ネオドミノのテッペンに立ちたくて   作:ジェム足りない

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また2万字超えちゃった
遅れたのは大体そのせいです……


番外編 忍者VSナイト 宿命の決戦

『──! ──!』

「うーん……」

 

 ぺちぺち、ぺちぺち。

 頬に優しく触れてくる感触と、耳触りの良い声。外界からのそれらの刺激を受け、俺の意識が光届かぬ深淵より浮上する。

 

「ううむぅ、起きたよぅ……ほわぁぁ……むう?」

 

 しかし、そうして意識を覚醒させた俺の目に飛び込んできたのは。

 

「……は?」

 

 見渡す限り何もない、月明かりで照らされた荒野だった。いや……よく見たら、遠くの方に町っぽいのが見える?

 いやいやいやいや。待て、ちょっと待て。一体何が起きたんだ。とりあえず思い出せ、記憶を辿るんだ。えっと、まずデュエル修行のために峠に行って……帰ってきて、飯風呂終えて、ベッドに入って……。

 

「服が……それにデュエルディスクまで……?」

 

 そうだ、俺は確かに自分の部屋で眠りについたはず。それもパジャマを着て床に就いたはずなのに、目覚めてみれば謎の荒野。そして服装がいつもの──Tシャツとジーンズに、ライディングジャケットという──私服姿に変わっていた上に、腕にはデュエルディスクまで。

 

『……』

「……ん? ああ、えーっと……君は?」

 

 そうして記憶と現状の確認を終えたところで、俺のすぐ側にしゃがみ込み、こちらをジーっと見ている少女の存在に俺は気付いた。水色の髪を後ろで纏め、騎士を連想させる衣服を纏い。もう見るからに端正だとわかる、顔の上半分を妙なマスクで隠し──そして極め付けに、ドラゴンっぽい尻尾まで生えているその姿は、あからさまに人間のそれではなく。

 普通の人間ならば『ドラゴン娘!?』とでも混乱するところだろうが、しかし俺は、彼女のような存在に心当たりがあったりする。つまり彼女の正体は──。

 

「……カードの精霊?」

『……うん。会いたかった。会いたかったよ、我が主(マイ・マスター)!』

 

 そうして俺の言葉を聞いた少女は、嬉しそうに口元を綻ばせながら、突然俺を抱きしめてきたではないか。

 うおお、何だこの展開は……!? 柔らかいし、あったかいし、いい匂いがするし……こんなんされたら惚れてまうやろ~(激チョロ)

 ん? ()()()

 

「マスター? ……俺がか?」

 

 このカードの精霊である少女は、俺のことをマイマスターと呼んだ。つまり俺の所持するカードに宿った精霊なんだろうが……しかしながら、俺は彼女の宿っているだろうカードに対し、全く心当たりがなかったのだ。

 いや、だってマジで見覚えないし……。プリメラとトゥルーデアがね……美少女カードをデッキに入れさせてくれないの……。ボクは……たくさん入れたいのに……(萌豚海王)

 

『……うん? ああ、そうか……そういえばそうだったね。キミに会えた喜びに気を取られていて、ついうっかりしていたよ』

 

 俺を抱きしめたまま、得心がいったとばかりに頷いてみせる少女。それにしても、騎士のような恰好と合わさって、王子様のような子だな。

 

『ボクは正真正銘、キミに仕える精霊にして……最強のセンチュリオン。あの()()()()()にはしてやられたけど、こうしてボクが合流できた以上、もう心配はいらないよ。キミに仇なすものは全て、このボクが薙ぎ払ってみせよう』

 

 少女は俺から一歩離れると、地面に膝を突き──よく漫画やアニメなんかで、騎士系のキャラがよくやっている──敬礼のポーズを取る。

 いやちょっと待って、最強のセンチュリオン? 俺の知っているセンチュリオンは、プリメラたちうさぎさんチームだけなんだけど……まさか、デュエリストたちの間で噂されていた、ライバルチームか!?

 

「なるほどな、なんとなく読めてきたぜ……」

 

 OCG次元において、カードとはKONAMIが印刷するものであったが──この世界では、そうやってカード会社が印刷する以外にも、なんかこう……突然生えてくる(?)ケースが多々あるのだ。カードが書き換わったり、なんか気が付いたらデッキに増えてたり。

 今回の件も、つまりそういうことなんだろう。たぶん、きっとそうに違いない。

 

『理解が早くて助かるよ。本当は、ボクが真っ先に、キミの元へ馳せ参じるつもりだったんだけどね。でも次元の嵐に飲み込まれたせいで、キミを見失うどころか、力の一部を失ってしまって……』

「そっかー、大変だったんだなー」

 

 なんかよくわからないけど、苦労したんだな新規ちゃん。ところで、俺はこの子のことを、何と呼べばいいんだろう。

 

『うん……大変だった。キミを探し出すための手足として、たまたま近くにあった、この世界を支配したまでは良かったんだけどね。でもなかなか、キミを見つけられなくて……』

 

 んん、支配? なんか物騒な言葉が聞こえましてよ? フフ、風向きが変わって来たな……。

 

『それどころか、S-Force(セキュリティ・フォース)とかいう、ワケのわからない連中の介入まで許しちゃってね……』

 

 ため息を吐きながらそう告げる新規ちゃんであったが……ちょっと待って、S-Force? 今S-Forceって言ったよね? はえー、この世界にはS-Forceもいるのかぁ……。

 アイエエエ!? この子S-Forceに喧嘩売ったの!? うろ覚えだけど、次元の守護者って設定じゃなかったっけ!? ていうかリンク召喚を使う最新テーマが何でこの時代に出張ってきてんだよ! 時代を考えろよ時代を!*1

 

『見つけましたーッ!』

 

 とかなんとか俺が内心で焦っていると、噂をすれば何とやら。こちらに向かって高速で駆けてくる、何者かの姿と足音が! うおお、一体あのNINJAは何丸なんだー! さっぱりわからないぜー!(現実逃避)

 

『逃がしませんよ、竜騎兵(センチュリオン)ガーゴイル(ツヴァイ)! 武力による制圧と支配をはじめとした、貴女の行いは決して許されるものではありません! 法の裁きを受けなさい!』

 

 カッコよくポーズを決めて着地しながら、新規ちゃんをズビシ! と指差すのは、S-Forceのメインエンジンである乱破小夜丸──とその横に並び立つ、小夜丸の相棒である機械犬、ドッグ・タッグ。

 それにしても小夜丸ちゃん、うちの新規ちゃん──いやガーゴイルちゃん……も長いな。ツヴァイでいいか。ツヴァイにも負けねえくらいのすっげえ美少女だね。ヘイ彼女、俺とデュエルしない? 俺、MD(マスターデュエル)ではジャスティファイ抜きS-Forceを握ってた事もあるんだぜ?

 なんでジャスティファイ抜きかだって? いやその、メインのデッキと汎用にURポイントを吸われて……紙の方では持ってるから見逃して♡

 

『あれ……民間人?』

 

 あ、小夜丸がこっちに気付いた。キョトンとしたお顔が可愛いね。

 

『いやこの気配……もしかして人間!? アイエエエ!? 人間さんがなんで精霊界(ここ)に!?』

 

 めっちゃ驚いてて草生える。ていうかお前がアイエエ言うんかい。お前忍者だろ。言わせる側だろ。

 

『フ……せっかくの機会だし、紹介しておこうか。彼こそが我らセンチュリオンの担い手。このボクを使うに相応しきマスターさ』

『担い手ですって!? くうぅ、厄介な事に……!』

 

 得意気に胸を張るツヴァイと、それとは対照的に、悔し気な雰囲気で一歩後ずさる小夜丸。でもまあ、なんだ。なんとなく気まずいし、とりあえず挨拶でもしとくか。

 

「なんだかよくわからんけど、まあよろしくー」

『……いやでも、この状況をまるで理解してなさそうな感じ……まさか適性のある人間を拉致して……?』

 

 あら、小夜丸ってば冴えてる~。俺の状況を一瞬で見抜いてきたぞ。そうなんだよなー、寝て起きたら急にこんな状況に巻き込まれてたんだ。この子が何をやらかしたのかは知らんが、俺は無実なのでお家に返してちょ。ついでに罪なき俺の精霊ってことで、この子も一緒にネ。……駄目?

