「うーん、今日もいい天気だ……」
少し遅めに発生した退学騒動も無事終わり、そうしてしばらくの時が経った休日の朝。俺はベッドに横になったまま、プリメラがカーテンを開けてくれた窓から差し込む朝日に目を細めていた。
起き上がれない理由? それはまあ、俺にしっかりと抱き着いたままスヤスヤと寝ている、
「お袋は……朝の買い物か?」
それからしばらくして、トゥルーデアが目覚めた事によってベッドから解放された俺は、一階のリビングへと足を運ぶものの……そこには誰もいなかった。うちのお袋は朝になると、散歩がてら近くの24時間営業のスーパーに行くことが多いからな。今日もきっとそうなんだろう。親父は昨日残業だったらしくて、今も爆睡中だったし。
「お、ガラ炊き醤油あるじゃーん。モヤシもあるし、朝飯はサッパリとラーメンで行こう」
俺は冷蔵庫の中から取り出したラーメンを調理しながら、今後起きるだろう数々のイベントについて思いを馳せる。うろ覚えの記憶だが、たしか野生の悪霊に龍可が拐われたり、蟹がトラックでDホイールごと出荷されかけていたような……。
ちなみに、クロウによる頑固な爺さん説得回やら、悪徳金融業者のガロメ様による『ジャック・アトラス、貴様は既に破産している!』なローン地獄回は終わっちゃっていたりする。遊星やクロウから『こんなことがあってな』という感じで、全部終わった後に聞かされたんだよね。
「しかし、ローン回を見逃したのは痛いな」
まあ前者は両親健在、家族仲良好の俺が参加したところで微妙なので、仕方ないにしてもだ。でも後者はマジで参加したかった。参加したかった……!
しかしながら、今の俺は学生の身分。なので授業のある平日やら、夜に起きるイベントに関しては、マジでどうしようもないんだよな。ゴースト騒動の時にも思ったが、こういう時は一人暮らしが羨ましくなる。
「だがプランはまだある……2重3重にな……」
確かに俺は不当なローンに抗うジャックの勇姿(?)を見逃した。だが、まだジャックはバイトの内定とクビを繰り返している。つまり、流れはまだ途切れていないのだ。ならば問題はない。密かに楽しみにしていたイベントが終わった? ならば似たようなイベントを起こすまでのことよ! ジャックよ、首を洗って待つが良いフハハー!
◇
あれから飯やらなんやらを終え、遊星のガレージへとやって来た俺は、全員集合していたシグナー組を見回しながら、真剣(っぽく見える)表情を作りながら声を張り上げた。
「それではこれより、ジャックにピッタリの仕事を見つけよう会議を始めます!」
「イェーイ!」
俺の上げた声に、龍亞が拳を振り上げながら、ノリのいい返事を返してくれる。
「お、おぉー……」
「……これが『真面目な話』なの?」
しかしクロウとアキさんの2人は困惑の声を上げていた。やれやれ、2人ともノリ悪いなぁ。龍可に至っては“わたし呆れてます”とでも言わんばかりに、これ見よがしに額に手を当てながらため息吐いてるし。
まあ、ネオドミノシティの未来に関わる重大な話って名目で、みんなの注目を集めた俺も、ちょーっぴり悪いかもしれんけどさ。でも龍亞のノリの良さを見習いたまえよ。
「フン、何を言い出すのかと思えば……余計なお世話だ。職探し程度、別に貴様らの手を借りるまでもないわ」
「えー。でもジャックってば、そう言って連敗続きじゃん?」
「グッ……!」
一方、当のジャックはやはり不満顔だったが、しかし俺が軽くツッコんでやると撃沈した。
「どーせジャックの事だし、テキトーに町をぶらついて、目についたバイト募集中の店に突撃してたんでしょ。人間、向き不向きがあるんだからさー。ある程度狙いを絞ってから動いた方がいいと思うぜ?」
「そうね。採用された後で、向いてないと後悔しても遅いしね」
「むぅ……」
俺の意見にアキさんが追従し、2人がかりの説得を受けたジャックが唸る。確かジャックはアニメでも、弁当屋やら本屋やら、ガニ子ことステファニーの働く喫茶店やら、めっちゃ適当にバイト先を選んでいたからな。
「とりあえず接客系を外すだけでも、打率は上がると思うぜ?」
「ああ、それはそうだな。コイツに接客とか絶対に無理だし」
「なんだと!」
