予想外のロットンとの遭遇に、センチュリオンの新規ちゃんことツヴァイとの出会いやら。なんやかんやで色々とあったが、ついに迎えたデュエルアカデミアの定期考査。ツァンのおかげで(強制的に)予習復習を欠かさない優等生と化していた俺は、筆記試験を無事に終え……続く実技試験。
「行けー! アカデミア男子の意地を見せてやれー!」
「ベスト10に残った男子はお前だけなんだぞー!」
「今は女子の時代なのよ! 雪乃さん頑張ってー!」
「男子の2連覇を阻止してくださいー!」
イベントの際にのみ使用される、デュエルアカデミアの屋内デュエルスタジアム。大勢の生徒たちが好き勝手に叫び、まさに熱狂に包まれているこの空間の中。
「ウフフ……この時を待っていたわ、ボウヤ……」
一人の女子生徒が、蠱惑的に微笑みながら俺の前に立っていた。
藤原雪乃。有名俳優の両親を持ち、本人もまた女優としてのデビューを期待されている、このアカデミアでも(男子から)屈指の人気を誇る美少女であり……。
「二人っきりで、というのも悪くはないと思ったのだけれど……どうせなら、相応しいステージでボウヤと高め合いたくなって……ね?」
「そのために、わざわざ学内ランキングを駆けあがって来たってか。『あれだけの実力を持ちながら、なぜ真面目にデュエルをしてこなかったのです!』って感じで、委員長がお冠だったぜ?」
そして、事前に行われていた学内デュエルランキングにて、第2位の座にまで上り詰め。今回の実技試験における、俺の対戦相手として選ばれた生徒だ。
ちなみに3位はアキさんで、4位はツァン。5位に我らが委員長こと原麗華と、上位陣は見事に女子ばっかりだったりする。いや確かに、TF6には男子アカデミア生いなかったけどさぁ……その真実が、まさか“女子生徒の方が強いから”だったとは思わないじゃん?
まあそんなわけで、先ほどギャラリーのうちの一人の男子生徒が必死に叫んでいたように、ベスト10に唯一名を連ねる──というか
「仕方ないじゃないの、私をアツくしてくれる“一人前の男”がいなかったんだもの。ね?」
「そんなに可愛く言われても……許せる!」
「うふふ、面白いボウヤね。以前はあんなにウブだったのに、今のボウヤはしっかりと地に足がついている。一皮剥けたわね……ツァンのおかげかしら? それともゆまのおかげ? 一体どこまで進んだのかしらね……?」
周囲の観客席やらマイクには声が届かぬよう、小声で、しかしハッキリとこちらの耳には届く程度の声量でツァンの名を出してくる雪乃。雪乃もやはり色恋沙汰が好きな女子ということか、実に興味津々といった感じだ。
だけど期待してるとこ悪いんだけど、ツァンともゆまとも、まだお友達関係のままで何もないんだよな。いや、だってあの二人と一緒にいるの楽しいし……下手に告白やらをして、このいい感じの関係が壊れたら嫌だし怖いし……。行けるやろと思って告白して、『何勘違いしてんのコイツ』って感じで、ゴミを見るような目で見られたら……ウッ!(心停止)
あとはまあ、プリメラとトゥルーデアが実体化できるようになり、更にそこにツヴァイまでもが加わった今となっては、今までほど『彼女ほちいよぉ〜!』というガツガツした思いを抱けなくなってきた……という事情もあったり。
「ノーコメントで。肯定しても否定しても、なんか怒られそうな予感がするし」
いや別にツァンたちとはなんともなくて、闇のデュエルやら精霊界への拉致やら、色々と経験したおかげなんすよ──なんて本当の事を言えるわけもないので、とりあえず誤魔化しにかかる。なんか精霊関係はこんなんばっかやな。でも言ったところでコッチが狂人扱いされるだけだしな。
「……ふぅん? その感じじゃ、まだ何もしていないのね。誠実と褒めるべきか、臆病者と貶すべきか……」
「oh……エスパーヤメテクダサーイ……」
ガッカリしたとでも言わんばかりに、ため息を吐いてくる雪乃だが……何でナチュラルに見抜いてくるんでしょうかねえ、この娘さんは。クソッ、これが女の勘ってヤツか。
〈それではこれより、相川雄二
「この私をここまで期待させてくれたんだもの、失望させないでちょうだいね?」
「勝手に期待したのはソッチだろ? ひでー話だ」
「うふふ……私、こう見えて意外と我儘で自分勝手なのよ」
「意外でもなんでもねえ……」
先生のアナウンスに促された俺と雪乃は、共に軽口を叩き合い、戦意を高めながらデュエルディスクを起動する。モーメントが回転を始め、デッキのオートシャッフル機能が起動。シャカシャカと高速でデッキ内のカードがかき混ぜられていく。
〈それでは、デュエルを開始してください〉
「デュエル!」
「デュエル!」
お約束の掛け声を叫ぶと共に、デッキから初期手札5枚をドロー。それと同じくして、周囲から聞こえてくる歓声がひときわ大きくなった。だいたい6:4で雪乃の応援の方が多い感じかな? 男子生徒の中に、雪乃を応援する裏切者が多数いるせいだな。まあ雪乃はガチで美少女だから仕方ないね。俺も逆の立場なら雪乃を応援するわ。
でも観客席をチラ見した感じ、ツァンとゆま、そしてアキさんは俺を応援してくれている模様。やったぜ。
「先攻は私ね。私のターン、ドロー!」
先攻は雪乃か。実技試験直前でデッキを切り替えるという、ある種の荒業でも使ってこない限り、雪乃のデッキは儀式デッキのリチュア。間違いなくガストクラーケによる先攻ハンデスを行ってくるので、できれば先攻が欲しかったんだがなあ。
「私は魔法カード、儀水鏡の集光を発動。その効果でデッキからグリム・リチュアを手札に加えて、そのまま召喚よ」
グリム・リチュア
DEF/700 星2
雪乃のフィールドに、頭部がサメの半魚人が飛沫と共に現れる。一体で水属性の儀式モンスターのリリースを賄える効果と、デッキリクルート効果を併せ持つ、なかなかに気の回る半魚人だ。
「グリム・リチュアは召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから同名以外のリチュアを特殊召喚できるの。ただしこの効果を使用したターン、私は儀式モンスターでしか攻撃できなくなってしまうのだけど……今は関係ないわね。私はデッキからリチュア・アビスを特殊召喚」
リチュア・アビス
DEF/500 星2
グリム・リチュアが先端に宝玉の嵌った杖を掲げると、雪乃のフィールドに召喚陣のようなものが現れ、そこからグリム・リチュアと同様のサメの半魚人が出現した。
「そしてリチュア・アビスも召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから同名以外かつ、守備力1000以下のリチュアを手札に加えられる効果を持つのよ。この効果で、私はデッキからヴィジョン・リチュアを手札に加えるわ」
リチュア・アビスの効果によって雪乃が手札に加えたのは、儀式モンスターのリリース要員兼サーチ札。さてさて、何をサーチしてくるのやら……。
「そして私はヴィジョン・リチュアとシャドウ・リチュアの効果を発動。この子たちは手札から捨てることで、それぞれデッキから儀式モンスターと儀式魔法を手札に加えられるの」
雪乃がデッキから手札に加えたのは、やはりハンデス効果持ちのイビリチュア・ガストクラーケだった。そして儀水鏡のカードも手札に加えたし、これで儀式の準備は万端か。
それにしても、さすがはリチュアだな。さっきから、デッキがすっごい勢いでグルグル回っているぜ。
「さあ、お楽しみの時間よ。私は儀式魔法、リチュアの儀水鏡を発動! フィールドのグリム・リチュアをリリースする事で、手札のイビリチュア・ガストクラーケを儀式召喚!」
イビリチュア・ガストクラーケ
ATK/2400 星6
雪乃のフィールドに、上半身は赤髪の少女。そして下半身は巨大なイカという姿をした、儀式モンスターが姿を現した。
「本来なら、儀式召喚するモンスターとレベルの合計が同じになるよう、手札かフィールドのモンスターをリリースしなければならないのだけれど……グリム・リチュアは、1体でそのリリースを賄えるの。まあ、ボウヤには今更説明するまでもないでしょうけど」
「まあな。だって何回か見てるし」
OCG次元の知識抜きでも、雪乃のデュエルを観戦した事のある俺にとっては、もはや既知の事象でしかない。つまり今の効果説明は、ギャラリーである生徒たちに向けたものであろう。
「私はイビリチュア・ガストクラーケの効果発動! ガストクラーケは儀式召喚に成功した時、相手の手札をランダムに2枚まで確認して、そのうちの1枚をデッキに戻させるわ! さあ……ボウヤの秘密を見・せ・て?」
