橋姫様がキヴォトスにログインしました
『キヴォトス』
それは、ある世界に存在する超規模な巨大都市。
数多の学園がそれぞれに運営する自治区によって構成される連邦都市であり、外の世界から見たら異世界と呼ばれるものである。
人間の女性とほぼ変わらないが、頭上にヘイローというものを浮かべる『生徒』。
犬や猫、さらにはロボットのような見た目をした様々な住人が暮らす、外の世界にも似た形を持つ都市。
それは、銃火器という物騒なものが関わらなければの話だ。
日常的に銃撃や砲撃を行い、直撃を受けたとしても大した怪我をすることはない。
だからこそ、ここの住人達はちょっとした揉め事でも暴力に訴え、銃を手に取り争い始める。
破壊や略奪なんて日常茶飯事、力こそ全ての世界。
治安が悪いにも程がある、倫理観が迷子なのか。
そんな都市で、少女は溜息を零す。
「はぁ…」
金髪碧眼、そして尖った形状をした耳。
特徴的とは言えど、このキヴォトスでは別に珍しくもない容姿をした少女。
だが、少女にはそれ以外に目立つ点があった。
「なんで私がこんな目に…全く、呑気に笑う有象無象らが妬ましい…」
少女の頭上には、ヘイローがなかった。
さらには、この世界で必須ともされる銃を少女は装備していなかったのだ。
ブツブツと小声で愚痴を零しながら爪を噛むその姿は、見て見ぬふりが出来ぬ程に悪目立ちしていた。
少女の名は水橋パルスィ、此処とは違う世界から飛ばされてきた…俗に言う『異世界人』であった。
◇◇◇
どうしてこうなったのだろうか。
昨日の私は何をしていた?何処にいた?
正直、酔いが回っていた故詳しい事は思い出せない。
ただ、こんな場所に赴いた記憶がないのは確かだ。
正面に視線を戻せば、変わった服を着ている少女達が此方に向かって鉄の塊を向けてきていた。
アレは何だっただろうか、確か河童の所で目にした事があった筈だ。
「何、弾幕ごっこのお誘い?」
まぁ、曖昧な記憶ではあるがそれが歓迎の為に用いる道具ではない事は明らかだった。
それは彼女達から溢れ出る敵意から察し取れた。
「弾幕ごっこ…?お前、何言ってんだよ」
はて、弾幕ごっこを知らないと。
となると、これもまた異変の類なのだろうか。
外の世界から来たばかりの者達だというのなら、その変わった服装にも合点が行く。
「あらら、新参者だった?」
「新参者?いいや、アタシらはこの道のベテランさ、舐めてもらっちゃ困るねェ?」
話が通じない…いや、私の説明が悪かったのだろうか。
「先にそんなものを向けてきたのは貴女達でしょう?だから私は此処でいう『勝負』を受けてあげようかと思ったのだけど?」
そう思ったからこそ、下手に出て説明する。
…下手に出てない?悪かったわね、コレが素なのよ。
「勝負だァ?…ククッ、ッハッハッハ!!」
何がおかしいのか、少女達は一斉に笑い始める。
冗句を言ったつもりはなかったのだが、そんなに笑える要素があっただろうか。
「勝負だァ?銃を持ってもいないお前が?」
「冗談も程々にしろよ!」
…銃とやらを持っている事を前提として考えられている事が何か気に食わないが、取り敢えず馬鹿にされているという事は理解出来た。
「舐められてるようだから忠告するけど、私だって並大抵の奴らよりはやれるつもりだけど?」
紅白巫女?白黒魔女?怪力乱神?
あれは例外よ、アレ以上って方がおかしいでしょ。
それに、何故かは知らないがさっき目覚めてから身体の調子が良いのだ。
精神的には最悪だが、今なら言葉の通り並大抵の相手には負ける事はなさそうだ。
「っざけんじゃねェ!」
と、私の言葉を煽りだと受け取ったのか、少女達が一斉に此方へ弾幕を打ち出してくる。
…まぁ、そこそこの速度ではあるが。
「密度が甘い」
避けれる範囲内ではある。
確かに弾速は見張るものがあるが、弾幕ごっこでもないのに律儀に避けられる場所がある時点で甘い。
避ける、避ける、避けきれないと判断したものは此方からも弾幕を飛ばす事によって相殺する。
「な、なんだコイツ!?」
そして、弾幕の止まった隙に接近する。
いつもだったらスペルカードで決める所だが、その必要もなさそうだ。
特に何の捻りもない、能力の塊を相手に向かって打ち出す。
「ばーんっ」
相手が放ってきていた弾幕に比べてだいぶ緩い速度のソレは、相手に近付くと緑色の光を放って起爆する。
…想定より高い威力になってしまった気がする、周りの建築物を破壊しながら吹き飛んでいく少女達を見てそう思った。
◇◇◇
「…これ、私が悪い感じ?」
倒れ伏す少女達を放置して周囲を軽く見回った結果、ある事に気付いた。
恐らく…いや、ほぼ確実に此処は幻想郷ではない。
異変に巻き込まれてしまったか、はたまた某スキマ妖怪辺りの傍迷惑な悪戯か。
予想しても答えには辿り着かないが、理解した…してしまった事が一つある。
私は此処の住人ではないにも関わらず、この少女達を叩きのめしてしまったという事だ。
先に仕掛けてきたのは相手だ?それはそうだが、仮にコレが外の世界の人間だとしたら死んでいたかもしれない。
まぁ、目の前の者達は死んでなさそうだが。
だからこそ、問題なのはそこではない。
私が手を出した事が問題なのだ。
もし此処にも賢者的な…防衛機関があると言うのなら、間違いなく私のことを咎めにくるであろう。
結局のところ、私は部外者なのだから。
「喧嘩を売ったのは私じゃないのに、どうして私が悪者になるのか…世の中上手くいかないものね、全く…被害者面する貴女達が妬ましい…」
と、一種の口癖となりつつある言葉を口にする。
実際、今の状況は妬ましいと言っても誰も文句を言わないんじゃないだろうか。
そして、視界に入った一人の少女を見て、また溜息を零す。
「ねぇ、コレをやったのは貴女?」
予想通りと言うべきか、その場に留まっていたのが悪かったのか、そんな事を呟いていたら先程の者とはまた違った服を着た少女に話しかけられた。
しかも角が生えている、鬼か悪魔か…
…明らかに、纏うオーラがさっきの奴らとは大違いだ。
やっぱり私が被害者で良いんじゃないだろうか。
橋姫様と生徒達の絡みが見たいという趣味。
パルスィ×生徒のイラストがあっても良いと思うんです。