 

『……話が通じないね。でもこうしてマスターと再会できた以上、もうこんなところに用はない! ウェイクアップ・センチュリオン!』

 

 ツヴァイが威勢よく叫ぶと、どこからともなく、アーマーのようなものが飛来。そして、そのアーマーを装着したツヴァイは、俺を背後から片腕で抱き抱えた。さすがは精霊というべきか、その華奢な見かけに反して、かなりの力持ちだ。

 おお、いいぞいいぞ。面倒事は御免だからな、このままおさらばじゃー!

 

『だから“逃がさない”って言ってるじゃないですか! ドッグ・タッグ、デュエルフィールド展開!』

 

 俺を片腕で抱きかかえたまま、脚部のブースターを吹かして、離脱しようとするツヴァイだったが……しかし、小夜丸はそれを見逃してくれなかった。相棒のドッグ・タッグに向かって何事かを叫ぶと。

 

〈デュエルターゲット、ロックオン。強制デュエルモード・オン〉

 

 ドッグ・タッグは合成音声でそれに答え。そして、俺たちの行く手を阻むかのように、ドッグ・タッグを中心としたフィールドのようなものが張られたではないか。

 あ、よく見たらドッグ・タッグの背中部分が変形して、デュエルディスク……というかテーブル? っぽくなってるな。なるほど把握。つまり、デュエルで勝たなきゃ逃げられねえって事か。

 

『ふっふっふ……残念でしたね。これであなた達は、この私にデュエルに勝たない限り、この空間からは脱出できません! さあ、大人しく投降しなさい!』

『チッ……』

 

 ドヤ顔でこちらを指差す小夜丸と、それを受けて、苛立たしげに舌打ちをするツヴァイ。それにしても、まさかねえ……。

 

「奴をデュエルで拘束しろ、か……」

 

 まさか、善良な一般市民であるこの俺が、このセリフを言われる側になるとはな*2……感慨深いぜ。

 俺はデュエルディスクを起動すると同時に、ツヴァイの手をポンポンと叩いて、地面に降ろすよう要求する。

 

『え、何でデュエルディスクを起動しているんです? ま、まさか私とデュエルをする気ですか!? ていうかその虹色の光──モーメント!? まさか、過去の人間……!?』

 

 しかし、ツヴァイの方はともかく、俺が抵抗するのは予想外だったのか。デュエルディスクを起動した俺を見て、小夜丸が目を丸くする。

 しかしなるほど。小夜丸の反応的に、どうやらここは未来の精霊界らしいな。そっかー、小夜丸が過去に飛んできたんじゃなくて、俺が未来に飛ばされてたのかー。……もしかしてツヴァイって、とんでもないパワーの精霊?

 

『……そうだね。歯向かうというのなら、消えてもらうまでのこと。マスター、ボクの力も……!』

 

 ツヴァイは俺を地面に降ろした後、光の粒子になって、俺のデッキに吸い込まれていく。……デッキの厚み的に、2枚増えたか。ツヴァイがどんな効果をしているかはわからないが、まあセンチュリオンの仲間なんだ、問題はないだろう。

 

『ま、待ってください! いいですか、落ち着いて聞いてくださいよ? このデュエルは、ただのデュエルじゃないんです! なんていうか……ダメージが実体化するっていうか……!』

「問題ない、慣れているからな!」

 

 慌てて説得してくる小夜丸だが、サイコデュエル程度ならば──とあるおじさんのせいで──もう慣れてるので問題はない。いやホント、嫌というほどやったからな……。あと一般精霊である小夜丸に、ダグナーや地縛神ほどのパワーがあるとは思えないって打算もあるが。

 

『えぇ、なんで慣れて……? と、とにかく待ってください、貴方は騙されているんです! それに……過去の人間と勝手にデュエルをしたことが知られたら始末書もので──』

「デュエル! 先攻は俺だ! 俺のターン、ドロー!」

 

 そんなこと聞かされたら、余計やるしかないじゃないか! なんだっていい、小夜丸に始末書を書かせるチャンスだ!

 はわわー!? などと叫ぶ小夜丸を無視して、俺はデュエルを開始。デッキからカードをドローしようとしたのだが──。

 

「む……?」

 

 デッキのロック機能が働いていたために、カードを引けなかった。はて、何故に……ってそういえばそうだ、思い出したわ。

 

『え、えっと未来では……じゃなくて! この世界では、先攻のドローは廃止されているんです! あとエクストラモンスターゾーンっていう、新しいゾーンが追加されていたり、シンクロ召喚の他にも──』

 

 そうそう、小夜丸の言う通り、先攻ドローって廃止されてたんだよね。ネオドミノシティでのデュエルに慣れ過ぎてて、すっかり忘れてたわ。

 まあドローできないのなら仕方ない。とりあえず、初手に来てもらったツヴァイの効果を確認して……へー、いいじゃんいいじゃん。お、エクストラデッキも1枚増えてる。こっちの効果は……おお、こっちもいいねえ!

 

『──というわけなんです! わかりましたか? 狭いカードプールしか知らない貴方は、とっても不利なのです! あとこのデュエルは本当に危険なんです! わかったのなら、大人しくサレンダーを……』

「ん? ああ、わかったわかった。じゃあ改めて俺のターン! 俺は手札からフィールド魔法、スタンドアップ・センチュリオン!を発動!」

『わかってなーい!?』

 

 なんか小夜丸が騒いでいるが、最新版のマスタールールやらリンク召喚に関しては、元から知ってるから聞き流しちゃった。だって俺は元OCG民だからね、普通に知ってるからへーきへーき。

 

「スタンドアップ・センチュリオン!の効果で、俺は手札1枚をコストに、デッキから従騎士(センチュリオン)トゥルーデアを永続罠扱いで魔法&罠ゾーンに呼び出させてもらう!」

 

 手早くツヴァイの効果確認を済ませた俺は、フィールド魔法を経由して、デッキからトゥルーデアを呼び出した……のだが。

 

『ちょっとちょっと、呼び出すのが遅すぎるわよ! それに、なんであんなヤツをデッキに入れちゃうのよ!?』

 

 しかし魔法&罠ゾーンに現れた半透明のトゥルーデアは、いきなり文句をぶーたれてきたではないか。どうやら、ツヴァイの加入にご不満な様子。

 まあOCG次元でもライバルチームの存在は噂されていたし、やっぱりそういう(ライバル)関係なのだろうか。でも仮にそうだとしても、それはあくまで設定上の話だと思うんだけどなあ。

 

「えー、同じセンチュリオンの仲間なんだし、別にいいじゃん……」

『よくない! アタシとプリメラがいれば十分でしょ!?』

『あのぉ……すいませーん……』

 

 俺がプンスカと怒るトゥルーデアを宥めていると、放置プレイを食らっていた小夜丸が、申し訳なさそうな声色で話しかけてきた。ああごめんね、小夜丸の事ちょっと忘れてたわ。

 

『あ、ゴメン……』

 

 バツの悪そうな表情で謝るトゥルーデアはいい子だな。

 

「おっと、悪かったな。トゥルーデア、続きはまた後でな。今は……このデュエルに勝つ事が最優先だ! デュエル再開、俺は魔法&罠ゾーンのトゥルーデアを、自身の効果で特殊召喚する!」

 

 従騎士トゥルーデア

 ATK/1000 星4

 

「そしてトゥルーデアの効果により、トゥルーデア自身と、デッキの重騎士(センチュリオン)プリメラを永続罠として魔法&罠ゾーンに移動させ──魔法&罠ゾーンのプリメラを、自身の効果で特殊召喚!」

 

 重騎士プリメラ

 ATK/1600 星4 チューナー

 

『……ユージ。あとでいっぱい“お話”があるから、逃げないように』

 

 俺のフィールドに、ムスっとした表情のプリメラが現れる。トゥルーデアがそうだったように、プリメラもツヴァイの加入に対して、文句がある様子だ。

 ……しかしデュエル中だからと、すぐに小夜丸の方へと向き直ってくれたのが救いか。なんか苛立ちを全てぶつけるかの如く、小夜丸にめっちゃガンつけてるけど。不機嫌オーラ全開だし、こえーこえー。

 

『ひ、ひえぇ……凄い殺気が……!?』

 

 小夜丸もビビってて草生えますよ。いやー、プリメラの怒りの受け皿になってくれた、小夜丸ちゃんにはマジ感謝やで。頼む! そのままプリメラたちの怒りを受け止める、サンドバッグになっててくれー!