ガストクラーケが杖を前方へと向けると、そこに俺の手札2枚の画像が大写しになる。ここは『いやぁ〜ん、エッチぃ〜』とでも返しておくべきなのだろうか。いやしかし、今はおふざけデュエルじゃないしな……。
「あらあら、重騎士プリメラにリミッター解除……ずいぶんとキケンなカードを持っているのね。じゃあ可愛い騎士さんには、デッキに戻ってもらおうかしら」
「ですよねー」
やっぱりそっちを選ぶか、まあ当然だよなあ。
俺は雪乃から指名の入ったプリメラを、手札からデッキに戻し──そうして雪乃は俺の行動を見届けると、再び動き始めた。
「うふふ、私はカードを2枚伏せて……エンドフェイズに、墓地の儀水鏡の集光の効果を発動。このカードを除外する事で、デッキから儀水鏡の瞑想術をセット。これでターンエンドよ」
雪乃LP4000 伏せカード3枚 手札2枚
儀水鏡の瞑想術……手札の儀式魔法を公開することで、墓地のリチュアを回収する罠だったな。できれば発動させる事なく、さっさと破壊したいカードだな。
「俺のターン、ドロー!」
「罠カード、発動よ。マインドクラッシュ……私はリミッター解除を宣言するわ」
ドローフェイズを終え、スタンバイフェイズに入った瞬間。俺の手札にあったリミッター解除のカードに突然ヒビが入り──無論、ソリッドビジョンの演出だ──そのまま粉々に砕け散った。
「マインドクラッシュの効果によって、宣言したカードが相手の手札にあった場合、相手はそれを捨てなければならない」
「むぅ、俺の必殺カードが……」
リミッター解除を墓地に送りながら、俺はぼやく。
新しくアークシーラというエースが加わった俺のデッキだが、なんだかんだで役立つカードだから、引き続き入れていたんだよな。レガーティアに使えば攻撃力7000で、それで殴れば大体の相手は死ぬし。
「せっかくのデュエルなんだもの。アッサリと終わらせるなんて、勿体無い真似はナシよ? もっと限界まで互いに責め合って、ドロドロに溶け合うの。素敵でしょう?」
そう言ってチロリと舌を出し、唇を舐める雪乃の姿はとてもエロかった。おお、眼福眼福。
そしてそれと同時に、デッキからもんのすごい怒りの波動が伝わってくるのも草。いや草じゃねえよ、ブチ切れすぎだろあの三人娘。リアルダメージは無しだかんな?
「魅力的なお誘いありがとさん。だが悪いな、生憎と俺の融点はかなり高くてね。溶けるのはお前だけだぜ?」
「つれないわね……。でもいいわ、なら私の熱でボウヤを溶かしてあげる」
「へ、その余裕面がいつまで続くかな……? 俺は手札から
惑星探査車
ATK/1000 星4
まるで荒野を走るバギーのように、派手な土煙を上げながら、俺のフィールドに無人の探査車が大ジャンプをしながら現れ──その車体を大きく弾ませながら停車した。仮にも精密機械だろうに、そんな走り方をしていいのだろうか。いや駄目だろ。
「そのカードは、確かフィールド魔法を……」
「その通り! 俺は惑星探査車の効果発動。コイツをリリースする事で、デッキからフィールド魔法を手札に加える! 俺が手札に加えるのは勿論、スタンドアップ・センチュリオン!」
惑星探査車が光の粒子に変換されると、俺のデッキから1枚のカードが数cmほど飛び出してくる。俺はそのカードを引き抜いて雪乃に公開すると、そのままデュエルディスクのフィールド魔法ゾーンを展開。そこにスタンドアップ・センチュリオン!をセットして発動した。
「フィールド魔法、スタンドアップ・センチュリオン!は発動したターンのメインフェイズ、手札1枚をコストに、デッキからセンチュリオンを魔法&罠ゾーンに呼び出すことができる! 俺は手札を1枚捨て──」
「そうはいかないわ。この瞬間、私は罠カード、フィッシャーチャージを発動! リチュア・アビスをリリースする事で、スタンドアップ・センチュリオン!を破壊するわ!」
スタンドアップ・センチュリオン!のリクルート効果にチェーンして、雪乃が発動したのは魚族をコストとして要求する万能除去罠。その効果を受けたリチュア・アビスは、まるで砲弾のような勢いで俺に向かって突進してきて、俺のデュエルディスクに激突。スタンドアップ・センチュリオン!を破壊して砕け散った。
「そして私はフィッシャーチャージの効果でカードを1枚ドローする」
「チッ……最悪の出だしだな。ならば俺は、今コストとして墓地に送ったカオス・ウィッチー混沌の魔女ーをゲームから除外する事で、手札から混沌のヴァルキリアを特殊召喚だ!」
混沌のヴァルキリア
ATK/1800 星4
地味にイラスト出演の多いデュナミス・ヴァルキリア。そのカオス版とも言える存在が、闇の粒子っぽいものを撒き散らしながら出現した。
「続けて除外されたカオス・ウィッチの効果も発動! このターン中、光か闇属性のシンクロモンスターしか、エクストラデッキから特殊召喚出来なくなるかわりに……白き獣トークンを2体、特殊召喚だ!」
白き獣トークン
ATK/1000 星2 チューナー
白き獣トークン
ATK/1000 星2 チューナー
「除外をトリガーにチューナーのトークンを呼び出した? また珍しいカードを使うのね……」
俺のフィールドに呼び出された、白い毛の獅子のような獣のトークンを見て、雪乃が嬉しそうに口端を吊り上げる。
「俺はレベル4の混沌のヴァルキリアに、レベル2の白き獣トークンをチューニング! シンクロ召喚──来い、トライエッジ・マスター!」
トライエッジ・マスター
ATK/2100 星6
「トライエッジ・マスターはシンクロ素材としたレベルの組み合わせによって、その効果が変動する。レベル2とレベル4の組み合わせの今回は、デッキからカードを1枚ドローする効果となる!」
よしよし。これで雪乃に荒らされた分を、少しは取り戻せたな。
「さらに俺はレベル6のトライエッジ・マスターに、レベル2の白き獣トークンをチューニング! シンクロ召喚──来い、メンタルスフィア・デーモン!」
メンタルスフィア・デーモン
ATK/2700 星8
「へぇ……ボウヤがそのカードを使うのね。少し意外だわ」
俺がシンクロ召喚したメンタルスフィア・デーモンを見て、雪乃が意味ありげな言葉を呟いた。
まあ、アルカディアムーブメントに拉致洗脳されていた俺が、彼らの使用していたカードを使ったことに、何かしら思うところでもあったのだろう。
「まあ、カードに罪は無いしな……。あ、その節はどうもお世話に」
既にお礼は何度もしたのだが、改めて雪乃に礼を言っておく。何を隠そう、アルカディアムーブメントの構成員となっていた俺の情報をツァンとゆまにリークしたのは、雪乃だったりするのだから。トップスとしてのコネやら、自分のファンの伝手やらを使って、俺の所在を見つけ出してくれたみたいで……本当に感謝している。ゆきのんマジ女神。マジ感謝。
「別に気にしないでいいわよ。私も、アイツ等には迷惑してたし……それに、あんな必死な形相で頼まれたら、ねぇ?」
愉快気に観客席の方へと目を向ける雪乃。その目線の先には、真剣な表情で俺と雪乃のデュエルを観戦しているツァンが座っており……。
「……デュエル再開といこうか。俺はメンタルスフィア・デーモンで、イビリチュア・ガストクラーケを攻撃だ!」
メンタルスフィア・デーモン ATK/2700 VS イビリチュア・ガストクラーケ ATK/2400
メンタルスフィア・デーモンの吐いた黒炎が、ガストクラーケを呑み込んで燃やし尽くし。その余波が雪乃を襲い、ほんの僅かだけライフを削り取る。
「きゃっ! ……ふふ、まだまだよ」
雪乃LP4000-300=3700
「メンタルスフィア・デーモンの効果。バトルでモンスターを破壊した時、その元々の攻撃力分の数値だけ、俺はライフを回復する」
雄二LP4000+2400=6400
さて、こんなところだろうか。瞑想術を破壊できなかったことは心残りだが、こんだけライフがあれば即死はないだろう。
「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンドだ」
雄二LP6400 伏せカード2枚 手札0枚
「あの状況から、即座に立て直しての反撃……素晴らしいわ。でも、これで終わりというわけじゃないんでしょう? もっと見せて頂戴、ボウヤの全てを……」
ターンが渡ってきた雪乃は、薄く微笑みながらそう口にすると、ゆっくりとカードをドローした。そういえば雪乃のこの思わせぶりな態度って、演技とかじゃなくて素でこれなんだっけ?
