◇

 

 

「…で、パルシィちゃんだっけ?」

 

「パルスィね…一応、こんなんでも大人よ」

 

見た目がこんなのだから仕方が無いのかもしれないが、私は大人だと見られない事が多い。

多分、身長にすると…160ないくらいだろうか。*1

エイミにもトキにも負けてるし、下手したらヒマリにすら負けてる疑惑がある。

恵まれた身長を持った奴らが妬ましい…とは思うが、幻想郷だと私は寧ろ高身長な方だったし、キヴォトスの人達と感覚が違うのかもしれない。

 

「うへぇ…じゃあ、パルスィさんかぁ〜」

 

話が変な方向へ飛躍したが、私とホシノは二人でベンチに座ってたい焼きを味わっていた。

正直、初対面での印象が最悪かつヒナから要注意人物として聞かされている彼女の隣に座るのは気が気でなく、味を全く感じないのだが…

そんな私を見兼ねたのか、それとも偶然か、彼女の方から私へ話題を振ってくれる。

 

「…パルスィさんは、どうしてブラックマーケットなんかに来たのかなぁ〜?」

 

「その発言、そっくりそのままお返しするわ」

 

私は…まぁ、風紀委員会顧問だとかいう大層な肩書を得てしまったが、結局のところはフリーの大人である。

失うものなんざ何も無いし、こういう場所へ赴いた所で何ら違和感はないだろう…いや、危険だという事には変わりないのだが。

私なんかより、ちゃんと高校に通っている生徒がこんな場所へいる方が不自然だろう。

だが、質問に答えないというのも失礼だろう。

私は右手に持っていた袋を彼女に見せる。

 

「私は酒不足よ酒不足…不本意だけど、こんな所でしか手に入らないからわざわざ赴いたってワケ」

 

事実である、普通にお酒が手に入るというのなら別に好き好んでこの場所に来る必要はなかった。

ここくらいしか手に入れられる目処が立たなかったのだ、私にとってお酒は重要なアイテムなのだ。

別に来たいから来たわけじゃない、と伝える。

そうすれば、彼女も同じように口を開く。

 

「おじさんは〜・・・ちょっと、野暮用でね?」

 

嫉妬心という訳では無い為詳しく感じる事は出来ないが、どうやら何か訳アリといった様子だ。

だが、嫉妬に関係しない事ならば私に関係はない…触れないでおこう、スルーが安定である。

というより、それ以上に気になる事があった。

 

「…おじさん…?」

 

「気にしないでほしいなぁ〜、癖だからさぁ…」

 

一人称がおじさんになる癖とはどういうものなんだ。

何処からどう見てもただの少女である彼女の一人称がおじさんとか、色々とチグハグである。

…まぁ、個人の趣味は否定しない方が良い…のか?

なにはともあれ、これでお礼は済んだだろう。

 

「…ま、助けてくれてありがとうね、また機会があれば…何処かで会いましょう?」

 

私の目的は達成したのだ、早い所帰ろう。

そう思いながら、席を立ち歩き始め…途中で背後に振り返り、彼女の方へと手を振る。

 

「おじさんはもう、会いたくないなぁ…」

 

何か聞こえたような気がしたが…気の所為だろうか。

そんなこんなで、多少のトラブルはあったが私は無事にヒナの家へと帰って来たのだった。

勝手にブラックマーケットに行った事は叱られた、次からは私も連れて行けだそうだ…何故…?

*1
パルスィの身長が低いと言うより、幻想郷の住民とキヴォトスの住民の平均身長がだいぶ違うのだろう。

トリニティ編の同行者

  • ケイ
  • トキ
  • イチカ
  • マシロ
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