普段なら『先攻はチャレンジャーである貴様からだ!』とふんぞり返りつつ先攻を譲ることの多いジャックだが、しかしこれは面接デュエル。なので当然の如く、先攻は面接を受ける側であるジャックからのスタートだ。
「オレのターン、ドロー!」
勢いよくカードをドローしたジャックは、1枚のカードをディスクの魔法&罠ゾーンに差し込んだ。
「オレは魔法カード、
音楽家の帝王
ATK/1750 星5
ジャックLP4000-1000=3000
融合召喚特有の渦の中から、金髪の髪を逆立てた半裸のミュージシャンが現れ、ジャカジャカと派手にギターをかき鳴らす。星8シンクロやアーカナイト・マジシャンを出すために、かつては俺もよくお世話になったものだ。
「さらにダーク・リゾネーターを通常召喚!」
ダーク・リゾネーター
ATK/1300 星3 チューナー
続けて現れたのは、ジャック愛用のいつものチューナー。音叉を手にした、マスコットのような姿をした小柄な悪魔だ。
「オレはレベル5の音楽家の帝王に、レベル3のダーク・リゾネーターをチューニング! 王者の鼓動、今ここに列を成す。天地鳴動の力を見るがいい!」
ダーク・リゾネーターが手にした音叉をカァンと鳴らし、3つの光の輪へと変化。そしてその輪の中へと、音楽家の帝王が飛び込んでいく。
「シンクロ召喚──我が魂、レッド・デーモンズ・ドラゴン!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン
ATK/3000 星8
炎のオーラを弾けさせながら現れたレッド・デーモンズ・ドラゴンが、大きく咆哮を上げる。
「ほう……いきなりエースのご登場か」
レッドデーモンズを目にして、ショートヘアを逆立てたマッチョAが──デュエルディスクのライフ表記によるとマモナカとかいう名前らしい──目を細めながらそう呟く。
「カードを1枚伏せてターンエンドだ」
が、ジャックは意に介することなく1枚のカードをセットし、ターンを終了した。まあジャックはいつも通りだな。さあて、お相手さんは何のデッキを使うんだろうね。
ジャックLP3000 伏せカード1枚 手札3枚
「では私のターン、ドロー!」
ターンの渡って来たマッチョAは、舞台役者らしい大仰な動きでカードをドローすると、1枚のカードを発動した。
「私は魔法カード、おろかな副葬を発動。デッキから魔法・罠カードを1枚墓地に送る。私はデッキから、ゴブリンのやりくり上手を墓地に送る!」
おろかな副葬を使うから何事かと思ったが、やりくり上手か……。いや確かに、パートナーと一緒に使えば、ドロー枚数は跳ね上がるが。
「続けて私は、手札の
V・HEROファリス
ATK/1600 星5
マッチョAのフィールドに、ピンク色の機械的な装甲を纏ったHEROが現れる。あの男の使用デッキは、漫画版エドの使っていたV・HEROか。俺のセンチュリオンと同じく、魔法&罠ゾーンを活用したデッキだが……でも実は、V・HERO単独だとどういう動きをするかよく覚えてないんだよな。いやだって、漫画版GX読んだのは超昔の事だし……OCGやMDだとHEROは全部ごちゃ混ぜにした連合デッキが主流だったし……。
「V・HEROファリスは特殊召喚に成功した時、デッキからこのカード以外のV・HEROを、永続罠扱いで魔法罠ゾーンに
「モンスターを永続罠扱いで魔法&罠ゾーンに呼び出すだと!」
あ、マッチョAの説明を受けたジャックが、驚いた顔しながら俺の方を見てくる。まあジャック的には『アイツのセンチュリオンと同じだ!』って感じなんだろうな。OCG的には
「その通り。こうして魔法&罠ゾーンにいる彼らは、今はまだ実体のない幻影にすぎない。が、このカードによって幻影は実体と化す! 私は魔法カード、
V・HEROポイズナー
ATK/900 星3
マッチョAの掲げたカードが光を放つと同時に、それまで半透明の姿で後方に控えていた毒属性の〇ックマンのようなHEROが実体を得て前方へと飛び出してきた。
「幻影開放は魔法&罠ゾーンにいるV・HEROを特殊召喚できる魔法カード。そしてV・HEROポイズナーは魔法&罠ゾーンから特殊召喚された時、モンスター1体の攻撃力を半分にできる! アシッド・ショット!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン
ATK3000→1500
ポイズナーは右腕の〇ックバスター……もとい砲門をレッドデーモンズに向けると、そこから毒の弾丸を発射。そうして毒を浴びたレッドデーモンズは悶え苦しみ、その高い攻撃力が激減してしまった。
「レッド・デーモンズ・ドラゴン!」
弱ってしまったレッドデーモンズに声をかけるジャックだが、マッチョAはそんなジャックに構うことなく、バトルフェイズに移行して攻撃を宣言した。
「バトルフェイズ! 私はV・HEROファリスでレッド・デーモンズ・ドラゴンを攻撃!」
V・HEROファリス ATK/1600 VS レッド・デーモンズ・ドラゴン ATK/1500
主人からの指示を受けたV・HEROファリスは、軽快な動きでレッドデーモンズに接近すると、ガントレットに装着された巨大クローで、レッドデーモンズを斬り付けて粉砕した。
ジャックLP3000-100=2900
「お、おのれ……!」
「続けてポイズナーよ、ジャック・アトラスにダイレクト──」
「これ以上貴様の好きにはさせん! 罠カード、高速詠唱を発動!」
アーッ!? そ、そのカードは!
