透き通った世界の下の嫉妬心   作:хорошо!

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本当の超天才は超天才を自称しない(一人を除く)

耳元で鳴り響くバイブレーションの音。

あまりに高級すぎて逆に眠りにつけないベッドの上で浅い睡眠を取っていた私は、その音で目を覚ます。

スマホを覗けば、映っている名前は見知った者の名。

ケイを起こさないようにそっとベッドから降り、会話の声が聞こえないようにベランダへと…

 

「…ヘクチッ…」

 

…バスローブで外はちょっと肌寒かったか…

が、今更場所を変えるのも時間の無駄だ…少しくらいは此処で我慢するとしよう。

そう思い、スマホを操作し電話に出る。

 

「…もしもし、普通こんな明け方に掛けてくる?」

 

『お互いに起きているのですから良いでしょう?』

 

電話の相手…当然だが、ヒマリである。

そもそも私に電話を掛けてくる相手というのは限られているし、こんな朝早くに掛けてくるのは基本的にヒマリだけである。

生活リズムおばあちゃんか、仮にも学生だろうに…

彼女一人では動きづらい事を考えると恐らくエイミも起こされているのだろう…可哀想に…

まぁ、そんな話は今するべき事ではない。

 

「…で、情報は得られた感じ?」

 

『えぇ、それはもう素晴らしい成果を』

 

「そう、助かるわ」

 

昨日の夕方、此処へ来る道中。

私はとある事についての調査を彼女に依頼し、出来るだけ迅速に調べてくれと頼んでいた。

…確かに急いでくれとは言ったものの、まさか数時間で完璧に調査を終えてくるとは思っていなかったが…

そこは…まぁ、認めたくないが天才なのだろう…

 

『…しかし、何故私を頼ったのですか?』

 

と、不思議そうに問い掛けてくるヒマリ。

いや、どうしてと聞かれても返答に困るのだが…

…う〜む、強いて言うならどうなるだろうか…

 

「ん〜・・・そりゃぁ、まぁ…貴女の技量自体は認めてるし、こういう時に頼るべき人はヒマリだと…」

 

『あぁ、いえ、そういう事ではなくてですね…』

 

その言葉は他ならぬヒマリ自身に否定される。

ならばどういう事なのか?何を聞いているのか?

頭の中に疑問符を浮かべる私に対し、彼女は続ける。

 

『貴女の元にはケイがいる筈です…わざわざ、私を頼る必要はなかったのでは?』

 

…ケイ、ケイがいるから…だから、どうした…?

 

「………?」

 

彼女に何かヒマリの代わりになるような要素があったか、記憶の中を遡ってみる…

…少なくとも、私には心当たりがないな…?

そう黙っていた私の様子を電話越しに察したのか、困惑したような声で問い掛けてくる。

 

『…もしや、ご存じなかったのですか…?』

 

「いや、何の話かすら分かってないけど…?」

 

ん〜・・・多分、予想するならケイの能力の中になんか凄い調査能力的なのがあるのだろう。

そもそもケイはオーパーツだ、私みたいに超常現象的な力を持っていても何ら不思議ではない。

というか銃弾を平然と耐える人間がいる時点で私からしたら超常現象みたいなものなのだが…

 

『…いえ、過ぎた事は仕方無いですし…どうせ、知っていたとしても貴女はケイを使わなかった筈です』

 

「…随分と私の事を過大評価をしてるわね?」

 

…まぁ、多分、それを知っていても私はケイの事を頼る行為はしなかっただろう。

彼女の事は信頼してるし、評価もしている。

だが昨日の件もそうだが…彼女はまだ『人』として生きるには不安定な所が多い。

言動、動作、感情…感情制限に、行動理念…

アリスと違ってまだ自分の元の役割に縛られているのか、まだまだ彼女は安定しているとは言い難い。

そんな彼女に『物』としての意識を微塵でも与えさせてしまう行為を私はさせないだろう。

 

『事実に過ぎませんよ、これでも貴女の事は他の人と比べても理解しているつもりなんですけどねぇ?』

 

「うわぁ、重いわ〜・・・」

 

『確かに抱いている期待は重いかもしれませんね?』

 

ヒマリが私に抱いている感情はだいぶ重い…

が、ヒナやケイのような重さではなくソレはフラットであり分かりやすい重さである。

なんというか、ライバルというか、悪友というか…

お互いの事が好きな訳では無いが、妙にお互いの事を理解して期待を抱いている節があるのだ。

一周回って逆に健全じゃない関係である。

 

「…はぁ…で、説明してもらっても良いかしら?」

 

『えぇ、あの子が起きる前に済ませてしまいましょう』

 

さっさと本題に戻ろう、調査内容の話だ。

私が彼女に頼んだ調査依頼…それは、補習授業部の中の一人の生徒についてである。

 

『…貴女の仰った補習授業部の生徒…』

 

『白洲アズサと言う名前の生徒のデータは、表向きでは他の学園には存在しませんでした』

 

…これは、少し予想外かもしれない。

 

「…偽名を使っている、とかじゃなくて?」

 

『容姿についても同様です、一致する見た目の生徒は表向きで公開されている学園にはいませんでした…』

 

『ゲヘナ、百鬼夜行、オデュッセイア…』

 

『どの学園を調べても、彼女と一致するデータを持った生徒というのは見つかりませんでした』

 

…う〜む、困った、なんとなく分かってしまった…

これは思ったよりドロドロしている、これは想像以上に欲と悪意に塗れている。

トリニティという学園の怖さを改めて…いや、ゲヘナでもあり得る事なのかもしれないなぁ…

まぁ、それはそれとしてだ…

 

「…それを調べられる貴女って何者なの…?」

 

『超天才であり病弱清楚系な美少女ハッカーです♪』

 

「聞かなきゃ良かったわ…」

 

他校のデータはある程度一般公開されているとは言えど、ここまでの情報を一日で調べてくるのか…

ちょっと私とは脳の構造が根本から違う気がする、これと同格のリオ会長もちょっと怖くなってきた。

多分、電話越しなら私でも口論に勝てないくらいには頭の回転が速いんだろうなぁ…化け物か…?

 

『それで、この情報で何か分かりましたか?』

 

「ん〜・・・まぁ、予想だけどね…」

 

まぁ、ヒマリのお陰で何となく掴む事が出来た。

補習授業部という部活がどんな組織なのか、今トリニティで起きている問題は何なのか…

…いや、ここで自信満々に予想を言って的外れだった場合の羞恥心はとてつもないだろうが…

…まぁ、合っているだろう…多分、何とかなる。

 

『では、貴女の答えを聞かせてもらいましょう…』

 

「いや、貴女は何目線なのよ…」

 

なんかヒマリは全部分かってるんじゃないか…?

もう彼女だけで良い気すらする…が、人の悪意というのは私の専門分野である。

ここで退く訳にはいけない、怖気づく訳には…

…やっぱ保険かけても良いかしら、怖いわ。

 

「はぁ…あくまで予想に過ぎないけどね?」

 

予想、予想だ、あくまで予想だと言う事を強調する。

…が、まぁ、多分この答えが正解なのだろう。

 

「トリニティには恐らく、エデン条約を壊そうとしている裏切り者が存在する」

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