あと嫁ポケの色証厳選が…()
「…キヴォトスって、居酒屋あるのね…」
「えぇ、生徒達が利用する事は少ないですが…私達のような大人もいるんです、あるにはありますよ」
黒服から呼び出され、私が今いるのはある居酒屋。
連絡先を交換していないのに電話が掛かってきた時は普通に驚いた、正直な所結構キモいと思った。
よくよく考えたらヒマリ辺りもこの程度なら出来そうだという理由で一旦飲み込んだが、やはりキモい。
…話を戻そう、変な方向に行っている。
学園都市と言うからにはこのような店はないと思っていたのだが、探せば所々にあるらしい。
暇な時、穴場を見つけてみるのも良いかもしれない。
それはそうと、先程の言葉は気に掛かる。
「少ないって事は…風紀、乱れまくりじゃない…」
「…あぁ、そう言えば貴女は風紀委員会でしたね」
「そうそう、一応風紀委員会顧問…つまり、ゲヘナ学園に所属している事になってるわ」
ヒナの権力を乱用した結果である。
ゲヘナの生徒会は風紀委員会ではなく万魔殿とかいう所らしいので、そのうち何か問題が起きないか心配だ。
まぁ、仮に問題が起きたとしても…能力で、こう…
こういう時には便利なのが私の能力である。
「何故、そのような立場に?」
「…ん、ん〜・・・成り行き、かしら?」
別に風紀委員会に何か思い入れがある訳では無い。
ただ、あれよこれよと色々な事を任せてる間に結果的にそうなっていたのだから、言葉の通り成り行きだ。
結果としてミレニアムの見学は平和的に…平和だろうか、平和だと言う事にしておこう…
ともあれ、私がミレニアムに来訪する理由を作れた。
「ほぅ…と言う事は、その立場に拘りは無いと」
「立場には特に…色々と動くにあたって都合が良いからって理由で籍を置いている訳だから…」
あとは、風紀委員会にいればヒナを手伝える。
キヴォトスの知識は浅いどころかほぼゼロに近いが、軽い書類仕事くらいなら私でも手伝う事が出来る。
私はヒナに養われているのだから、これくらいはしないと色々と申し訳なくなってくるのだ。
そういう意味で、この立場はヒナに寄り添いやすい。
「成程…では、貴女に提案を一つ」
私の言葉を聞いて、黒服が口を開く。
幻想郷出身なだけあって異形には慣れているが、やはり改めて見ると少し不気味だ。
だが、内面的に…種族的に見るなら、異形と言えるのは寧ろ私の方だろう、こんなんでも私は妖怪だ。
そんな私の思考を遮るように、黒服は言葉を続ける。
「パルスィさん、ゲマトリアに所属しませんか?」
───ゲマトリア…?
「…私、ヘブライ語は分からないわよ?」
「ゲマトリアは組織名です…簡潔に言うならば、私の所属する組織への招待と言ったところでしょうか?」
この男が組織に所属しているという事に驚いた。
いや、スーツ姿だし変に行儀が良いし言われれば納得するのだが、意外なものは意外なのだ。
「…メリットは?」
「少なくとも、貴女が望む事は何でも出来ますよ」
私の望みを理解した上で言っているのかは知らないが、言うからには幻想郷へ帰る事も出来るのだろう。
「悪魔の誘いじゃない…どうして私に?」
ただ、その提案を私にする意味が分からない。
確かに私はキヴォトスでは珍しい存在かもしれないが、妖怪なんて外の世界には普通にいるものだ。
ここまで私に拘る必要がないだろう。
そんな私の疑問に答えるように、彼は続ける。
「貴女は自身の価値を分かっていない…キヴォトスにおいて貴女の存在は異分子であり…イレギュラー、噛み砕いて言うなら、とても貴重なモノなのです」
「…成程ね、私を利用したいと」
───嫉妬心を操る程度の能力
正直な所、使い方によっては幻想郷の中でもトップレベルに強い…いや、厄介な能力である。
私が望めば軽い洗脳的な事も出来る…彼は、それが目当てなのだろう、そう予想する。
「いえ…貴女は既に『完成』している、私達はソレを近くで観測したい…探求したいのです」
だが、どうやら私の予想は違ったらしい。
「過大評価よ、私はそんなに優れていないわ」
自分を必要以上に卑下する気はないが、私は色々な面で中途半端である。
良く言えば万能、悪く言えば器用貧乏。
私は能力としても性格としても、そんな感じだ。
「ビナーを倒しておいてよく言えたものです…」
「アレ、まだ私許してないからね」
「おや、そんなに怒らなくても良いではないですか」
ホシノがいたから勝てた、そもそもホシノがいなかったら戦う気はなかった。
全部目の前のコイツが仕込んだことである、冗談でも何でも無く本心から妬ましいと思う。
「…それで、答えは出ましたか?」
と、問いかけて来る黒服。
「…確かに魅力的な提案ね、断る理由がない」
この提案は私にメリットはあれど、目に見える程のデメリットというものはない。
受けるだけ得、私にアドしかない。
「だけど…私にだって、切りたくない縁はあるのよ」
だが、目の前の黒服は悪い大人…悪役だ。
彼と同類になってしまえば、私は近い未来、ヒナやケイとの縁を切ってしまう事になる。
私はそれが嫌だ、縁切りの神を名乗ってはいるが私にだって大切にしたい縁というものはある。
「…残念です、貴女ならいけると思ったのですが…」
「私の事、何だと思ってるのよ?」
この様子だと、他の人も勧誘したのだろう。
あくまで予想に過ぎないが…先生とか、だろうか。*1
「はぁ…ったく、帰るわ…奢ってくれるのでしょう?」
「えぇ、元々そういう話でしたので」
そういう話でもない限り、私が素直に理由もなくコイツの誘いに乗る筈がない。
逆に言うと金で釣られるような人間だとも言える。
金にがめつい訳では無いが…まぁ、奢りと聞いて行きたくならない人は珍しいだろう。
もう夜も遅い、酔った状態で飛んで帰りたくもないし、終電が来る前に電車に乗って帰ろう。
そう席を立つ…そして、呟く。
「…これは余計なお世話かもしれないけど…」
「過程と目的を逆にしない事ね…自分が本当に望んでいた事を忘れる程、愚かな行為はないわ」
彼が何者かは未だによく分かってないが、少なくとも私のような妖怪ではなく…人に近いような気がする。
別に気遣うつもりはないが、何も言わずに勝手に堕ちられるのも此方としては気分が良くない。
「…肝に銘じておきます」
「私はそれで失敗したからね、心得ておきなさい」
私は堕ちたから、私は愚かだったから。
思い出したくもない生前の記憶に溜息を零しながら、私は店から出て行った。