ジャックが発動した罠カードを見て、俺は内心で悲鳴を上げる。
「手札から復活の福音を墓地に送り、その効果を発動! 蘇れ、レッド・デーモンズ・ドラゴン!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン
ATK/3000 星8
“手札の通常魔法を墓地に送ることで、その効果を得る”という罠カード、高速詠唱。その効果によって、ジャックは破壊されたばかりのレッドデーモンズを復活させたのだが……。
「高速詠唱か……確かに便利なカードだが、次のターンの間、魔法カードが使えなくなってしまうデメリット効果も併せ持つカードだ。そしてその代償を背負うのは君ではなく、パートナーである少年の側……」
やれやれと肩を竦めるマッチョAの語った通り、高速詠唱は通常魔法のスペルスピードを引き上げる便利なカードではあるが、代償が結構重いのよね……。特に今のこの初期手札だと、魔法が使えないのが痛い痛い。
「ええい、やかましいわ! さっさとターンを進めんか!」
マッチョの言葉を煽りと受け取ったジャックが、拳を振り上げてターンの進行を促す。まあジャックは良くも悪くも“俺に任せろ!”ってタイプだもんな。特にこれはジャックの面接デュエルであり、そして仮に負けたところで、他人に迷惑をかけるもんでもない。この事情もそれを一押ししていそうだ。
「ハァ……」
おっと、雪乃が頭を押さえてため息吐いてら。今のはゆきのん的にも減点らしいな。
「……よかろう。私はカードを2枚伏せて、ターンエンドだ」
マッチョA(マモナカ)LP4000 伏せカード2枚 手札なし
「俺のターン!」
さて、ようやくターンが回って来たな。ジャックの発動した高速詠唱のデメリット効果により、魔法カードが使えないのは痛いが……それならそれで動き方はいくらでもある。攻撃力3000のレッドデーモンズもいるし、墓地にはドラゴン族を破壊から守る復活の福音もあるしな。
「俺は手札から
重騎士プリメラ
ATK/1600 星4 チューナー
元気よく現れたプリメラがドヤ顔で旗(槍)を掲げると、デッキから1枚のカードが飛び出してくる。俺はそのカードを引き抜いて手札に加えると、続けて1枚のカードをデュエルディスクにペシリと置いた。
「墓地から光属性の音楽家の帝王と、闇属性のダーク・リゾネーターをゲームから除外する事で、手札からカオス・ソーサラーを特殊召喚!」
カオス・ソーサラー
ATK/2300 星6
カオス・ソーサラーがフィールドに現れるのと同時に、ジャックの墓地から2枚のカードが排出され、ジャックは無言でそのカードを回収してディスクの除外ゾーンに入れていた。墓地共有ルールといっても、カード自体はジャックのディスクの中にあるからね。仕方ないね。
「バトルだ! 俺はレッド・デーモンズ・ドラゴンで、V・HEROファリスを攻撃! アブソリュート・パワーフォース!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン ATK/3000 VS V・HEROファリス ATK/1600
前のターンで戦闘破壊された恨みを晴らすかの如く、レッドデーモンズは灼熱の張り手こと必殺技のアブソリュート・パワーフォースを繰り出してV・HEROファリスを爆殺。恐らくはファリスが纏っていた鎧だろう破片が、マッチョAへと降り注いだ。
「ぐうぅ……!」
マッチョA(マモナカ)LP4000-1400=2600
さてさて。レッドデーモンズの攻撃は通ったことだし、このままプリメラとカオス・ソーサラーの攻撃が通れば終わりなんだが……。
「だがV・HEROファリスが破壊されたことにより、私は罠カード出幻を発動! デッキからV・HEROヴァイオンを守備表示で特殊召喚し、その後レッド・デーモンズ・ドラゴンの攻撃力を半分にする!」
まあ、これで終わりな訳ないよね。知ってた。
マッチョAの発動した罠カードより、スポットライトのような光線がレッドデーモンズ目掛け放たれ、その光の中から濃い紫色のスーツを纏った新たなV・HERO、ヴァイオンが出現。ヴァイオンはそのままレッドデーモンズに一撃を加えると、マッチョAのフィールドへと舞い戻っていった。
V・HEROヴァイオン
DEF/1200 星4
レッド・デーモンズ・ドラゴン
ATK/3000→1500
「何だと!? またオレのレッド・デーモンズ・ドラゴンを!」
まあ2連続で自身のエースを弱体化されたら、怒りの気持ちも沸いてくるわな。
「さらに私がダメージを受けたことで、墓地のV・HEROインクリースは、幻影として魔法&罠ゾーンに舞い戻る! そして特殊召喚に成功したヴァイオンの効果! 私はデッキからV・HEROマルティプリ・ガイを墓地に送る」
