失踪はしたくないので頑張ります…
「なんなんだ!!この二人組は…!?」
ガスマスクを付けた生徒達はそう叫ぶ。
敵の数を数えるのはもうとっくの昔にやめた、それだけ相手との数の差は圧倒的だ。
こちらの人数は2人しかいないのだ、冷静に考えれば無謀にも程があるような戦力差だろう。
それでいて相手の腕は悪い所か相当良い、そこらにいる一般生徒と比べれば何段階もやれるようなやり手ばかりが揃っている。
が、その程度で止まるような私達じゃない。
「事前情報にはない!!早く連絡を…」
「じゃじゃじゃ〜ん!!私はここですよ〜!!」
「なっ…!?」
通信を行おうとした生徒の真正面からショットガンを炸裂させる彼女。
基本的に一発、運が良くても二、三発。
物凄いペースで敵兵を溶かしていく彼女に続くように、私も隙を縫って攻撃を行う。
正直な所、私がいなくてもあまり問題はないのではないかと言う程に彼女は強かった。
初めて会った時に銃撃戦にならなくて良かったと改めて思う、もしあそこで争いになっていたとしたら絶対に面倒な事になっていただろう。
「それにしても、こんな深夜にバンバンと銃声を鳴らして良いんですかね〜・・・」
確かにそれはそうである、銃声もそうだが相手は手榴弾などの投擲物も平気で使ってくる。
音的な被害も勿論の事、こんな深夜の知らないうちにそこら中の建造物が壊されるトリニティ側もたまったものではないだろう。
キヴォトスでは日常茶飯事と言ってしまえばその通りだが、それにしてもの話だろう…
…まぁ、あまり気にしてはいないのだが。
「あぁ、そこは気にしないで大丈夫ですよ…パルスィ様が何とかしてくれたらしいので」
文字通り『何とか』してくれたらしい、私は具体的にはそれが何なのかは知らないのだが…*1
他ならぬ彼女がそう言ったのだ、そう言われたからには私は変な心配をせずに与えられた使命を全うする事に全力を尽くすべきだろう。
「貴女のお姉さんは何者なんですか!?」
「…さぁ…?」
正直な話、私は彼女の事を全然知らない。
彼女はあまり自分の事を話そうとしないのだ、聞かれた事をほんの少しだけ話してくれる、そんな断片的な情報しか私は知らないのだ。
寿命の話だって最近聞いたばかりだ、彼女が未経験ではないと知ったのも先日の話である。
…そんな彼女に惹かれてしまうのだから、感情というものはどうしようもないのだが。
「さぁ…って、妹なのに知らないんですか…?」
「…ぁ、そういえば言ってませんでしたね…」
「私はパルスィ様の妹でも何でもないですよ、その方が都合が良いからと妹を名乗っているだけです」
そう、そう名乗った方が色々と都合が良いのだ。
決して邪な意図があったりする訳では無い、断じてそのような思惑があったりはしない。
…本当である、この方が都合が良いだけである。
「…うぇぇぇえ!?!?本当ですか!?!?」
「本当です」
「ど、道理であまり似ていないと…」
「共通点を探す方が難しいでしょう…」
逆に何故怪しまないのか、もう少し疑ったりはしないのだろうか。
まぁ、疑う理由もないだろうし今は色々と複雑な事情がある場合もあるのでその選択もまた正解なのかもしれないが…
…まぁ、この話は一旦置いておく事にしよう。
再びすれ違ったアリウスの生徒と思わしき人物を出会い頭に銃で殴りつけ、そう切り替える。
「…それ、鈍器として使うモノなんですか?」
「いえ、本来は銃として使うべきモノです」
構造も形状も一般的な銃のソレとは違うが、私の武器だってれっきとした銃である。
当然だが撃つ事は出来るし、本来だったらそのようにして使うべき武器である…
そう、本来だったらそうなる筈なのだが…
「…えぇ、私だって本当は銃として扱いたいんです」
「なら、そうすれば良いんじゃないですか…?」
「…あまりにも燃費が悪いんです、この銃は…」
私の使っているこの銃は、アリスの持っている光の剣のレプリカのようなものである。
エンジニア部の面々は同じ物を作りたかったらしいが、予算や時間の問題で私の持っているコレはアリスの劣化コピーとなっている。
詰まる所、とんでもなく燃費が悪い。
数発撃っただけでエネルギー不足に陥り機能を停止する、ポンコツとまではいかないが長期戦には明らかに向かないような性能をしているのである。
「肝心な時に撃てない、という状況を避けるためにも出来る限り弾を撃ちたくないんですよ」
「武器を変えれば良い話なんじゃ…」
「嫌です、大切な人とお揃いなので」
「ん〜・・・なら仕方無いですね!!」
理解が早くて助かる、こういう素直な面は彼女の良い所なのかもしれない。
…逆に言えば素直過ぎる気もするが、そこもまた御愛嬌と言った所だろう。
「…時に、レイサさん」
「はい、なんですか?」
「貴女は、自分がなりたいモノになれていますか?」
ふと、思い立っただけのその質問。
深い意味があるのかと言われたらそんな事はないが、何処かその答えに期待を抱いている自分もいる。
そんな、少しだけ複雑な感情による質問。
言うならば、自分の『使命』を見失った自分に対する自虐のような質問。
「…ん〜・・・素直には頷きづらい質問ですね、理想の自分にはなれてない気もしますし…」
「それでも、自分のやりたい事やするべき事はきちんと全うする事が出来てると思いますよ!!」
「…時々、空回りしちゃいますけど…」
…まぁ、何となく予想出来ていた答えではある。
彼女は眩しい人間だ、それでいて不器用なため色々とミスをする事はあるのだろうが…
それを含めて、彼女は眩しいのだろう。
…これはあくまで予想だが、パルスィ様も同じ事を思っているんじゃなかろうか。*2
「…いえ、とても良い事だと思いますよ」
「そうですか?」
「えぇ、私も見習いたいものですね」
お世辞ではなく本心からそう思いながら走り抜けていけば、奥に再び人影が見える。
再び交戦かと銃を構えるが、どうやらそういう様子ではないらしい。
「さて、と…」
視界に映ったのは、数人の人物。
「む、新たな敵か?」
「なっ…ま、まだ来るの!?」
銀色の髪の翼が綺麗な生徒に、正義実現委員会の制服を着ているピンク色の髪の生徒。
同じくピンク色の髪の生徒に、珍妙な鳥のようなキャラクターのバッグを背負った生徒。
そして、もはや見慣れたと言っても過言ではない…
“あれ、ケイ…?”
このキヴォトスでは有名な、一人の大人。
「…先生、貴方に助力するのは癪ですが…」
私はこの大人の事があまり好きではない、言ってしまえば嫌いな人間に入るかもしれない。
だが、彼が今回の一件で何らかの被害を受けるというのもまた気に食わない。
それに、私はパルスィ様からこの大人に協力するようにと言われているのだ。
「パルスィ様のためです、この水橋ケイ…」
「…えっ…ぁ、宇沢レイサ!!」
「微力ながら、お力添えさせていただきます」