透き通った世界の下の嫉妬心   作:хорошо!

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価値観の違いは時に人を傷付ける

「ヒナ、アビドスってどんな所なの?」

 

アビドス、そこは私と先生が初めて会った場所であり、風紀委員会が何やら生徒達と揉めていた場所である。

詳しくは知らないが、アビドス高等学校という、先日会ったホシノが所属している学校がある場所だ。

以前ヒナから聞いた騒動の件と、久々にホシノに会った件、それらが重なり興味が湧いたのだろう、特に深く考えずにヒナにそう聞いてみた。

 

「聞きたい?」

 

聞いてるのだから聞きたいに決まってるだろう。

そう、自分の意思を伝えると、ヒナは困ったような表情を浮かべながら私にアビドスの事を教えてくれた。

数十年前から起きている砂嵐の事、嘗てはキヴォトスでも最大規模の学校であった事、クソ野郎な大人から復興の為に借金をし返済に困っていた事。

 

ここまでは以前の騒動の時に、なんとなくではあるが聞いた事がある話であった。

だが、ヒナはそこで止めずに、言葉を続ける。

複雑そうな表情をしながら、私にそれを伝える。

 

一年前、アビドスの生徒会長であったある生徒が、何者かによってヘイローを破壊された。

ヘイローの破壊、それ即ち…キヴォトスに住まう生徒達にとっての死を意味する事だ。

私はまだ、キヴォトスで死人を見ていない。

治安がとんでもなく悪いこの世界ではあるが、頑丈な子供達は銃弾なんかで傷付かないからだ。

 

だが、その彼女は死んだのだという。

何故死んだのか、何故殺されたのか、それが私に理解出来たら苦労しない、そんなに私の能力は万能じゃない。

ただ、一つだけ分かるのは…この世界において、人の死というものはとても重い事だと言う事だ。

 

幻想郷において、案外、死というものは軽い。

当然、死んだ者は悔やまれるが…所詮、その程度だ。

妖怪は恐れ知らずの人を喰らうし、人だって常識知らずの妖怪を殺める。

弾幕ごっこというものが出来てからは多少は件数が減ったものの、それでも死人は出るものだった。

お燐のような妖怪だっているのだ、日常的に死人というものは出るのが当たり前だった。

 

生憎様だが、私は人の死を悔やむ様な人間ではない。

地底暮らしが長いのだ、いちいち他人の死を気にしているようでは健康に生きられない。

だからその話だって、私にとってはどうでも良い。

だが…だがである、ここは幻想郷ではない。

ここは、人死が日常的に起きぬキヴォトスなのだ。

 

「…ごめんなさい、嫌な事を聞いたわね」

 

一年前という事は、恐らくその生徒はホシノの先輩にあたる人だったのだろう。

私は嫉妬の化身だ、彼女の事を気遣ってやるなどといった大それた事は出来やしない。

だが、私はこの世界の数少ない『大人』である。

私は先生のように立派な人間ではないが…それでも。

 

「ヒナ…私、アビドスに行ってくるわ」

 

私らしく無いかもしれないが…ここでの私は幻想郷の妖怪ではなく、キヴォトスの大人なのだ。

彼女を気遣う事は…出来ないだろう。

だから私は、彼女の悪性に付け込もうと思う。

私は、そういう生き方しか出来ないから。

 

彼女がその出来事をどう思っているかは分からない。

だがきっと…彼女にも、少しは黒い感情がある筈だ。

そこに嫉妬心があれば万々歳だ、彼女が追い詰められてるか否かは知らないが…

もし、助けを求めていると言うのなら…

私が妬める程に幸福になるまで、思う存分救ってあげようではないか。

 

 

◇◇◇

 

 

と、大口を叩いたのは数時間前。

飛ぶと目立つからというシンプルな理由でアビドスまで電車で向かい、そこから徒歩でアビドス高等学校を目指していた私なのだが…

周りを見ても砂だらけ、殆ど違いのないの家が並ぶばかり、かれこれ2時間近く迷っている。

 

スマホを使ってマップ…画面越しに見える地図を出しながら歩いているのだが、どうも画面に映る景色と周りの景色が一致しないのである。

砂嵐の影響で地形や景色が変わるとは聞いていたが、まさかここまで酷いとは思っていなかった。

既存の地図が機能していない、これでは地図としての役目も果たせていないではないか。

 

結局、こんな物を見ていても意味がないなとスマホの電源を落とし、改めて辺りを見渡す。

目印になりそうな建物も、学校らしき建物も、私の居る場所からは何も見えそうになかった。

このまま迷い続けるのも無駄だと思い、変な事を気にせず飛んでしまおうかと思い始めたところで、微かに何かの音が聞こえる事に気付く。

 

風を切る音…そして、呼吸音だろうか。

じっ…と正面を見つめてみれば、薄っすらとだが何かに乗っているであろう人影が見える。

誰かとまでは認識出来ない…というより、もし顔が見えたとしても私がアビドスの中で分かる生徒というのはホシノくらいしかいないのだが。

 

段々と近付いてくる…少女だ、彼女に向かって手を振れば此方に気付いたのか、徐々に減速する。

そして、私の目の前で止まった少女は銀髪で獣耳が生えた…オッドアイの生徒であった。

…気の所為かもしれないが、確か初対面ではない筈だ…確か何処かで見かけたような気が…

 

「…風紀委員長さんの、お友達?」

 

思い出した、先生と初めて会った時にいた先生のハーレム構成員の中の一人だ。*1

という事は、この子もアビドスの生徒なのだろう。

丁度良かった、彼女に聞けばアビドス高等学校にも簡単に辿り着けるはずだ。

 

「正確には違うけれど…貴女は、アビドスの生徒って認識であってるかしら?」

 

「ん、そう…私は砂狼シロコ、2年生だよ」

 

ビンゴである、こんなに自信満々に言っておいて間違っていたら恥をかく所だった。

まぁ、これで目の前の彼女はアビドスの生徒だということが確定したわけだ。

となれば、私が取るべき行動は一つ。

 

「私は水橋パルスィ…って、知ってた?」

 

「うん、あの時に一回聞いてる」

 

そう言えばそうだった、先生の前で意味深な感じで堂々と自己紹介をしたのだった。

となれば話は早い、彼女は私の事を知ってるし、私が大人だと言う事も理解しているのだろう。

ならば次の段階に移ろう、こちらが本題だ。

 

「えっと…シロコ、で良いのよね?」

 

「ん、それで大丈夫」

 

「じゃあシロコ…私を、アビドス高等学校まで案内してもらっても良いかしら?」

*1
誤解である、そのような事実は…あるかもしれない、先生に気がある生徒だって数多くいるのだから…




アンケート、最初はヒナちゃん入れようか迷ったんですけど立場的にちょっとキツイかなぁ…って感じです。
アンケートの結果通りになるかは保証しません()

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