透き通った世界の下の嫉妬心   作:хорошо!

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嫉妬とは誰もが抱く感情である

『嫉妬心を操る程度の能力』

 

それは、他人を嫉妬に狂わせる力であり、一種の精神操作と言える能力である。

嫉妬というのは害意に直結する、詰まる所、心に隙がある人程この能力の毒牙に掛かりやすいのだ。

 

そして、この能力で抱く嫉妬というものに能力の使用者は適応される事がない。

勝手に他者同士が妬み合い、その嫉妬が強くなればなる程に能力の使用者は力を増してゆくのだ。

 

狂気に囚われ凶行に及ぶ…言い換えれば、殺し合いを起こす事も容易なこの能力だが、実際にそのような用途で使う事は余っ程の事が無い限りは無い。

どうして急にこんな話をしたかって?

 

「私だって頑張ってるのに…みんな好き勝手に暴れて…楽しそうにして…私は、そんな事できない…!」

 

また、ある人がその能力の犠牲になったからだ。

私が意識せずとも、心が弱ってる人には勝手に作用してしまうのがこの能力の悪い所だろう。

尤も、今回は自衛代わりになったのだが。

 

「へぇ…大変ねぇ…妬ましいわねぇ…」

 

少女の名前は空崎ヒナと言うらしい。

奇しくも同じ名前の友人がいるが、特に関連性があるようにも見えないし、偶然であろう。

 

少女は見た目以上に精神的に弱っていたらしく、能力を利用し漬け込んでみれば様々な事を話してくれた。

此処が何処か、貴女は何者か、そして、幻想郷という場所を知っているか。

 

まず、此処はキヴォトスという場所だと言う。

やはりと言うべきか、私の知っている幻想郷ではないし、私の知る外の世界とも別の場所らしい。

異変か何かで飛ばされてしまったのだろうか、正直考えた所で私のような小物には想像もつかないので無理に頭を捻るのはやめておく。

 

この頭上に浮かぶ変な物についても教えてもらった。

コレはヘイローというらしく、少女達の身体を守り怪我を防ぐ生まれつきあるものらしい。

私にはないのだけれど?妬ましいわ…

 

そしてこの少女、空崎ヒナはこの世界の三大勢力の一片である『ゲヘナ学園』とやらの治安維持組織、風紀委員のリーダーであると言う。

自身の足元に目を落とす、そこにはシナシナとした様子で自身の膝に座る少女がいた。

 

これがリーダーだと言うのだから、世界とは分からないものである。

 

まぁ、何かを纏め上げる者というのは寧ろ精神が削られるものだから、至極当然な事なのかもしれないが。

如何せん、私の知ってる統治者というものは精神的にも肉体的にも強い者が多いせいで、いまいち心配になってくるのだ。

 

そして、幻想郷を知っているかという問い。

予想していた答えではあったが、やはり聞いたことはないという。

大きな影響力を持っている勢力、そのリーダーが知らないとなると、この世界で幻想郷を知っている者がいたとしても、恐らく少数であろう。

 

つまり、私は本当の意味で異世界とやらに飛ばされてしまったというわけだ。

 

「はぁ…不幸だわ…」

 

不幸自慢というわけではない、実際こんな目に合う事など滅多にないだろう、愚痴を言って何が悪い。

溜息を零しながら、膝に座る少女を撫でる。

 

…私とて、弱り切った者まで妬むような輩ではない。

寧ろ、そういう者は積極的に助けるタイプだ。

何故かって?相手が自身より不幸じゃなければ、妬むような事も出来ないではないか。

 

話が逸れた、何を聞こうと思っていたのだったか。

あぁ、そうそう…思い出した。

 

「その『先生』とやらは何処にいるの?」

 

話の途中に出てきた『先生』という人物。

私からしたら白沢の彼女しか思い浮かばないが、そもそも男だと言うのだから絶対に別人であろう。

 

その者は、私と同じで此処とは違う場所…キヴォトスの外から来た人物だと言う。

しかも、私と同じでヘイローがない人間らしい。

厳密には私は人間ではないのだが、そんな事を説明していたら面倒な事になるのが目に見えているので、敢えて言わないでおく。

 

ただ、コレでヒントを掴むことは出来た。

少なくとも、任意で此処…キヴォトスに来る事が出来ると言うのならば、私が帰る方法もきっとある筈だ。

ならば、向かうべき場所は当然…

 

「えっと…確か、アビドスの方に…」

 

「よし、案内して貰える?」

 

その先生とやらの所だろう。

 

 

◇◇◇

 

 

空崎ヒナは困惑していた。

気が乗らない出張に赴いた先で『身元不明の少女が暴れている』という報告を聞き、急いで駆けつけてみれば、そこにいたのはヘイローを持たない少女だった。

しかも、その少女は自身を外から来た大人だと言う。

確かにヘイローがないのだから、そうかもしれない。

 

そこまでは良かったのだ、いや、良くはないのだが。

私が分からないのは、何故私はその人に普段は隠している本音を、弱音を吐き出し、挙句の果てには膝の上に乗せられ撫でられていたのか。

何がどうなったらそうなる、だが、実際に現実で起きた出来事である。

他人事のように語っているが、これが自分の身に起きた出来事だと言うのだから笑えない。

 

「ぁ、そこは左…」

 

「はいはい、左ね」

 

そして何故か、私は今その人におぶられている。

最近此処に来たという『先生』の事を話したら、今すぐその人に会いに行くと道案内を頼まれたのだ。

出張の件を放ってしまっているままだが、何だかこの人と一緒にいるとそんな事どうでも良くなってきた。

だからこそ、道案内をしているのだ…が。

 

「…やっぱり、本当に飛んでる…」

 

彼女は私を背負って、飛んでいた。

飛ぶように走るとか、跳ぶとかじゃなくて、正真正銘宙に浮いて飛んでいるのだ。

銃を持っていない事と言い、それなのに不良達を一人で倒した事と言い、何だか私の知っている常識が彼女には通用していない気がしてならない。

 

「そんなに空が珍しい?…そうね、じゃあ…」

 

それっ、といった掛け声と共に速度が上がる。

先程までとは比べ物にならない程に速い、正直に言うと少し速すぎて恐怖を感じるレベルだ。

だが、私は自然と笑っていた。

 

「っふふ…ふふふっ…」

 

「…ほら、貴女も充分楽しめてるじゃない?」

 

久しぶりに、心から笑えたような気がした。




この作品の最終目標は支援絵を頂く事…
ちょっと強欲が過ぎました、忘れてください
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