俺の発言にクロウが続き、ニヤニヤ顔でジャックを肘で示し──案の定、気の短いジャックがそれに反応する。だがしかし、そのジャックの反応こそが決め手となり、遊星を含む全員がクロウの発言に“うんうん”と頷いていたり。ジャック本人は気がついていないようだが。
「あとそれに、これは普通に真面目な話だぜ? だって考えてみろよ。今このネオドミノには、ゴーストを操って悪巧みをしてる奴が潜んでいるだろう?」
「ああ、そうだな……」
俺の言葉を聞いた遊星が、その表情を真剣なものに切り替えて頷く。よっしゃ、ここからが本番だぜ。見てろよー、うまいこと言いくるめてやっからな。
「相手はセキュリティのデュエルロイドを盗み出し、強化改造するレベルのヤベー技術力を持ったやつらだ。WRGPも大事だが、そいつらに対抗するためにも、Dホイールの強化は必要不可欠!」
遊星が研究・開発用に用意したDホイールの素体を指差しながら、俺は少し大きめに声を出す。その勢いに釣られてか、他の面々もなるほど……と納得を示し始めていた。
ところで、なんでゴーストに対抗するためにDホイールの強化が必要なのかって? そりゃお前、マシンの性能が向上したら、デュエルの腕も連動して上がるのは当然のことだろう?
「だがジャックがプーのままでは、その為の資金がピンチ! 強化どころか維持も危うい! これを何とかしなくては──」
「誰がプータローだ、誰が!」
しかし、俺が手近なデスクをバンと叩きながら決めたところで、俺のその言葉を聞いたジャックが怒りのヘッドロックを決めてきたではないか。
「ぐおぉ……!? ギブ、ギブギブ! ぷ、プリメラーッ!」
「コラ貴様、それは反則──ぐおおあぁッ!?」
思わずプリメラに助けを求めたところ、ジャックが悲鳴を上げたあとその場に蹲った。サンキュープリメラ。ふう、酷い目にあったぜ。
ところでジャックに何やったん? 実体化して脛を蹴ってやった? その
「お、おのれ……卑怯だぞ貴様……!」
「クックック、いやなんかゴメン。でも俺とプリメラは一心同体だから──ああいや、もちろんお前らもそうだからな。当然じゃないか、忘れてないよ?」
蹲るジャックにプリメラとの絆を誇ろうとしたところ、自分たちは? とトゥルーデアとツヴァイが霊体のまま訴えてきたので、慌ててそのフォローに入る。そうしてまるでパントマイムのように、1人で左右に言い訳をし始めた俺を見て、クロウが小さく呟いた。
「なんかアレだな……幽霊相手に浮気の言い訳をする、頭のおかしい奴にしか見えねえな……」
まあねえ。周囲から見たらそうよねえ。だから俺も、お外では周囲から不審がられないよう気をつけているわけだし。
そうやってぐだぐだしているうちに、なんやかんやでジャックの仕事に関する会議は始まった。
「ジャックは塗装に関してはかなりの腕前だ。それを活かすのはどうだろう」
おーおー、いきなりぶっ込んでくるねえ遊星。アニメでの描写──アキさんのDホイールの塗装担当──から知っていた俺や、遊星と同じく幼馴染組のクロウはともかく、アキさんや龍亞龍可は『本当に特技あったんだ……』的な感じで驚いているぞ。ジャックに対する熱い信頼を感じるな。
「でも塗装って、要はペンキ塗りでしょ? それって仕事になるの?」
しかし気を取り直した龍亞が、少し言い辛そうにしながら、そのような言葉を口にした。まあ、龍亞のその感想はわからんでもないけどね。塗装って一見すると、誰にでもできそうな仕事だからな。俺もキッズ時代は似たような事を思っていたよ。
「馬鹿者、塗装を舐めるな! 厚すぎず薄すぎず、一定の厚みで塗料を塗り、塗りムラがないよう仕上げる技術は当然のこと! 塗料を塗る下地を丁寧に仕上げる技術や、周囲の環境を読み取って、適切なペース配分をする──」
「うわああーっ、わかった! わかったよ!」
だが龍亞のその反応が気に食わなかったのか、ジャックはグッと拳を握りしめながら、塗装について熱く語り始めた。その熱と勢いに呑まれ、龍亞もタジタジだ。
「……じゃあ、塗装業でも始めてみる? ジャックは人の下に付くタイプじゃないし、アルバイトよりかは悪くないと思うけど」
ああ、やっぱりアキさんもそう思っていたか。ジャックにアルバイトは向いてないって。いや、ジャックの我の強さを知っていれば、誰だってそう思うか。
「……実は、それはオレも考えたことがある」
え、マジで?
