透き通った世界の下の嫉妬心   作:хорошо!

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屋台となると酒が欲しくなる

ホシノによる学校案内は真面目なものだった。

間延びした口調や気だるげな雰囲気からは考えられない程に丁寧に、色々な事を教えてもらった。

それと同時に、とても警戒されていた。

明らかに後輩達に私を近付けさせないようなルートを選び、いつでも私を撃ち殺せると言わんばかりの剥き出しの敵意…そして、それを可能とする程の力。

キヴォトスにおいて最強格のヒナとも同等…あるいは、それ以上の力を見せつけてきていた。

まぁ、私がヒナの本気を見た事がないという問題もあるため実際の所はどうなのか分からないのだが。

 

そんなこんなで、ホシノによる学校案内は終了した。

本当はもっと踏み込んだ会話をしたかったのだが、あそこまで警戒されてる上に時間的にも厳しい、そんな理由があって今日は取り敢えず諦めた。

そんな私は今、夕餉時だからと、私はアビドスの近辺にある柴関ラーメンという店に来ている。

こういう屋台形式の店は幻想郷にもそこそこあった為、私としても案外馴染み深いのだ。

 

柴犬のような容姿の店長からラーメンを受け取った私は、軽く手を合わせて麺を啜る。

…美味しい、その一言に尽きる。

キヴォトスの金銭感覚は分からないが、この値段でこの価格というのはとても安いのではなかろうか。

キヴォトスでは自炊した料理とミレニアムで出されていた何だか高そうな食事しか食べていなかった為、こういう物を食べられるというのはとても嬉しい。

 

今度ヒナも連れて来ようかなどと考え始めた所で、屋台ののれんが僅かに揺らぐ。

ふと隣を見てみれば黒色のスーツを着込んだ…言葉の通り、全身が真っ黒な男が座っていた。

右目が発光している異形の姿は、住民が犬や猫のような姿をしているキヴォトスにおいても異質に見えた。

妖怪の類かと探ってみるが、感じる気配は多少の差異はあれど先生達のような普通の人間と同じもの。

気の所為かと思い、あまりジロジロと見つめすぎるのも失礼だなと感じ正面に向き直りラーメンを啜り始めた所で、その者から話しかけられた。

 

「水橋パルスィさん、で宜しいでしょうか?」

 

口に当たるであろう部分が全く動いていないのにどうやって話しているのか、そんなくだらない疑問は置いておくとして彼は私の事を知っているらしい。

はて、キヴォトスでこのような者と会話をした事はあっただろうか…もしかしたら幻想郷かもしれない。

そう考えるも、思い当たる節はない。

もしかしたらミレニアムでの騒動が思ったより大きな噂になっているのかもしれない、だとしたらこの知らない人から話し掛けられている状況にも納得がいく。

 

「あら、私の事を知っているの?」

 

彼にはヘイローがない…つまり彼は生徒ではない、私達と同じ大人なのだろう。

というより、私の知る生徒は全員女性である。

幻想郷で力を持っている者も女性が多かった、そういう運命的なものでもあるのだろうか…

私が知らないだけで男子校的なものもあるのかもしれないので、決めつける事は出来ないが。

 

それにしても、だ。

キヴォトスに来てからというものの大人の定義が少し分からなくなってきている。

私の知る大人というのは先生のような見た目だったり、香霖堂の主のような人なのだ。

その先生も中身は覚悟がキマっているような人なので、普通だとは言い難いのだが…

 

「えぇ…私達の間で、軽く噂になっておりまして」

 

どうやら予想は正しかったらしい。

やはりミレニアムでは色々と暴れすぎただろうか、少し反省しながら溜息を零す。

ヒマリが掻き消してくれたと言っていたが、やはり誰にでもミスはあるらしい。

信じて動いていたのに、妬ましい…

とは言え、やりすぎた感は私自身にもあるので妬みきれないのも事実である。

ケイの件などは完全に私の自分勝手な行動だ。

 

「そう…で、私に何か用?」

 

あんな聞き方をしてきたのだから、私に何か用事があって話しかけていたというのが妥当な考えだろう。

逆に何の用事も無いのに名前だけ確認してきたら、それはただの不審者だろう。

だから、そう質問してみる。

何か要件があっても素直に聞くつもりはあまりないが、聞くだけタダだ、有用な情報かもしれない。

 

「クックック…こんな所で話すのは憚られるような内容ですので…良ければ明日の18時、ここに書かれた場所へと来ていただけないでしょうか?」

 

そう言うと、彼は懐から一枚の名刺を取り出す。

黒い紙に白色で書かれた文字、そこには彼の名前と所属しているであろう組織名、そして何処かのものであろう住所が書かれていた。

…黒服が名前とは、これまた珍しいものだ。

名無しの本読み妖怪的な何らかの事情があるのかは知らないが、今は飲み込んでおこう。

 

正直、私が彼の要求に応じる必要はない。

というより、普通ならば応じる方がおかしいだろう。

だが、彼だって大人…恐らくだが、私が要求に応じたくなるような…それか、要求に応じざるをえないような何かを用意しているのだろう。

詳しい事は分からないが、ここで変に揉めてトラブルを起こすというのも悪手である。

そもそも此処はアビドス領内、一応ゲヘナに所属している私が暴れたら色々と問題になる。

 

「…良い情報である事を期待してるわ」

 

「えぇ、安心してください…少なくとも、貴女にとって聞かねば後悔するような話でしょうからね…」

 

それは良い情報ではなく悪い情報なのでは?

そう思うが、この言い方を聞くに私が明日その場所へ行かないという選択肢は取れないというわけだ。

面倒事に巻き込まれなければ良いが…キヴォトスに来てからの私は不幸なので、巻き込まれるのだろう。

思わず溜息を零す…もう、今日で何度目だろうか。

 

「はぁ…素直に聞き入れるのも癪だけど、そう言うんなら乗ってあげるわよ…感謝なさい?」

 

「クックック…えぇ、感謝しますよ」

 

嫌な笑い方だ、言っちゃアレだが胡散臭い。

そう思いながら彼の事を見つめると、不思議そうに首を傾げて再び胡散臭げに笑った。

その後黒服はラーメンを一杯注文し、その場で誰かと連絡を取り始めた…

…帰る流れだっただろう、さっきのは

 

結局彼は、ラーメンを食べ終えるまで帰らなかった。

何だか、色々と台無しである。




パルスィのラーメンの食べ方、絶対かわいい。

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