 

「プリメラが特殊召喚に成功した事で、俺はデッキから騎士魔防陣(センチュリオン・ファランクス)を手札に加え……続けて手札のウェイクアップ・センチュリオン!を発動! その効果でレベル8のセンチュリオントークンを特殊召喚する!」

 

 まずは新しいカードの1枚目。コイツは自分の魔法&罠ゾーンに表側でモンスターカードが存在する場合に、レベル4か8のトークンを生成できる速攻魔法だ。さらに墓地から除外する事で、デッキからセンチュリオンカードを墓地に送ることのできるオマケ付きでもある。

 

 センチュリオントークン

 DEF/0 星8

 

 ツヴァイの装着していた、アーマーそっくりのトークンが俺のフィールドに出現する。さあて、まずは1回目のシンクロ召喚といきますか。

 

「そして手札からチューナーモンスター、ドレッド・ドラゴンを通常召喚!」

 

 ドレッド・ドラゴン

 ATK/1100 星2 チューナー

 

「俺はレベル8のセンチュリオントークンに、レベル2のドレッド・ドラゴンをチューニング! シンクロ召喚──来い、神樹の守護獣-牙王!」

 

 神樹の守護獣-牙王

 ATK/3100 星10

 

 俺はど真ん中のモンスターゾーンに、牙王のカードをポンと置いた。このデュエルにはエクストラモンスターゾーンが存在するが、俺のデュエルディスクには対応したカード置き場が無いので、実質使用不可なんだよな……。

 

「続けて俺は、手札の竜騎兵(センチュリオン)ガーゴイル(ツヴァイ)の効果を発動! 自分フィールド上のセンチュリオンカード──すなわち、魔法&罠ゾーンのトゥルーデアを墓地に送ることで、手札から特殊召喚できる!」

 

 竜騎兵ガーゴイルⅡ

 ATK/2000 星8

 

『待たせたね、マスター!』

『……ふん』

 

 俺のフィールドに、先ほど見たまんまの姿のツヴァイが、高めのテンションで降り立ち──そんなツヴァイを、プリメラはムスッとした表情で見ていた。

 うーむ、これからは同じデッキでやっていく仲間なんだし、もーちっと仲良くしてくれるといいんだけどなあ。

 

「行くぜ小夜丸……俺はレベル8のガーゴイルⅡに、レベル4のプリメラをチューニング! 天を駆ける一条の光よ! 最強の騎士となりて、我がもとに舞い降りよ! シンクロ召喚──来い、騎士皇(センチュリオン)アークシーラ!」

 

 騎士皇アークシーラ

 ATK/3000 星12

 

 プリメラの変化した光の輪を、ガーゴイルⅡが潜り抜け──目も眩むような光が弾けた後に、蒼い装甲の巨大ロボが降り立った。バチバチと放電する光の剣を両手に構えたその姿は、実に格好いい。ちなみにアークシーラを置いた場所は、右端のゾーンだ。

 

『くうぅっ!? こ、この力は……!』

 

 そうして降臨したアークシーラを見て、小夜丸が慄きの声を上げる。俺からしたら『オーラがバチバチでカッケー!』って程度の感想なんだが、精霊的にはなんか凄いんだろう。なんか冷や汗をかいてるのが見えるし。

 

「ガーゴイルⅡはシンクロ素材になった時、墓地から手札に回収できる。そしてアークシーラは特殊召喚に成功した時、デッキからセンチュリオンカードを1枚手札に加えられる! 俺はデッキから騎士の絆(フェイス・オブ・センチュリオン)を手札に!」

『万能サーチですか。厄介な効果を……』

 

 小夜丸がその形の良い眉を顰めるが……まあ一応慣れているとはいえ、リアルダメージの発生するデュエルで、手を抜くわけにはいかないしね。……とはいえ、たった今デッキに加わったばかりのカードたちを使ってるので、回し方が甘いのはご愛敬。

 

「魔法カード、騎士の絆を発動。墓地のプリメラを魔法&罠ゾーンに呼び戻し──そして墓地のウェイクアップ・センチュリオン!の効果も発動! 墓地のこのカードを除外する事で、デッキから重騎兵(センチュリオン)エメト(ゼクス)を墓地に送る!」

 

 あとはエンドフェイズにアークシーラの効果を発動し、墓地のトゥルーデアを魔法&罠ゾーンに帰還させれば、相手ターンシンクロの準備は完了だ。ちなみにこの騎士の絆と、カウンター罠の騎士皇爆誕(トゥルース・センチュリオン)。どちらのカードを手札に加えるべきかは、けっこう迷った。迷ったが……まあレガーティアによるドローを優先した感じだ。

 

「俺はカードを1枚伏せ、エンドフェイズにアークシーラの効果を発動。墓地のトゥルーデアを魔法&罠ゾーンに復帰させて、ターンエンドだ」

 

 雄二LP4000 伏せカード1枚 手札1枚

 

 牙王は俺のメイン2以外では相手カードの対象にならず、そしてアークシーラと魔法&罠ゾーンのプリメラは、互いに破壊耐性を与え合っている。そしてさらに一時除外の罠カード、騎士魔防陣も伏せてあるので、ネオドミノ基準ではかなり強固な布陣だが……小夜丸を相手にどこまで通じるか。

 

『わ、私のターンです! ドロー!』

 

 小夜丸はデュエルモードに変形した、ドッグ・タッグの背中に置いたデッキからカードをドローすると、その表情を綻ばせた。いいカードを引いたんだろうな、敵ながらめっちゃ可愛い。結婚し──いえ、何でもないです。何でもないので、ガン飛ばすのはやめて下さいプリメラさん。

 

『これは……ふふふ、来ましたよ! 私は手札から魔法カード、ライトニング・ストームを発動! この効果で、貴方の魔法&罠ゾーンのカードを全て破壊します!』

 

 小夜丸が頭上に掲げたカードより、雷の奔流が迸る。その雷撃は、まるで薙ぎ払うかのように俺の魔法&罠ゾーンを駆け抜けていき……俺の伏せカード1枚だけを破壊していった。

 

『あ、アレ? 1枚……だけ……?』

「フィールド魔法、スタンドアップ・センチュリオン!は、俺のフィールドにセンチュリオンが存在する限り、相手の効果では破壊されない。そしてアークシーラは自分の魔法&罠ゾーンの表側カードを、破壊から守る効果を持つ」

『そ、そんなー!?』

 

 俺の説明を聞いた小夜丸が、情けない反応を返してくれた。しかしアレだなー。仮にも闇のデュエルの一種だろうに、ギャグみてーな反応をする小夜丸のせいで、緊張感が全く湧いてこねえ……。

 

『残念だったね。最強のセンチュリオンであるこのボクがいる以上、そんな小細工は効かないよ』

 

 ショックを受ける小夜丸に、アークシーラに搭乗するツヴァイが追い討ちをかける……が。

 

『最強ねえ……出てくるのにあたしの力を借りといて、よくもまあそんな大口を叩けるよね。次元の狭間に、チューナー体(力の大本)を落っことしておいてさ』

『う、それは……』

 

 しかしプリメラの呟きを受け、痛いところを突かれたとばかりに口ごもってしまう。

 ああ、そっか。だからプリメラのような星4チューナーが、デッキに加わっていなかったのか。納得だわ。

 

『むむむ、仕方ありません……! なら私は続けて、手札から魔法カード、増援を発動! デッキから私自身を手札に加えます!』

「ほあああぁぁぁ!?」

 

 ま、待て小夜丸! 何だその増援は!? イラストが……イラストがレイロゼの増援だと!? うおおおおお、ソイツをこっちによこせ! よこせええぇぇ!

 

『えっ、急にどうしたんですか!? 大丈夫ですか!? サレンダーします?』

「いや、何でもない……あとサレンダーもしない……」

『そうですか……』

 

 いやあ、急に大声を上げて悪かったな。でもそんな増援を使う小夜丸も悪いんだよ? しかしサレンダーを拒否られて、シュンと落ち込む小夜丸は可愛いね。ネオドミノにお持ち帰りしたい。

 

『……仕方のない人間さんですね。では私は、さらにフィールド魔法S-Forceブリッジヘッドを発動! 発動時の効果処理として、デッキからS-Forceグラビティーノを手札に加えます!』

 

 小夜丸がフィールド魔法を発動すると、周囲の景色が殺風景極まりない荒野から、近未来的な秘密基地へと変貌を遂げる。光を放つワープゲートのおかげで、周囲が一気に明るくなったな。

 

『そして、デッキからS-Forceプラ=ティナを墓地に送る事で、手札のマジシャンズ・ソウルズの効果を発動! このカードを特殊召喚します!』

 

 マジシャンズ・ソウルズ

 ATK/0 星1

 

 手札に小夜丸とグラビティーノを抱えた状態で、マジシャンズ・ソウルズか……これはジャスティファイ司令が飛んでくるパターンだな。まとめて除外すんのやめちくり〜。

 

『そして私は、手札から私自身を通常召喚!』

 

 S-Force 乱破小夜丸

 ATK/800 星2

 

 小夜丸は『とう!』と叫ぶと、そのまま前方宙返りをして、自分のモンスターゾーンへと着地した。ドヤ顔で決めポーズをするその姿からは、実に濃厚なポンコツ臭が。

 ところでデュエルする人がいなくなっちゃったんだけど、これどうすんの? ……とかなんとか俺が思っていると、つい先ほどまで小夜丸が立っていた場所に、煙と共にもう1人の小夜丸が……!