なるほど。V・HEROはダメージをトリガーにして、墓地から魔法&罠ゾーンに移動するのか。漫画版GXは最後まで読んだはずなのに、完全に忘れていたぜ。そしてあのインクリースとかいうV・HEROは、最初に手札コストとして捨てていたやつだな。
「なら、続けて重騎士プリメラでV・HEROヴァイオンへと攻撃! ヘヴィスラッシュ!」
重騎士プリメラ ATK/1600 VS V・HEROヴァイオン DEF/1200
プリメラの振るった槍がヴァイオンを両断し、そのビジョンを粉々に砕け散らせる。チューナーではなくアタッカーとして活躍したことで、どことなくプリメラもご満悦だ。
「カオス・ソーサラーでV・HEROポイズナーへと攻撃!」
カオス・ソーサラー ATK/2300 VS V・HEROポイズナー ATK/900
最後にカオス・ソーサラーの放った魔力弾を受けて、ポイズナーが爆散。これでマッチョAのモンスターは全滅だな。
「ちぃっ! やるな少年……! だがダメージを受けたことで、墓地のV・HEROマルティプリ・ガイが私の魔法&罠ゾーンに幻影として舞い戻るぞ」
マッチョA(マモナカ)LP2600-1400=1200
まあ、幻影として蘇ったV・HEROが2体いるけどさ。でも次は別のデッキだろうマッチョBのターンだし、あの幻影は活用できまい。もし仮にマッチョBがなんか上手いことあの幻影を活用してきてピンチになったとしても、怒りの炎に燃えるジャックが何とかしてくれるやろ。
「俺はレベル8のレッド・デーモンズ・ドラゴンに、レベル4のプリメラをチューニング! 天を駆ける一条の光よ! 最強の騎士となりて、我が元に舞い降りよ! シンクロ召喚!」
バトルフェイズを終えメインフェイズ2に移行した俺は、攻撃力の半減したレッド・デーモンズ・ドラゴンをシンクロ召喚の素材に使うことにした。プリメラの変化した4つの輪を、弱ったレッド・デーモンズ・ドラゴンが潜り抜ける。
「オレのレッド・デーモンズ・ドラゴンをシンクロ素材に……! 確かに攻撃力は半減してしまっているが……むぅ……」
なんかジャックが複雑そうな声を上げてら。低攻撃力を晒すくらいならどかした方がいいという理性と、それでも自分のエースを素材にされるのはちょっと……という感情がぶつかり合っているんだろう。かわりと言っちゃあなんだけど、蘇生用のカードは伏せておくからさ。
「来てくれ、
騎士皇アークシーラ
ATK/3000 星12
光の中から青い装甲の巨大ロボが現れ、そのまま俺の前へと舞い降りては、2本の黄色い炎の剣を構えた決めポーズを取る。……雷の剣? 何の事かな(すっとぼけ)
「レベル12のシンクロモンスターか……」
うーん。マッチョAのこの反応的に、アークシーラやレガーティアの事を知らなかった系か? だからレッドデーモンズを弱体化させてきたと。俺もショップやライディングデュエルでそこそこ暴れてはいるつもりだが……まあ大きな大会に出たわけでもないしなあ。
「アークシーラは特殊召喚に成功した時、デッキからセンチュリオンカードを手札に加えられる。俺は
さあて、やろうと思えばガン伏せで魔法&罠ゾーンを埋め尽くせるが……何枚伏せたもんか。プリメラでも1枠使うし、ここは無難に3伏せで行くか。
「俺はカードを3枚伏せ──エンドフェイズにアークシーラの更なる効果を発動! 墓地のプリメラを魔法&罠ゾーンに永続罠扱いで帰還させる!」
「何ッ!? 私のV・HEROと同じタイプのデッキか……!」
俺の魔法&罠ゾーンに半透明の状態で現れたプリメラを見て、マッチョたちが驚きの反応を返してきた。とはいえ相手は演技のプロ。本当に驚いているのかどうかは知らんけど。
雄二LP2900 伏せカード3枚 手札3枚
「ククク、面白いじゃないか。お嬢が熱く推して来るだけの事はあるようだな……吾輩のターン、ドロー!」
相手も選手交代し、マッチョAと入れ替わって前へと出てきた角刈りのマッチョB──デュエルディスクさん曰くヤミグモだとかいう名前らしい──が、こちらも大仰な動きでカードをドロー。さあ、こちらは何デッキなのやら。
「フフ、いいカードを引いた。吾輩は手札からおろかな副葬を発動。デッキからゴブリンのやりくり上手のカードを墓地に送り──リバースカード、オープン! ゴブリンのやりくり上手!」
うわあ、マジか。マッチョどもの墓地にはこれでやりくり上手が2枚。つまり……。
「ゴブリンのやりくり上手の効果により、吾輩はデッキからカードを3枚ドローし、その後手札から1枚をデッキの一番下に戻す!」
「一気に3枚もドローだと!」