「私は手札からリチュア・ビーストを召喚よ」
リチュア・ビースト
ATK/1500 星4
まず雪乃が呼び出したのは、龍っぽい顔立ちの半魚人だった。コイツは召喚成功時に墓地のリチュアを蘇生させる効果持ちだったな。そして墓地にはグリム・リチュアが……うーむ、これは不味げ。
「リチュア・ビーストは召喚に成功した時、墓地からレベル4以下のリチュアを復活させる。私はグリム・リチュアを墓地から特殊召喚して、続けてグリム・リチュアの効果でデッキから2体目のリチュア・アビスを特殊召喚!」
グリム・リチュア
ATK/600 星2
リチュア・アビス
ATK/800 星2
雪乃のフィールドに、一気に3体の半魚人が横並びになる。ふえぇ……デッキぐるぐるだよぉ……。
「更にリチュア・アビスの効果で、デッキから2体目のヴィジョン・リチュアを手札に加え──ヴィジョン・リチュアの効果を発動。この子を手札から捨て、デッキからイビリチュア・ジールギガスを手札に加えるわ」
お次はジールギガスで攻めてくるか。ライフ4000制だと1000のライフコストはかなり痛いが、それでも除去とドロー加速を同時にこなせるのは優秀だ。俺も早く、レガーティアを出さなきゃな……。
「私は罠カード、儀水鏡の瞑想術を発動よ。手札のリチュアの儀水鏡を相手に見せる事で、墓地からヴィジョン・リチュアとシャドウ・リチュアを回収するわ」
サーチとリクルート、そして墓地回収を駆使してデッキを回す雪乃を見て、観客席から『なんて複雑なデュエルなんだ……!』という風なざわめきが、次々と上がり始める。
それにしても結局、瞑想術を発動されてしまったか。これは痛いな……。
「私は回収したヴィジョン・リチュアの効果を発動。この子を墓地に捨てる事で、デッキから2体目のイビリチュア・ジールギガスを手札に加えるわね」
2体目のジールギガス……雪乃のやつ、リチュアお得意の同名リリース儀式召喚からの、儀水鏡墓地効果による儀式体の回収をやるつもりだな。
「ふふふ、それじゃあ行くわよ? 私は儀式魔法、リチュアの儀水鏡を発動! 手札のイビリチュア・ジールギガスをリリースすることで、もう1体のイビリチュア・ジールギガスを儀式召喚!」
イビリチュア・ジールギガス
ATK/3200 星10
ついに来たか。復活のインヴェルズ・グレズことジールギガス。効果も強いが、純粋に高い攻撃力も普通に脅威だ。まあ俺のデッキにはレガーティアがいるので、打点に関してはそこまで──いや、そんな事より伏せカードを使わないとな。どうでもいい事をごちゃごちゃ考えていて、発動タイミングを逃したら泣ける。
「俺は罠カード、エターナル・カオスを発動! 攻撃力の合計が、イビリチュア・ジールギガスの攻撃力以下になるよう、俺はデッキから光属性と闇属性のモンスターを1体ずつ墓地に送る!」
「イビリチュア・ジールギガスの攻撃力を逆手に取った……!?」
エターナル・カオスの効果を聞いた雪乃が、驚愕の声を上げる。しかし、別にそこまでの高攻撃力は必要無かったんだけどね。でも驚いてくれてるみたいだし、とりあえず意味深に笑っておこうか。
「ククク……計画通り、ってな」
「……さすがね。まさかボウヤがここまでやるだなんて、本当に嬉しい誤算よ」
雪乃の表情が余裕を感じさせる微笑みから、闘争心を感じさせる笑みへと切り替わる。俺ちゃんの吐いた言葉は、どうやら雪乃のやる気スイッチを入れてしまったらしい。
俺は光属性の超電磁タートルと、闇属性のトゥルーデア。計2枚のカードを墓地へと送り込みながら、雪乃の次の手を待った。
「私はイビリチュア・ジールギガスの効果を発動! ライフを1000払うことで、デッキからカードを1枚ドローする。そしてそのカードを互いに確認し、リチュアモンスターだった場合、フィールドのカード1枚をデッキに戻す!」
雪乃LP3700-1000=2700
雪乃のライフが減ると同時にジールギガスが咆哮を上げ、その胸部に着けている儀水鏡らしきものの紋章が怪しく輝いた。
「ゾクゾクするでしょう? このドローは、ボウヤの運命を左右するドローよ」
「悪いが、俺には勝利の女神がついていてね。俺の運命は勝利一択なのさ」
ちなみに勝利の女神と書いてプリメラと読む。でも口に出すと、プリメラとツヴァイの間で煽り合いからのキャットファイトが始まるので気を付けよう(2敗)
まあ墓地には超電磁タートルを送っているため、別にメンタルスフィア・デーモンが除去られても問題は無いんだけどな。でも除去されるよりかは、されない方がいいに決まってるし……。
そうして俺や観客席の生徒たちが固唾を飲んで見守る中、雪乃は静かにカードをドローし──。
「私が引いたのはモンスターカード、
彩宝龍
DEF/2600 星5 チューナー
雪乃のフィールドに、何とも美しい水色の龍が姿を現す。彩宝龍か……確かドローフェイズに普通に引いた場合でも、手札から出てこれるんだよな。そして、墓地からサルベージした場合にも手札から飛び出てくると。いいカードだな。
「ここで上級チューナーを……!」
「私はレベル2のリチュア・アビスに、レベル5の彩宝龍をチューニング! シンクロ召喚──来なさい、氷結界の龍グングニール!」
氷結界の龍グングニール
ATK/2500 星7
高く飛び上がったリチュア・アビスが、彩宝龍の変化した、5つ並んだ光の輪を通り抜けたかと思えば。眩い光の中から姿を現したのは、氷結界の三龍が一角・グングニール。昔はサルベージ・ウォリアーから出すシンクロ先としてお世話になったなあ。
「そして私は手札のシャドウ・リチュアの効果によって、デッキからリチュアの儀水鏡を手札に加え──さらに墓地に存在する、リチュアの儀水鏡の効果も発動。自身をデッキに戻し、墓地からイビリチュア・ジールギガスを回収するわ」
ジールギガス、おかわり入りまーす! いやもういいから……もうお腹いっぱいだよ……。
エクシーズ召喚が存在しないため、グスタフ・マックスが出てこないことだけが救いか。俺、ライフ4000制での2000バーンは犯罪だと思うんだ*1
「私は再びリチュアの儀水鏡を発動! フィールドのグリム・リチュアをリリースすることで、手札のイビリチュア・ジールギガスを儀式召喚!」
イビリチュア・ジールギガス
ATK/3200 星10
ズシンと魔法陣の中から降り立った2体目のジールギガスを見て、生徒たちが歓声を上げる。大型が2体並んでいる姿は映えるからな……。
「イビリチュア・ジールギガスの効果を発動よ。ライフを1000払うことで、デッキからカードを1枚ドローする。そして、そのカードを互いに確認する!」
雪乃LP2700-1000=1700
雪乃は自信に満ちた表情を浮かべながら、デッキから勢いよくカードをドローした。そりゃそうだろうな。雪乃にとってみれば、これは何を引いてもいいドローなんだから。
リチュアモンスターを引ければ、ジールギガスの効果が発動。別に引けなくても、グングニールのコストになるのでオッケー。つまり雪乃は何のカードを引こうが、俺のメンタルスフィア・デーモンと伏せカードの2枚は消し飛び、そしてジールギガス2体の攻撃でジャストキル……と考えているんだろう。
「あら? このカードは……ふふ、ボウヤは運がいいのか悪いのか。私が引いたのは魔法カード、代償の宝札よ」
「oh……」
なんでリチュアにそんなカードが入ってんだよ。いや待てよ、水属性……手札コスト……シンクロ……うっ頭が。
「氷結界の龍グングニールの効果発動! 手札を2枚捨てる事で、ボウヤのフィールドのメンタルスフィア・デーモンと、伏せカードを破壊するわ!」
手札というエネルギーを供給されたグングニールが、大きくその首を仰け反らせた後、極寒のブレスを吐いた。そのブレスは俺のフィールドにいたメンタルスフィア・デーモンと、そしてセットされていたカードを呑み込んでカチコチに凍り付かせ──そして砕け散らせた。
「コストとして捨てた代償の宝札の効果で、デッキから2枚ドローよ。そして、これでボウヤを守るカードはなくなった……。イビリチュア・ジールギガスたちのダイレクトアタックで、このデュエルも終わりね」
「クク……それはどうかな?」
心なしか得意気にそう語る雪乃に対し、俺は逆にニヤリと笑い返してみせる。ミラーフォースや攻撃の無力化のような罠を警戒し、伏せカードを除去しに走ったんだろうが……一見正しいように見えた今の選択。 だがそれは、大いなる間違い!