思わずジャックの顔をまじまじと見てしまう俺だったが……他のメンバーもそうだったらしく、特にクロウなんかは本気で目を丸くしながら驚いていた。
「なんだその顔は。旧サテライト地区の復興が進む、今のこのネオドミノにおいて、オレの技術の需要は大きい。それを活かそうと思うのは当然のことだろう」
「じゃあ、なんでやらなかったの?」
腕を組みながら1人頷くジャックに、龍可から疑問の声が飛ぶ。
「……開業するに至っての初期投資費用と、塗装関連の資格の有無。そして既存の業者とのコネ。この辺りを考えた結果だな」
まあ道具に関してはメ蟹ックがなんとかしてくれるだろうが、資格とコネはねえ……。プライドの高いジャックにとって、特にコネが致命的か。あと勝手に『こっちの方が合うから』と、注文と違う事をやらかすのもありそう。
しかし、頃合いを見て話題に上げるはずの、大本命がいきなり潰れちゃったな。これどうしようね。
「うーむ……」
遊星の爆上げしたハードルを超えるべく、頭をうんうんと悩ませていると。ふと、龍亞が名案を思いついたとばかりに明るい声を出した。
「やっぱりジャックといえばデュエルなんだしさ、デュエルで仕事をすればいいんじゃないかな? ほら、デュエルショーとか!」
「デュエルショーか……まあ悪くはない発想だな」
「でしょでしょ!」
「たまには、オレを応援してくれる子供たちにも、ファンサービスをしなくてはな」
自分の提案をジャックから褒められ、龍亞が嬉しそうにはしゃぎ出す。無邪気に声を上げるその姿に、穏やかな空気が流れるが……。
「いくら元キングのネームバリューがあるとはいえ、素人がいきなり主役張れるわけねーだろ。現実見ろよ現実」
「元キングだとぉ!?」
クロウからの容赦のないツッコミが飛び、そしてそのツッコミの中にあった元キンというワードにジャックが反応。そのままクロウと取っ組み合ってのじゃれ合いを開始するという、もはや見慣れた光景に移行してしまった。あまりに見慣れた光景すぎて、龍亞や龍可でさえヤレヤレと呆れポーズを取っていたり。
「……ねえユージ。私、ふと思ったんだけど」
「ん? どしたん?」
パロ・スペシャルやらロメロ・スペシャルやら。プロレス技の応酬を始めたクロウとジャックの2人を、龍亞と一緒に『おー、すっげー』とか言いつつ眺めていると、ふとアキさんが遠慮がちに話しかけてきた。
「雪乃に頼んで、ジャックを受け入れてくれそうな劇団を紹介してもらうというのはどうかしら?」
あー、そうきたか。確かに雪乃なら、そっち方面にも明るいだろうしなあ。でも雪乃かぁ……。
「ユージにだってわかっているでしょう? 本人は強がってるけど、ジャックに普通の仕事は無理よ」
「まあなあ……ジャックはプライドが高すぎてなぁ……」
「ええ。あなたの提案で始まった会議なんだし、頼まれてくれないかしら。あなたの頼みなら、きっと雪乃も動いてくれるわ。お願い、遊星たちのためにも……!」
はい、言い出しっぺの法則を持ち出すのは反則だと思います! くそう、まさかこんな形で俺に火の粉が帰ってくるとは……。面白半分でこんな会議開いた俺が悪いってか?