俺の代わりにジャックが驚いてくれたように、ちょっとマッチョBの手札がえらいことになってしまった。何デッキかは知らんが、これは不味いぞ。魔法&罠ゾーンのスペース温存とか考えずに、もう1枚伏せておいた方がよかったかも。
「これは墓地共有のタッグデュエルだからな。このように、普段はできないコンボが出来る……まず吾輩はカードを2枚伏せ、そして魔法カード、手札抹殺を発動!」
「ゲッ、マジかぁ……」
手札抹殺とか『私はこれから碌でもない動きをします』って宣言してるようなもんじゃん。
「ほう……その反応だと、どうやらいいカードを手札に抱えていたようだな。これは幸先がいい」
しかし、マッチョBは俺の嫌そうな反応を“手札を捨てさせられること”が原因の反応と勘違いしたらしい。いやまあ、確かにそっちの意味もなくはないけど。俺の手札には、あえて伏せずに温存しておいた騎士の絆があるし。
「吾輩は4枚捨てて4枚ドロー!」
「俺は3枚捨てて3枚ドローだ」
ふむ、ドローカードは悪くないな。次の俺のターンさえ回ってこればの話だが。タッグフォースルールだと、次のターンまでが長いからな……。
「下準備はこれで完了、では行かせてもらおうか。吾輩はE・HEROエアーマンを召喚!」
E・HEROエアーマン
DEF/300 星4
エアーマンだと……? つまりマッチョBはゆまと同じE・HEROデッキか! なるほど、手札抹殺はミラクル・フュージョンのような墓地融合カードのためだったか。
相手の使用デッキという疑問が解けたところで、とりあえずエアーマンは止めないとな。万能サーチは許されへんで。
「俺は罠カード、無限泡影を発動! エアーマンの効果を無効にする!」
「むっ、そのカードは確か……モンスターの効果を無効にする効果以外にも、発動した縦列に魔法・罠カードの効果を無効にする効果を付与する効果があったな」
ほう、無限泡影の隠された効果を知っていたか。わかりやすいエフェクトを残してくれるMD次元と違って、こっちのデュエルディスクはなんのエフェクトも残さないから知らないとマジで引っかかるんだよな。ちなみに、俺は隠された効果については説明しないタイプだ。当然だよなあ?
「残念だったな、吾輩にそのような小細工は通用せんぞ! 吾輩は墓地に眠るE-HEROシニスター・ネクロムの効果を発動! このカードを除外する事で、デッキからE-HEROマリシャス・エッジを特殊召喚だ!」
E-HEROマリシャス・エッジ
ATK/2600 星7
しかし俺の予想に反し、マッチョBの繰り出してきたモンスターは闇堕ちエッジマンことマリシャス・エッジだった。E・HEROじゃなくてE-HEROかい! 騙されたぞコンチクショウ。
「さらに吾輩は手札から悪魔族専用の融合カード、ダーク・フュージョンを発動! 手札の地帝グランマーグとフィールドのマリシャス・エッジを融合し──現れよ! E-HEROダーク・ガイア!」
E-HEROダーク・ガイア
ATK/5000 星8
「攻撃力5000だと!」
岩石の鎧を纏った邪悪なるHERO、ダーク・ガイア。その攻撃力を見てジャックが驚愕の声を上げ、そして少し離れたところで観戦している雪乃もまた、驚きの表情を浮かべていた。
ジャックたちが驚いているように、ネオドミノ基準では確かにかなり高い攻撃力ではあるが……それでも特化デッキよりかはかなりマシな数値だ。この世界では邪神ドレッド・ルートやらラビエルは手に入らないので除外するとしても、絶対服従魔人やらマグネット・バルキリオンは普通に手に入るからな。もし仮に、そっちで融合されてたら即死だった。
「ダーク・ガイアの攻撃力は、融合素材としたモンスターの元々の攻撃力を合計した数値! そしてダーク・フュージョンにて融合召喚されたダーク・ガイアは、このターン相手のカード効果の対象にならない!」
たかが1ターン、されど1ターン。ダーク・フュージョンによって付与される、この対象耐性が地味に厄介なんだよな。このせいで騎士魔防陣が通じねえし。
「クックック、驚いてくれたようで吾輩も嬉しいぞ。だが吾輩の力はこの程度ではないぞ! 吾輩は先ほど伏せていたカードを発動。発動せよ、ダーク・コーリング!」
「チッ、既にそっちも引いていたのかよ!」
マッチョBのフィールドにて起き上がる伏せカードを見て、ついつい舌打ちが漏れてしまう。1体だけなら
「吾輩は墓地のE-HEROヘル・ブラットと、E-HEROマリシャス・エッジを融合! 現れよ、E-HEROマリシャス・ベイン!」
E-HEROマリシャス・ベイン
ATK/3000 星8
うわあ、また面倒なヤツが出てきた……。効果に関してはうろ覚えだが、なんかヤベー系の効果を持っていたよなコイツ。フィニッシャーに相応しい系の。
……つまり、動かれる前に消しておかないとな!