「何ですって?」
「お前が破壊したやぶ蛇の効果発動! セットされたこのカードが、相手によってフィールドを離れた時! デッキ及びエクストラデッキから、好きな仲間を呼び出すことができる!」
「相手に破壊された時に、真の効果を発揮する罠カード……!」
「その通り、本当の意味での地雷カードよ! 俺が呼び出すのは当然、レガーティアだ!」
砕け散ったはずのやぶ蛇のカードが、俺のフィールドに再構築され、光を放つ。そしてその次の瞬間、上空より超スピードでレガーティアが俺のフィールドへと舞い降りた。
騎士皇レガーティア
ATK/3500 星12
ククク、レガーティアの降臨に協力してくれて、ありがとさん。おかげでシンクロ召喚をする手間が省けたぜ。OCG次元と違って、この世界には蘇生制限なんてルールは存在しねえからな……。蘇生カードやらなんやらで使い回して、じゃんじゃかアドを稼がせてもらうぜゲヒヒヒヒ……!
「レガーティアは特殊召喚に成功した時、デッキからカードを1枚ドローし、その後相手の最も攻撃力の高いモンスターを破壊する! カレッジ・ブラスター!」
レガーティアの腰部アーマーが分離し、複雑な軌道を描いて飛翔した後、ジールギガスの背後にて集結して合体。1基の巨大な浮遊砲台と化したそれから、極太のビームが放たれ──雪乃のフィールドで最も攻撃力の高いモンスター、ジールギガスの胴体をぶち抜いて消滅させた。
「くっ、まさかそんなカードを伏せていただなんて……!」
「伏せカードを警戒する心が裏目に出たな!」
悔し気に呻く雪乃だが、まあやぶ蛇なんて普通は警戒しないだろうしね。俺も警戒しねえし。
でもこう言っておくと、相手が悔しがって精神的アドが取れる上に、デュエルの流れがこちらに向いてくれるので……とりあえず言い得な台詞なんだよな。
「でも、まだ私のターンは終わっていないわ! 私は手札から魔法カード、浮上を発動! 墓地からリチュア・アビスを特殊召喚し、その効果でデッキからシャドウ・リチュアを手札に加えるわ!」
リチュア・アビス
DEF/500 星2
「そして墓地のリチュアの儀水鏡の効果を発動! 自身をデッキに戻すことで、墓地のジールギガスを手札に回収し──私は墓地のフィッシュボーグ-ガンナーの効果を発動! 手札1枚を捨てることで、墓地から特殊召喚できる!」
フィッシュボーグ-ガンナー
ATK/100 星1 チューナー
OCG次元では禁止になって久しい、強力な蘇生効果持ちのチューナーが雪乃のフィールドに蘇る。恐らく、代償の宝札はコイツ用のカードだったんだろう。
「私はレベル7の氷結界の龍グングニールに、レベル1のフィッシュボーグ-ガンナーをチューニング! シンクロ召喚──来なさい、スクラップ・ドラゴン!」
スクラップ・ドラゴン
ATK/2800 星8
「スクラップ・ドラゴン……!」
「ふふ、この子の効果は便利ですもの。ボウヤとお揃いね?」
まさか雪乃がスクラップ・ドラゴンを使ってくるとはな。意外だ。確かに一般流通しているカードなので、特にトップスの雪乃ならば、簡単に手に入れられるカードなのだろうが……それでも雪乃が使ってくるのは予想外だ。
だって女優ってイメージ重視だし、なんだかんだで、モンスターの見た目に拘る人間って多いからな。実際に周囲の生徒からも『藤原さんがあんなみすぼらしいドラゴンを……』みたいな反応が上がっているし。
「私はスクラップ・ドラゴンの効果を発動。私のフィールドのリチュア・ビーストと、ボウヤのフィールドの騎士皇レガーティアを破壊するわ!」
スクラップ・ドラゴンが口から吐いた火炎放射によって、俺のレガーティアが破壊されてしまう。そしてその際に、スクラップ・ドラゴンを構成するパイプから噴き出てきた蒸気によって、雪乃のリチュア・ビーストも破壊されるが……まあどう考えても俺の被害の方がデカいので、雪乃的には
「やぶ蛇のカードには驚かされたし、楽しいデュエルだったけれども……これでおしまいよ。私はシャドウ・リチュアの効果を発動。この子を捨てることで、デッキからリチュアの儀水鏡を手札に加え──リチュアの儀水鏡を発動! 来なさい、イビリチュア・ジールギガス!」
スクラップ・ドラゴンとリチュア・アビスの2体を儀式素材として、雪乃のフィールドに四本腕の巨人が
「し、しつこい……! まだ出てくるのかよ!」
「うふふ、そうよ。女ってのはね、とてもしつこくて執念深いの」
思わず出た俺の本音を、雪乃は否定するどころか、むしろ逆に乗っかってみせ、得意げな表情と言葉で返してくる。
まあ雪乃側から見えている情報だと、ジールギガスで2回ぶん殴れば勝利なので、しつこくなるのもわからんでもないが……。
「ここまで私を夢中にさせてくれた男は、本当に久々よ? でも残念だけど、これでおしまい……私はイビリチュア・ジールギガスでボウヤにダイレクトアタック!」
雪乃の命を受けた、ジールギガスがその巨腕を振りかぶる。そうして振りかぶり、タメを作っている腕に、バチバチと黒い雷が走り始め──。
「甘いわぁ! 俺は墓地の超電磁タートルの効果を発動! このカードを墓地から除外する事で、バトルフェイズを終了する!」
しかし繰り出された剛腕が俺へと届く、その直前。まるで見えない壁に衝突したかのように、ジールギガスの拳が突如として弾かれた。かつて超電磁タートルを使用した王様の語った『フィールドのモンスターに同じ電極を植え付け、バトルを強制終了させる』効果が発動したのだ。
「そう……エターナル・カオスの効果で、墓地に送っていたのね……」
「その通りさ。そんなに焦るなよ、『アッサリ終わらせちゃ勿体ない』んだろ?」
ニィ、と口端を吊り上げながらそう語った俺に対し、雪乃は“わかってないなぁ〜”とでも言いたげに肩をすくめ、ため息を吐いてみせる。
「女の子をその気にさせておいて、肝心なトコロはお預けだなんて。ワルイ子ね……私はカードを1枚伏せて、ターンエンドよ」
雪乃LP1700 伏せカード1枚 手札0枚
ジールギガスの効果は温存か。まあ俺のフィールドが空っぽなこの状況で使って、リチュアを引き当てたら自爆になって悲惨だしな。あと残りライフも気になるだろうし。
「俺のターン、ドロー!」
さて。雪乃のフィールドには攻撃力3200のジールギガスが2体。一般的アカデミア生ならばガタガタ震え、『もう駄目だぁ……勝てるわけがない……』とでも言うところだろうが、俺は恥知らずなセンチュリオン使い! 別にこんな状況など、屁でもないわガハハーッ! 令和のパワーを見せてやるでゲスよおぉぉぉ!
