透き通った世界の下の嫉妬心   作:хорошо!

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月間に載った事が嬉し過ぎるので本日二話目です。
正直話自体はあんまり進んでおりません!



身元不明の大人…当然、怪しさの塊である

小鳥遊ホシノという人物は、水橋パルスィという大人を嫌ってはおらずとも非常に怪しく思っている。

嘗て自分を利用した黒服と同じ様な雰囲気を纏う彼女は、明らかに異常な存在に見えたからだ。

他の者は気付いていないようだが、彼女は神秘とはまた違うナニカをその身に宿している気がするのだ。

 

それでも彼女を嫌っていないのはコレがあくまで自身の憶測に過ぎないという事…そして、単純に彼女の善性からの意識の問題である。

それに加え、彼女にも自分と同じような感情の波を…誰かを失った者の瞳を見てしまったからだ。

先日ブラックマーケットで会った時も、彼女は特に危害を加えてくる様子はなかった。

ホシノは、日が経つにつれ、水橋パルスィという人物がますます分からなくなってきていた。

 

ゲヘナの風紀委員長との関係性も分からない、もしかしたら彼女も利用されているのかもしれない。

そんな憶測をするも、結局のところは信憑性が無い故に誰にも相談する事が出来ない。

先生なら何か知っているかもしれない、と思い彼女の事を聞いてみても、彼が返してくる言葉は

 

“う〜ん…私にも、よく分からないかな”

 

そんな、曖昧なものであった。

耳に入ってくるのは根も葉もない噂ばかり、鵜呑みにする事も無視する事も出来ないような、くだらない癖に嘘とも思えない噂達。

ミレニアムの生徒を殺害しようとしたという噂もあれば、その生徒と仲良く出掛けていたという話も聞いた。

何が正しくて、何が誤っているのか。

ホシノは、疑心暗鬼になりつつあった。

そんな風に、思い悩んでいた時の出来事だった。

 

「っと…先日ぶりね、ホシノ」

 

噂の本人が、ホシノの下へ訪ねてきたのは。

 

 

◇◇◇

 

 

私としては気さくな挨拶をしたつもりだったのだが、どうやら何らかの地雷を踏んだらしく、とんでもなく警戒されている様子だ。

寝そべっている姿勢でありながらも片手を銃に添えている、いつでも撃てるぞという警告だろうか。

なんだか私は彼女から過剰な程に警戒されている気がする、身元の分からない相手を警戒するのは自然な事…寧ろ、推奨したい行為だが、度が過ぎる気がする。

敵意の視線を向けるとかなら分かるが、これはあまりにも異常ではなかろうか。

 

彼女と初めて会った時を思い出してみる。

此方に怯えたような…それと同時に、反抗するような敵意の視線を向けてきたのを覚えている。

この世界で幻想郷の住民を見た事はない為、彼女の言う仲間というのも勘違いだったのだろう。

という事は、彼女はその相手に敵意を持っている、そして私がその相手の仲間と判断されるような何らかの特徴を持っている。

恐らくだが、こういう事なのだろう。

 

そう考えると…彼女の言う相手は、妖怪か?

キヴォトスに妖怪がいるのかどうかは分からないが、もしかしたら何処かに潜んでいるのかもしれない。

あるいは妖精や幽霊…意表を突いて、何らかの神辺りと遭遇したのかもしれない。

私だって一応橋の守護神だ、彼らと雰囲気的なものが似ていても不思議ではない。

…だとしたらそんなに警戒する必要があるだろうか。

 

「…うへぇ、なにか用事でもあったの〜?」

 

彼女が私の方を無言で睨みつけていた為、色々と考え込んでいたが…ようやく、そう返してくれた。

相変わらず好意的とは言えないその視線、変に懐かれるよりは何倍もマシではあるが、敵対視される心当たりもない為正直困ってしまう。

私は真っ当に彼女を救いたいのであって、救済とか言いながら息の根を止める真似をしたい訳では無い。

 

「別に…ただ、私はキヴォトスに来てから日が浅いから、色々な学校を見て回れたらと思ってね」

 

まぁ、本人に向かって唐突に『救いに来た』なんて言ってもただの変質者なので、そうは言わないが。

そもそも、理由は分からずとも敵視している相手が急にそんな事を言った所で信じてもらえる訳が無い。

彼女の心に隙があれば付け込めたかもしれないが、今の彼女が抱いているのは嫉妬ではないし、そもそも心に隙が無さそうに見える。

リオ会長の心に付け込めたのもヒマリの策略あって…そう考えると、ヒマリはとても有能だったなと改めて思う…妬ましくなってきた…

 

彼女の今の感情は…私を疑っているのだろう。

敵視している相手が自身の領地へ乗り込んできたのだ、そりゃぁ当然、怪しむに決まっている。

そんな真似をする気はないが、隣の部屋に後輩達がいるというのも気を抜けない原因なのだろう。

彼女は私の力を知らない筈だが、もし私が強大な力を持っていたとしたら、後輩達を守らねば…そんな責任感を感じているのかもしれない。

余談だが私にそんな事は出来ない、勝てなくはないが流石に5対1というのは骨が折れる。

 

「もし良ければなんだけど…ホシノ、この学校を案内してくれないかしら?」

 

だから、逃げ道を提示してあげよう。

ここでこの提案を受け入れれば、彼女は私から目を離さない…つまり、私を常に監視する事が出来る。

それに私はアビドスを見学するという一つの目的が達成出来ると同時に…あわよくば、ホシノとの距離を縮める事が出来るかもしれない。

…恐らく今の好感度はマイナスなので、割と絶望的な計画ではあるのだが。

 

「う〜ん…よし、おじさんが案内してあげよう!」

 

前も思ったが一人称がおじさんなのはどうなんだ。

だが、提案は受け入れてくれた。

これで私の目的を達成する為のスタートラインにようやく立つ事が出来たというわけだ。

今回は能力は使えそうにもない、私の純粋な話術と行動で成功するか否かが決まる計画だ。

所詮はまだスタートラインに立てたばかり、されども、言い方を変えればあの状況からどうにかスタートラインに立てたとも言える。

 

私は、勇儀とは違って不器用だ。

他人の事を励ましたり、過去の事を忘れさせてあげるような事は出来ないだろう。

だが、私は理解してあげる事は出来る。

私に出来るのは寄り添う事…自分の経験と感情から、相手に同調してあげる事だ。

 

「そう…よろしく頼むわよ、ホシノ?」

 

私だって、一度は大切な人を失っているのだ。

彼女のソレとはまた違うかもしれないが、きっと力になってあげる事は出来る筈である。

先生と違って私は良い大人ではないし、全ての生徒の味方となってあげる事は出来やしない。

だから私は、手の届く範囲に手を差し伸べよう。

それが、偽善者に出来る精一杯だから。




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