「この瞬間、俺は罠カード騎士魔防陣を発動! この効果によりE-HEROマリシャス・ベインを、次のターンのスタンバイフェイズまで除外する!」
表になった騎士魔法陣のカードより飛び出てきたエメトⅥが、マリシャス・ベイン目掛けて猛烈な勢いで突進。その勢いのままマリシャス・ベインへとシールドバッシュを繰り出し、フィールドの外側へと吹き飛ばした。
「何ィ、除外だと!?」
ふーむ。マッチョBのこの反応的に、マリシャス・ベインは破壊耐性を持っていた感じか。
「おのれ……ならばバトルだ! 吾輩はE-HEROダーク・ガイアで、カオス・ソーサラーへと攻撃! ダーク・カタストロフ!」
E-HEROダーク・ガイア ATK/5000 VS カオス・ソーサラー ATK/2300
マッチョBが狙って来たのは当然の如く、除去効果持ちのカオス・ソーサラー。攻撃の指示を受けたダーク・ガイアは己の頭上に燃える巨岩を生み出すとそれを砕き、大量の破片をカオス・ソーサラー目掛けて飛ばしてきた。
「ぐああぁぁ!」
雄二LP2900-2700=200
「ユージ!」
「ボウヤ!」
一気にライフを消し飛ばされた俺を見て、ジャックと雪乃が同時に声を上げる。いやまあ、これは通常のデュエルなので、常識の範囲内の衝撃しか襲ってこないんだけどね。反応が大げさ? 俺もネオドミノの住民だから……。
「そして吾輩はカードを1枚伏せる!」
「ならば俺は、プリメラの効果を発動だ! 永続罠扱いのセンチュリオンはお互いのメインフェイズに1度だけ、モンスターゾーンに出陣できるのさ! 頼んだプリメラ!」
重騎士プリメラ
ATK/1600 星4 チューナー
「本当に
幻影の状態から実体化して飛び出してきたプリメラを見て、マッチョBが少々困惑した様子で口を開く。
「だが専用のサポートカードに頼らねば実体化できない貴様らのモンスターより、コイツのじゃじゃ馬どもの方が一枚上手のようだな?」
そしてマッチョBのその発言に対し、何故かジャックが──俺の頭を手で押さえながら──得意気にそう返す。……デュエル中の煽り合いはこの世界における文化みたいなもんだが、でも性能煽りは俺にも刺さるからやめちくり~。俺の良心がチクチク……痛まないんだけどね! 誉はランクマで死にました。
「フン、ぬかしおるわ」
「そろそろいいか? プリメラが特殊召喚に成功したことで、俺はデッキから
重騎兵エメトⅥ
DEF/3000 星8
「壁を増やしてきたか……しかしE-HEROダーク・ガイアは、攻撃宣言時に相手の守備モンスターの表示形式を変更する効果を持つ! 壁など無意味だ!」
「だが、それはソイツがジャックのターンを生き延びられればの話だろう? このエンドフェイズにアークシーラの効果が発動! 墓地にいるトゥルーデアを魔法&罠ゾーンに帰還させるぜ!」
「むう、吾輩の手札抹殺を逆用したか……まあよい、吾輩はこれでターンエンドだ。さて、その風前の灯火なライフで、どこまでやれるかな? ジャック・アトラス……」
マッチョB(ヤミグモ)LP1200 伏せカード2枚 手札なし
「フン。そうやって調子に乗っていられるのも今だけだ! オレのターン!」
マッチョBからの挑発を受け、ジャックは苛立った様子を見せながらカードをドロー。そうしてジャックはドローしたカードを手札に加えると、そのまま俺の伏せたカードを確認し──。
「このカードは……!」
おお、驚いてる驚いてる。それもそのはず。俺が伏せたカードは、かつてジャックから譲ってもらったカードだからな。発動条件も俺の方で(実質)満たしておいたし、まあこれでレッドデーモンズをシンクロ素材に使った分は帳消しだろう。
俺はこちらへと目線を向けてくるジャックに、親指を立てて“やっちまえ”とアピールする。
「お前……。フ、余計な世話を……」
ジャックはニヤリと笑うとマッチョBへと向き直り、俺が前のターンに発動した騎士魔防陣の効果処理を開始した。
「このスタンバイフェイズ、前のターンに除外されていたE-HEROマリシャス・ベインが、貴様のフィールドに特殊召喚される!」
「な、なにぃ! 特殊召喚だと!?」
ジャックの発言を聞いたマッチョBが目を見開いて驚く。それもそのはず、俺の記憶が正しければE-HEROの融合体は……。
「E-HEROマリシャス・ベインは、ダーク・フュージョンの効果でのみ特殊召喚できる融合モンスター……」
「ああ、そうだったな。なので貴様のフィールドにあの悪趣味なヒーローは戻ってこない! 残念だったな」
悔し気に呻くマッチョを見て、ジャックはあくどい笑みを浮かべる。これまでの展開にフラストレーションがたまっていたのだろう、実に楽しそうだ。
「オレは永続罠扱いの重騎士プリメラと、従騎士トゥルーデアの効果を発動! この2体を特殊召喚する!」
重騎士プリメラ
ATK/1600 星4 チューナー
従騎士トゥルーデア
ATK/1000 星4
あまり仲の良くないジャックに呼び出されたからか、プリメラとトゥルーデアの2人は物凄くダルそうにしながらフィールドへと降り立った。そして2人のその露骨にイヤそうな態度を見た俺は、思わず吹き出しそうになったのを必死にこらえていた。