「俺は手札から速攻魔法、
従騎士トゥルーデア
ATK/1000 星4
専用のサポートカードで──魔法&罠ゾーンを経由し──
「俺はトゥルーデアの効果によって、トゥルーデア自身とデッキにいるプリメラの二人を、俺の魔法&罠ゾーンに移動させ──プリメラを自身の効果で特殊召喚だ!」
重騎士プリメラ
ATK/1600 星4 チューナー
俺のフィールドに現れたプリメラは、いつも通りにぶんぶんと槍を振り回してポーズを決めた後、キッと雪乃を睨みつける。ガストクラーケによって、いきなりデッキに戻されたのが、たぶん気に食わなかったんだろうな。
「あらゆる手を駆使して、そのカワイイ騎士様を呼び出す手管は見事ね。でもボウヤの展開の要であるフィールド魔法は既に破壊済み。そして肝心の騎士皇レガーティアも、墓地でおねんね中よ。一体どうするのかしら?」
「まあまあ、そう慌てるなよ。お前に面白いもんを見せてやるからよ……! 俺はプリメラの効果により、デッキから
俺の指示を受けたプリメラが、『ホントにコイツ呼ぶの?』とでも言いたげな、心底イヤそうな表情で渋々と槍を掲げ……その効果によって、俺の手札に新たなる仲間であるツヴァイのカードが加わった。
今までなら──俺が何を言わずとも──プリメラが自分の意思で、勝手に効果を発動していた場面なんだけどな。初日よりかはマシになったとはいえ、まだ不仲は解消されていないようで。
「なっ、それは……新しいセンチュリオン!?」
「そうさ、本邦初公開! 大きな拍手で迎えてくれよ? 俺は手札のガーゴイルⅡの効果を発動! 魔法&罠ゾーンのトゥルーデアを墓地に送ることで、手札から特殊召喚だ!」
竜騎兵ガーゴイルⅡ
ATK/2000 星8
俺の掲げたカードより姿を現すのは、強化外骨格のようにゴーレムを装着し、顔の上半分をマスクで隠した、水色の髪のドラゴン娘。
そうして現れたツヴァイは、驚く雪乃や周囲の生徒たちの反応に気を良くしたのか。得意げに口端を吊り上げたまま、大型クローへと無駄に魔力を充填しては、バチバチと派手に放電させていた。
「さあ行くぜ! 俺はレベル8のガーゴイルⅡに、レベル4のプリメラをチューニング! 天を駆ける一条の光よ! 最強の騎士となりて、我がもとに舞い降りよ! シンクロ召喚──来てくれ、
騎士皇アークシーラ
ATK/3000 星12
プリメラの変化した4つの光の輪を、ガーゴイルⅡが潜り抜け──目も眩むような光が弾けた後に、舞い降りるは蒼い装甲の巨大な騎士型ロボ。バチバチと放電する光の剣を両手に構え、ポーズを決めるその姿を見て、生徒たちが『カッケー!』と歓声を上げる。
「これが……新たな騎士皇……」
アークシーラの登場は、完全に予想外だったんだろう。雪乃は目を丸くしながら、呟くような声を漏らしていた。
「ガーゴイルⅡはシンクロ素材になった時、墓地から手札に回収できる。そしてアークシーラの特殊召喚に成功したことで、俺は墓地の騎士の絆の効果を発動! このカードを除外する事で、墓地に存在するプリメラを魔法&罠ゾーンに呼び戻す!」
俺の魔法&罠ゾーンに、スッとプリメラが半透明の状態で戻ってくる。これで、アークシーラとプリメラが互いに破壊耐性を与え合う陣形が完成したわけだな。精霊としての人間関係は微妙かもしれないが、カードとしての相性は抜群なんだよね、この二人。
「さらにアークシーラは特殊召喚に成功した時、デッキからセンチュリオンカードを1枚手札に加えられる! 俺が手札に加えるのは、
カウンター罠の
「なるほどね、確かに驚かされたわ。でも、所詮は攻撃力3000。私のイビリチュア・ジールギガスの、攻撃力3200には届かない……」
「確かに“今”はそうだな。だが、届かないなら届かせるまでのこと! 俺は手札から魔法カード、マジック・プランターを発動! 永続罠扱いのプリメラを墓地に送ることで、デッキからカードを2枚ドローだ! 頼んだぜ、俺のデッキ!」
雪乃という強敵に加え、大量の
俺は渾身の気合いを込めて、デッキから2枚のカードをドローした。結果は当然……。
「……来た来た来たァ! 俺はカードを2枚伏せ、そして手札から装備魔法、魔導師の力をアークシーラに装備する!」
騎士皇アークシーラ
ATK/3000→4500
アークシーラが赤いオーラを纏い、その攻撃力が一気に1500ポイントも上昇する。土壇場でのドローからの逆転劇に、観戦する生徒たちだけでなく。当のツヴァイも喜びの声を上げているし……勝負に出た甲斐があったな。
「攻撃力4500! 本当に引き当てるだなんて……!」
「たりめーだろ! 俺たちの絆を止められるもんなら、止めてみろってんだ! バトルだ! 俺はアークシーラで、イビリチュア・ジールギガスを攻撃! アラリィ・スラッシュ!」
攻撃を解禁されたアークシーラが、ジールギガスへとブーストを吹かして接近。一気に距離を詰め、それと同時に両手に握る光剣の出力が増し──。
「甘いわボウヤ! その攻撃宣言時に罠カード、
「ニョアアアアーッ!?」
おい馬鹿やめろ! この状況で本当に止めてくるやつがあるか! すいませーん、カメラ! カメラ止めてー! カアァーット! カットカットカット!
「騎士皇アークシーラの攻撃を無効にし、その攻撃力分のダメージをボウヤに与えるわ!」
内心パニックに陥る俺だが、しかしもう攻撃宣言は完了しており、魔法の筒も発動済み。なのでアークシーラの剣は止まることなく振るわれ──ジールギガスに命中する直前で、半透明のバリアのようなものによって防がれ。そして、バリアと剣の衝突によって発生したエネルギーが、四方に飛び散り。そのうちの1つが俺へと直撃した。剣戟だから仕方ないとはいえ、筒要素どこ行った。
「ぬわーっ!?」
雄二LP6400-4500=1900
く、くそう……4500ダメージとか洒落にならんぞ。初期ライフ以上のダメージじゃねえか。メンタルスフィア・デーモン君の回復が無ければ即死だった……。
「ふぅ……危ない危ない。ライフを回復しておいて良かったぜ」
あらかじめ回復させ、増やしておいたライフで顔面受け……これが俺流のバーン対策よ! でも闇のデュエルは勘弁な!
