ネオドミノのテッペンに立ちたくて   作:ジェム足りない

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デッキ改造計画

「シンクロ……シンクロ来い……あと使いやすいチューナーと非チューナーも……」

 

 アカデミアでの授業を終えた俺は、友人である田中くんに誘われるまま、近場のカードショップへとやってきてパックを剥き剥きしていた。

 ちなみにアカデミアの授業は普通の授業に加えてデュエルの授業があるという形式で、通常授業部分のレベルは普通に高くてびっくりした。この授業についていってたこの世界の“俺”って、随分優秀だったのね……。俺の癖にやるじゃない。真面目に予習復習しないと“俺”に負けちゃう……。

 

「ふーん、逆張りマンだったお前も遂に諦めたか。まあ逆張り精神だけでモンスター0をよくここまで貫いたもんだよ。素直にすげえよ」

「ああ、うん……まあな。でも流石にもう、そんな事を言ってる余裕がな……」

「実技試験も近いしなあ。あーあ、試験とかやだねえ」

 

 やだやだと肩を竦める田中くんに同意を示しつつ、新しいパックへと俺は手を伸ばす。ちっ、またモンスター無しだ。手に入るのは我が身を盾にだとか、スキル・サクセサーだとかのサポートカードばっかりでやんなるね。

 

 ちなみにどうやら、田中くんが言う通りにこの世界の“俺”はいわゆる罠モンスターデッキの使い手だったらしい。周囲にはモンスターばかりがチヤホヤされる現環境への逆張りだとか吹聴していたらしいが……まあ実際のところはただの強がりで、モンスターが手に入らないのを誤魔化してただけなんだが。

 現在のデッキにセンチュリオンのカードが投入されてるのは、俺が混ざった影響っぽい。以前の“俺”はセンチュリオンのカードなんて持ってなかったみたいだし。

 いやー、我ながら腐らずよく頑張ったもんだと思うよ、本当に。

 

「シンクロ……シンクロはどこだ……」

 

 それはともかく、とにかくパック剥きだ。お小遣いの許す限り、パックを剥き続けるのだ……。さすがにデッキ内モンスターが3枚にエクストラデッキ1枚はヤバいって。いくらセンチュリオンが最新最強のテーマと言えども無茶だって。特に俺って決闘者の天敵であるプレミ君とはズッ友だし。わたくしはマスターデュエルでも環境デッキのパワーで押し潰すのが勝ちパターンだったクソカスなデュエルスフィンクスの持ち主でしてよ? って感じだし。

 そう思って俺は『俺にも剥かせてよw』という田中くんと共にパックを剥き続けていたのだが……。

 

「馬鹿な……これだけ剥いてモンスターが0だと!?」

 

 とりあえず手持ちの小遣いの半分ほどをつぎ込んでみたが、目当てのモンスターが全く出てこないという驚きの結果に終わってしまった。まさかの全滅である。

 俺が混じった事で、なんかいい感じの変化とか無いかなーと思っていたが甘かった。

 

 まあ本音をぶっちゃけると、パックからセンチュリオンのカードが出てくるんじゃね? レガーティア3積みしてえなー、なんて思って剥いたんだが……激甘だった。これなら素直に良さげなカードをD-HEROシングルガイでよかった気も……いやこっちの世界のシングルって馬鹿みたいに高いしなぁ……正直手が出ん。

 それにここまでパックから出てこないカードを無理矢理デッキに投入するってのも、この世界だとちょーっとヤバそうなんだよね。

 

「うーん、困ったな。予定が狂ったぞ……」

 

 本当はもう少し剥く予定だったが、あまりにも出てこないので諦めた。たぶんモンスター系当たらんわ。誘発娘やシンクロモンスター欲しかったんだけどな。

 罠モンスターならいっぱいいるから、ヴェーラーとメタル・リフレクト・スライムで星態龍をシンクロ召喚! みたいなのをやりたかったのだが。

 

「これはひでーな。さては逆張りなんかしてたから、モンスターに嫌われたか?」

「うーん、洒落にならんぞそれ」

 

 田中くんが面白半分といった様子で茶化してくるが、この世界だとマジで似たような事情で引けない可能性がありそうなのが怖い。

 なにしろこの世界では真面目に“カードとの縁”というものが存在するのだ。デュエリストがカードを選ぶように、カードもまたデュエリストを選ぶ──なんて言い出したのは誰だったか。

 縁がないのに無理矢理シングル買いやトレードで手に入れて投入した結果、デッキが急に回らなくなったという噂もあるくらいだ。

 

「でもとりあえず、宮廷のしきたりと禁じられた聖槍は当たりだな。それぞれ2枚目ゲットだぜ」

 