 

『忍ですから!』

「そうか、さすが忍だな」

『ふふふ……忍ですから……』

 

 悦に浸ってる小夜丸ちゃんチョロかわ。

 

『では、私自身の効果を発動です! 手札のS-Forceグラビティーノを除外し、私自身を手札に戻すことで、デッキからS-Forceラプスウェルを守備表示で特殊召喚!』

 

 S-Forceラプスウェル

 DEF/2500 星6

 

 小夜丸は分身を消すのと同時に、後方宙返りで元いた場所へと戻る。もしかして、小夜丸は自分自身を召喚するたびにこれをやるのだろうか。

 

『そしてラプスウェルの効果によって、墓地からS-Forceプラ=ティナを特殊召喚し──プラ=ティナの効果によって、除外されていたグラビティーノを特殊召喚!』

 

 S-Force プラ=ティナ

 ATK/2200 星6

 

 S-Force グラビティーノ

 ATK/2000 星5

 

 小夜丸のフィールドに、一気に3体のS-Forceが横並びになる。このぽんこつ忍者が、ご丁寧にS-Forceの理想展開をお出ししてきやがって。燃えてきたじゃねえか。

 

『そしてプラ=ティナの永続効果! S-Forceの正面にいる相手モンスターの攻撃力は600ダウンするのです!』

 

 騎士皇アークシーラ

 ATK/3000→2400 星12

 

 神樹の守護獣-牙王

 ATK/3100→2500 星10

 

『小賢しい真似を……!』

「なるほど、同じ縦列の相手にデバフを与える系の効果か……だが俺のアークシーラの方が、攻撃力はまだ上だぜ!」

 

 攻撃力がダウンした事で、ツヴァイが苛立ちの声を上げたので、それに便乗して煽りを入れておく。ところで今の俺って、なんかすっげえ悪役っぽくない? 男の子なら一度は憧れるよねえ、悪役ポジ。

 

『それはどうでしょうか! グラビティーノは特殊召喚に成功した時、デッキから、S-Forceと名のつくカードを手札に加えられます! 私はS-Forceチェイスを手札に!』

 

 小夜丸はデッキから1枚のカードを引き抜くと、それをこちらに見せた後に手札に加えた。

 やっぱりチェイスを加えてきたか。自分フィールド上のS-Forceの数まで、相手の表側カードをバウンスするS-Force最強の妨害札……実に厄介だ。このまま放っておくと、ジャスティファイ司令と合わせて面倒な事になるだろうし……動くなら今か? しかし俺のターンに呼び出した方がいいような気も……まあいいや、行っちゃえー!

 

「この瞬間、俺は魔法&罠ゾーンのプリメラとトゥルーデアの効果を発動! この2人をモンスターゾーンに特殊召喚する!」

『相手ターンにも呼び出せるんですか!? でも今更、壁モンスターを並べたところで……!』

 

 重騎士プリメラ

 DEF/1600 星4 チューナー

 

 従騎士トゥルーデア

 DEF/2000 星4

 

「俺はまずプリメラの効果を発動し、それにチェーンしてフィールド魔法、スタンドアップ・センチュリオン!の効果を! 更にその効果にチェーンして、墓地のエメトⅥの効果発動!」

『ひぇっ……!?』

 

 反論がわりに繰り出された、俺の怒涛のチェーン宣言を受けて小夜丸が怯む。

 

「逆順処理によって、まずトゥルーデアを魔法&罠ゾーンに戻しつつ、墓地のエメトⅥが特殊召喚され……次にスタンドアップ・センチュリオン!の効果を処理! 素材にセンチュリオンを含むことを条件に、シンクロ召喚を行う!」

 

 プリメラとエメトⅥが『待ってました!』とばかりに天高く飛び上がる。久々の相手ターンレガーティアという事もあって、両者共に──いや、エメトⅥの動力源()にいるトゥルーデアも含めれば3人か──やる気十分だ。ネオドミノでは“フィールド魔法は場に1枚まで”というルールのせいで、あまり安定しなかったからな……。あ、あの! フィールド魔法の上書きやめてくだち!

 

「レベル8のエメトⅥに、レベル4のプリメラをチューニング! 天頂に輝ける騎士の皇、今ここに降臨せよッ! シンクロ召喚──騎士皇(センチュリオン)レガーティア!」

 

 騎士皇レガーティア

 ATK/3500 星12

 

 今度は左端のゾーンにレガーティアを置く。このままではジャスティファイ司令に、効果込みでまとめて除外されてしまう不味い配置だが……だがエクストラモンスターゾーンが使えない以上、仕方ないのだ。

 しかし、テンション上がってたせいで口上ミスったな。いざテッペンに上り詰めたとき用に、あっためていたのを使ってしまったわ。まあいいか、どうせ小夜丸しか聞いてねえし。

 

「最後に俺は、プリメラの効果でデッキから騎士皇爆誕(トゥルース・センチュリオン)を手札に加える……」

『くっ、この力……アークシーラと同じ……!?』

 

 バチバチと強大なエネルギーを迸らせるレガーティアを見て、小夜丸が恐れ慄く。ふふふ、ラプスウェルの効果で牙王とアークシーラを破壊しようとしたんだろうが、この2体の前にS-Forceを配置したのは失敗だったな。おかげで縦列に隙が出来て、プリメラとエメトⅥは除外を免れた。

 まあラプスウェルの効果を食らっても、アークシーラはプリメラの耐性付与で生き残れたが……センチュリオン初見の小夜丸は、プリメラのその効果を知らないだろうしな。

 

「レガーティアは特殊召喚に成功した時、デッキからカードを1枚ドローし、その後相手フィールド上の最も攻撃力の高いモンスターを破壊する! S-Forceラプスウェルにはご退場願おうか!」

 

 レガーティアの腰部アーマーが分離・合体した巨大なビットが、ごんぶとビームを発射。マクスウェルはバリアらしきものを張って抵抗するも、そのバリアごと蒸発させた。S-Forceラプスウェル、爆☆殺!

 

『ああーっ!? 何してくれるんですかぁー!?』

 

 しかし何という事でしょう。レガーティアの効果でラプスウェルを破壊された小夜丸が、急に大声で叫び出したではありませんか。急に大声で叫ばないでくれよな……ビックリするじゃないか。

 

『ラプスウェルでガードをこじ開けたあと、合計攻撃力4000を揃えて、強制的にサレンダーをさせる計画だったのに……! そんなに痛い目に遭いたいんですか!? いい加減怒りますよ!』

「アッハイ……そんな怒らないで……」

 

 わざわざご丁寧に解説どうも。リアルダメージを与えないよう、気遣ってくれたんすね。

 

『ああもう! ラプスウェルが破壊されてしまった以上、仕方ありません……現れろ、正義を貫くサーキット!』

 

 小夜丸が腕を振り上げると、リンク召喚の枠? が上空へと浮かび上がる。ヴレインズやMDでよく見た、リンク召喚の召喚演出だ。

 ……それにしても、ネオドミノシティの住民であるこの俺が、リンク召喚を目撃する事になるとはねえ。人生、何があるかわからないもんだ。

 

「こ、これはまさか!」

『そうです、これがリンク召喚です! 抵抗する貴方が悪いんですからね!』

 

 リンク召喚を前に、迫真の演技をかます俺氏。いやまあ、もう知ってるんだけど、建前上は知らないって事になってるから……一応ね。

 

『リンク召喚は通常、フィールドのモンスターを素材としますが……私の手札にいるS-Forceレトロアクティヴは、S-Forceのリンク召喚を行う場合、手札からもリンク素材に使えます!』

 

 ていうか小夜丸、レトロアクティヴまで握っていたのか。これは不味いかもしれん。

 