だって、ここで吹き出したら完全に変な人だからな俺。精霊の見えない人にとっちゃ、普通のソリッドビジョンにしか見えないし。アニメGXの恋する乙女回における、E・HEROにツッコミを入れる十代と、その反応を不思議がるギャラリーみたいな感じになってしまうからな。
そうして陰でこっそり笑いを堪えている俺にはお構いなく、デュエルは続く。
「そしてさらに罠発動、レイジ・リシンクロ! 墓地のシンクロモンスターの素材となるモンスターをフィールドから墓地に送ることで、そのシンクロモンスターの攻撃力を500アップさせて特殊召喚する!」
これは俺のエクストラデッキがレガーティア1枚のみだったころ、それを聞いて呆れたジャックがシュっとカード手裏剣で投げ渡してくれたカードだ。ちなみにOCG次元には存在しない、アニメオリジナルのカードでもある。まあOCG次元だとこんな面倒な蘇生罠使わなくても、無制限のリビデ使えばいいしな。
「墓地のシンクロモンスターをシンクロ召喚するだと!」
マッチョBが驚きの声を上げているが……いや、別にこれはシンクロ召喚扱いじゃない、ただの特殊召喚なんだけどね。確かにカードの演出はシンクロ召喚の演出を流用してるんだけど。
……ん? つまりこれはあのマッチョBの言う通り、シンクロ召喚をするカードなのか? 確かにジャックもこのカードを発動する時は、普通に口上を述べた後にシンクロ召喚! とか叫んでいたし……間違っているのは俺の方だった……?
「オレはレベル4の従騎士トゥルーデアに、レベル4の重騎士プリメラをチューニング! 王者の鼓動、今ここに列を成す。天地鳴動の力を見るがいい! シンクロ召喚──蘇れ、レッド・デーモンズ・ドラゴン!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン
ATK/3000→3500 星8
おかえり、レッドデーモンズ。
「手札から魔法カード、紅蓮魔竜の壺を発動! オレの場にレッド・デーモンズ・ドラゴンが存在する時、デッキからカードを2枚ドローする!」
あ、OCG版と違ってデメリットが一切ない手札増強カードじゃん。いいなー、俺も
「レッド・デーモンズ・ドラゴンを何度も呼び出すその手腕、流石だと言いたいところだが……しかし、その攻撃力はたったの3500! 吾輩のダーク・ガイアの攻撃力5000には遠く及ばない!」
マッチョBが己を鼓舞するかのように声を上げ、そしてそれに呼応するかのようにダーク・ガイアが全身に邪悪っぽいエフェクトのオーラを漲らせる。ソリッドビジョンさんってば優秀ね。
「貴様こそ、オレのレッド・デーモンズ・ドラゴンを舐めるでないわぁ! オレは魔法カード、闇の護封剣を発動! 貴様のモンスターを全て裏側守備表示にする!」
「ば、馬鹿な!」
上空より3本の闇の剣が降って来たかと思えば、マッチョBのフィールドにいたダーク・ガイアとエアーマンのカードがひっくり返って裏側守備表示となる。あー、あれってジャックが俺の安全地帯アークシーラに対抗してデッキにぶち込んできたカードじゃん。4、5回ほど完封して煽り散らした程度で対策カードぶち込んでくるとか大人気ないよねー。
まあなんにせよ、これでダークガイアの攻撃力もリセットだな。そしてレッドデーモンズには守備モンスターの全滅効果がある。これって……ああ、ジャックの勝ちだ。
「オレは重騎兵エメトⅥを攻撃表示に変更し、バトルだ! オレはレッド・デーモンズ・ドラゴンで裏守備モンスターに攻撃! アブソリュート・パワーフォース!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン ATK/3000 VS E-HEROダーク・ガイア(裏守備) DEF/0
レッド・デーモンズ・ドラゴンはひっくり返ってカードの裏面を晒しているダーク・ガイアに向かって突撃すると、そのまま炎を纏った右手を叩きつけて粉砕する。
「吾輩のダーク・ガイアが……!」
「まだだ! レッド・デーモンズ・ドラゴンは守備モンスターを攻撃した時、相手フィールドの守備モンスターをすべて破壊する! デモン・メテオ!」
アブソリュート・パワーフォースの反動でマッチョBのフィールドから距離を取ったレッドデーモンズは、再度右手に炎を集めて火球を形成。そうして作り上げた火球を裏側守備表示のエアーマン目掛け解き放ち、これも粉砕した。
「これでトドメだ! オレは騎士皇アークシーラでダイレクトアタック!」
ジャックの指示を受けたアークシーラは俺の方を見て軽く頷くと、壁となるモンスターを全て失ったマッチョB目掛けて飛翔を開始。この攻撃が通ればジャックの勝ちだが……でもあのマッチョBの目は、まだ全然諦めてないんだよな。つまりあの伏せカードは、恐らくミラーフォースのような逆転のカード……。
「かかったな! ダイレクトアタックを宣言されたことにより、吾輩は罠カード、波紋のバリア-ウェーブ・フォース-を発動ッ!」
おわーっ!? マジでミラーフォース(のようなもの)を伏せている馬鹿がいるか! 空気読め! 謝れ、氷室さんに謝れ!
