一瞬だった。
エレンが蒸気に埋もれて再び姿を現した時、超大型巨人は大きな足跡を2つだけ残して消えてしまった。
「超大型巨人が消えた! エレン、ノア! お前たちが倒しちまったのか!?」
コニーが壁上から叫んでいるが、私も状況が理解出来ずにエレンを見る。
エレンもエレンで何やら混乱している様子だ。
「違う、5年前と同じだ。こいつは突然現れて、当然消えた……」
「エレン、とりあえず壁上へ登ろう」
考え込む彼の腕を引っ張って、私たちは壁上へと降り立つ。そんな私たちに心配そうな表情でトーマスが駆け寄ってきた。
「すまん、逃がした……」
「何謝ってんだ。俺たちなんて全く動けなかった……」
「おい! そんなこと話している場合か!!」
申し訳なさそうにするエレンとトーマスが話しているとコニーが焦りに満ちた声で叫んでくる。
「もう壁は壊されちまったんだ! 早く塞がないと巨人たちが入ってくるぞ!!」
「何をしてるんだ、訓練兵!!」
そんなことを話している間に数名の駐屯兵が壁上へと降り立った。
駐屯兵の指示に従い私たちは本部へと向かう。
本当にこのままで大丈夫なのだろうか。
胸騒ぎを覚え壁の方へ振り向くと、穴からもう既に巨人が入ってきていた。
駐屯兵が必死に戦うが呆気なく捕食される。
それはそうだ。だって彼らは、巨人との戦闘経験なんて皆無なんだから。
「おい、ノア。何ちんたら飛んでるんだ。急ぐぞ」
「コニーごめん。先に向かってて」
あ、おい! ノア!! と制止する声を振り払い、また1人捕食中の巨人目掛けてガスを吹かし刃を振りかざす。
「まずは1体」
手に付いた返り血を払いながら穴周辺を見渡した。
一瞬で。そう、一瞬で前線は壊滅状態となっていた。
壁上で私たちに声をかけてきた駐屯兵の姿も見るに堪えない。
思いを馳せる時間なんてない。
この一瞬一瞬でまた誰かが死んでいるんだ。
調査兵団が壁外調査に行っている今、私がやるしかない。
だって私は調査兵団なんだから。
「だてに何百回も巨人に喰われてないよ!」
ただひたすら肉を削ぐ。
足、腕、うなじ。
素早くそれでも確実に。
出来る限り、前線でこいつらを食い止める。
「訓練兵!!」
ハッと意識が戻る。
声をかけられた方を向くと、屋根の上に駐屯兵が数名そこにいた。
援軍だろうか?
私を掴もうとする巨人の腕からうなじにかけて一気に肉を削ぎ落とし、駐屯兵のいる屋根へと降り立つ。
「先駆けご苦労だった。これは君が??」
彼らは5体ほど蒸気を立てている巨人の死骸に目を向けて私に問いかけた。
「はい、すみません。逃した巨人も多く……」
「いや、君は最前線でよく頑張ってくれた。ここは我々任せて装備の補充をしてこい」