『召喚条件はS-Forceを含む、効果モンスター3体! 私はマジシャンズ・ソウルズとS-Forceグラビティーノ、そして手札のS-Forceレトロアクティヴをリンクマーカーにセット! サーキットコンバイン──リンク召喚! 来てください、LINK-3! S-Forceジャスティファイ!』

 

 S-Forceジャスティファイ

 ATK/2600 LINK-3

 

「これが……リンクモンスター……」

 

 俺から見て、右のエクストラモンスターゾーンに現れたジャスティファイを見て、俺氏迫真の演技以下略。

 

『私はS-Forceジャスティファイの効果発動! 騎士皇レガーティアの効果をターン終了時まで無効にし、このカードのリンク先に移動させます!』

 

 ジャスティファイのリンク先に、効果を無効化されたレガーティアがワープさせられる。大型をまとめて3体除外とか、超気持ちよさそうだな。まあ、すぐに呼び戻すんだけどね。そのためのカードはさっき引いたし。

 

『バトルフェイズに移行! 私はS-Forceジャスティファイで、騎士皇レガーティアを攻撃!』

 

 S-Forceジャスティファイ ATK/2600 VS 騎士皇レガーティア ATK/3500

 

「血迷ったか!? 俺のレガーティアの攻撃力は3500だぞ!」

 

 レガーティアに向けて突進してくるジャスティファイを見て、俺氏以下略。ここまで来ると、なんか演技すんの楽しくなって来たな。小夜丸も俺の前フリに対し、きちんと返してくれるしさ。

 

『そんなワケありません! ダメージステップ開始時に、S-Forceジャスティファイの効果発動! このカードのリンク先のモンスターを、全て除外します!』

「なんだとぉ!?」

『こ、このボクが……!?』

『お、覚えてろよおおおぉぉぉー!?』

 

 ジャスティファイが何もないところでその拳を振り抜いたかと思えば、空間がひび割れていき──俺のフィールドにいたレガーティアとアークシーラ、そして牙王の3体が空間の崩壊に巻き込まれ消えていく。悲鳴を上げながら次元の狭間に落ちていく、みんなに対する罪悪感が湧いてくるが……すまない、非力な私を許してくれ……。

 

『これであなたのフィールドはがら空き……。人間さん、これが最後の警告です。しつこいようですが、このデュエルは、ダメージが実際に襲いかかってくるデュエルなんです。今ならまだ間に合います、大人しく負けを認めてください! 私は、貴方を傷つけたくないんです!』

 

 プラ=ティナの攻撃権を残した小夜丸が、俺をサレンダーさせるべく、必死にこちらへ訴えかけてくる。

 

「くどいな、俺はデュエリストだ。デュエルに背を向けるような真似は、死んでもやらねえ……。それよりダメージが実体化するってんなら、そっちこそサレンダーをしたらどうなんだ?」

『……なぜ、そこまでして彼女を庇うのです? 死者こそ出していないとはいえ……彼女はこの世界を武力で制圧して、大いに混乱させた超問題精霊ですよ? それに推測ですが、貴方をこの世界に呼び出したのも……』

「そこら辺は、まあ、うん……うちの子がごめんね?」

 

 サレンダーには言い返せるが、これはちょっと言い訳できねえ。プリメラたちが異様なほど刺々しかったのも、きっと、俺を勝手に厄介事に巻き込んだからなんだろうしな。でも……それでもまあ、俺にとってはセンチュリオンの新しい仲間だし……デュエリストとして、懐いてくれるカードの精霊を、見捨てるワケには……ねえ?

 

「ま、俺はチョロいからな。可愛い女の子の精霊から、めっちゃ嬉しそうな笑顔で『会えて嬉しい』『キミの為にこの力を振るう』だなんて言われたら……まあ、張り切っちゃうワケなのよ。だって男の子だしネ!」

『バカですね』

 

 一刀両断、辛辣で草。いやぁん、そんな冷たい目で見ないでぇ〜。

 

「おう、バカだぜ。バカで何が悪い? 俺がバカな事で何か迷惑かけたか? んん?」

『現在進行形で、犯罪精霊を庇うという迷惑をかけられているんですが……』

 

 俺の言葉を聞いた小夜丸は、苦笑しながらそう答えた後、その表情を引き締め。

 

『交渉決裂ですね、仕方ありません。貴方を倒した後、あの精霊を捕まえることにします! 私はS-Forceプラ=ティナで、人間さんに──』

「相川雄二だ。周りからはユージって呼ばれてる」

『──ユージさんにダイレクトアタック!』

 

 小夜丸の指示を受けたプラ=ティナが、その手の平を俺に向けてくる。恐らくはプラ=ティナの固有能力だという“時空を歪める力”による攻撃をするつもりなのだろう。プラ=ティナの手の周囲の空間が歪むのが見えたので……。

 

「そのダイレクトアタック宣言時、俺は墓地のクリアクリボーの効果発動! デッキからカードを1枚ドローし、そのカードがモンスターだった場合、特殊召喚して攻撃対象を移し替える!」

『手札コストで送っていましたか……!』

 

 墓地からクリアクリボーの効果を発動し、カードをドローしておく。手札は可能性だってATMも言ってたしな……1枚でも多く確保しておくのだ……デコイチオープン! イエ゛ァァァァ! アイキャン1ドロー!

 とりあえず何引くかな……帰還系のカードが欲しいところだが、DEF2200以上の壁も悪くないよな……どっちかが引ければ俺の勝ち! そうじゃなくても、有用なカードが引ければ実質勝ち! うおおぉぉ、ドロー!

 

「俺の引いたカードは、モンスターカードじゃない……」

『なら攻撃続行です!』

 

 禁じられた聖槍か……まあ次のターンでS-Forceチェイスを防げるカードだから、一応は勝利だな。

 しかし、モンスターを引けなかった事で、プラ=ティナは攻撃を再開。その固有能力によるものだろう、激しい衝撃が俺を襲う。こ、これは予想以上に……!

 

「ぐおああぁぁーっ!」

 

 雄二LP4000-2200=1800

 

『だ、大丈夫ですか!? だから危険だって言ったのに……!』

 

 悲鳴を上げながら、派手に吹き飛んだ俺を見て。小夜丸が心配そうな声をかけてくれるが……。

 

「だ、大丈夫だ。問題ない……」

 

 あまり心配をかけるのもどうかと思ったので、すぐさま起きて手を振ってみせた。少し動きはぎこちなかったが、まあ無事のアピールにはなっただろう。

 個人的な感想だが……サイコデュエル以上、ダグナー未満って感じかな? まあ痛いことは痛いけど、これ一戦くらいならば、なんとか耐えられるだろう……ってレベルのダメージだわ。連戦は絶対に無理。

 

『……本当に無理だと思ったのなら、言ってくださいね?』

 

 やめろよなー、そんなに申し訳なさそうな表情をされると、こっちの方も申し訳なくなってくるじゃないか。

 

『メインフェイズ2に移行。私はカードを2枚伏せ、ターンエンドです』

 

 小夜丸LP4000 伏せカード2枚 手札1枚

 

 小夜丸の残り手札1枚は、効果で戻した自分自身のはず。なら判明している妨害はジャスティファイとチェイスの2枚。それに加えて、あとは正体不明の伏せカードが1枚か。

 とはいえS-Forceの正面に次元の裂け目効果を与えるグラビティーノも墓地だし、あまり怖くはないな。いや仮にプラ=ティナ(アレ)がグラビティーノだったとしても、3列も空いてりゃ怖くねえか。

 

 まあ除外ゾーンにS-Forceがいれば、ナイトチェイサーでも出してきて、その効果で列を合わせてきたんだろうが……生憎と小夜丸の除外ゾーンには何もないし。名誉S-Forceこと深淵の獣(ビーステッド)たちがいれば話は別だろうが、小夜丸はカードの精霊。ああいう混合テーマは組まないはずだ。特に深淵の獣は悪役テーマだったし。

 ……混合組んでないよな? いや組まない前提で戦略組んでたから、もし混合で組まれてると非常に困ったことになるんだが。頼むから純構築であってくれよ、お前のS-Force魂を信じているからな小夜丸!

