「パルスィ様!!今援護に…」
「ケイ、ステイ」
先生の下から離れ、私の方へ駆け寄ろうとしてくるケイの事を諌める。
ケイのその行動が誤っているとは言わない…が、今の状況で先生を守る者が減るのは非常にまずい。
それがたった一人であろうと、数の暴力を受けている現状では痛手にも程があるのだ。
そんな理由があるが故に、泣く泣く援護を断る。
「貴女はレイサと一緒に引き続き先生の補助、私達はミカの相手をするから」
「…貴女が言うのなら、それが最善なのですね」
と、そんな理由を話している時間すら今は隙となる。
狂信はいつか身を滅ぼすが…こうして私の事を信頼して場を任せてくれるというのなら話は別だ。
「そこまで信じられちゃ困るけど…今回は、そういう事」
「…その言葉、しかと受け取りました」
逆に私も、彼女の事を信頼している。
これで先生と補習授業部のメンバーはきっと大丈夫だ、エリドゥの一件で目にしたからこそ分かるが先生が補助に付いている時の生徒は…誇張抜きに飛び抜けて強い。
つまりこちらから余計な心配を掛ける必要はないのだが、そもそもそんな事をしている場合じゃないというか…
「…良かったの?折角の援護を断っちゃって」
相対するのは、聖園ミカ。
そしてアリウスの生徒と思われる顔を隠した生徒、それもパッと数えられない程の数。
ぐだぐだと考え事をしている余裕があるかと聞かれ、そこで『ある』と答えられるほど私は強くはない…
「正直、自己保身を優先するなら受け入れてたけれど…」
…そう、本来の私はあまり強くない…が。
嫉妬、恨み、それらに準ずる負の感情。
彼女達の行動の根本にその感情がある限り、私の力も相対的にブーストが掛かっていく。
加えて此処はトリニティ、ゲヘナやアビドスに比べて『嫉妬』の濃さが目に見えて違う。
つまり、つまりそれがどういう事か。
「今の私、生憎ながら絶好調なので?」
俗に言う、強者側に片足を突っ込む事が出来るワケだ。
「へぇ、随分と自信満々に囀る…ねッ!!」
その言葉が煽りに聞こえたか、実際煽るような言い方と表情でそう返したからか。
先陣を切り真っ先に突撃してくるミカ、その攻撃方法は…銃火器の類ではなく、単純な拳。
想像よりは速いが、受け止める事は出来…
…駄目だ、避けろ、間違いなく腕が吹き飛ぶ。
「…口先八丁は、得意分野なのよ」
手を出しかけた…が、すんでのところで腕を引っ込め身体を逸らし拳を避ける。
そのまま背後に下がり距離を取る、一旦落ち着こう…
別に彼女が私より圧倒的に強いとか、そういうレベルで苦しい状況に立たされている訳ではない。
まぁ、想像に比べれば何倍も強かったがまだ理解出来る範疇の相手なだけマシである。
恐らく私が殺る気かつ、タイマン前提なら難なく彼女を退ける事だって出来る筈だ。
だが、今は絶賛混戦中の多対一。
一発でも攻撃を受ければ…死なないにしろ、戦闘続行は厳しくなる私に対して相手は特攻兵の如く突っ込める。
鬼畜な弾幕ゲーじゃないんだから、もうちょっと難易度調整というものをしっかりしてもらいたいものだ。
銃弾を『避ける』事を前提に話を進めないで欲しい。
「ナギサ、早いところ感情の整理を付けなさい」
と、背後で物陰に隠れるナギサに対して催促する。
「そ、そんな無茶な…!!」
「バッカねぇ、貴女の想像してるような意味じゃないわよ」
何も私は彼女を切り捨てる決断をしろだとか、彼女と対立する決断をしろだとかそういう事を言ってる訳じゃない。
信頼、信用、彼女を信じたいという感情論。
痛いほどに理解出来ると同時に、その思いが間違っているとは決して思わない。
だからこそ私は、感情の整理を付けろと言ってるんだ。
「あの子は、ミカはあんな事をする子なの?」
信じているなら、信じたいと言うのならば。
それ相応の覚悟を持って、彼女と向き合えと。
それ相応の理由があると、彼女からそれを聞き出せと。
「…少々、時間をもらえますか?」
「合点承知」
もしナギサにそれだけの思いがあると言うなら、私はその気持ちを無碍にはしない。
そういう意味での質問だった訳だが、返ってきた答えは『そういう事』であろう。
私の役割は時間稼ぎ、本題に入るまでの前座。
「戦闘中に楽しくお話なんて…」
「あら、会話は嫌い?」
生憎私は下っ端妖怪、下賤で下等と言われるほどに地に落ちている優れているとは言えない存在。
いいや、だから、だからこそ。
「…いいや、アイスブレイクは大の得意だよ!!」
