古書館イベ未読だからウイの解釈が浅い…
トリニティにある図書館を管理しているのは、当然だがトリニティの図書委員会である。
そんな図書委員会の本部に当たる場所は先程までいた中央図書館ではなく、そこから少し離れた場所にある古書館であるらしい。
そんな情報をネットで得た私はスマホの地図アプリを頼りにその古書館へと訪れてみた訳だが…
「…まさか、こんな事になっているとは…」
古書館…と思われる建物の入口はバリケードのようなもので囲まれ閉ざされており、容易には入る事の出来ない状態になっていた。
明らかに人が来る事を想定していないような状況…とはいえスマホに映る施設情報には開館中だと書かれているし、臨時閉館を示す類の張り紙もない。
「立入禁止、という訳ではなさそうですし…何らかの理由を持った個人が閉じ籠もっている…?」
私とてネットの情報が全て正しいとは思わないが、立入禁止になっているのに何の知らせもないというのは些か考えづらい事だろう。
そう考えた時に思い浮かぶような理由はそれくらいだが、流石にソレはありえないだろうと否定する。
「いや、ここまで徹底的に扉を閉ざしてしまえば出入りすらままならない筈…とても中に人がいるとは…」
脳裏に浮かんだのは、パルスィ様の姿。
…よくよく考えたら生身の体で入ってこれる訳のない場所に平然と侵入してきた彼女という存在が身近にいるのだ、理論だけで物事を考えてはいけない。
『どうにか出入り出来る』レベルの障害物なら中に人がいる確率だって数%くらいはあるだろう。
「…何事にも、例外は存在するものですね…」
キヴォトスの外から来た…自身を救ったイレギュラーな存在の事を考えながら、そう呟く。
説明を受けた為、彼女が私達の理解を超えた何らかの力を扱う事は理解したが、未だにあの時どうやって私の元に現れたのかは分かっていない。
本人に聞いてみた事もあったのだが…
『貴女の心に嫉妬の感情があったからよ』
と、はぐらかされるばかりである。
いつかは彼女の事を理解しようとは思っているが、そのいつかがいつになるかはまだ分からない。
急ぎでなくても良い、長い時間をかけて少しずつでも理解していけたら良いと思うのだが…
それが叶うのかは、まだ分からない所だ。
「んっ…銃の大きさに、悩まされるとはっ…」
バリケードを跨ぐ、何度も何度も跨ぐ…
その動作をする中で自身の銃が突っ掛かるのだ。
まだ銃を持ち運ぶという事に慣れていないのもあるし、そもそも銃が大きすぎるというのもある。
不慣れな動作と銃のサイズに苦戦しながらも、ようやく扉の前へと辿り着いた。
「…さて、と…」
両手を使って扉を押してみる…
そこそこ力を込めたつもりだが扉はビクともしない、恐らくは鍵が掛かっているのだろう。
「やはり留守なのか、それとも既に使われなくなった場所なのでしょうか…」
後者の確率は低いにしても、前者は現実的に考えても確率が高いだろう。
なんなら中に人がいる確率より全然高い筈だ、こんな状況で人がいる方が異常だろう…
…とは言ったものの、だ。
「…まぁ、試す分にはタダでしょう」
中に人がいる、という確率もまた捨てきれない。
アリスやモモイに毒されたのか、1%でも確率があるというのならその可能性を捨てたくないのだ。
と、扉を軽くノックしてみる。
…へんじがない、ただのしかばn…んんっ、やはりこの中には誰もいないのだろうか。
ダメ押しと言わんばかりにもう一度ノックしてみる。
…やはり返事はない、誰もいないのだろう…
と、諦めかけたそのタイミングで固く閉ざされていた扉がゆっくりと、僅かに開いた。
「シミコ…?わざわざノックなんかせずにスペアの鍵を使って入ってくれば…」
隙間から顔を覗かせたのは高身長の女性。
まさか本当に人がいたとは…もしかしたらとは思っていたが、本当にいるのは少し予想外である。
じゃあこのバリケードは何だったのか…中に人がいた事により逆に謎が深まってしまった。