 

「俺のターン、ドロー! 俺は手札から速攻魔法、マグネット・リバースを発動。その効果によって、除外されているレガーティアを特殊召喚だ!」

 

『さっきの“借り”を返しに来たよ! このエセニンジャが、ぶっ潰してやるかんね!』

『え、エセってなんですかー!? 小夜丸は立派な忍びですー!』

 

 騎士皇レガーティア

 ATK/3500 星12

 

 空間を魔力槍でカチ割りつつ、レガーティアが俺のフィールドへと帰還する。一度除外効果を食らったこともあって、中のプリメラも殺る気満々で実に頼もしい。

 どこからともなく『ボクじゃないの!?』という声も聞こえてくるが、お前はドラゴン族だから……あと効果もサポート系だし……。

 

『まったくもう! それにしても、せっかく除外したってのに、いきなり帰還させてきますか……!?』

「当然だろう? 俺の魂は、こいつらと常に共にあるんだからな。俺が求めたら、こいつらは応えてくれるし──逆にこいつらが何かを求めてきたら、俺は全力でそれに応える!」

 

 これが俺たちの“絆”だ! と拳を振り上げながら吼える俺を見て。小夜丸は神妙な表情をしながら、疑問の声を飛ばしてきた。

 

『……それが、貴方が戦う本当の理由ですか?』

「おうともさ」

『そこまで自信満々に言い切られると、少しだけ、彼女たちが羨ましくなってしまいますね……』

 

 小夜丸の問い掛けにそう返せば、俺の言葉を聞いた小夜丸は小さく笑みを浮かべた。さて、お喋りタイムはここら辺で切り上げて、処理を続けないとな。

 

「レガーティアの特殊召喚に成功したことで、俺は墓地の騎士の絆の効果を発動! このカードを除外する事で、墓地に存在するプリメラを魔法&罠ゾーンに呼び戻す!」

 

 俺のフィールドに、プリメラの幻影が現れる。よしよし、これでチューナーの確保は完了だ。

 

「そしてレガーティアは特殊召喚に成功した時、デッキからカードを1枚ドローし、その後相手フィールド上の最も攻撃力が高いモンスターを破壊する! 消え去れ、S-Forceジャスティファイ!」

 

 俺の指示を受けたレガーティアは、自身の効果にて──つまり合体ビットの砲撃で──ジャスティファイを葬り去るべく、腰部アーマーを分離させる。

 

『させません! S-Forceジャスティファイの効果、相手フィールド上のモンスターの効果を、ターン終了時まで無効に!』

 

 が、そのタイミングで小夜丸もジャスティファイの無効効果を発動。ジャスティファイが連続で拳を振るい、それによって発生した衝撃波がレガーティアを襲うのだが──。

 

「速攻魔法、禁じられた聖杯を発動! S-Forceジャスティファイの攻撃力を400アップさせる代わりに、その効果を無効にする!」

 

 S-Forceジャスティファイ

 ATK/2600→3000 LINK-3

 

 聖水をパシャリとぶっかけられたことで、ジャスティファイは特殊能力──筋力のような気もするが──を失い、衝撃波を放てなくなった。

 

『いよっし……今だ! 消えてなくなれぇーっ!』

 

 そして衝撃波による拘束から解き放たれた隙に、レガーティアのビットは無事に分離・合体。そのまま極太のビームを発射して、ジャスティファイを蒸発させた。

 

『どんなもんだい!』

『そ、そんな……ジャスティファイが……!?』

 

 逆襲を果たして勝ち誇るレガーティアinプリメラと、逆にジャスティファイを失ったことで落ち込む小夜丸。いいカードも引けたし、このまま一気に攻め込んでフィニッシュだ!

 

「これで厄介なデカブツは始末した……続けて俺は手札から竜騎兵ガーゴイルⅡの効果を発動! スタンドアップ・センチュリオン!を墓地に送る事で、手札から特殊召喚!」

 

 竜騎兵ガーゴイルⅡ

 ATK/2000 星8

 

『マスターへの狼藉、覚悟はできているんだろうね?』

『う……も、元はと言えば、貴女のせいでしょうに……!』

 

 ツヴァイの威圧を受けてか、それともただの俺に対する罪悪感か。小夜丸は言葉に詰まりながらも、反論を繰り出した。実際その通りなのだが、当のツヴァイはまったく気にしていない。この子、なかなかに面の皮が厚いな。

 

「ふむ……」

 

 さてさて。俺が先ほどレガーティアの効果で引いたのは、レベル8以上のモンスターを2ドローに変換するカード、アドバンスドロー。普通に考えるのなら、ここはツヴァイをリリースする場面なのだが……。

 

『どうしたんだい、マスター?』

 

 このやる気と自信に満ち溢れている、ツヴァイをリリースするってのは……さすがに、ねぇ?

 

「いんや、なんでも。俺は魔法&罠ゾーンのプリメラとトゥルーデアの効果を発動! この二人を特殊召喚する!」

 

 重騎士プリメラ

 ATK/1600 星4 チューナー

 

 従騎士トゥルーデア

 ATK/1000 星4

 

『この瞬間、私は罠カードS-Forceスペシメンを発動! その効果で騎士皇レガーティアの正面のモンスターゾーンに、墓地からS-Forceラプスウェルを復活させます!』

「ダニィ!?」

 

 S-Forceラプスウェル

 DEF/2500 星6

 

『そしてラプスウェルの効果により、墓地からS-Forceグラビティーノを特殊召喚!』

 

 S-Forceグラビティーノ

 DEF/1400 星5

 

 しかしここにきて小夜丸は罠カードを発動。レガーティアの前にはラプスウェルが、そしてプリメラの前にはグラビティーノが特殊召喚されたではないか。あ、これは不味い。

 

『そしてグラビティーノの効果にチェーンして、罠カードS-Forceチェイスを発動! 私のフィールドのS-Forceの種類の数まで、相手フィールド上の表側カードを持ち主の手札に戻す! 私が選択するのは──』

 

 小夜丸がバウンス先に選択したのは、レガーティアとガーゴイルⅡにプリメラの3体だった。まあ、そらそうだよね。そしてレガーティアとプリメラの前にはS-Forceが存在する為……。

 

『そしてS-Forceグラビティーノの永続効果! S-Force正面のモンスターは、フィールドを離れる場合、除外されるのです!』

「俺は速攻魔法、禁じられた聖槍を発動! レガーティアの攻撃力を800ダウンさせるかわりに、このターンこのカード以外の魔法・罠カードの効果を受けなくする!」

 

 騎士皇レガーティア

 ATK/3500→2700 星12

 

 レガーティアは高速で飛来してきた聖槍をキャッチすると、そのまま聖槍を頭上に掲げる。するとバリアのようなものが張られ、それはS-Forceチェイスのカード効果を消滅させた。

 しかしながら、聖槍の力はおひとり様用。つまりプリメラの方はどうしようもないわけで……。

 

『騎士皇レガーティアは守りましたか……ですが、重騎士プリメラと竜騎兵ガーゴイルⅡには消えてもらいます!』

『むぅ……あたしの分身が……』

『このボクが2度までもぉ〜!?』

 

 除外されていくプリメラと、手札に戻ってくるツヴァイ。うーむ、まさかこうなるとはな。二人ともスマン。

 

『そしてグラビティーノの効果により、私はデッキから2枚目のS-Forceチェイスを手札に加えます!』

「ぐぬぬ……」

 

 次弾の装填は完了ってか? やべえな、このままだと次のターンに小夜丸の効果を使われてフィールドを制圧され、ガチで負けてしまう。ここは賭けに出るしかねえ。

 

「俺は手札からアドバンスドローを発動! レガーティアをリリースすることで、デッキからカードを2枚ドローする!」

『くっ……すぐに戻ってくるから、覚えてろよ!』

『自ら騎士皇レガーティアを手放しましたか!』

 

 捨て台詞を吐きながら、光の粒子になって消えていくレガーティア。さあ、これぞ起死回生をかけた運命のドローだ。デッキよ応えてくれ!

