透き通った世界の下の嫉妬心   作:хорошо!

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今まで書いた話を読み返してたんです…
この話が抜けてる事に…気付いたんです…!
私のミスでした、私のガバでした…



ペテン師は真実という名の嘘を吐く

アビドス領内を案内してもらって分かった事がある。

それは、想像以上にアビドスという土地は荒れ切っているという事であった。

確かにそこそこの住民はいるのだが、施設などはあまり充実しておらず、廃れ切っていた。

ヒナの言っていた砂嵐の影響なのだろう、撤去はしているのだろうがそれでもそこら中に砂があった。

 

ここまで来ると可哀想に思えてくる。

だが、同情するのもまた違うだろう…それでも、アビドスに住んでいる人達はいるのだから。

対策委員会の皆もその一員だろう、こんな状況になっても彼女達はアビドスから転校せずに、以前の騒動の時も大人達に立ち向かった…

それ程までに、アビドスの事が好きなのだろう。

 

私もなんだかんだで、アビドスは好きかもしれない。

というより、柴関ラーメンが好きなのだろう。

だが、それ以外にも…此処は、アビドスは人の温かみを感じるような場所だった。

ゲヘナの治安が悪すぎて麻痺しているのかもしれないが、それでも此処は十分良い所だと思う。

 

「良い所ね、アビドスは」

 

「…へぇ、分かるんだ〜?」

 

…ホシノからは、相変わらず敵意を向けられている。

ここまで共に行動した上でこれなら、私は彼女と友好的な関係を築く事は出来ないのだろう。*1

もう、割り切るしかない。

この一言が彼女の傷を抉ってしまうかもしれない。

それでも、私は彼女に向かってこう問い掛けた。

 

「そのアビドスの嘗ての生徒会長さん…彼女の事を、貴女はまだ引き摺っているの?」

 

…マズイな、いくらなんでも踏み込みすぎた。

自分の頭に突き付けられた銃の冷たい感触を感じながら、ぼんやりとそう思う。

流石に今の言い方は無いだろうと我ながら思うが、逆にこれで良かったのかもしれない。

此方に…怒りだろうか、負の感情を向けて来ている彼女には心の隙がある。

 

「やっぱり、お前はアイツらの…ッ!」

 

ここまで来てしまったら、もう嫌われ役を最後までやり遂げるしか道は無い。

ここで中途半端に弁明をするような真似をしたら、彼女を迷わせてしまうだけである。

だからといって嘘の罪を告白しても、そのうちガバが出て偽っている事がバレてしまう。

私が今するべき事は、彼女を煽る事。

真実と嘘、そこに非常に曖昧なはぐらかしを混ぜる。

 

「さぁ、誰の事かしら?」

 

これは真実、私はその『アイツ』が誰か知らない。

だが、こういう言い方をしてはぐらかす事により相手の事を苛立たせる事が出来る。

これが仮に嘘だとしても、彼女はこれが真実だという可能性を捨てられない為に私を撃てない。

私の能力は精神的な能力なのだから、こういう事は得意も得意、大得意である。

自身にヘイトを向けさせつつ、それでいて発言に確実性を持たせずにはぐらかし続ける。

対人術としては本当に基礎の基本技能だ。

 

「とぼけるな!お前は…」

 

「何を言っているのかサッパリ分からないのだけど?もっと分かりやすく簡潔に述べてくれない?」

 

心の隙というのは、案外簡単に出来る。

誰にも頼れずに一人で苦しんでいる者や、信じていた者から裏切られた時の悲しみを背負っている者。

そして、今回私が試みているように誰かに対しての怒りで視界が狭まっている者などだ。

余裕がなくなってきているのか、彼女は段々と心に隙が見え始めてきていた。

 

「私はヒナから聞いた話をそのまま話しただけなのだけど…それが、貴女の癪に触ったの?」

 

私の目的はホシノを救う事なのだから、どうにかして彼女の背負っている責任を…今は亡き彼女から受け取った呪いを、軽くしてあげないといけない。

その呪いは彼女の生きた証だ、消してやる事は出来ないが軽くしてあげる事は出来る筈である。

その為には、私は悪役を買って出る必要があった。

 

彼女の嫉妬心を煽り、その矛先を私に向ける事が出来たら私はそこから色々と干渉できる。

それこそ、私が生徒会長を殺したという風に錯覚させるような事だって出来る。

だから私は先ず、嫉妬心を煽る為に彼女の心の隙を作り出す必要があったのだが…

 

「ッ…!」

 

耐えられなくなったのか、ホシノは何処かへと向かって逃げるように走り去って行ってしまった。

リオ会長やヒナといった責任感の塊と接してきていたせいで忘れていたが、彼女だって子供なのだ。

こんな風な追い詰め方をしたら、普通だったら逃げ出してしまう筈だ。

最近関わってきた人達が異常過ぎて忘れかけていた。

 

「あっ、ちょっと…」

 

こうなってしまっては嫉妬心を煽る事も出来ない。

彼女を呼び止めようと誤魔化しの言葉を考え始めた所で、懐に仕舞い込んでいたスマホから設定していたアラームの音が鳴る。

スマホの画面を見れば、そこに表示された時刻は17時40分を僅かに過ぎたところだ。

約束していた時間まで、あと十数分。

 

ホシノの方を優先したい気持ちは山々なのだが、もしここで約束を放りだして黒服の話を聞かなかった場合の代償が分からない。

私がいくらホシノに恨まれようが大した損害はないが、もし黒服の言う話がヒナやケイに関わる事だったら一大事である。

私がホシノに撃たれるよりも、ヒナやケイに何かある方が余っ程大変な事である。

 

私は確かに脆いが、所詮は妖怪である。

何かあったとしても死ぬような事は滅多にないし、基本的にはどうにかなるのが私達だ。

だがヒナはどうだ、ケイはどうだ…リオ会長やトキ、ヒマリはどうだろうか。

彼女達も撃たれた所で死なないが、それでも私と違って万が一が有り得る存在である。

取り返しのつかないような事が起きる可能性もあるのだから、私は彼の話を無視できなかった。

 

「…妬ましい…タイミングが、悪い…」

 

全ての生徒の味方だと豪語する彼の事を思い浮かべ、深く溜息を吐き出す。

きっと先生ならば、黒服との約束を守りながらもホシノを救う事が出来るのだろう。

…いや、彼ならきっと、こんな風にホシノに対して嘘を吐くような真似はしないだろう。

私は結局の所能力に頼りっきりで、誰かと正面から向き合うという事が出来ていないのだろう。

 

もう、ホシノの姿は見えない。

追いかけるにも、もう手遅れだろう。

選択肢はない、私は黒服の下へ行くしか無い。

優柔不断な者は、最終的に選択肢を失う…今の私が、その最たる例であろう。

何事も中途半端に終わらせてしまう、私の悪い癖。

自分の事を妬ましく思いながら、私は名刺に書かれた場所へと飛んで行くのだった。

*1
神秘に恵まれているホシノは、恐怖を持つパルスィの事を本能的に脅威だと感じているのだ。

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