ていうかアキさん、ぶっちゃけ最後のが本音だろ。そんなに遊星が好きか? まあ俺も好きだけどよ。
「なにをヒソヒソ話をしている?」
「なんだぁ? この穀潰しの上手い使い道でも見つかったのか?」
そのように輪から外れて、コソコソと小声で話し合っている俺とアキさんを不審に思ったのか。ジャックとクロウの2人がプロレスバトルを中断して、俺たちに声をかけてきて──そしてそのせいで、遊星や龍亞たちの目線もこちらへと集まってしまう。
ええい、もーちょいそのままバトルを続けていればいいものを。変なところで目ざとい──じゃなくて耳ざとい二人だ。
「穀潰しとはなんだ! 今はただ、オレに合う仕事が見つからないだけだ!」
「そうやってふんぞり返っているようじゃ、何の仕事も合わねえよ! 少しは態度を改めろ!」
「ハァ……まったく。私はただ、ユージに雪乃への仲介を頼んでいただけよ」
一瞬で言い争いを再開したジャック&クロウに呆れながら、アキさんが内緒話の内容をこの場にいる全員に明かした。まあ大声で言うような話でもないが、同時に隠すようなものでもない話だからね。ただこうやって周囲の目が集まると、俺が断りにくくなるだけで。
「雪乃……? 誰だそれ」
「初めて聞く名だな。アカデミアの人間か?」
初めて雪乃の名を聞いたクロウとジャックが、それぞれ疑問の言葉を口にしながら首を傾げ。
「ええ。藤原雪乃。アカデミアに通う生徒で、有名俳優の両親を持つ子でね。最近、ユージにお熱なのよ」
アキさんがその2人の疑問に答えた。いやでもアキさん、その言い方は、誤解を招く可能性が非常に高くてですね……? ああもう、クロウの目が“新しいオモチャ発見”って感じで、めっちゃ輝いてるじゃないか!
「なんだぁ、お前また新しい女の子引っかけたのか! やるじゃねえかこのこの!」
「引っかけたって言い方ぁ……本人たちに聞かれたら、俺が被害受けるんだぜ?」
「なんだよモテ自慢か? カーッ、ヤダヤダ! 遊星にジャックにお前、うちの男連中は、どいつもこいつもモテモテで羨ましいねえ」
クロウがジャックの相手をほっぽリ出して──俺の肩に腕を回しながら──ニヤニヤと笑いながらウザ絡みをしてくる。別にモテたいとか思ってないクセにね。女の子への興味より、孤児院の子供たちへの親心の方がデカいくせによお。
「俺か……?」
そして遊星は遊星で、クロウから名指しを受けた事に、割とガチ目に戸惑っているし。この鈍感蟹め。アキさんカワイソス。
「でも、お前が順調にジャックへの道を歩んでるようで、少し不安になるぜ……Dホイールもライディングジャケットも白いしよ。『キングは1人、このオレだ!』とか言い出すんじゃねえぞ?」
「フン。出来る男の元には、男女を問わず自然と人が集まるものだ。このオレのようにな」
「えー、ジャックと同じ道かぁ……」
「何故そこでイヤそうな声を出す!」
俺とクロウ、ジャックのやり取りを聞いて、遊星たちがハハハと笑い声を上げる。確かにジャックはリアルファイトもデュエルも強くて、いざという時はとても頼りになるけどよ……こう、普段がね? 人として尊敬できるかって言われるとね?