「それは良かった!!」
時間稼ぎや足止めの類は、本職と言っても過言ではない。
「力任せ、荒削り、やる気あるの?」
しっかりと見れば避けられる彼女の攻めの手、その後ろから飛んでくる銃弾も彼女を盾にするようにして避ける。
やれない事はない、私でも十分に相手取れる。
「そう言ってる割には余裕、無さそうだけど?」
「あんまり大人を舐めるモンじゃないわよ」
たかが一瞬、されど一瞬。
ミカが地面を殴った事によって生まれた衝撃が後ろの生徒達まで被害を及ぼし、出来上がった刹那の隙。
「『余裕が無い』ように、見せてるのよ」
最初から狙っていれば、その隙を狙って相手を仕留める事だって難しくはない。
これである程度はやり切っただろう、やっと余裕が出来た。
まぁ、所詮はスペルカードでもない通常弾幕。
数時間…いや、数十分で目覚めるかもしれないが今はその時間だけでも十分である。
「ふ〜ん…言うじゃん」
そんな惨状と私の言葉が鍵となったか、彼女の表情に浮かんでいた苛立ちが余計に強まった。
それを見て警戒した…警戒したまでは良かった。
「じゃ、こういうのはどう?」
…さっき、彼女の事を理解出来る範疇の相手だと言ったが前言撤回させてほしい。
「…あのねぇ…何でもかんでも神秘の力だって言えば通ると思ってる節、ない?」
自発的に隕石を降らせられるような阿呆が、理解出来る範疇の相手な訳がないでしょうが…!!
「あははっ、私に言ってるのかな?」
「ただの独り言よ…!!」
皮肉であろうその言葉、当然点ではなく面で殴ってくる隕石を避けられる筈もなく…
残念ながらゲームオーバー、私の時間稼ぎもこれでおしまい…
「…まぁ、こんなものかな…」
…なんて、普通だったらそうなるんだけど。
「『取った』」
「!?」
残念ながら私は何処ぞの呑兵衛鬼共と違って、自分が好調な時であろうと慢心しないタイプなのだ。
それがつまりどういう事なのかと聞かれれば…
「…どうやって背後まで移動したの?」
「瞬間移動でもしたように見えた?」
初めから、保険を仕掛けておいたのだ。
崩れ落ちた瓦礫の中から顔を出す私と、彼女の事を後ろから拘束するもう一人の“私”。
「まぁ、やってる事は似たようなモンだけどね…」
「「最初に言ったじゃない、私“達”が相手するって」」
本体が行動出来なくなった時のために、戦闘開始前から“雀”を出しておいたのだ。
使い魔のようなものではあるが、アレだって紛れもなく私ではあるのだからいざと言う時のカバーは出来る。
結果として、こう上手く作用してくれた訳だ。
「ふたりはパルキュアってワケ!!」
「…あんまり調子乗ってるようだと舌切るわよ」
「酷いっ!!鬼だっ!!」
「鬼だけど?」
まぁ、結局のところ避けれた訳ではないので防御に使った右半身の一部が消し飛んでいるのだが…
『取り繕う』のは得意である、見た目だけならいくらでも誤魔化す事が可能だ。
「…やり切った感を出してるとこ悪いけど、私をこんな細い腕で拘束出来ると思ってる感じ?」
と、呆れたような声色でそう言葉を放ってくるが…
「まっさかぁ…私はそんなに馬鹿じゃないわ」
そもそも今の私は満身創痍、そして私の能力によって動いている雀もまた満身創痍寸前。
拘束力なんて皆無に等しく、彼女が抜け出す気になれば一瞬で逃げる事が出来てしまう…
…のだが、あくまで拘束は手段であって、最終的な目的は別にあるのだから。
「でもね、私の使命はちゃんと全うしましたので?」
「それって、どういう…」
「ミカさん」
待ち人来たり、ようやく主役の登場である。
「…どうしたのナギちゃん、ノコノコと前に出てきて」
「ミカさん、目を見て話してください」
「………」
彼女の目は真剣な物である、もう目を逸らさないと言わんばかりの決意をした瞳である。
それは、責任というものを勘違いせずに負う事が出来る、大人と同じ瞳。
「…ちゃんと、お話をしましょうか」
言葉足らず二人組の、会話の時間である。
この度!!なんと!!
丹羽にわか(https://syosetu.org/user/205410/)様が!!
嫉妬心23話『
挿絵として使われていただく許可を得ましたので、23話の最後に掲載させてもらっております!!
1日中ニコニコしてるくらいには喜んでいました!!
https://x.com/adappast/status/1796725751330615594?s=46