久々に心理描写頑張りました…
ティーパーティーが用意した宿泊施設、それはそれは豪華できらびやかな場所だった。
防音や防犯、流石は客人用の部屋というべきか何もかも完璧に用意されていたのは少し驚かされたが…
客人に何かあったら学園間の問題となり大変なのだろう、それにもよく納得できる。
加えて私達はゲヘナとして此処へ来ている…まぁ、私の実際の所属はミレニアムなのだが…
そんな私達に何かあったとあれば最悪の場合、ゲヘナとトリニティの全面戦争なんて事もあり得るだろう。
まぁ、政治的な話は私が気にする事でもない。
私はゲーム開発部の水橋ケイであって、ゲヘナの風紀委員でもミレニアムのセミナーでもないのだ。
…随分と都合が良いじゃないかって?
私自身もそう思うが、きっとこれで良いのである。
私は、私の意思で生きると決めたのだから。
「…それにしても、広いですね」
私は今、浴室でシャワーを浴びている。
ミレニアムの客人用宿泊室も中々の物だが、コレはそれに比べても数段上のように見える。
そもそもの価値観の差か、機能性に特化したミレニアムと外見に特化したトリニティ…
いや、これでも十分使いやすくはあるのだが。
…機械なのにシャワーを浴びる必要はあるのか?
そういう問題ではないのだ…というか、その…
…まぁ、精神的な問題もあるという事だ。*1
タイルに水滴が落ちる音が浴室に鳴り響く。
「…はぁ…」
備え付けのタオルを使って身体を拭く。
ドライヤーを使って髪を乾かす。
細部まで精巧に、アリスと瓜二つに作られた身体…
水を含んだ長い髪は中々乾かないが、痛むのを抑えるためにも丁寧に丁寧に風を当てていく。
このような動作をいちいち行わなければならない人間というものは面倒かもしれないが、それでもその行動を好んで行うのが今の私である。
人間として生きるため、彼女に少しでも近付くため。
そんな、くだらない理由だった。
「水橋様、上がりましたよ」
「ん…長かったわね…」
ベッドの上に寝そべる彼女、私を救った人。
スマホを覗きながら此方へ目を向けた彼女の雰囲気はいつもとはいくらか違う。
私より先に入浴を終えた彼女は備え付けのバスローブを身に纏い、うつらうつらと欠伸を噛み殺している彼女にはいつもより覇気がない。
常に余裕がある、常に周りを見ている。
そんな彼女の無警戒な…無防備な姿というのは私には初めて見る姿かもしれない。
「………」
彼女は私の理解が及ばないような人間だ。
話している話題は近くで起きている事の筈なのに、その瞳は何処か遠くを見つめている。
私の事を見てくれている筈なのに、その心は他の誰かと私を重ねているように感じる。
分かりやすいようで、分からない。
理解出来るようで、理解する事が出来ない。
私は彼女の事が好きだ、決して小さいとは言えないレベルの好意を抱いている。
それと同時に、私は…彼女が怖い。
…いや、それは少し違うかもしれない。
私は、彼女に置いて行かれる事が怖い。
「…あら、押し倒されるのなんて何時ぶりかしら」
「…押し倒された経験は、あるんですね…」
「えぇ、遠い遠い昔にね」
何となく察していた、理解はしていた。
彼女にかつて愛人が…夫か彼氏か、妻か彼女か…
いずれにせよ、愛する人がいたという事。
多分、彼女が『初めて』ではない事も…
「…水橋様は、私の事が好きですか?」
「…そうね、私はケイの事が好きよ」
「それは私だけに抱いている感情ですか?」
「………」
分かってる、そんな事はずっと分かってる。
彼女にとって私は特別な個人でも何でもない、ただの有象無象の一人に過ぎない事なんて…
ゲヘナの風紀委員長、ミレニアムの生徒会長、トリニティで会った正義実現委員会の生徒。
例えどんな生徒が相手であろうと、抱いている感情の大きさは一定を超える事はないのだろう。
彼女にはきっと、既に大切な人がいるのだろう。
「…貴女はきっと、そういう方なのでしょう」
「一定以上の関係を築こうとせず、いつか誰にも知られずにゆっくりと…その姿を消す…」
「私は怖い、貴女を失うのが怖い…」
きっと、元いた場所に帰れるとなったら彼女は私達に何も言わずに姿を消すのだろう。
彼女は語らない、彼女は私を頼ってくれない。
彼女にとって私の…私達生徒の存在とは、きっとそこまで大きな物ではないのだろう。
「私も…アリスも…きっと、これから色々な物を見て、色々な経験をして行くのでしょう…」