それにしても、攻撃を反射されたアークシーラがものすごい狼狽えてるな。別にツヴァイのせいじゃないんだから、気にしなくていいんやで。空気を読まずにシリンダーを発動した雪乃が悪いんだから。
「4500ポイントもの効果ダメージ。本来なら、一撃で終わりなのだけれども……こうなる事を見越して、ライフを回復させておいたのね」
「まあな。直接ダメージ系のカードは、相手の防御を無視できる強力なカードだが……そのかわり火力は比較的控えめだ。だからこうして、事前に回復させておけば一安心ってことだ」
なのでレガーティアを墓地に送って、次の効果発動の準備をしつつ、ライフを回復させられる神秘の中華なべなんかは、かなり優秀なんだよな。まあシリンダーは完全に予想外だったんだが。コイツのダメージは控えめって言葉じゃ済まねえ。
「俺はエンドフェイズにアークシーラの効果を発動。墓地のプリメラを魔法&罠ゾーンに帰還させ、これでターンエンドだ!」
騎士皇アークシーラ
ATK/4500→5000 星12
魔法&罠ゾーンのカードが1枚増えたことにより、アークシーラの攻撃力はさらに上昇。あの
雄二LP1900 伏せカード2枚 手札1枚
「攻撃力5000……凄いわねぇ。ふふ、このスリル……クセになりそう! ドロー!」
攻撃力5000のアークシーラに闘争心を刺激されたのか、雪乃はセクシーポーズを決めながらカードをドローする。OCG次元の知識で見ると“そのポーズは何のために!?”となるかもしれないが、この世界では別に珍しいことじゃない。興業のためという理由もあるが、それ以前にデュエリストのテンションなどがドロー結果に直結するからだ。
むしろ俺も必殺技っぽく、なんかカッコイイポーズを取り入れるべきだろうか。でもテンションの上がる、いいポーズが思いつかんな。さすがにポーズ付きのドローはちょっと恥ずかしいって気持ちもあるし。
「私は手札から貪欲な壺を発動! 墓地のモンスターを5体デッキに戻すことで、デッキからカードを2枚ドローよ!」
雪乃の墓地からスクラップ・ドラゴンとグングニール、そして2体のリチュア・アビスにシャドウ・リチュア。計5体のモンスターが浮かび上がり、デッキに吸い込まれていく。
この場面でリソース回復&手札増強のカードを引き当てるとは、決めポーズの効果恐るべし。
「私は手札から魔法カード、大嵐を発動! フィールドの魔法・罠カードを、すべて破壊するわ!」
雪乃の掲げたカードより、強烈な風雨が解き放たれ、互いの魔法&罠ゾーンへと襲い掛かる。
雪乃め、まずバックを剥がしに来たか。さすがに2枚目のやぶ蛇はないと判断したのだろうが……その判断自体は大正解だ。さすがにやぶ蛇のような地雷カードを2枚も入れる勇気はねえ。
いやそもそも、やぶ蛇自体普段は入れてねえカードだからな。相手が上級デュエリストの雪乃だからこそ、バック剥がしを行ってくるはずだと信頼して入れたんだから。
なのでバックを剥がしに来た雪乃の判断は正しい。だが判断が正しくても、それが正解だとは限らないのがデュエルモンスターズの世界!
「俺は大嵐にチェーンして永続罠、安全地帯を発動! 対象はアークシーラだ!」
「何ですって!? 私のカードを選ばないの……!?」
さすがは雪乃。その気になった途端にランキングを一気に駆け上がってだけあって、安全地帯の効果についても熟知しているようだ。
雪乃の叫んだ通り、安全地帯は破壊された時に、指定したカードも巻き込んで破壊してしまう永続罠。なのでこういう場面では相手のカードを選び、疑似的な除去カードとして使うのが定番なのだが……。
「アークシーラがいる限り、俺の魔法&罠ゾーンの表側表示カードは、効果では破壊されない! よって安全地帯の破壊も無効となる!」
アークシーラの耐性付与効果によって、その定番の使い方はできないのよね。吹き荒れる嵐が俺の魔法&罠ゾーンを襲うも、表側表示であるプリメラと魔導師の力、そして安全地帯のカードは破壊できず──唯一耐性を得ていない、騎士魔防陣だけを破壊していった。
騎士魔防陣はフリーチェーンなので、チェーン発動しても良かったんだけど……騎士魔防陣の効果は“いずれか1つ”しか発動できないタイプだからな。レガーティアには緊急時の盾役になってもらおうと、あえてチェーン発動せずスルーしておいたのだ。
騎士皇アークシーラ
ATK/5000→4500 星12
唯一の影響は、魔法・罠カードが1枚減ったことで、アークシーラの攻撃力が500ポイント下がってしまったことか。自分で言っといてなんだが、本当に些細な影響だな。
「自分の魔法&罠ゾーンの表側表示カードを、破壊から守る効果。それが騎士皇アークシーラの、真の力……」
「ああ、その通りだ。そして安全地帯を発動したことで、アークシーラは今、究極の存在と化した!」
なにしろ安全地帯とアークシーラも相互に耐性を与え合う関係だからな。一応、対象を取らない破壊以外の除去や、安全地帯をバウンスや除外することで突破自体は可能だが……それができるデュエリストが、このネオドミノシティにどれだけいるか。
まあ俺の目の前にいるジールギガスが、ちょうど対象を取らないデッキバウンスという効果を持っているんだが。でも発動するかどうかは不確定。ノリにノってる、今の俺の運命力なら大丈夫だろ! タブンネ!
「なるほどね。攻撃力4500で、カード効果の対象にはならず、また戦闘及びカード効果でも破壊されない。確かに驚異的ね。……でも究極というのはどうかしら? イビリチュア・ジールギガスの効果は、対象を取らずに相手をデッキに戻す効果。この効果が決まれば……」
やはり、ジールギガスの効果を使うつもりか。まあそれしかないしな。だが仮にジールギガスチャレンジが成功して、アークシーラを突破できたとしてもだ。俺には魔法&罠ゾーンから飛び出てくるプリメラと、騎士魔防陣という二重の壁がある。この壁を突破するのは不可能だろう。
「気付いていたか。だが、それは決まればの話だ。お前の残りライフは1700、つまりチャンスは一度きり……」
「でも、試してみる価値はあるわ。それに何より……刺激的で面白いじゃない?」
ワクワクした表情を浮かべながら、俺の言葉に雪乃はそう答える。
だろうね、そう言うと思っていたよ。それに失敗しても1ドローはできるんだし、やらない理由が無い。個人的にはやって欲しくなかったけど。
「私はイビリチュア・ジールギガスの効果を発動! ライフを1000払うことで、デッキからカードを1枚ドロー!」
雪乃LP1700-1000=700
真剣な表情に戻った雪乃が、勢いよくカードをドローする。うおおお、リチュア引くなリチュア引くなリチュア引くな! なんかどうでもいいハズレカード引け!
「……私が引いたのは罠カード、ドレインシールドよ」
よし来た、ジールギガスチャレンジ失敗! これでもう、雪乃にはアークシーラを突破する手段はない! 勝利確定、おつかれちゃーん! えー、完走した感想ですがぁ……。
「イビリチュア・ジールギガスのライフコストを賄うカードか。序盤に引いていたら、当たりのカードだったかもしれんが……惜しかったな」
「惜しい? 何を言っているのかしら? ふふ、まさかボウヤ……私がこれでお終いだとでも。その騎士皇アークシーラを突破する手段が無い、とでも思っているのかしら?」
クスクスと笑いながら、そのような事をのたまう雪乃に、俺は内心で狼狽える。
な、何を言ってるんだ。ジールギガスの効果が不発に終わった以上、どうやって
「私は手札から魔法カード、サルベージを発動! 墓地から攻撃力1500以下の水属性モンスター2体を手札に加えるわ! 私が手札に加えるのはこの2枚、彩宝龍とグリム・リチュアよ!」
「そ、その組み合わせは……!?」
マジかよ、マジで持ってるのか!? あまりにレア&高価すぎて、持ってる奴を1人も見たことねえから、つい意識から外していたあのカードを……! どおりで強気な態度だったわけだ! 流石はトップスだなコンチクショウ!
「へぇ、もう気付いたの……。察しのいい子は嫌いじゃないわよ? そう、彩宝龍は墓地から手札に加わった時、フィールドに特殊召喚されるモンスター! 私は彩宝龍を特殊召喚!」
彩宝龍
DEF/2600 星5 チューナー
「そしてグリム・リチュアを通常召喚し、効果発動! デッキからリチュア・アビスを特殊召喚するわ!」
グリム・リチュア
ATK/600 星2
リチュア・アビス
ATK/800 星2
雪乃のフィールドに揃ったチューナーと非チューナーのレベルの合計は5+2+2=9となる。つまりOCG次元でも大暴れし、この世界でも最強のカードと名高い、例のヤツが……!
「リチュア・アビスの効果によって、私はデッキからシャドウ・リチュアを手札に加え……さあ、行くわよ?」
「来ないで」
「いいや、行っちゃうわ。私はレベル2のグリム・リチュアとリチュア・アビスに、レベル5の彩宝龍をチューニング! 破壊神より放たれし聖なる槍よ、今こそ魔の都を貫け! シンクロ召喚──現れよ、氷結界の龍トリシューラ!」
氷結界の龍トリシューラ
ATK/2700 星9
眩い光の中から、咆哮と共に姿を現すのは、氷結界の龍の頂点。端末世界のシナリオにおいて、世界の時の歩みを止めたとまで言わしめた、最強のドラゴンだった。
来ないでって言ったじゃないすかああぁぁ! 俺の最強アークシーラが除外されりゅううぅぅ!
