1話 蘇る記憶
いつも最後の記憶は、巨人の口内だった。
それをバカのひとつ覚えかのように、何度も繰り返して生を終える。
幸いにも生まれ変わる前の記憶は、今まで思い出すことなく気を狂わせることもなかった。
なのに何故か今、莫大な記憶が脳裏を駆け巡る。
立体機動装置がまだ無い時代から十数年前の記憶まで、途方もない時間に頭がパンクしそうだ。
「―――っ。おい、貴様」
聞き覚えのある声にハッと正気に戻るが、そこにはキース団長が睨みを利かせていた。
それにしても―――。
「老けたなぁ〜」
髪の毛なんて全部抜け落ちてるじゃないか。
顔のシワも深くなっている。
自分の記憶にあるキース団長と見比べてしみじみしていると、勢いよく頭部を押さえ込まれた。
そして頭部からは絶対鳴ってはいけないであろう、ミシミシっという音を響かせている。
ヌッとこれまでにない恐ろしい形相でこちらを覗き込むキース団長。殺気もひしひしと感じた。
「何を寝ぼけたことを言っている。貴様は何者だ」
そう静かに問いかけた彼に、私は敬礼を行う。
「トロスト区出身、ノア・リピーツです」
「そうか、ノア・リピーツ。その立派な敬礼の割には上官への態度がなっていないようだが?? 死ぬ寸前まで走ってろ」
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キース団長。いや、キース教官の指示通り現在死ぬほど走らされている。
そして罰則を受けたのは私だけでは無いようで、女性が1人走らされていた。
どうやら通過儀礼中に盗んだ芋を食べていたとか。
走らされてる理由がなんとも面白い。
真上にあった太陽ももう既に西に傾いており、だいぶ時間が経っていることを伺える。
一緒に走っている同志の足取りもフラフラで、危なっかしかった。
そう思って見ていると、彼女は足がもつれて転びそうになっており即座に支える。
「大丈夫?」
「あ、すみません。ありがとうございます」
息切れ切れにそう言う彼女は限界も近そうだった。
体勢を立て直し、並行して走る。
「あんまり無理はするなよ。そう言えば自己紹介がまだだったね。私はノア・リピーツ、よろしく」
「私はサシャ・ブラウスです。よろしくお願いします」
キツそうなのに丁寧な言葉使いを崩さない姿に凄いなと正直に思った。根性はかなりあるようだ。
「ノアはなんでそんなに余裕そうなんですか」
「慣れ、かな」
今世は体力がかなりありそうな気もするが、何百年と鍛え抜かれた精神も相まってこれくらいは大丈夫そうだ。
そして私たちはキース教官の指示があるまで走り続けた。