シミコ、という人が誰なのかは知らないが今は彼女に話し掛ける事の方が先だろう。
「…あの、すいません」
「へぇぁ!?」
そう声を掛けた瞬間、奇声にも近いような悲鳴を上げる扉の向こうの彼女…
その言葉と同時に扉を閉めようとしたのに気付き、咄嗟に手を出し扉を閉じさせまいと押さえる。
「っ…何故扉を閉じようとするのですか…!」
「中には誰もいません!留守です!」
流石にソレは無理があるだろう、もう顔を合わせてお互いに会話だって交わしているのに…
何らかの理由で私を中に入れたくない…又は会いたくないのかもしれないが、私だってパルスィ様の役に立つためにと此処まで赴いたのだ。
相手にも事情はあるのだろうが、ここは譲れない。
「と、とにかく帰ってください!なんの申し出もなく此処に立ち入るのは私が許しません!」
「許可を取らなかったのは私のミスですが、ただ古書を探しに来た者に対する対応がコレですか…!」
単純な力という意味でなら私の方が上…
だが、彼女との体格の差が大きいためか扉はどちらの方にも微動だにしない。
このままではジリ貧だ、どうにかせねば…
「私はただ、トリニティと対立しているであろう学園についての情報を求め此処に辿り着いただけで…」
その言葉を聞いた瞬間、扉の向こうでピクリという風に彼女が反応を示したような気がした。
彼女は扉を押し返すのをやめて、こう続ける。
「…その話、もしかしてですが…」
◇◇◇
独特の匂いと不思議な雰囲気を纏った空間…
古本特有の紙の匂いというべきか、そんな古書館の中へと私は案内されていた。
中央図書館を離れてから短いとは言い難い程の時間が経った、無事を伝えるためにも図書館に残っている二人には連絡を入れておいた方が良いか…
そんな事を考えながら歩く中で、ふと足に何かが触れたような気がして足元を確認してみたのだが…
「…何故、衣類が散らかっているのですか…?」
「…滅多に外には出ませんから…」
決して少ないとは言えない量の衣服や何に使うか分からないような機材がそこら中に散らばっていた。
見るに耐えないような有り様でありながら本は丁寧に仕舞われているのが逆に酷い。
仕事は出来る代わりに私生活が駄目な人、というのはこういう者の事を言うのかもしれない。
「…はぁ、軽くですが片付けさせていただきます」
「こ、この子達には触れちゃ…!!」
「これでも整頓の心得はあります…話を聞いてもらうついでです、やらせてください」
というか、このままだといずれ足の踏み場がなくなってしまうだろう。
一悶着はあったものの話は聞いてもらえる事になったのだ、そのお返しという意味でも…というか、私個人として散らかっているのが気に入らない。
「…雑な扱いはしないように気を付けてください…」
「理解しています」
散らばった衣類を拾い集め、一箇所に集める。
出来るだけ古書には触れないように、やむを得ない場合は出来る限り丁寧に机の上へと移動させる。
本格的な掃除ではなかった為か整頓に掛かった時間はそこまで長いものではなかった。
とは言え、それでも思わず口に出してしまう程には…
「…いくら何でも散らかし過ぎでは…?」
「で、ですから今日はシミコが片付けを手伝いに来る筈だったんですけど…」
「…片付けは、覚えた方が良いですよ」
溜息を零しながら用意された椅子に座る。
向き合うような形、私は彼女の目を見て自分が話すべき事を語り始める。
「それで…あぁ、失礼…私は水橋ケイと申します…貴女のお名前をお伺いしても?」
「…古関ウイです、一応は図書委員長です」
やはり古書館が本部だというのは本当だったらしい。
まぁ、それは別にどうでも良い事なのだが…
本題に移り、質問を続ける。
「では、改めて問わせていただきます…」
「ウイさん、貴女は私の求めている情報について何か知っているという事で良いのですね?」