「氷結界の龍トリシューラの効果発動! このカードがシンクロ召喚に成功した時、相手の手札・フィールド・墓地のカードを、それぞれ1枚ずつ除外する!」
「──ッ! この瞬間、俺は墓地の騎士魔防陣の効果発動! 墓地からこのカードを除外する事で、墓地に存在するレガーティアを、攻撃力を1500ダウンさせた状態で復活させる!」
騎士皇レガーティア
DEF/2000 星12 (ATK/3500→2000)
トリシューラがその三ツ首から冷気のブレスを吐こうとするのに合わせて、俺は墓地の騎士魔防陣の効果を発動。除外効果を受ける前に、レガーティアを墓地から救出しておく。
休憩中のところを、あわや除外されかけたレガーティアは、大慌てで大地を粉砕し墓地から脱出してきた。
「……白い方には逃げられちゃったわね。でも、その厄介な青い方だけでも葬らせてもらうわ! やりなさい、トリシューラ!」
トリシューラが3つの首から吐いたブレスが、それぞれ俺の手札のガーゴイルⅡと、フィールドのアークシーラ。そして墓地のメンタルスフィア・デーモンへと襲い掛かり、物言わぬ氷像へと変化させていく。ああ、俺のアークシーラが……。
「くっ、すまない……」
アークシーラたちを守れなかったことに対し、申し訳ない気持ちが湧いてくるが……今は落ち込んでいる時じゃない。
「だがレガーティアは特殊召喚に成功した時、デッキからカードを1枚ドローできる! そしてその後、相手フィールド上の最も攻撃力の高いモンスターを破壊する! カレッジ・ブラスター!」
アークシーラの敵討ちだ! と行きたいところだが……今現在、雪乃のフィールド上で最も攻撃力が高いのは、ATK3200のジールギガス。俺はレガーティアが合体ビットでジールギガスを粉砕するのを見ながら、内心でため息をつく。
まあいい。効果を発動し終わって、実質バニラのトリシューラよりも、ジールギガスの方が脅威度は高いんだ。それに敵討ちはできなかったけど、その代わりにいいカードをレガーティアが引っ張って来てくれたからな。
「このまま攻め込みたいところだけど……騎士皇レガーティアには、攻撃力2000以下の仲間を戦闘による破壊から守る効果があったわね。私はカードを1枚伏せて──」
「この瞬間、永続罠扱いのプリメラの効果を発動! プリメラを魔法&罠ゾーンから特殊召喚だ!」
重騎士プリメラ
DEF/1600 星4 チューナー
アークシーラことツヴァイが消えたからか、少し機嫌良さげなプリメラが、魔法&罠ゾーンからぴょこんと飛び出てきて俺へとウィンクをする。まったく、このウサギ騎士がよぅ……いちいち仕草が可愛すぎんだろ!
「そしてプリメラが特殊召喚に成功したことで、俺はデッキから重騎兵エメトⅥを手札に加え、そのまま効果発動! プリメラを魔法&罠ゾーンに移動させることで、手札から特殊召喚!」
重騎兵エメトⅥ
DEF/3000 星8
俺がプリメラの効果を発動させたことで、メインフェイズの巻き戻しが発生するが……俺が新たに呼び出したエメトⅥの攻撃力も2000。つまりレガーティアの与える戦闘破壊耐性の範囲内なので、雪乃は結局何もせずそのままメインフェイズを終了。ディスクの表示がエンドフェイズに移行したので……。
「このエンドフェイズに、レガーティアの効果発動。墓地のトゥルーデアを、魔法&罠ゾーンに復帰させる! コール・センチュリオン!」
魔法&罠ゾーンに光の柱が立ち上り、その中から半透明のトゥルーデアが姿を現す。よし、これで何とか立て直すことには成功したな。やはり大嵐に騎士魔防陣をチェーン発動しないで正解だった。
「んもう。人のターンだってのに、よく動く子ね……」
確かにこの時代だと、ここまで相手ターンに動くデッキはないからな。正直すまんとは思っている。だが私は謝らない。
「私はこれでターンエンドよ。ふふ、一進一退の攻防……ゾクゾクしちゃうわね……」
エンド宣言をしながら、恍惚とした表情を浮かべる雪乃。同年代とは思えないそのエロティックさに、男子生徒たちもメロメロだ。俺の応援をする声が露骨に減ったぞコラ。
雪乃LP700 伏せカード1枚 手札1枚
雪乃のフィールドにはジールギガスとトリシューラ、特に耐性のない大型モンスターが2体のみ。そして伏せカードはドレインシールド……つまりこちらの展開を妨害してくる類のカードはない。勝負を決める絶好のチャンスだ。
というかこのターンで決めとかないと怖い。雪乃の手札はたった1枚と、一見すると俺の超有利な場面だが……リチュアはサーチとサルベージが大得意なテーマ。そして雪乃の墓地にはフィッシュボーグがいるし、儀水鏡と儀式モンスターがセットで眠っているので、マジで油断できない。
「俺のターン、ドロー!」
ドローしたカードはシノビネクロか、これはいいカードを引いた。これならドレインシールドを踏み抜いて、無理やり勝利に持っていける!
「このデュエル、どうやら俺の勝ちのようだな雪乃!」
「へぇ……大きく出たわね。いいわ、ならボウヤの全力を見せて頂戴?」
俺の勝利宣言に対し、雪乃もニヤリと笑いながら、挑発的な言葉で返してくる。おう、お望み通り、全力を見せてやろうじゃないか。
「俺は手札からシノビネクロを召喚!」
シノビネクロ
ATK/800 星2 チューナー
俺がカードをデュエルディスクに置けば、フィールドに骸骨の忍者がドロンと現れる。こいつは墓地から除外された時、フィールドに帰還するチューナーだが……まあ、その効果を使うのはまた今度だな。
「そして魔法&罠ゾーンにいるプリメラとトゥルーデア の2人を、自身の効果で特殊召喚だ!」
重騎士プリメラ
ATK/1600 星4 チューナー
従騎士トゥルーデア
ATK/1000 星4
プリメラとトゥルーデアが魔法&罠ゾーンからポンと飛び出て来て、忍者の横にウサミミ
……そもそも敵対した覚えはない? まあ精霊にブロントさんのネタは通じないよね、うん。
忍者はどうでもいいけど
「そして俺はプリメラの効果で、デッキからウェイクアップ・センチュリオン!を手札に加える」
俺は手札に加えたウェイクアップ・センチュリオン!のカードのイラスト面を雪乃に向けてひっくり返し、見せつけるよう公開する。ま、今回は手札コストとしての役目なんだけどな。
「フィールドが埋まった……そしてチューナーとチューナー以外のモンスターが並んで……」
「そうだ、行くぜ雪乃! 俺はまずレベル8のエメトⅥに、レベル2のシノビネクロをチューニング! シンクロ召喚──来い、神樹の守護獣-牙王!」
神樹の守護獣-牙王
ATK/3100 星10
「残りのチューナーと非チューナーの合計レベルは8……そう、ボウヤも呼ぶのね。ふふふ、お揃いね」
「……ああそうだな、お揃いだ。俺はレベル4のトゥルーデアに、レベル4のプリメラをチューニング! シンクロ召喚──来い、スクラップ・ドラゴン!」
スクラップ・ドラゴン
ATK/2800 星8
本当は実質ノーコストで除去できる、ダークエンド・ドラゴンをシンクロ召喚するつもりだったのだが……なんか雪乃が期待していたので、急遽スクラップ・ドラゴンに変更だ。まあどっちでも勝てるだろうし、ここでわざわざズラしたら、雪乃はともかく観客の生徒からブーイングを食らいかねんからな。観客の期待に応えるのは義務だしな、うん。
「連続シンクロ召喚……魅せてくれるじゃないの、ボウヤ」
「まだだ! 俺はさらに手札から装備魔法D・D・Rを発動! 手札1枚をコストに、除外されているアークシーラを帰還させる! 戻ってこい、アークシーラ!」
突如として空間に亀裂が走ったかと思えば、ガラスのように粉々に砕け散り。そしてその砕け散った空間から飛び出してくるのは、蒼き装甲の騎士型ロボット。コストにしたのはもちろん、先ほど加えたウェイクアップ・センチュリオン!だ。
騎士皇アークシーラ
ATK/3000 星12
「騎士皇アークシーラまで……!?」
「アークシーラが特殊召喚に成功したことにより、俺はデッキから
レガーティアとアークシーラのダブル騎士皇に、牙王とスクラップ・ドラゴン。
大型シンクロで埋め尽くされた俺のフィールドを見て、雪乃が一歩後ずさりながら、驚愕の声を上げ。そして雪乃と同様に、観客の生徒たちも興奮と驚愕の叫び声を──上げてねえな。なんか逆に静かだわ。フフフ、気圧されちゃったかな? まあ気持ちいいからコレはコレでヨシ!