 宮廷のしきたり

 永続罠

 ①「宮廷のしきたり」は自分フィールドに1枚しか表側表示で存在できない。

 ②このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、「宮廷のしきたり」以外のお互いのフィールドの表側表示の永続罠カードは戦闘・効果では破壊されない。

 

 

 禁じられた聖槍

 速攻魔法

 ①フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターはターン終了時まで、攻撃力が800ダウンしこのカード以外の魔法・罠カードの効果を受けない。

 

 モンスターは引けなかったけど、そこそこいい魔法と罠が引けました。

 聖槍の便利さはもはや言うまでもなく、この宮廷のしきたりがあれば、俺の罠モンスターたちが戦闘でも効果でも破壊されない不死の壁と化すのだワハハ。

 前世界と違ってこっちの世界は戦闘破壊や効果破壊が主流だし、結構活躍してくれるんだよね。まあ油断してると馬鹿みたいに攻撃力を上げたモンスターで上から殴られたり、バーンで焼かれたり、貫通ダメージでぬっ殺されたりするんだけどね。

 この世界の人間って追い詰められると急にドロー力上がるから……まあ俺もその恩恵を受けていた側だから文句は言えないけど。

 

「そういや、試験じゃ誰が()()十六夜と当たるんだろうなぁ」

「ああ、十六夜アキねえ……」

 

 俺がパックを剥いた後のゴミを片付けてると、ふと田中くんそんな呟きを漏らした。

 十六夜アキ。遊戯王5D'sのヒロインにして、カードを実体化させる能力を持つサイコデュエリスト。

 主人公である不動遊星に救われるまでの彼女は、とにかくとんがっていて面倒臭い。マジで面倒臭い。救われた後は普通に可愛いし、本来の優しい性格に戻るんだけどね。きっと遊星のいい嫁になるよ。あ、ちなみに俺はアキさんのドリルいらない派です。

 まあ話を戻すと、この世界に元からいた“俺”の十六夜アキに対する評価もそれと特に変わらないようで……こっちの“俺”はできるだけ近寄らないようにしていたっぽい。まあ向こう側も、俺みたいな特に秀でた所のないパンピーには興味無かったみたいだけど。

 

「ま、そこら辺は先生方が何とかするんでねーの? シミュレーターを使うとか、デュエルディスクを使わないテーブルデュエルをするとか」

「そーだなー。それじゃ、気を取り直してデュエルしに行くか?」

 

 ふと思いついた話題なだけで、別に真面目な議論をするつもりは無かったのだろう。

 俺がゴミを片付け終えるのを確認した田中くんは、デュエルディスクを装着しながら椅子から立ち上がる。その目線の先にはショップ前のデュエルスペースへと向けられており──。

 

「んー、悪いけどハズレ引きまくって、なーんかやる気出ねえわ。俺はパスってことで──」

「あー! ユージさんじゃないですか! 奇遇ですね!」

 

 まさに元気はつらつといった感じの女の子の声が、そこに割り込んできた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「ユージさんもカードを買いに来たんですか?」

 

 別に俺とはそこまで仲がいいというわけでもないのに、アカデミアの外で知り合いに会えたのが嬉しいのか。目を輝かせながら歩み寄る茶髪の少女の名は、宮田ゆま。

 遊戯王タッグフォースというゲームに出てくるキャラクターの一人であり、属性HEROというなかなかに強力なデッキの使い手で──とにかく純粋で明るくて可愛い子だ。

 

「ああ、うん。そろそろこのデッキにも限界ってもんを感じてきてさ。上を目指す為に、ちょっとデッキを弄ってな」

「おおー! デッキを改造したんですね!」

「え、マジかよ! もう弄ってたのか!?」

 

 俺の言葉を聞いて、ゆまと田中くんは派手に驚きのリアクションを取ってくれる。どひゃーって感じで。お前らノリいいな。

 いや、こっちの世界の人間は──特に興行としてデュエルを行うプロのデュエリストや、そのプロを目指しているアカデミア生なんかは──みんなこんな感じだったわ。

 身振り手振りなんかでも観客を楽しませなきゃいけないからか、自然とリアクションが大袈裟になりがちなのだ。

 あと追い詰められた際にはきちんと『だがお前のモンスターの攻撃力は俺様のモンスターより下だぜ!』みたいな前振りを入れるのが暗黙の了解っぽくなってたりもする。あの台詞、言うのも言われるの結構楽しいんだよね。

 

「ああ悪い悪い、言い忘れてたわ。まあそれでデッキを弄ったんだけどさ、手持ちのカードだけじゃちょっと物足りなくて……それで、いい感じのモンスターを補充しようかなーと思って来たんだけど……」