 

「ドローッ!」

 

 デッキトップから2枚のカードを引き抜いた俺は、内心では戦々恐々としながら、引いたカードへと目線を送る。そこには逆転のカードが──。

 

「キマシタァァァァ! ヴォァァコロシマスゥ!」

『ふえぇ!? 急にどうしたんですか!?』

「賭けは俺の勝ちだ、小夜丸! 俺は手札から速攻魔法、異次元からの埋葬を発動だ! 除外されているアークシーラとプリメラ、神樹の守護獣-牙王を墓地に戻し……そして横綱犬(ヨコチュナ)を通常召喚!」

 

 横綱犬

 ATK/800 星1 チューナー

 

 その名の示す通りに、まわしを身に着けた、いかにも“横綱”といった格好の犬が俺のフィールドに現れる。この犬こそが、俺の勝利のキーカードだ。

 

「横綱犬は召喚に成功した時、手札か墓地からチューナーを特殊召喚できる! 俺が蘇らせるのは当然、墓地に戻したプリメラだ!」

 

 重騎士プリメラ

 ATK/1600 星4 チューナー

 

『約束通り戻って来たよ!』

『戻ってくるのが早すぎます!』

 

 いいツッコミだな小夜丸。さすがはS-Forceだ。

 

「俺はレベル4のトゥルーデアに、レベル4のプリメラをチューニング! シンクロ召喚──来い、ダークエンド・ドラゴン!」

 

 ダークエンド・ドラゴン

 ATK/2600 星8

 

 漫画版GXの万丈目が使用していた、黒いドラゴンが咆哮を上げる。こうやって活用しておいてなんだけど、なんで効果モンスターからシンクロモンスターになったんだろうね。

 

「ダークエンド・ドラゴンの効果発動! 攻撃力と守備力を500ダウンさせることで、S-Forceラプスウェルを墓地に送る! ダーク・イヴァポレイション!」

 

 ダークエンド・ドラゴン

 ATK/2600→2100

 

 ゴボリと地面から湧き出てきた闇に呑み込まれ、そのままラプスウェルが地面に引き摺り込まれていく。これでまずは1体!

 

「続けて俺はレベル8のダークエンド・ドラゴンに、レベル1の横綱犬をチューニング! 戦場を駆ける鋼の竜よ、その砲火を以て我が敵を討ち滅ぼせ! シンクロ召喚──灼銀の機竜(ドラッグ・オン・ヴァーミリオン)!」

 

 灼銀の機竜

 ATK/2700 星9

 

『連続シンクロ召喚……!』

「俺は灼銀の機竜の効果を発動! 墓地の横綱犬を除外する事で、S-Forceグラビティーノを破壊する! アサルト・キャノン!」

 

 俺の指示を受けて放たれた、灼銀の機竜の両肩部の主砲が、グラビティーノを一撃で粉砕する。これで2体目! 残るは攻撃表示のプラ=ティナのみ!

 

「バトルだ! 俺は灼銀の機竜で、S-Forceプラ=ティナを攻撃! フルバースト・ショット!」

 

 灼銀の機竜 ATK/2700 VS S-Forceプラ=ティナ ATK/2200

 

『きゃあぁっ!』

 

 小夜丸LP4000-500=3500

 

 灼銀の機竜の全砲門が一斉に火を噴き、プラ=ティナを過剰とも思える火力で薙ぎ払い──その砲火の余波が小夜丸へと降り注ぎ、ライフを削り取っていく。

 ぐへへへ……小夜丸ってば、ずいぶんと可愛い悲鳴を上げるんだねぇ。いや真面目な話、小夜丸ってモロに美少女してっから、ちょっと罪悪感を感じるんだが……悲しいけど、これってデュエルなのよね。基本的に峰打ちみたいな手加減とかはできねえし、どちらかのライフが尽きるまで戦いは終わらない。まあ俺にデュエルを挑んできた、小夜丸が悪いって事で……。

 

『ううぅ……あの状況からひっくり返してくるなんて……』

「まだだ! 俺は墓地から騎士魔防陣の効果を発動! このカードを除外する事で、墓地に存在するレガーティアを、攻撃力を1500ダウンさせた状態で復活させる! 戻ってこい、レガーティア!」

 

 騎士皇レガーティア

 ATK/3500→2000 星12

 

『そ……そんなぁ!?』

『フルパワーならこれで終わってたんだけどなぁ……まあいいか、宣言通り叩き潰す!』

 

 再び現れたレガーティアを見て小夜丸が悲鳴を上げ、プリメラは対照的に嬉しそうな声を上げていた。

 

「俺はレガーティアで、小夜丸にダイレクトアタックだ!」

『てりゃあああああッ!』

『きゃああああー!?』

 

 小夜丸LP3500-2000=1500

 

 ついにレガーティアの攻撃が小夜丸本体に直撃し、小夜丸は悲鳴を上げながら宙を舞う。うわあ、可哀想に。誰がこんな酷いことを……。

 

「俺はカードを1枚伏せ……エンドフェイズ、レガーティアの効果で墓地からプリメラを魔法&罠ゾーンに呼び戻し、ターンエンドだ」

 

 雄二LP1800 伏せカード1枚 手札1枚

 

『わ、私の……ターン!』

 

 小夜丸は何とか立ち上がったものの、レガーティアから受けたダメージは、相当大きかったらしく。生まれたての子鹿のように、足をプルプルと震わせながらカードをドローした。

 

『私はS-Forceエッジ・レイザーを通常召喚して、効果を発動! 手札から私自身を特殊召喚!』

 

 S-Forceエッジ・レイザー

 ATK/1500 星4

 

 S-Force乱破小夜丸

 ATK/800 星2

 

『そして、私は私自身の効果を発動! 手札のS-Forceカードを除外……するところですが、ここで墓地に存在するレトロアクティヴの効果! 代用コストとして、このカードを墓地から除外できるのです!』

 

 墓地のレトロアクティヴを除外しながら、小夜丸がその効果をドヤ顔で説明する。

 つまり小夜丸の狙いは、このままコストとして墓地のレトロアクティヴを除外しつつ、デッキからラプスウェルを呼び出し……その効果で墓地からプラ=ティナを蘇生。そしてプラ=ティナの効果でレトロアクティヴを帰還させ、一気に4体のS-Forceを展開という感じだろう。

 

「俺はカウンター罠、騎士皇爆誕を発動! 魔法&罠ゾーンのプリメラを墓地に送ることで、S-Force乱破小夜丸の効果を、無効にして破壊する! 小夜丸よ、砕け散れ!」

 

 もちろん、そんなことを許しては死んでしまうのは確定的に明らか。小夜丸自身の効果に対し、俺は的確にカウンター罠をぶち当てていく。やはり忍者よりやはりナイトだな……今回のでそれがよくわかったよ>>(レスアンカー)小夜丸感謝。

 

『チクッとするかんね〜!』

 

 普段なら幻影のレガーティアがいい感じに効果を打ち消すところだが、今現在の俺のフィールドには、既にレガーティアが存在する。なのでレガーティア本体が小夜丸の効果を無効にすべく──小夜丸の土手っ腹にランスをブッ刺した。思いっきりランスが貫通していて、チクっとというよりもグサッ! という感じだったのだが、口にするのは野暮だろう。

 

『あ、あああーッ!? わ、私が粉々に……!?』

 

 無残に砕け散る自身のビジョンを見て、動揺のあまり小夜丸が叫び出した。体力的にそんな余裕がないからやらなかったんだろうが、調子に乗ってモンスターゾーンに飛び出さなくて良かったね。プリメラ(うちの子)、容赦なく刺しに来るタイプだから。

 

『ううぅ……わ、私はカードを1枚伏せて、ターンエンドです……』

「おっと、その前にレガーティアの効果が発動だ。墓地のプリメラを魔法&罠ゾーンに復帰させるぜ」

 

 小夜丸LP1500 伏せカード1枚 手札0枚

 

 小夜丸が最後に伏せたカードは、事前にサーチしていたS-Forceチェイスで確定だ。まあチェイスで灼銀の機竜はバウンスされるだろうが、プリメラを特殊召喚してレガーティアと一緒に殴れば勝ち確なので問題はない。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 ドローカードは戦線復帰か。まあ万が一、カードが書き換わったりでもして、小夜丸に攻撃を防がれたりなんかしたら役立つかな。

 

『この瞬間、S-Forceチェイスを発動。灼銀の機竜を手札に戻させます……』

「おかえり」

 

 小夜丸が力無く伏せカードを発動させ、その効果によって、灼銀の機竜が俺のエクストラデッキに帰って来た。だがこれで伏せカードも使い切ったし、もう小夜丸に打てる手はない。チェックメイトだ。

 

「俺は手札の竜騎兵ガーゴイルⅡの効果を発動。魔法&罠ゾーンのプリメラを墓地に送ることで、手札から特殊召喚する!」

『今度こそ、ボクの力を見せてあげるよ!』

 

 竜騎兵ガーゴイルⅡ

 ATK/2000 星8

 

 プリメラでトドメと言ったな? アレは嘘だ……。いやまあ、これはツヴァイのデビュー戦でもあるしね。やっぱトドメの一撃はやらせてあげたいじゃん?