「何だとっ!?」
ジャックもこれは予想外だったのか、割と真面目に驚いているし。いや普段のジャックとのデュエルを思い返せば、結構無警戒で罠踏んでは「しまった!」とか言ってたわ。
……ところでウェーブフォースってどんな効果だっけ? ミラフォとダクフォ、あとエアフォまでは覚えているんだが他のフォース罠は覚えてないんだよな。
「相手の攻撃表示モンスターを、すべてデッキに戻す! 騎士皇アークシーラと重騎兵エメトⅥ、そしてレッド・デーモンズ・ドラゴンには消えてもらおう!」
ほーん、デッキバウンスなのか。直接攻撃をトリガーとするだけあって、普通に強い──いや待て、デッキバウンス? 今のターンプレイヤーってジャックじゃん? じゃあつまり……ジャックのデッキにぶち込まれるってコトか!? おい馬鹿やめろ! パートナーのデッキにバウンスするとか洒落にならんだろうが! うん、だから入れてるんだね。合理的だねコンチクショウ!
いくら俺が内心で慌てたところで、デュエルディスクさんがカードの効果処理を止めてくれるわけでもなし。俺の見ている前で、アークシーラとエメトⅥに、レッドデーモンズは吹き飛ばされていく。情けない悲鳴を上げるアークシーラに引っ張られてか、レッドデーモンズの方もなんかしょんぼり顔をしているように見えるぜ。
「クックック、形勢逆転だな」
「お、おのれぇ……! オレは闇の護封剣を墓地に送ることで、手札からボーン・デーモンを特殊召喚だ!」
ボーン・デーモン
ATK/1800 星4
「そして変容王ヘル・ゲルを通常召喚!」
変容王ヘル・ゲル
ATK/100 星1 チューナー
メインフェイズ2に移行したジャックのフィールドに、その名の通りに骨だけの身体をした悪魔とエーリアンのような見た目をした悪魔が現れる。
「変容王ヘル・ゲルは召喚に成功した時、レベルをこのカード以外のモンスターと同じ数値にし、そのレベル1つにつき200ポイントのライフを回復する! オレはヘル・ゲルのレベルを4に!」
変容王ヘル・ゲル
星1→4 チューナー
ジャックLP200+800=1000
「ほう、ライフを回復しつつレベルを上げたか。さすがは元キングだな」
「オレはレベル4のボーン・デーモンに、レベル4となった変容王ヘル・ゲルをチューニング! シンクロ召喚──舞い戻れ、レッド・デーモンズ・ドラゴン!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン
ATK/3000 星8
「オレはカードを1枚伏せ、ターンエンドだ!」
ジャックLP1000 伏せカード1枚 手札0枚
煽りではなく賞賛としての使い方だったからか、それとも追い詰められていたからか。マッチョBの口にした元キンというワードに軽く眉を顰めつつも、ジャックはそれをスルーして相手にターンを明け渡した。
「私のターンだな、ドロー!」
ジャックも手札を使い切ってギリギリの状態だが、それは相手も同じこと。選手交代して現れたマッチョAの手札はたったの1枚。魔法&罠ゾーンに2体のV・HEROこそ残っているが、さすがにたった1枚の手札と伏せカードで、ジャックの敷いた布陣は突破できまい。ジャックの墓地にはドラゴン族の破壊の身代わりとなる、復活の福音も残っているしな。
「私は罠カード、ゴブリンのやりくり上手を発動! デッキからカードを4枚ドローし、その後1枚をデッキの一番下に戻す!」
「ザッケンナコラー!」
しれっと4枚のカードをドローするマッチョAを見て、思わず罵声を放ってしまった。プレイヤーとしてカードをプレイする権利を持つジャックならともかく、俺が叫んだのが予想外だったのか、マッチョAとジャック、そして雪乃がギョッとした顔を向けてきて少し恥ずかしくなる。
でもしゃーないじゃん? この状況で4ドローとか許されないでしょ。いやそのうちの1枚は消えるけどさ。
「フッ、悪いな少年。これがタッグデュエルというものだ。確かに君たちは素晴らしいデュエリストだ。個の力においては、間違いなく我々を上回る。だがこうやって力を合わせれば……」
「ふん、くだらん御託はいい。さっさとデュエルを続けろ!」
爽やかスマイルを浮かべてそう返してきたマッチョAだったが、しかしその言葉は、ジャックにはあまり響かなかったようだ。まあアニメでも偽ジャック事件やら、チームユニコーン相手の大失敗やらを経て、ようやくという形だったもんねえ。
「やれやれ……仕方ない、私は手札から速攻魔法、変幻を発動! このカードは魔法&罠ゾーンのモンスターを1枚選択しそのモンスターを特殊召喚するか、手札に戻すか、破壊するかを選べるカード。私はV・HEROインクリースを選択し、特殊召喚する効果を発動する!」
V・HEROインクリース
ATK/900 星3