「あ、あはは……。それはご愁傷さまで……」

 

 肩をすくめながら首を横に振る俺を見て、ゆまが苦笑しながら慰めてくれる。ああ、ネタにしてくる田中くんと違ってめっちゃええ子やー。爆死した心に優しさが染み渡るね。

 

「まあ俺はそんな感じだけど、宮田さんは?」

「私はデュエル相手を求めて、ふらふら〜っと来ちゃった感じです!」

「へー、じゃあ俺でよければデュエルどう? まだこのデッキの試運転、こなしてなかったしさ」

 

 えへへー、と笑うゆまに対し、俺は早速デュエルを持ちかけてみた。そして、そんな風にゆまへとデュエルを持ちかける俺を見て、田中くんが目を丸くする。

 フフフ、昨日まではコミュ障だったはずの俺が、自分から女子にデュエルを持ちかけるのが、不思議でたまらないといった感じの顔だな。

 残念ながら、今日の俺は昨日までの俺とは違うのだ! 進化した雄二……ネオユージとでも呼んでくれたまえフハハ。

 

「おいコラ、爆死してやる気ねえんじゃなかったのか?」

「なんだっていい、女子と仲良くするチャンスだ……!」

 

 ゆまには聞こえないよう気を遣ってくれているのか、小声でツッコミを入れてくる田中くん。そんな田中くんへと、俺は力強い言葉で言い返した。

 なにしろこの世界の女の子たちは、元の世界と比べてレベルが高いというか……やたらめったら可愛いのだ。年齢イコール彼女いない歴の過去……いや未来か? まあそんな感じのものを持つ俺としては、とりあえず女子とお近づきになっておきたいというもの。彼氏募集中の女の子を紹介してもらえるかもしれないしな! 

 それに今目の前にいるゆまだって、普通に可愛いし。

 

 まあ元からこの世界の住人だった“俺”や田中くんにとっては見慣れたレベルであるため、ゆまに対しても“コミュ強で人懐っこい元気少女”という印象しか抱いてないみたいだが。世界規模で目が肥えてるというか、80点~100点の間で争ってるハイレベル美形ワールドというか。

 

「お前そんなキャラだっけ……?」

 

 俺の反論を聞いた田中くんは『解せぬ』とでも言いたげな表情だ。

 でも確かに、昔の俺は男同士でつるむ方が楽しくて、女の子とかマジでどうでもいいと思ってたからなぁ……。むしろ俺と俺で超融合! しなければたぶん君の予想通りの行動をとっていただろうよ。

 いやー、まさか社会人になったら、出会いの機会そのものがあんなに激減するなんてねえ。俺ちゃんビックリ。

 大手企業に入れば普通に出会いの機会あるぞだって? あまり強い言葉を使うなよ。泣くぞ俺が。

 

「え、いいんですか!? ユージさんなら大歓迎ですよ!」

「お、おう……それはよかった。じゃ、じゃあデュエルスペースに行こうか」

「はい!」

 

 すごくいい笑顔で俺のデュエルの申し込みを受けてくれるゆまちゃん。そんな彼女の反応を見て、俺はなんとも歯切れの悪い返事を返すので精一杯だった。理由はもちろん女子への免疫ゼロな童貞特有のアレだ。

 うーんこれは危険だ。めっちゃ危険だ。普通に勘違いしそうになるぞこれ。

 “俺”とゆまの間にはアカデミア以外の接点はほぼなく、またコミュ障よりだった俺は女子生徒をさり気なく避けていたので、この笑顔は単純にデュエルの相手が見つかって嬉しい、というだけのものだろう。

 そう頭では理解しているんだが、それでもちょっと胸が高鳴ってしまうのを止められない。男ってほんと単純だよねー。

 ……まあ俺の他人を観る目がめっちゃ変わったってせいでもあるんだけどな。ていうかそれがほぼ全てなんだけどな! 

 

「よーし、それじゃあ行きますよー!」

「ばっちこーい!」

「ユージ、負けるんじゃねえぞー」

 

 デュエルフィールドへ移動した俺たちは距離を開けて互いに向き合い、ほぼ同時にデュエルディスクを起動する。ディスクが音を立てながら変形し、モーメントが独特な光を放ちながら回り始め──。

 

「デュエル!」

「デュエル!」

 

 お約束とも言える、デュエル開始の合図を宣言する。

 




遊戯王の小説なのに、またデュエルまでたどり着けなかった……次こそはデュエル回です。
そしてTF6より宮田ゆまちゃんの登場ですが、なにぶんプレイしたのが随分前なので口調やらおかしいところがあるかもしれません。
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