透き通った世界の下の嫉妬心   作:хорошо!

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笑顔が素敵な女性は美しい

『(見えてないのか…認識されてないのか…)』

 

シスターフッドの教会、その廊下を歩く。

同じように廊下を歩く修道服の生徒達は一人だけ目立っている筈の私に対して何の反応も示さない。

古明地の妹の方の能力と似ているが、私としても今の状況はよく分かっていない。

彼女達は私の姿が全く見えていないのか、それとも私という存在を認識出来ていないのか。

いずれにせよ、声を出したり誰かに触れたり、物音を立てたりすれば怪しまれる事は確実だろう。

 

『(こんな事になるんだったらサクラコって子の容姿と特徴を聞いておくべきだったわ…)』

 

聞き込み調査の時に話したシスター・・・うろ覚えだが、確かマリーという生徒だったか。

あの時に色々と聞いておけば今こんな苦労をしなくても良かった気がする…

まぁ、いくら優しそうな雰囲気だったとしても素直に話してくれたかは分からない事だが。

 

『(まぁ、特に当てがある訳でもないし…取り敢えず、片っ端から部屋を覗いてみましょうか…)』

 

思い立ったが吉日と辺りを見回し、周囲の生徒達の視線を気にしながら目の前の扉を開けた。

 

 

◇◇◇

 

 

「補修授業部、シャーレの先生…ティーパーティーは何を…ハナコさんは大丈夫なのでしょうか…」

 

硬そうなソファーに、何だか難しそうな題名の本が無数に仕舞われている本棚。

窓の形も一般的な住宅ではみないような独特の…こういうのって何て言うのかしら、半円窓?

まぁ…言うならば、いかにも〜・・・な内装の一部屋。

 

そんな部屋に一人座るシスター服の女性…

身長が高い銀髪の…シスター服ってこんなラフだったっけ、私の気の所為かしら…?

そんな彼女は多量の資料を手に持ち、いかにも疲れているといった様子で溜息を零していた。

と、いうわけで…大変そうなところ悪いが…

 

「お困りのようね…どう、お仕事は捗ってる?」

 

能力による隠密を解いて、背後から声を掛ける。

 

「なっ…!?」

 

余程仕事に集中していたのだろう、いくら姿が見えずとも部屋の扉が開いた事には気付く筈だろうに…

それに気付いていないであろう彼女からすれば私が突如背後から現れた…言うならば、ワープしてきたように見えたのではなかろうか。

そんな事をされれば当然驚く、私でも現れた相手によっては普通に驚くだろう…スキマ妖怪は別として。

 

「あら、そんなに驚かなくたって良いじゃない…お客様には失礼のないようにって教わらなかった?」

 

まぁ、今回は不意打ちやドッキリが目的で動いている訳ではない為に即座に誤解を解くが…

…悪用すれば色々な事に使えそうな能力だ、これの完全上位互換的な能力を持っている古明地妹の恐ろしさを改めて実感させられた。

というか、能力を使っているあの子は私にも見えない…あの子の感情を読む事も出来ない。

 

感情を捨て去ったのか…それとも、私が嫉妬心を感じられない程に心の奥底へと仕舞い込んだのか…

感情がないという事は同時に、私の能力による干渉を完全に無効化しているという事である。

数少ない私の明確な天敵、未知は恐怖だ…既知故の恐怖とは違い、未知は分からないからこそ怖い。

 

キヴォトスにもそのような相手がいたら…考えたくもない、焦って手を滑らせてしまいそうだ。

こうは言ったが私は別に古明地妹…こいしの事が嫌いな訳ではない、寧ろ関係自体は悪くない。

相手もそう思っているか、というのは彼女の特性上分からない事なのだが…っと。

思い出話に浸りすぎた、意識を戻そう。

 

「…そのような予定が…?…少しお待ちください、今確認を取ってきますので…」

 

「いいじゃない、そんなまどろっこしい事なんかしないで…お客様はもう、こうして到着してるのよ?」

 

ぇ〜、私がお客様だと語った所だったか…

当然だが虚言である、客として招かれているのならこんな面倒な方法で侵入したりしない。

だが、こう言っておいた方が私が此処にいる事の説明がつく…嘘がバレたら面倒だが、その時は私の能力でこう…どうにかなると良いなぁ…

 

「そうでしょうか?」

 

「そうそう、些細な事は気にしなくていいの」

 

とは言ったものの、こうしてハッタリを仕掛け慣れてるだけあって嘘は上手い方だという自負がある。

自信満々に、さも当然の事を語るかのように話せば大抵の人は…主に善人は信じ込んでくれる。

人を疑うという事を知っている相手でも、僅かな真実と曖昧なはぐらかしを入れる事で信じ込ませる事が…否、信じざるをえない状況へと導ける。

 

「じゃ、改めて…私は水橋パルスィ、エデン条約を結ぶにあたってゲヘナからトリニティへ視察に来た風紀委員会の一員よ…よろしくね?」

 

これは真実、というか此処で嘘を吐いたらバレる可能性が高い故に嘘を吐く事が出来ない。

有名…とまではいかないものの、私の名前はそれなりに認知され始めているようだ。

というか私が見学に来ている事を既に知らされている可能性もある、だからこそ真実を言うしかない。

さて、此処で重要なのは彼女がゲヘナを毛嫌いしているか、そしてサクラコという者の居場所を知っているか、の二点なのだが…

 

「私は歌住サクラコ…既にご存知かもしれませんが、このシスターフッドという組織を率いらせてもらっております…どうぞ、よろしくお願いいたします」

 

「…ぇっ、一発…?…マジ…?」

 

彼女がそのサクラコ本人だった、変な所で運を使い切った気がしてならない。

はたまた今までの不運の代わりに今幸運が舞い降りたのか…いずれにせよ良い気分ではないのだが…

敵意も恐らく向けられていない、彼女はゲヘナが嫌いな訳では…いや、嫌いなのかもしれないが表面に出すタイプではなさそうだ。

 

「…どうかなされましたか?」

 

「なっ、何でもないわ…」

 

キヴォトスに来てからというものの不幸な出来事が多かったが為に少しフリーズしてしまった…

ともかく、話が通じるというのなら補習授業部とやらの情報を得る事が出来る筈…

どう質問するか、どういう聞き方をすれば立場上違和感のないような質問内容になるのか。

相手はそれ相応に偉く育ちの良い人物だ、ボロが出てしまえばそこを指定されるかもしれない。

 

「…それで、今回私の下を訪ねた理由というのは?」

 

心が読まれている訳では無いとは言えど、こういう人を相手にするのは緊張する。

口に出てからでは何もかも遅い、だからといって会話に間を開けすぎるのも悪手。

考えながら発言しなければならない、決してボロを見せるような真似をしてはいけない。

 

「それにはちゃんと理由があってね、実は…」

 

そう自分に言い聞かせながら、威圧感がある笑みを浮かべる彼女に…話、を…

 

「…ごめんなさい、少し話題を変えても良いかしら?」

 

「話題を変える…何故ですか?」

 

呆れた…溜息を零しながら、聞き返す。

 

「貴女…それで愛想良く笑ってるつもりなの…?」

 

「…えっ…?」




エデン条約編、書き切れる気がしない…ッッッ
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