「まあ冗談はさておき、雪乃のアレは好意ってより好奇心じゃねえかなー」
話題が少しずれてしまったが、とりあえずアキさんの誤解を解くべく口を開く。あとプリメラたちがイラっと来るぜ! 的な雰囲気を漂わせてるし。さっきから龍可がこっちを見て苦笑してんだよね。
「ふぅん?」
言い返されたアキさんは不満気だが……だってゆきのんからは面白半分のアトモスフィアを感じるんだから仕方ないじゃん? おおかた、自分に即堕ちしない男おもしれーとか思ってるんだろうね。俺は知能指数が高いから解るんだよな。ここで調子に乗ったら酷い目に合うって。
まあ俺にはプリメラたちがいるから、そこら辺(男特有の勘違い)を気にせず付き合える、いい男友達枠だと自画自賛させてもらってるが。
「自分をデュエルで打ち負かした男に興味を持って、面白半分でちょっかいかけてきてーみたいな? 雪乃ってホラ、相手を手玉に取りたがる癖があるし」
「………………まあ、いいけどね」
アキさんから呆れ気味な声が返ってくるが……え、もしかしてゆきのんフラグ立ってたの? マジで? いや待て、アキさんはついこないだまで人間不信やってた少女。なので対人経験値もそこまで高くないだろうし、しょんぼり顔で『ごめんなさい、私の勘違いだったみたい』と謝ってくる可能性もある。つまり、同じ女子の意見だから〜と素直に信用するのは危険ってこった。
「有名俳優の娘さんに仲介か……なるほどな」
おっと。やはりというべきか、遊星はアキさんの狙いに気付いたか。
「ええ。彼女は女優の卵として、業界でも相当に期待されている子でね。まだ学生だけど、かなり顔が利くのよ。だからその子に、ジャックを受け入れてくれる劇団を紹介してもらえないかと思って……」
「いいじゃんいいじゃん! ショーで活躍するジャック見たーい!」
「待て、まだオレはやるとは一言も言ってないぞ!」
アキさんの言葉を聞き、龍亞とジャックがにわかに騒がしくなるのだが。
「あら、さっきは『悪くない』って龍亞を褒めてたでしょう? それに、今まで普通の仕事を続けて駄目だったんだもの。少し毛色を変えてみるってのも、ありなんじゃないかしら」
「ムゥ……それはそうだが……」
アキさんにあっさりと言いくるめられる。
「なんだかんだで、ジャックのネームバリューはまだ大きいはずよ。確かにフォーチュンカップで遊星には負けたけど、それで過去に打ち立てた記録が消えてなくなったわけじゃない。現に、今でもファンは残っているしね」
“遊星には負けたけど”のあたりでジャックが何か言いたげな表情をするものの、しかしそのまま黙って話を聞いていた。アキさんは年下+女の子という事で、ジャックも対応がかなり甘くなるからな。
超官の仕組んだ八百長? ジャック本人は知らないし……そもそもの話として、三極神を持ってるドラガンクラスじゃないと、仕組むまでもなく圧倒するだろうからセーフセーフ。
「……と、言うわけで。お願いね、ユージ」
そうしてジャックの説得を終えたアキさんは、軽くウィンクをしながら俺に雪乃への仲介を頼んできた。なんか雪乃にタカるようで、できれば断りたい話なんだが……でも断れる雰囲気じゃねえよなあ。仕方ねえ。
「わかったわかった、俺からも聞いてみるよ。でも期待すんなよ? 雪乃とはあくまで、最近仲良くなったってだけなんだから」
俺の回答を聞いて、他の面々がほっと一息を吐く。とりあえず、第1回の会議はこれで終わりくさいな。しかし、仲良くなったばかりの雪乃に、いきなり頼み事をする羽目になるとはな……気が引けるぜ。
だけど最悪の場合でも、別に俺が雪乃から“つまんねー奴”みたいな目で見られるだけ──アレ? むしろそうなると、雪乃の熱狂的ファンの連中から絡まれることも減るよな? アピールにならないって事で。んで、うちのプリメラたちも、雪乃との接点が減る方が喜びそうだし……うん、これ以上考えるのはやめておこう。
◇
「とうちゃーく! ここで合ってるんだよな?」
「ええ、この建物で間違いないわ」
そうして、第1回ジャック就職会議を終えた数日後。アカデミアでの授業を終えた俺は、雪乃と共にとある劇団のスタジオに足を運んでいた。いやあ、駄目元って事でね? 雑談中に軽い調子で聞いてみたらね? なんかアッサリ紹介してくれたわ。
まあ、あくまで紹介するだけであって、実際に使ってくれるかどうかはこの面接次第なんだけどね。でもこうやってすぐ紹介してもらえるのも、やっぱり元キン効果なんだろうな。ジャックからの話を聞く限りだと、今までのバイトもなんか適当な面接の後、即採用されてたっぽいし。ギャグ補正という言葉が脳裏によぎったが、きっと気のせいだろう。
