透き通った世界の下の嫉妬心   作:хорошо!

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故に彼女は己の願いを謳う

「ケイさぁぁぁぁぁん!!お願いします!!」

 

響き渡るレイサの叫び声、相変わらずの声量。

しかしながら混戦と化している今の状況、そんな中でレイサは前線を張っている。

今回ばかりは、そのくらいが丁度良い大きさだった。

 

「チャージ完了…」

 

その言葉、しかと聞き届けたと言わんばかりに己の武器を構えるケイの姿。

その銃口から、彼女の性格的に滅多に振るわれる事のない力が…光が迸った。

 

「光よ…ッ!!」

 

…レプリカな筈なのにとんでもない威力である、まあオリジナルはもっとおかしいのだが。

周囲の被害が凄い事になっている、そんな場合ではないのは分かっているが色々と後が大変そうである。

 

「どうですか!!どうですか!?」

 

「…一先ずは、片付いたと思います…」

 

よくもまあ、あの人数差を覆したものだ。

彼女達の実力を侮っていた訳ではないのだが、それにしてもこうして見ると圧巻の一言である。

 

“大丈夫、こっちも何とかなったよ”

 

どうやら先生と補習授業部の方も戦闘を終えたようで、手を振りながら無事を伝えてくる。

それを見た彼女、ケイは何かを思い出したかのようにハッとして声を上げる。

 

「…早く、パルスィ様の援護へ…!!」

 

「あぁ、ごめん、こっちも大方片付いたわ」

 

まぁ、こうして語っている事からも分かる通り少し前から彼女達の様子を見ていたのだ。

さっさと話し掛ければ良かったのだが、ちょっとダメージがダメージなので回復に専念したかったというか…

まだ私にはやるべき事があるので、気を張り続けていたというか、そんな感じである。

 

“…いつの間に、こっちに来たの…?”

 

「さぁ…私、神出鬼没ですので?」

 

「先生、多分気にしちゃ負けですよ!」

 

“そっかぁ…”

 

そんな感じでいつも不思議な存在を演じているせいか、もうそういうものとして受け入れられている。

私としてはとても都合が良いので気にしていないが、それを受け入れてしまうのもまたどうかと思う…

いや、さっきのミカの隕石の件もあるし今更全てを気にしていたらキリがないというのもあるのだろう。

 

“まぁ、そっちも無事で良かったよ”

 

「…えぇ、これでも先生よりは丈夫だからねぇ…」

 

服のあちこちに砂埃や汚れが付いている先生の姿、しかしながら傷という傷は見当たらない。

そんな先生とは真逆、私の身体には汚れ一つない…生憎、ダメージを考えると中身はボロボロなのだが。

見た目だけはどうにか誤魔化せているが未だに右半身がマトモに動かない、まあ誤魔化せてるし結果として…

 

「…パルスィ様…」

 

…これ多分、ケイにはバレてるわ…

 

「…今は、ちょっと触れないでおいてくれる?」

 

勘なのか、私の誤魔化し方が下手だったか、それともやはりそういう事は分かるのか。

まぁ、いずれにせよ今私がこんな事になっているのがバレたら面倒な事になる気しかしないので…

それに関する話は後でお願い、と小声で彼女に耳打ちする。

 

「…後でお話ですからね、覚えておいてくださいね」

 

「ひゃー、怖い怖い…」

 

まぁ、大丈夫だと言った癖してやらかした私が悪いと言われればそれ以上でもそれ以下でもないのだが。

決して油断していた訳ではないが、想像以上に彼女が『出来る』人間だったというか。

ヒナやネル、ホシノに比べたらマシな気はしたが、比較対象がバグなだけで十分おかしい。

 

あれが本当に治安維持組織でも何でもないのか、本当に生徒会の一角なのか。

思い返すと苦笑しか出来ないが、まあ世の中にはそういう人物もいるだろうと…

住職の魔法使い名乗りながら魔法(物理)してくる人物だっているんだから、全然あり得る話だろう。

閑話休題、それはそれとして…

 

「…その様子だと、まだ何かあるんですか?」

 

私の様子から

 

「まぁ…ちょっと、これ以上話が拗れないように一走りしてこようかなと…」

 

あくまで蛇足ではあるのだが、もしもの事があるから…念には念を入れてというヤツだ。

万が一があってはいけない、その万が一に対応出来るだけの力を私は持っていないから。

 

「その状態で、まだ働く気ですか?」

 

「やりたい訳じゃないけどね、生憎私は一度決めた事はやらなきゃ満足出来ないタチなのよ」

 

中途半端という言葉が一番嫌いだ、やるからには徹底的にやらなければならない。

一度善行をすると決めたなら善行を、一度悪行をすると決めたなら悪行を。

全てを終わらせるまではそれを貫き通さなければ納得出来ないのが私、私という存在なのである。

それは多分、悔いを残さないために勝手に身に付いた自己防衛の意識なのだろう。

 

「…止めたところで意味がない事は理解しています、ですから私からはこう言わせてください…」

 

なんだかんだケイとの付き合いもそこそこ、彼女も私の事を理解し始めている。

そもさん私と関わろうとする人が少ないだけで、私は案外分かりやすい人間だったりするのだ。

ここで何を言おうが私が考えを曲げる事はない、そういう頑固者だという事は分かっているのだろう。

 

「決して自分の事を、軽んじないでください」

 

その上で、彼女は私の弱点を刺してきた。

 

「…はぁい、善処するわ〜…」

 

「その言葉、信じていますからね」

 

私の事をよく分かっているなと、私の面倒臭い性格を理解しているなと。

自分の事ながらよくもまあこんな面倒臭い私を理解しようと思ったな、とそんな事を考えてしまう。

けれど、向けられた好意を無碍にするような事を私に出来る筈もない。

 

「…んじゃ、ナギサ達の様子見お願いね」

 

「承知しました」

 

これは暫く無茶は出来ないなぁ…と。

本来釘を刺す立場の私が、多方面から釘を刺されている現状に自嘲しながら飛び立った。

 

 

◇◇◇

 

 

「…失う事の虚しさ、経験したからこそ痛いくらいに理解してるつもりなんだけど…」

 

失う事は辛い、心に穴が空くというのも分かる。

だからこそ出来る限り好意を伝え、貴方の事を想う人がいるのだと伝えるのだ。

そうすれば己の気持ちに踏ん切りが付き、相手としてもそれを意識する事で無茶をしなくなる。

それだけ聞けば、愛というのは良い事ばかりだろう。

 

だが他人を想う好意は転じて、呪いとなる。

 

「いざ自分が想われる側になると、やっぱり難しいものねぇ…」

 

他の誰でもない橋姫(愛し姫)と呼ばれる己の事だからこそ、改めて深くそう思わされた。




一次創作というものに手を出してみました。
もし良ければそちらの作品も読んでほしいと宣伝を、作者の執筆意欲が上がります。
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