透き通った世界の下の嫉妬心   作:хорошо!

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バレンタイン回が書けないので代わりに投稿です…
難しいね、バレンタインっていうのは…



怨嗟の心は余程の事が無ければ削がれない

「アリウス分校、ねぇ…」

 

ケイの口から出された、その学園の名前。

長々と、しかし分かりやすく述べられたその説明は私達が求めていた情報の大半が詰まっていた。

トリニティと対立しているであろう学園、今も双方の間にしがらみがあるであろう学園…

 

「レイサさんは耳にした事がありますか?」

 

「いえ、全く…」

 

「となると、やっぱり表社会では殆どの人から忘れ去られた学園って事になるのかしら…」

 

一応はトリニティの生徒であるレイサが全く聞いた事がないというのだ。

彼女は察しが悪いし冗談が通じないが、別に頭が特段悪いという訳でもない。

彼女が知らないというのなら恐らくトリニティではメジャーな学園ではないのだろう。

 

「えぇ…あくまで予想にはなりますが、白洲アズサが元いた学園の候補の一つにはなると思います…」

 

確信がないからか、ケイが述べるその言葉はあまり自信がないように思える。

確かに証拠は不十分だし、これだけでアズサが元々所属していた学園だと考えるのは難しいだろう…

が、私はそうは思わない訳だ。

 

「んや、九割九分そうだと思うわよ」

 

「あれ、そう思える理由があるんですか?」

 

明確な証拠はないが、そう思える理由はある。

 

「私はアリウスがどうこうとか、今の状況がどうこうとか何にも分からないけどね…」

 

「そこまでされた相手への嫉妬や怨嗟は、並大抵のものじゃないって事は分かるのよ」

 

超が付く程の善人であったとしても、一度その心を抱いてしまえば渦巻く感情は収まらない。

それだけ負の感情というものは強いのだ。

その負の感情を上回る程の正の感情を得られる機会というのは全くと言って良い程ないだろう。

 

「…それは、どれくらいのものですか?」

 

「言葉に表せないくらいね、末代まで呪ってやるって言葉があるくらいだしね?」

 

怨嗟や嫉妬にも度合いがあるが、その恨みが大きければ大きい程、その心は収まらない。

自身をそんな状態にした相手を殺めたとしても収まらない、そんな場合すらあるのだ。

アリウスの生徒達がどれくらいの恨みを持っているかは知らないが、きっと今もトリニティに対する怨嗟の心はとてもじゃないが収まっていないのだろう。

 

「言葉の通り、復讐を果たすまでは心が満たされないのが普通の人間ってモンなのよ」

 

それに、アリウスの生徒達は話に聞く限り復讐や救済などの機会を得ていないのだろう。

ならばその心が収まる筈がない、恨みを抱くきっかけになった出来事が語り継がれているとしたら寧ろその怨嗟の心は大きくなっているかもしれない。

 

あの出来事さえなければ

 

アイツさえいなければ

 

そう、誰しも一度は思う事だろう。

その思いをぶつける対象がいない、その思いを何度も何度も踏みにじられる。

そう考えてもらえば、やり場のない負の感情が収まらない理由も分かるんじゃなかろうか。

 

「じゃあ、アズサさん?がアリウス出身だというのはほぼほぼ確定と見て良いんでしょうか…?」

 

「えぇ、というかコレがハズレてたら本格的に分かんなくなっちゃうからコレに賭けるしかないわ」

 

後でヒマリに確認を取るとは言えど、この予想が的外れだとしたら本格的に迷宮入りである。

そうなった場合は素直に手を引くか…大事になりそうだった場合はあまりやりたくはないが先生に手を貸す、という選択肢を取る手もあるだろう。

後者の場合は『私』が出来る事は遂行出来なさそうなため出来るだけ避けたいものだが…

 

「トリニティに対する怨嗟が積もりに積もったアリウスが復讐のためにスパイ的な目的で侵入した…私的にはそう考えてる訳なんだけどね…」

 

予想としては割と根拠のある方だとは思う…

が、この予想には一つの問題がある。

 

「…では、その当人である白洲アズサをトリニティへと入学させたのは誰なのか…」

 

「そゆこと、そこが分からないのよ」

 

白洲アズサが転校生だという事は隠されていなかったが、彼女の経歴を調べようとしても元々通っていた学園などの情報は空白だったらしい。

明らかに誰かの手が加えられている、それも白洲アズサ以外の誰かの手が、だ。

 

「入学前の学園を隠蔽した上で転校生として偽装する事が出来るのは相当な権力者…それこそ、ティーパーティーの面々だと思うんだけど…」

 

「トリニティの最高権力者…まぁ、生徒会長的な存在は三人いるからねぇ…」

 

ミレニアムのように生徒会長が一人だったら分かりやすいのだが、トリニティはそこら辺がややこしい。

というかそういうのを隠すのが上手いのだろう、リオ会長はもっと単純だった…と思う。

ここから更に犯人を絞るとなると、もう少し詳しい情報が必要になるだろう。

 

「ナギサさん、ミカさん、セイアさんですね」

 

「そうそう、確かそんな名前だった…」

 

何処となく威圧感を感じる様子のナギサ。

抜けているような印象だったミカ。

そもそも顔を合わせていないセイア。

 

「まぁ、私としては犯人がナギサだっていう線は薄いって勝手に考えている訳なんだけど…」

 

「理由とかはあるんですか?」

 

これはサクラコと話した内容から消去法で導き出された答えなのだが…

 

「自分で仕組んだスパイを自分で妨害して退学にさせるような真似をすると思う?」

 

「…ない、んじゃないですかね…」

 

「怪しまれないために、というカモフラージュの線は…流石にあそこまで本気で退学にさせようとしている所を見ると無いと思われますね…」

 

自分がスパイと繋がっていないという事を証明するために敢えて対立…しているように見せる、というやり方もありはするだろうが…

今まで聞いた情報を聞く限り、ナギサとアズサが繋がっている線は薄いように感じる。

というか、繋がっているのだとしたらもっと試験内容を優しくしてここまで妨害していないだろう。

それを含めての作戦だと言うのなら私にはもう手に負えない程の相手だが…

まぁ、その考えは切り捨てる方が吉だろう。

 

「ってなわけで残りはミカとセイア…」

 

とは言ったものの、この二人に関しては私達が知っている情報が少なすぎる。

ミカの名前は聞き込みをしている中で全くという程耳にしなかったし、セイアに関しては顔も声も知らない私達からすれば未知の生徒である。

諸々から考えると怪しいのはセイアの方だろうか…いや、そう考えるのは些か早すぎる気も…

 

「パルスィ様」

 

そう考えていた時に横から声を掛けられる。

 

「…ケイ、どうしたの?」

 

「確信、とまでは言えませんが…」

 

何が原因かは分からないが、何処か躊躇ったような様子でケイは続ける。

 

「恐らく、犯人が誰なのか理解出来ました」

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