「フフ、運転お疲れ様。帰りもよろしくね?」
「おうともー」
俺は雪乃から手渡された予備のメットを、ラゲッジへと仕舞い込みながら返事を返しておく。
ちなみに、ここには──アニメでアキさんが遊星とやっていたような、曲芸じみた──Dホイール2人乗りでやって来たんだけど……いやあ、雪乃が落ちないかヒヤヒヤもんでしたわ。雪乃はそんなに鈍くないってわかっているんだけどね。
でもこの世界だと、こういう曲芸乗りが割とデフォだから早く慣れないとな。道中でセキュリティのDホイールと出会っても、普通にスルーされるくらいにはありふれた乗り方なんだよね。セキュリティ仕事しろ。いやでも、補導歴とかがついたら普通に困るな。うん、やっぱ仕事しなくていいや。
「ジャックは……もう来てるみたいだな」
Dホイールを停めようと、駐車場に入ったところ。俺は既に停めてあった、ホイール・オブ・フォーチュンの存在に気付く。きっと
「さあて。上手く行くといいんだけど」
「元キング、ジャック・アトラス……まさか、こんな形で会うことになるなんてね。少し複雑ね」
雪乃も女優の卵。シティのヒーローとして、様々なメディアに引っ張りダコだったジャックに対して、何か思うところがあるんだろうな。もしかしたらジャックじゃなくて、ジャックに熱い手の平返しを決めた、メディア側に対してかもしれないけど。まあそれはさておき。
「おっと、ジャックの前で元キングは禁句だぜ? あれで意外と気にしてるんだから」
女の子である雪乃相手なら大丈夫だとは思うけど、念には念をということで、軽く釘を刺しておく。ジャックの方はともかくとして、雪乃側が気にするかもしれんしな。
「フフ……忠告に感謝するわ。さあ、行きましょうかボウヤ」
そうして俺は雪乃に連れられ、スタジオの扉を潜り抜け。
「ム、来たか」
建物の中で待っていたジャックと合流した。
「初めまして。ボウヤから聞いているでしょうけど、私は藤原雪乃よ」
「……ジャック・アトラスだ。世話をかけるな」
俺をボウヤ呼ばわりしたことに気を取られてか──表情こそ変えなかったものの──ほんの少しばかりジャックの反応が遅れてて草。そら普通は女子高生が同年代の男を坊や呼びしたらギョッとなるよね。
まあそうして合流を果たした俺たちは、なんやかんやで簡単な交流をした後に、そのままジャックの面接を見学。無駄に自信満々な態度の上、志だけは本物かつ立派なジャックは、あっさりと面接を突破。なるほど、こうやって面接をすり抜けてはクビになってたのか……と感心する俺の前で、最終試験デュエルへと進む事になったのだが。
「舞台とは、1人の力で回すものではない。周囲に合わせることもこれまた重要!」
「ジャック・アトラス。君が本当に我がチームに相応しい人間なのか、このタッグデュエルで見極めさせてもらおうじゃないか!」
「このジャック・アトラスを見極めるだと? 面白い、望むところだ。構えろユージ、オレの足を引っ張るんじゃないぞ!」
……どうして、俺まで巻き込まれてるんだろうね。いやタッグデュエルで人間性やら、臨機応変に動ける能力があるのやらを確認するって理屈はわかるけどさぁ。
「私の提案よ」
「アッハイ」
心なしか誇らしげな笑みを浮かべる雪乃に、気のない返事を返す俺。なんとなくそんな気はしていたが、やはり犯人はお前か。……まあいい、ジャックとデュエルをしたことは何度もあるが、タッグを組むってのは初めてだからな。楽しまさせてもらうとしますかね。
スタジオ内部のトレーニングルームの中。タンクトップを着た細マッチョの男2人相手に、俺も遅れてデュエルディスクを起動した。
また長くなってしまったのでデュエルは次回に。
本当はローン回に絡めたかったんですが、アニメを見直したら甘い言葉で貧乏人に近づいては偽の証文にサインさせ、金を巻き上げていく悪徳金融業者のガロメ様との決着は夜!
あっこれ親と同居してる学生だと参加できねえわという事に気付き、泣く泣く断念しました。主人公は一人暮らしにするか、無理してでも親を海外に飛ばすべきだと古のラノベ先生から学ぶべきでした
ところでVB4出ましたね。そしてアークシーラの黄色いのって電気じゃなくて炎だったんですね
やらかした…完全に電撃だと思ってた…歴史改変したいけど、でもそれをやるとここすき表記がズレてしまうのでできればやりたくない…
まあでも「キミ、初登場時と能力違くない?」ってのは漫画やアニメだとよくある事ですし…もしかしたら、実は電気もある程度操れたかもしれないし…そういう事で見逃してくだちい!
あとガーゴイルⅡの設定画、小さくて文字読めねえ(小声)