透き通った世界の下の嫉妬心   作:хорошо!

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『パル吸いはいずれ癌にも効く、私はそう思う』

ミレニアムの時の反省を活かして、私がアビドスに行く時は事前にヒナに伝えるようにした。

自然と帰りも遅くなるし、夕食も一緒に取れないという事が起きうるからだ。

少し拗ねていたようだが、連絡は取れるし帰っては来ると伝えた所、どうにか妥協してもらえた。

それに加え、アビドスに赴く期間はミレニアムの時程長くならなそうだ、という理由もあったからだろう。

 

その代わり、私は今日の朝ヒナに吸われた。

パル吸い(パルスィ)だか何だか知らないが、髪に顔を埋めて、その状態で深呼吸をする…という行為なのだとか。

正直恥ずかしいし、意図が分からないのだが、本人としては満足しているようだしツッコみづらかった。

まぁ、それで良いなら…的な、そんな感じだ。

 

そんな訳で、私は今日もアビドスへ来ている。

二日連続で迷うのは嫌だった為今日は飛んできたのだが、案外目立たないのかバレる様子はなかった。

これなら別に気にせず飛んでも大丈夫だろう、私はまた一つキヴォトスでの知識を得た。

飛べる者が多かった幻想郷に住んでいた私にとって飛べる事が異常だという認識はまだ慣れないのだ。

周りの目を気にせずに飛べるというのは助かる。

 

「ん、今日も来たんだ」

 

校内に入ろうとした所で、シロコと遭遇する。

昨日、私が何もアクションを起こさなかった為か警戒心が和らいでいるような気がする。

今は素直に歓迎している…とまではいかないが、少なくとも敵視されるような状態では無さそうだ。

好かれ過ぎず、嫌われ過ぎず…まさに、私が求めているような関係性である。

 

「今日も引き続き案内してもらおうと思ってね」

 

今日は校内ではなく自治区内を案内してもらいたい、アビドスに広がる砂漠、そこに眠る宝物とやら。

根も葉もない噂話だとは分かっているが、聞いたからには気になるのが人の性だと言うものだ。

あわよくばその情報を手に入れつつ、ホシノのメンタルもケアする…完璧な作戦であろう。

尤も、今の私はホシノのメンタルを擦り減らす原因になっているような気がしなくもないが。

 

だが、行動を起こさねば何も始まらない。

私は面倒臭い人間なのだ、一度やると決めたらその行為は絶対にやり遂げてみせる。

彼女が助けを求めているかは関係ない、私が救いたいと思ったから救いに行くのだ。

迷惑と言われても気にしない、そもそも私は妖怪だ。

人の迷惑になるというのは妖怪の本質であろう。

 

「そっか、ホシノ先輩と仲良くね」

 

「…私としても、そうしたいんだけれどね」

 

私が好かれたくない理由は、橋姫という存在の関係上、好かれ過ぎても嫌われ過ぎても駄目だという面倒な制約が掛かっているからなのである。

『守護神』として好かれ、信仰心を抱かれる。

『妖怪』として嫌われ、恐怖心を抱かれる。

この二つをバランス良く達成しなければ、私という存在が少しずつ歪み始めてしまうのだ。

ミレニアムの皆からは割と好かれている自覚があるので、今の私はあまり好かれ過ぎてはいけない。

だから私は、アビドスには過干渉したくないのだ。

 

だが、ホシノは別である。

彼女を救う…彼女の心を開かせるには、どうしても私の事を信頼してもらわなければならない。

心の隙を見せる相手というのは、基本的には相応の信頼を抱いた相手だけなのである。

リオ会長のアレは特殊だ、ヒマリが有能過ぎた。

後々になって功績が増えていく…こういう所があの女の妬ましい所だとつくづく思う。

 

取り敢えず、私はホシノに好かれるか…もしくは、無理矢理心の隙を作り出す必要がある。

手っ取り早く私に対して嫉妬心を抱かせれば、それを操って色々と…こう、出来るのかもしれないが…

そう上手く行くものだろうか、そんな事をぼんやりと考えていると、門からホシノ本人が出てきた。

 

「…うへぇ〜・・・今日も来たんだ〜?」

 

彼女はまだ、私に警戒心を抱いている様子。

黒服と私の初対面もそうだが、何者か分からないような大人が急に接触してきたら警戒するのは当然だ。

仕方無い事かと割り切るも、シロコは警戒心を解いてくれたと言う事を考えると少し悲しくなってくる。

私だって敵意を向けられるのは居心地が良くない。

ヒナやケイのように好意を向けてきてくれる方が居心地が良いというのは当たり前だろう、私は愉悦部でもマゾヒストでも無いのだから。

 

「えぇ、今日もよろしく」

 

今日の私の目標は、ホシノの心に隙を作る事。

方法は…能力による洗脳は避けるとして、それ以外なら割と何でも良いだろう。

信頼を築き上げて彼女の方から隙を見せてくれるなら万々歳だが、逆に彼女を怒らせ嫌われ…そうして出来た心の隙に付け込むのも手だ。

手段は選ばない…否、選んでいられない。

そんな大層な事が出来るのはそれこそ、先生やヒマリといった有能な者達だけなのである。

私は不器用だ、だからやれる事をやるしかない。

 

「うへぇ〜、そっかぁ…じゃ、何処に行きたいの?」

 

「そうね…ホシノの思う、アビドスの良い所に連れて行って欲しいわ…私は、アビドスに詳しく無いから」

 

強いて言うならお昼は柴関ラーメンで食べたい。

…二日連続でラーメンは太るって?

私は妖怪だ、人間を食べるような輩もいる中でラーメンくらいで体型が変わるような体質はしていない。

そういう心配は余計なお世話である。

そもそもヒナに気遣って普段は栄養バランスを考えた食事を作っているのだ、たまに不健康な食生活を送った所で問題はない筈だろう。

 

…話は逸れたが、私はアビドスに詳しく無い。

何処に行きたいかと聞かれても具体的な地名を言える程の知識が無いのである。

ならばいっその事、ホシノに全て任せよう。

きっと此方の方が怪しまれないし、彼女としても私が変に目的を持って動かないのだから助かる筈だ。

そもそも私の目的はホシノであって、アビドスに用があるというわけではないのだが…

 

「よし…じゃ、行こうか〜?」

 

ホシノも案内するルートが決まったのか、校外へ向かって歩き始める。

敵視しているのに歩く速度に気遣っているのは彼女の性格故か…それとも、目を離さない為か…

真偽は分からないが、着いて行きやすいのだからそれに越した事はない。

私の前を歩くホシノの背を軽く見つめた後、彼女の後ろを着いて歩くのだった。




パル吸い(パルスィ)とかいう謎概念を広めたい。

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