私もアリスも、まだ目覚めてから日が浅い。
これから様々なゲームをするだろう、これからこの広いキヴォトスの景色を見るだろう。
それを咎める人も、それを邪魔する人もいない。
私達は自由に過ごす事が出来る筈だ…
「ですがそこにモモイは、ミドリは、ユズは…」
「そこに、貴女はいない…」
「…どうして、そう言い切れるのかしら?」
「私は人間ではありません」
「…私もアリスも、人として生きる事を…人として過ごす事を決めました…」
「ですが私達は人間になれません、私達は貴女達と時を共にする事は出来ません…」
モモイも、ミドリも、ユズも、水橋様も。
私達とは違う時を生きる『普通の』人間であり、死ぬ事も老いる事も出来るのか怪しい私達とはそもそもの身体の…精神の形が違う。
後を追う事も出来る、でもそれは意味が違う。
私達は、結局は人間になりきれない。
「私は、置いて行かれるのが怖い」
「私は、貴女の存在を忘れてしまうのが怖い」
「…だから『こういう風』にすると?」
「ッ………」
『こう』すれば、どうにか気が保てる気がした。
『こう』すれば、彼女を私のモノに出来る気がした。
そんな願望…いや、そんなくだらない妄想…
私には、そうする選択肢しか選ぶ事が出来ない…
「…えぇ、そうね…こうやって私の存在を刻み込めば私の事を忘れるなんて事はないでしょうね…」
「でも、貴女はそれで満足出来るの?」
「妥協も妥協…その行動は私の意思も、貴女の心も…全部否定した先の答えなんじゃないの?」
…その通りだ、これは私のエゴに過ぎない。
彼女の意思も感情も、他ならぬ私自身の思いだって全て殺して出した答えがコレだ。
満足出来る筈がない、納得出来る筈がない。
そうだとしても、例えそれが間違っているとしても…
「…それでも、私は…」
「確かに自分に正直になれとは言ったけど、それはきっと貴女自身も望んでない行動な…」
「でもっ!!!!」
「…私は、貴女を…私は…」
貴女の事を…貴女の存在証明を…
「大丈夫」
「きっと…いや、絶対に大丈夫」
…包み込むような、優しい声色。
普段の言葉とは違う、感情の籠もった返答。
「私は貴女を置いて行かない…私は最後まで貴女の側で時を共にしてあげる…」
「あの聖人みたいな立派な事は言えないけど…」
「貴女のその思いは、私が背負うから」
その瞳は、私の事を見ていた。
少女の容姿をした彼女は、大人として…
責任を持った瞳で、此方に語りかけてきていた。
「…貴女がもし、キヴォトスから元いた場所へと戻る事になったとしても?」
彼女にとって何よりも大事であろう事。
本来暮らしていた場所にいる筈の、きっと彼女にとって一番大切な人の存在。
天秤に掛けるまでもないような、その選択…
それでも、彼女は続ける。
「ん〜・・・もしそうなったら、然るべき時に私が貴女を…いや、貴女達を迎えに行ってあげるわよ」
「
「全てを…?」
「えぇ、全て…何もかも、何でもよ」
「…それはそれは、残酷な事なのだけどね…」
…静かに呟いたその声は、酷く弱々しかった。
彼女らしくもない、そんな声だった。
「…というか私、多分あと数百年は生きれるし」
「なっ…!?」
「下手したら数千年かも?」
置いて行かれるという話は何処に行ったのか…
本当に彼女は人間なのか…そう言えば初めて会った時に橋姫だとか言う事を自称していた気が…
…肩書とか、そういう話ではなかったのか…?
「…なんだか、話して損をした気が…」
「…いや、言葉に出すのは良い事よ…」
「失ってからじゃ、何もかも手遅れだから」
その言葉には酷く説得力が、重みがあった。
…考えたくもない事だが、私にもきっと大切な何かを失う時というものは来るのだろう。
それは私ではなく、きっと誰であろうと避ける事の出来ない
運命というものなのだろう。
「…そうですか…」
「…まぁ、その…暗い話は終わり!」
明らかに落ち込んだ空気感を吹き飛ばすかのようにパンッ、と手を叩く彼女。
から元気にしか見えないが、これでもきっと彼女なりの気遣いのつもりなのだろう…
…それに、救われる人もいるのだから。
「明日も早いんだから…ほら、寝ましょ?」
「…えぇ、そうですね」
そう瞼を落とせば、悩んでいた事なんて嘘のように身体から力が…意識が落ちていき…
そのうち、私は眠りについた。
ブルアカ東方クロス増えてくれないかなぁ…と思いながら私は投稿を続けます…誰か書いて…()