 

「バトルだ! 俺はレガーティアでS-Forceエッジ・レイザーを攻撃! ヴァリアント・スマッシュ!」

『砕け散れぇ!』

 

 騎士皇レガーティア ATK/2000 VS S-Forceエッジ・レイザー ATK/1500

 

 レガーティアの突き出した魔力槍がエッジ・レイザーを一撃粉砕。それによって派手な爆炎が発生し、それは小夜丸をも呑み込んでライフを削り取っていく。

 

『きゃああーっ!』

 

 小夜丸LP1500-500=1000

 

『ふふ……ずいぶんと梃子摺らせてくれたけど、これで終わりだよ』

『正義が……負けるなんて……』

 

 勝ち誇るツヴァイと、落ち込む小夜丸。……無駄だとは思うけど、一応声掛けはしておくか。

 

「小夜丸、勝敗はもう決まった。これ以上、無駄に傷を負うこともないだろう……サレンダーしたらどうだ?」

『……確かに私は新入りですが、それでも……それでも、S-Forceの一員なんです。ですので──』

「……そうか。悪かったな、今のは聞かなかったことにしてくれ。ツヴァイ、聞いたな?」

 

 俺は軽く自分の頭をコツンと叩くジェスチャーをしつつ、ツヴァイに対し話題を振る。うーむ、これで伝わっているといいんだが……あまりにも露骨にやりすぎると、小夜丸にバレちゃうしな。

 

『うん、しかとこの耳で聞き止めたよ。手加減は不要、全力で来いってことだよね? 生き恥を晒すよりも、名誉ある死を望むその覚悟……敵ながら見事だ』

 

 だが俺の意図は無事ツヴァイに伝わっていたようで、ツヴァイは軽く頷くと、ニヤリと笑いながら小夜丸を称え始めた。

 

『え゛!?』

 

 ツヴァイの言葉を聞いた小夜丸が、嘘でしょ? という感じを隠そうともせず、大慌てで俺の方へと顔を向けてくる。めっちゃ目がキョロキョロしてるし、冷や汗ダラダラだしで、おハーブがクッソ大量に生えましてよ~。

 

『あ、あの……えっと、今のはですね──』

「ああ。お前の全身全霊を込めた一撃で、盛大に送ってやるんだ! 俺はガーゴイルⅡで、小夜丸にダイレクトアタックだ!」

『さらばだ、乱破小夜丸!』

 

 小夜丸が余計なことを言う前にと、俺は小夜丸の発した言葉に被せるように、声を張り上げて攻撃の指示を出し……それに従い、ツヴァイは小夜丸目掛けて一気に飛翔した。

 

『ちょ!? 話を聞い──ひいいぃぃ!?』

 

 アーマーの腕部に装着された、大型クローをバチバチと放電させながら、迫りくるツヴァイを見て。小夜丸は割とガチの悲鳴を上げ──。

 

『あぎゅうううう!? ──ってアレ?』

 

 目を瞑りながら身を捻って、謎の被弾ボイスを発するのだが……しかし一向に訪れない痛みを前に、おそるおそると目を開き。

 

『えい』

『おっごおおお!?』

 

 そのタイミングを見計らって、小夜丸の背後に回り込んでいたツヴァイが、巨大アームによる拳骨を落とされ。その場で蹲り、悶絶の声を上げるのであった。おおー、痛そう痛そう。

 

 小夜丸LP1000-2000=0 Lose

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 ツヴァイに精霊界へと拉致られ、そこで小夜丸とデュエルをして、まあなんやかんやと話し合って和解して人間界に戻ってきてから、数日が経過したある日のこと。

 

「ただいまー!」

「おかえり。今日はずいぶんと早かったわね?」

「カードショップにも、遊星のとこにもいかなかったから~」

 

 デュエルアカデミアの授業から帰ってきた俺を、リビングでTVを見ながら迎えてくれるお袋に、適当な返事を返しつつ……俺は2階の自室への階段を上っていく。何故俺が寄り道をせず早く帰って来たかというと、それは勿論──デッキ調整をする為だ。

 なんと本日、ついに……ついにメインデッキが完全解放されたのだ! 人型だろうと美少女だろうと、好きに入れていいという事になったのだ! やったぜ!

 なんでも先日ツヴァイが加入したことで、精霊憑きじゃないカードは、なんかもうどうでもよくなったらしい。

 

「封印が解けられた!」

 

 そんなこんなで、俺が気分ルンルンで勢いよく自室へと飛び込んでみれば。

 

〈敵の新型船を撃破したぞ!〉

〈ヤマが当たった。今回、時間移動の出口として選ばれたのが、この時間、この周辺だ〉

〈歴史改変船団の出現。ついにその瞬間に居合わせた。賭けに勝ったんだ〉

『あ、お邪魔してまーす。今めっちゃいいところなんで、静かにお願いしますね』

 

 勝手に人の部屋に上がり込み、勝手に人のベッドの上に寝転がり。勝手に人の隠していたポッキーを貪り食い、勝手に人のゲームで遊んでいた乱破小夜丸(不法侵入者)がそこにはいた。

 

「プリメラ、ツヴァイ。潰せ」

『串刺しでもいい?』

『ボクとマスターのベッドから降りろ、この泥棒猫が……!』

『あ、ああーっ!? 今本当にいいところなの! プライマーの歴史改変を阻止するところなの! やめて、痛い! 槍でチクチクしないで!? クローアームに電気流さないで!?』

 

 プリメラとツヴァイに襲われながらも、しかしそれでも小夜丸はゲームのコントローラーから手を放そうとしない。なんかS-Force的にすっげえハマったらしいが……人の留守中に部屋に潜り込んでゲームをするのは、治安維持組織の隊員としていかがなものか。

 

〈ここに君がいる。これは偶然ではない。何度も何度も世界中を転戦し、ついに掴み取った必然だ〉

『ちょ、ユージさん助けて! 貴重な休暇を使ってまで貴方に会いに来た、可愛い先輩のピンチですよ!?』

「おう、なら画面から目を離してこっち見ろや」

『いや無理です。マジでいいところなんで。私の中のEDF魂がプライマー(あいつら)を撃沈しろと叫んでいてですね……!』

 

 駄目だわこの忍者。いや確かに今の俺は──正確にはツヴァイが、だが──迷惑をかけたお詫びとして、一時的にS-Forceの外部協力者となっているのだが……遠慮が無さすぎる。まあ初めての後輩が出来て、テンションがマキシマム召喚してるかららしいけど……。

 

『ねえねえ、アイツ黒コゲにしていい?』

「トゥルーデアは手加減苦手だから駄目。なんか無理してネオドミノ(こっち)に来ていて、すっげえ弱体化してるみたいだからさ。多分お前が出張るとガチで死ぬ」

『ええ~……』

 

 トゥルーデアが小夜丸〆大会に参加したいと言ってきたが、炎は手加減が難しいから駄目よ。もー、そんな不満そうにしないの。……せや、いい事思いついた!

 

「一緒にデッキ改造するか?」

『うん! やるやる!』

 

 プリメラとツヴァイに小夜丸。キャットファイトを繰り広げる三人娘を見ながら、俺はトゥルーデアと共に、デッキの調整を開始するのであった。

*1
特大ブーメラン

*2
言ってない




テーマクロニクルでS-Forceを組んで、どうしても小夜丸を出したくなったので、番外編という形で出しちゃいました。だって小夜丸可愛いし……。テーマクロニクル中くらいに書き始めて、今完成したんだよね。やだ…私の筆、遅すぎ…?
あとあくまで番外編なので、本編に小夜丸は絡みません。

あーあ、誰か小夜丸とスケベするR-18小説を書いてくれないかなー(チラッ

ちなみに今までは個々のイメージを崩さないよう、精霊組はあえてセリフを表記していませんでしたが……いい加減に限界が来たので、普通に描写しちゃいました。非力な私を許してくれ……。実はこれが番外編扱い最大の理由だったり。

あーあ、誰か小夜丸とスケベするR-18小説を書いてくれないかなー(チラッチラッ



プリメラ&トゥルーデア→精神だけ拉致られてたので気づくの遅れた。自分のカードが使われた事で、カードを扉として移動、合流。

新規ちゃん→ガーゴイルⅡを初めて見た時、作者の心が「うーん、これは自信家なボクっ子!」と反応しました。あと本人の名前もわからないので、適当にでっち上げ。設定画で性格や口調やらが明かされたら爆死します

S-Forceの扱い→S-Forceは次元の壁も超えられるというオリ設定。なお超える技術を持っているというだけで、精霊としての格は普通。むしろ他所の世界に行くとマイナス補正がかかり、ふにゃふにゃ精霊にパワーダウン。


追記:まとめて後書きで感想返しするのも、普通に感想返しするのも、大して労力変わらねえな?という事に気付いたので、これからは普通に感想返しをしますね。
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