透き通った世界の下の嫉妬心   作:хорошо!

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妖怪の言葉に耳を傾けてはいけない

「…で、何処に行きたいとか…要望はありますか?」

 

先陣を切って前を歩くレイサが、そう問う。

行きたい所…ケイとスイーツを食べたいという要望は既に叶ったし、別に私はトリニティの観光名所的な所に詳しい訳でもない。

行きたい所というのは、特に無かった。

 

「…そう改めて言われると、考えてなかったわ…」

 

「無計画だったんですか…!?」

 

「いやぁ、最初は観こu…んんっ…見学の為に色んな所を見て回ろうと思ってたんだけど…どうも、ティーパーティーの様子が気になっちゃってね…」

 

思い出すのは、明らかにギスギスした様子で不信と敵意を顕にしていたティーパーティーの二人。

決して良いとは言えない空気感で話した事、そして明らかに嘘を付いている言葉。

 

「ティーパーティーの皆さんが…?」

 

「…これ、レイサに話しても良いやつかしら?」

 

私達は部外者だからこそ好き勝手に出来るが、トリニティに通っているレイサはそうもいかない筈だ。

ティーパーティーはトリニティにおける生徒会、つまり凄い偉い立場の組織である。

ミレニアムでいうリオ会長的なものだろうか。

下手に動いて不都合なことでもあればレイサは最悪消される…そんな事は考えたくないが、この世界なら割とありえそうなのがまた怖い。

 

「話しても問題ないと思われます、何かあった場合の責任を負うのは彼女自身ですので」

 

「あれ、これってもしかして私…危険な橋を渡らされる感じですかね…?」

 

実際危険な橋を渡らされているだろう。

聞いてしまったからには退けない…逃がしてはおけない的な、生かしてはおけない的な?

まだ確信を持って言える訳じゃないが本当にそうなりかねないのもまた怖い、読めないのだ。

 

「まぁ、そうね…でも大丈夫でしょ、確か…石橋も壊して渡れって言うじゃない?」

 

「叩いて渡れです!!何なら使い方も違います!!」

 

「んな事知らないわよ…我、橋の守り神ぞ?」

 

「さてはパルスィさん、結構自由ですね…!?」

 

割と勘違いされがちだが、私は自由な人間だ。

ふざける時はとことんふざけるし、自分が愉しいからという理由で色々と問題を起こしたりもする。

キヴォトスに来てからはヒナに迷惑をかけないように自重しているが、普段の私はもっと酷い。

場合によっては私の隣にケイがいなかったかもしれないし、先生とも敵対していたかもしれない

それくらいには私もちゃんと『妖怪』なのだ。

 

「…水橋様、ふざけてませんか…?」

 

「ぁ、バレた?」

 

ケイの指摘にそう頷けば、溜息を吐かれる。

流石に私だって『石橋は叩いて渡れ』の意味は知ってるし、レイサの身を案じてもいる。

それはそうと、冗句が通じないレイサに対してこうやって冗句を言い、オーバーな反応をする彼女の事を見るのは結構楽しいのである。

言ってる事が最低だって?よく考えてみなさい、そもそも私は負の感情の化身なのよ?

善人ムーブしてる方が違和感、あるでしょう?

 

「今のも冗談だったんですか…?」

 

「ん〜・・・まぁ、半分くらいは本当よ」

 

「どこが本当でどこが冗談なんですか…!」

 

説明するなら私が橋の守り神であるという所と、大丈夫だろうという所が本当である。

後者は幾らでもやりようがある、それこそ私の能力で感情を弄る事だって出来る。

あまりやりたくはないが…そもそも、私の前で何かアクションをするという事自体が無謀なのだ。

私に勝ちたいなら嫉妬心を一切持たずに私より強くなった上で私を殺める手段を…改めて並べてみるとクソゲーにも程がある、逆に誰が勝てるんだ…

 

「ま、からかうのもこれくらいにして…何やらティーパーティーの二人がやましい事を隠してそうでね?」

 

「やましい事…?」

 

さて、どこから説明すれば良いか…

そう頭を捻り始めたタイミングでケイが口を開く。

 

「私が説明しましょう…ティーパーティー、現ホストである筈の百合園セイアを知っていますね?」

 

「えぇ、一応…確か、入院してるとか何とか…」

 

因みに私はそのセイアが誰なのか知らない。

多分、偉い人なのだろうが…顔は知らないし名前も初耳だし、存在すら認知していなかったた。

というか、あれだけ頑丈なキヴォトスの生徒でも入院するような事ってあるんだなぁ…

 

「それが、恐らくフェイクなのですよ」

 

「どういう風に嘘なのかは分からないけどねぇ…何らかの息がかかってる事は間違いないわ」

 

まぁ、何も分からないが嘘だと言う事は分かる。

さとり程ではないにせよ人の言葉に対しての特効がある私とそもそものスペックが高いケイ…

その二人が口を揃えて嘘を吐いていると言っているのだ、逆にこれで嘘じゃなかったらどんな感情で話をしていたのか正気を疑うレベルだ。

 

「だから、あの二人が何を企んでるのかケイと二人で個人的に調べようと思ってね…まぁ、その様子だとレイサは何も知らない感じかしら?」

 

「初耳です…そんな事があったんですか…?」

 

「信じるか信じないかは貴方次第ですが、少なくとも私達はそう考えております」

 

結局のところ、何を企んでいるのかは分からない。

理由や根拠があって嘘を確信したのではなく、キヴォトスの科学やオカルトでは説明出来ないような能力で嘘を判別しているのだ。

過程をすっ飛ばして結果だけ得ているようなものである、だからこそ情報収集をしようと思ったのだが…

 

「…ねぇ、レイサ?」

 

「はい、レイサです!!」

 

「上層部が…ティーパーティーが何か企んでるって事は…その下に付いている正義実現委員会、彼女達はアクションを起こせないわよね?」

 

私が政治とはクソだと語る理由である。

いくら上が間違っていても、下の者共は上に逆らうという行動を取る事が許されない。

それを指摘したところで権力で揉み消される、上下関係のある組織とはそういうものなのだ。

 

「そうなりますね…彼女達は余程の事がない限りは自己判断で動けませんので…」

 

「つまりよ、レイサ…」

 

「トリニティ自警団、出番なんじゃないの?」

 

「!!」

 

上に縛られず臨機応変に動く事が出来る非公認の組織、トリニティ自警団。

まさにこの状況にピッタリの組織、今こそ活動せよと言わんばかりに整った状況。

 

「というわけで、レイサ…手を組みましょう?」

 

「私達はあの上層部をどうにかしたい…レイサはトリニティの治安や風紀を守りたい…」

 

「レイサ、貴女にしか出来ない事よ?」

 

今のトリニティ側で最も動きやすいと言っても過言ではないかもしれない、その立場。

それに、彼女の正義感ならきっと…

 

「…分かりました、この問題…トリニティの審判者たるこの宇沢レイサにお任せくださいっ!!」

 

こうして、その提案を受け入れてくれるだろう。

まぁ、それはそれとして…

 

「チョロっ…」

 

「仕掛けた本人が言う事ですか…?」

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