遂にとっぷりと日が暮れ、サシャが限界になったことから私たちは開放された。
足元がおぼつかないサシャに肩を貸して兵舎へと向かう。
それにしても耳元で肉々とブツブツ呟く彼女に、思わず苦笑せざるを得なかった。
そしてピタリと静かになったと思ったら、突然奇行種のごとく飛び立っていった。
さっきまで肩を貸さないとまともに動けなかった人とは思えない俊敏な動きで思わず固まる。
それと同時に叫び声が聞こえてきた。
慌てて近づくと金髪の女性とパンに食らいつくサシャの姿がそこにあった。
食べ物センサーが反応したのか。
金髪の女性は私に気づくと困ったかのような顔をした。
「ごめんなさい。本当はこのパンを半分にして、あなたにも分けようと思ったのだけれども…」
サシャの奇行に困っているのかと思いきや、思いもよらぬ優しい心に驚く。
わざわざ私たちのためにパンを持ってきてくれたのか。
「ありがとう、その気持ちだけで嬉しいよ」
「おい」
彼女にお礼を告げると、横から声が聞こえた。
目線を向けると目の鋭い女性が立っている。
「何やってんだ?」
彼女は静かにそう問いた。
それに対して金髪の女性が答える。
「えっと、この子たちは今まで走りっぱなしで」
「芋女やこいつの事じゃない、お前だ。お前何やってんだ」
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結局サシャはユミルとクリスタの2人に連れて行かれた。
私では部屋まで送り届けることは出来なかったため助かる。
ズルズルと引きずられていったサシャたちの姿が見えなくなると、私も自分の部屋へ足を進めた。
正直お腹が空いてないかと言われればそうでは無いが、耐えきれぬほどでは無い。
体を軽く拭いてさっさと寝てしまおう。
自分の部屋が近づくと見覚えのある人影が見えた。
「あれ、ジャン。ここで何してるの?」
腕組みをしながら壁に寄りかかっているジャンに声をかける。
「お前初日から何やってんだよ。とりあえずお前の分のパンを残してやったから食え」
ジャンはそう言うと布に包まれたパンを私に寄越した。
思わぬ彼の行動に目を見張る。
「私のためにわざわざ取っておいてくれたの?」
「別にお前のためじゃねーよ。残ってたから仕方なくだ。貴重な食料を無駄にできねーし」
そっぽを向きながら彼はそう言った。
相変わらず素直になれないこの幼なじみに笑みがこぼれる。
「ジャン、ありがとう」
「……おう。さっさと食っちまえよ。教官に見つかったら俺まで怒られる」
「うん、分かった」
こうして長い夜は過ぎていった。