「俺はカードを1枚伏せ、スクラップ・ドラゴンの効果を発動! 今伏せたカードと、雪乃のイビリチュア・ジールギガスを破壊する! 焼き尽くせ!」
本来なら雄二ファイアー! と叫ぶところだが、さすがにそんな雰囲気じゃないのでキャンセルだ。俺は空気が読める子なのでね、フフン。
雪乃が使用していた時と同様に、スクラップ・ドラゴンは口からは炎を。そして飛び出たパイプからは高温の蒸気を噴出し、ジールギガスと俺の伏せた騎士皇爆誕のカードを同時に破壊した。
「くっ……! ふふふ……凄いわね、ボウヤ。ええ、本当に凄い……」
「これで終わりだ、雪乃! バトル! 俺は神樹の守護獣-牙王で、氷結界の龍トリシューラを攻撃!」
本当はアークシーラにリベンジをさせてやりたいところだが、それだとドレインシールドで防がれてしまうのは目に見えているからな。
神樹の守護獣-牙王 ATK/3100 VS 氷結界の龍トリシューラ ATK/2700
「きゃああ!?」
俺の指示を受けた牙王が、トリシューラ目掛けて猛然と突進し、その勢いのまま体当たりを仕掛け。一撃の元、見事トリシューラを粉砕した。牙王は俺のメイン2以外では、相手のカード効果の対象にならない。つまり対象を取る罠である、ドレインシールドではこの攻撃は防げない。
「くうっ!?」
雪乃LP700-400=300
戦闘ダメージとそれに付随する衝撃を受け、雪乃が小さく呻き声を上げる。さあ、これで雪乃のフィールドはドレインシールド1枚を残すのみだ。
「続けてスクラップ・ドラゴンで、雪乃にダイレクトアタックだ!」
「くっ……その攻撃宣言時に罠カード発動、ドレインシールド! スクラップ・ドラゴンの攻撃を無効にし、その攻撃力分のライフを回復する……!」
雪乃LP300+2800=3100
雪乃の周囲にバリアが張られ、スクラップ・ドラゴンの吐いた炎を回復に変換。そのライフが大きく回復するが……これで雪乃のフィールドは完全にガラ空き。プリメラとツヴァイの連続攻撃で、トドメを刺してやる!
「俺はレガーティアで雪乃にダイレクトアタック! ヴァリアント・スマッシュ!」
俺の指示を受けたレガーティアが、魔力槍を大きく振りかぶりながら、雪乃目掛けてブースターを吹かし。そのまま身構える雪乃の胴体に、一閃突きを叩き込む。
「きゃああっ!」
雪乃LP3100-2000=1100
「これでフィニッシュだ! 俺はアークシーラで、雪乃にダイレクトアタック! アラリィ・スラッシュ!」
レガーティアに続き、今度はアークシーラがブースターを吹かす。そうして雪乃に向けて高速で飛翔・接近しながら、その勢いのまま両手の光剣を振り抜き──。
「きゃあああーっ!」
雪乃をすれ違いざまに斬り捨て、そのライフをゼロにした。
雪乃LP1100-3000=0 Lose
◇
〈そこまで! 勝者、相川雄二君です!〉
「ウオギャアアー!? なんで男子なんかに負けちゃうのよー!」
「うおおー! 信じていたぞ相川ー! これで男子の二連覇だー!」
「でもドサクサに紛れて藤原さんを呼び捨てにしたのは許さんぞー!」
「イイイイイイイヤッ! キキィィィィィ!」
先生のアナウンスが流れた途端に、スタジアム内がワーワーと一気に騒がしくなる。主に女子生徒たちは雪乃の敗北を悔しがり、男子の7割は俺の勝利を喜び、そして残り3割──おそらく雪乃のファンだろう──は発狂して奇声を飛ばしていた。見苦しくて草生える。
「いいデュエルだったな。今回は俺の勝ちだったが……どっちが勝ってもおかしくはなかった」
自身の敗北に関する脳内反省会でも行っていたのか、それともデュエルの余韻に浸っていたのか。俺は一人静かに目を閉じ、佇んでいた雪乃に近寄って声をかけてみるのだが。
「ええ、いいデュエルだったわね。私も、ここまで興奮したのは久々よ」
雪乃は特に落ち込んだりしている様子を見せることなく、普段通りの余裕のある振る舞いで、そう返してきた。いやまあ、雪乃もデュエリストである以上、内心では悔しがったりしているんだとは思うが……それを全く表に感じさせないのは、さすがは未来の大女優と言うべきか。
「それにしても……まさかあの平凡なボウヤが、ここまで進化するだなんてね」
「まあねえ。少し前までの俺だったら、こんなところに立つなんて夢のまた夢だったろうし。我ながら驚いているぜ」
本当の事を伝える訳にも行かないので、とりあえず笑って誤魔化す。精霊関係もアレだが、俺と俺で超融合! とかもっとアレだもんな。言えるわけねえべ。
「まず手始めにネオドミノの頂点に立ち、そこから世界に羽ばたいて、いつかは世界の頂点に……」
「おう?」
どうした、突然俺の夢について口にして。でも実際に俺がネオドミノのテッペンに立つためには──普段の身内デュエルモードとは違う──正真正銘、本気モードのジャックや遊星を倒す必要が……イヤ違うか。本編後の遊星は研究職に、そしてジャックはシングル戦のプロリーグ、ライド
つまり俺とジャックがプロとしてデュエルを行うとするのなら、それはライドAのタイトルマッチでって事になるのか。……それはそれで燃えるな? むしろ、シチュエーション的にはそっちの方が美味しいな?
「アナタなら、本当に叶えられるかもしれないわね。私も、応援してあげるわ」
「おう、サンキュな! 俺の進化は止まんねぇからよ、楽しみにしていてくれよな!」
試合後の握手をする俺と雪乃を見て、周囲の生徒たちが一斉に拍手をする。雪乃のファンはハンカチを噛んで地団太を踏んでいたが、まあ些細な事だろう。
これでアカデミア内の強者デュエリストには全員勝ったし、アカデミア最強の称号は俺のもんだぜガハハー! アキさんには少し悪い気もするが、この成績はマジで進路にも影響するからな。特にプロを目指すのなら、めっちゃ影響するし。
「ところで……ボウヤはWRGPには出場するのかしら?」
「ん? ああ、出場したいとは思ってるんだけどな……でもWRGPってチーム戦じゃん?」
「…………ふふ。そう、出場の意思はあるのね。それは良かったわ」
特大ガバに関する修正が終わりました!お見苦しいものを見せてしまい、本当に申し訳ないです!多分これで大丈夫…のハズ!
ガバ修正がてら、ちょっと違和感を感じたデュエル展開も修正しました。ゆきのんは安定よりもギャンブル仕掛けてくるタイプだよなと思い直しまして。
あと攻撃名・効果名の提案、本当にありがとうございました!さっそく使わさせてもらいました!
対雪乃戦でした。裏ボス的なゆきのんを倒した事で、これで真の意味でアカデミアのテッペンに立った事に。ゆきのんを出すかどうかは迷ったんですが、既にアキさんとのデュエルはやった&ゆきのんなら絶対ここで出張ってくるよな…と思ったのでこんな感じに。
実は最初はpunk(ハイランダー)と組み合わせる予定だったものの、予想よりずっと強くて真顔になる→でもやっぱりセアミンちゃん出したいよ…オーガナンバーちゃん出したいよ…と数日間迷い続けた結果がこれ(投稿遅れ)だよ!
ちなみにアカデミア生は男子より女子の方が強いというのは、TF6に男子生徒がいない理由を、それっぽくでっちあげたオリ設定。
いや本当に男子生徒がいないせいで、男子の絡みをやりたければ、適当にオリキャラをでっちあげるか、別時空から拉致ってきてデバフをかけるしかないのが地味に面倒だったり。露骨にゆまとツァンの出番が多いのはそのせい。