エレンは結局ぶら下がることが出来ないまま朝を迎えた。
それでも教官を前に彼の眼光は鋭く、何か強い意志を感じる。エレンは全く諦めていなかった。
あぁ、彼はきっと大丈夫だ。
根拠なんてないが、彼の姿を見てそう強く感じる。
そしてそれはあながち間違えではなかったようだ。
エレンが吊るされたまま姿勢を保っている。
周りからも「おぉ!」と歓喜の声が上がった。
しかしそれはつかの間の出来事。
エレンはその後、体勢を激しく崩してしまう。
そんな彼に教官は降ろすように指示を出した。
それにしても、なんだろう。この違和感は。
エレン自身に問題があるとは全く思えなかった。
『なんでだ? 間違ってはいないはずなのに、なんでひっくり返るんだ??』
突如アンヘルとの記憶がフラッシュバックしてきた。
装置での実験でどうしても体勢が取れなかったあの頃の記憶が。
『この装置が可笑しいんじゃないのなら……。あぁ、なるほど―――』
「ベルト、か」
「ベルト?」
隣にいたジャンが訝しむのを尻目に前へ出る。
「おっおい! ノア!!?」
慌てたようなジャンの声は気にせずに、今思いついた可能性を教官に告げる。
「キース教官、1度エレン・イェーガーと私のベルトを交換してもらってもよろしいでしょうか?」
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「ノア。なんだよ、ベルトって」
エレンは私のベルトを身に付けながら不安気な表情を見せた。
「騙されたと思ってやってみて。エレン、きっと大丈夫だよ」
そんな彼を少しでも落ち着かせようと柔らかく話す。すると彼の中でも覚悟が決まったのか、表情から不安は消えていた。
「よし、やってやる!!」
そう意気込んでエレンは釣り上げられた。
出来ている。
安定しているか? と言われればそうでは無いが、ひっくり返ること無く姿勢を保っていた。
「これは、一体??」
「キース教官、ベルトが破損していたみたいです。確認お願いできますか??」
エレンのベルトを教官に渡しながら、困惑する彼に軽くVサインを送る。
「……確かに破損しているな。ここが破損するなど聞いたことはないが」
「でっでは、適正判断は……」
教官の言葉にエレンは緊張した面持ちで問いかけた。
「問題ない。修練に励め」
これであとは心配ないだろう。
ジャンの元に戻ろうとする途中、アルミンに声をかけられた。
「ノア、凄いね。よく装備の欠陥に気づいたね」
「いや、考えられる要因を1つ潰しただけだよ。大事でしょ? そういうの」
私がそう言うと、彼は頷きながら「確かにそうだね」と話した。そして彼はエレンの方に目線を戻して手を振る。
「目でどうだ! って言ってるよ」
「いや、違う。これで私と離れずにすんだと思って安心している……」
唐突のミカサの発言にその場にいた私たちは、彼女に対して目を見張った。