供給の多さにニコニコしてはいるんですが、同時に連載しているもう一作品のせいで中々時間が取れず…
というわけで1ヶ月振りの更新です、つらい…
「うぬらぁぁぁぁあ!!やったりますよ〜!!」
攻撃の手を打ってくるガスマスクを付けた生徒を捌いて、捌いて、捌き続けて。
ようやく終わりが見えて来たのを良い事にいつも通りのテンションで騒ぎ始める彼女。
出会ってから今までに経った時間というものはそれ程多くない、とは言え既に慣れたものだ。
が、この場でソレに慣れているのは私だけである。
「…あの、ちょっと…」
「…すいません、こんな状況で騒がしくしてしまい…」
「ぁ、いえ、お気になさらずとも…」
割と真面目な盤面、いつものような喧嘩レベルではない戦闘が行われている真っ最中なのである。
何というか…その、空気感が悪くというか…
…仕方が無い事ではあるのだが、気まずくもなる訳だ。
やはり彼女のこういう所は直せるように手を差し伸べた方が良いのではないだろうかと、私自身にも今置かれている状況とは真反対の呑気な思考が頭を過ったところで…
物事はそう上手く行かないと言わんばかりに、危惧していた自体が起きた訳である。
「なっ…!?」
「増援部隊が…こんなに早く…!?」
「…やはり、そう来ますか…」
予想はしていた、事前に察していた。
だからこそ彼女は、パルスィ様は私とレイサさんを別行動させて此処へと配置したのだろう。
結果として、その行動が功を成している。
とは言え、あくまでそれは予想であって本気にはしたくなかった事なのだ。
「数が多い…アリウスの半数近くはいる…」
「あはっ、ビックリしちゃったかな?」
ここまでの状況の動きを見て確信してはいたが、やはりこの場に現れるのは彼女。
耳にした事がある声、一度顔を合わせた事のある者。
「ぁ、貴女は…!?」
“ミカ…?”
「やはり、貴女でしたか」
綺麗に予想が当たった、当たってしまった。
ティーパーティーの代表を担う三人のうちの一人、聖園ミカ。
本来であればこの場にいるべきではない人物が、正しい道を歩んでいるのなら今目にする事がない筈の人物が。
此処が私の居場所だと言わんばかりに笑みを浮かべながら、私達の前に立ちはだかっていた。
「…出来ればこうして対面したくは無かったのですが、これもまた避けられなかった運命なのでしょう…」
「ふぅ〜ん…察しが良いんだね、それともわざわざ私の事を嗅ぎ回ってたのかな…」
返答はしない、何を言っても無駄だから。
今の彼女にどう言葉を掛けてもきっと状況は変わらない、場合によっては悪化する事さえあり得る。
敵を前にして流暢に言葉を紡いでる余裕なんてある筈がない、それを得意とする人物に心当たりはあるが…
彼女は、色々とイレギュラーな存在であるから。
「ま、そんな訳で…」
「私が本当の『トリニティの裏切り者』なんだよ、今まで騙しててごめんね?」
改めて、彼女の口からそう語られる…
が、それを素直に聞き入れろというのもまた難しい。
「そ、そんな…そんな筈が…」
“ミカ、君は…!!“
「駄目です!!気持ちは分かりますけど…今は、もう少しだけ待っていてください!!」
反則とも言えるような手段で事前に情報を掴んでいた私達とは違い、彼女達にはこの裏切りは予想外だった…
部外者である私ですら最初は疑ったのだ、同じ学園の生徒である彼女達が混乱するのも無理はない。
先生もまた、その例外ではないだろう。
「…で、私にもあんまり時間が無いからさ…」
「ナギちゃんを何処に隠したのか教えてくれる?ほら、痛いようにはしないからさ?」
「そ、それは…」
…分が悪い、ただでさえ戦力の差や数字的な差があるのだ、それに加えて此方は消耗している。
私の役目は彼女達の打倒ではないにしろ、時間稼ぎをしろというのも中々に骨が折れるような状況だ。
このような事になるならもう少し事前に対策を…と、今更そんな事を考えるのは所詮後の祭りである。
だが、こんな状況でも彼女ならきっと…
「あら、自意識過剰な勘違いは嫌われるわよ?」
たった一人でも、状況を動かしてくれる筈だと。
「わざわざ、隠してなんかないのにねぇ…?」
「パルスィさん!!」
「ごめんなさい、少し手間取ったわ」
その言葉と共に現れたのは、待ち望んでいた彼女。
たった一人の力で状況を動かし、己にとって良い方向へと引っ掻き回すイレギュラー。
全てを見通して、私の計画を狂わせた人。
それと同時に、私の心を狂わせた人。
そんな彼女の背中には、これまたティーパーティーの代表生徒の姿が。
「…ミカ、さん…」
「だから事前に言っといたのに…ほら、気を強く持ちなさい、呆けてる場合じゃないわよ」
狼狽える彼女は桐藤ナギサ、今目の前にいる『トリニティの裏切り者』の正体を誰よりも追い求めていた人物。
事前にある程度の説明はされていたようだが、それでもこの状況には困惑を隠せない様子…
…無理もないだろう、この場ですぐに感情に釣られず対応が出来る人材は非常に限られてくる筈だ。
それとも、普段だったらそれが出来る彼女も相手が相手だからこそ感情に流されているのか。
「…飛んで火に入る何とやら、ってヤツ?」
一発触発と言わんばかりにお互いを睨み付ける二人…
そこに込められた感情は理解出来ないが、少なくともパルスィ様から向けられているその瞳に込められている感情は色々と複雑なように見える。
言葉にして表すのは困難だが、言い表すのならば…
「それは残念ね、奇遇にも私から見れば愚かにも策にハマったのは貴女の方なのよ」
慈悲や同情、哀れみの類だろうか。
そんな思考にふけりながら辺りを見渡す私を待ってくれるほど戦場というものは優しくはない。
漫画やゲームのようなご都合主義の会話場面ではないのだ、我慢しきれないといった様子で銃弾を放った生徒が一人…
銃弾はパルスィ様へと肉薄し、その身を貫く前に…凍る。
「さてと…歪んで腐り切ったこの学園の闇を、粉々にぶっ壊してやりましょうか」
ここぞとばかりに緑眼を光らせ、私も目にした事のないような奇怪な技を使う彼女。
常識から外れた一人の人外の姿が、そこにあった。