「V・HEROインクリースの効果発動! このカードが魔法&罠ゾーンからの特殊召喚に成功した時、デッキからレベル4以下のV・HEROを特殊召喚できる! 来い、V・HEROヴァイオン!」
V・HEROヴァイオン
ATK/1000 星4
マッチョAのフィールドに、装甲スーツを身に着けた2体のHEROが横並びになる。
「V・HEROヴァイオンは特殊召喚に成功した時、デッキからHEROを墓地に送ることができる。私はデッキからV・HEROウィッチ・レイドを墓地に送り……墓地に存在する幻影開放の効果を発動! このカードを除外することで、今墓地に送ったウィッチ・レイドを手札に回収する!」
「召喚権を残したまま最上級モンスターを手札に加えたか。ならば……」
「さすがはジャック・アトラスだね。ご明察通り、私はV・HEROインクリースとV・HEROヴァイオンの2体をリリースし、V・HEROウィッチ・レイドをアドバンス召喚!」
V・HEROウィッチ・レイド
ATK/2700 星8
2体のV・HEROをリリースしてマッチョAが呼び出したのは、全身を覆うような機械的な装甲を纏ったこれまでのV・HEROとは違い、魔女帽子を被った金髪の美女だった。ほう、いい谷間だ。マッチョA君もやはり男か……まあ、俺のプリメラやトゥルーデア、そしてツヴァイの方が可愛いがな!
「攻撃力2700か。だが俺のレッド・デーモンズ・ドラゴンの方が攻撃力は上だ!」
「まあまあ、そう慌てなさんな。私はV・HEROウィッチ・レイドの効果を発動! このカードが召喚に成功した時、相手の魔法・罠カードをすべて破壊する!」
「なに、伏せカードを破壊するだと!?」
不味いな、バックを剥がしに来たか。召喚権を使ったとはいえ、マッチョAの手札はまだ3枚も残っている。そしてHEROといえば強力な融合モンスターが特徴のデッキだ。ジャックの伏せカードが何かは不明だが、ここで手を打たないと間違いなく負ける。
「……クッ! ええい、罠発動! シンクロ・バリアー!」
「何、そのカードは……!」
ジャックの発動した罠カードを見て、マッチョAが驚愕の声を上げる。いや、俺も正直驚いている。俺もあのカードを使っていたからわかるが、あのカードはコストとしてシンクロモンスターを要求するカードだ。そのカードをこの状況で発動するということは。
「シンクロモンスター1体をリリースすることで、次のターンのエンドフェイズまでオレの受ける全てのダメージをゼロにする! オレはレッド・デーモンズ・ドラゴンをリリース!」
レッド・デーモンズ・ドラゴンが、咆哮を上げながら光の粒子へと変換されていき、その粒子はジャックに加護を与えるかのようにジャックへと降り注ぐ。
「自らレッド・デーモンズ・ドラゴンを手放したか……しかし困ったな、これじゃあ攻めようがない」
モンスターも伏せカードも無しと、ジャックの場は完全にがら空きだが、しかし一切のダメージを与えられないのでは攻めるもクソもない。マッチョAは困ったように頭を掻くと、1枚のカードをディスクへと差し込んだ。
「まあ仕方ない、私は魔法カード、幻影融合を発動。私は手札のV・HEROミニマム・レイと……魔法&罠ゾーンのV・HEROマルティプリ・ガイを融合! 来い、V・HEROアドレイション!」
V・HEROアドレイション
ATK/2800 星8
「魔法&罠ゾーンのモンスターを融合素材にしただと……」
「その通り。この幻影融合は、V・HEROの幻影も融合素材にできる融合カード。まあ、幻影の状態で融合素材になったV・HEROたちはゲームから除外されてしまうんだけどね」
興味深そうな声を上げるジャックに対し、マッチョAは少々得意気な様子で幻影融合の効果について説明する。
「そして君の直感は正しかったよ、ジャック・アトラス。V・HEROアドレイションは1ターンに1度、相手モンスターの攻撃力と守備力を、このカード以外のHEROモンスターの攻撃力分ダウンさせる効果を持つんだ」
「なるほどな。オレがシンクロ・バリアーを使わなければ……」
「レッド・デーモンズ・ドラゴンの攻撃力は、ウィッチ・レイドの攻撃力分……つまり2700ポイントダウンして300になる。その状態で攻撃を受ければ、君のライフはゼロになっていた」
肩を竦めながら、もしもの未来について語るマッチョA。まだデュエルは終わっていないのに、わざわざこうしてアドレイションの効果について語るということは、まあそういう事なんだろう。さっきマッチョA本人も『個の力において君たちには及ばない』とぶっちゃけていたし。
「私はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ」
マッチョA(マモナカ)LP1200 伏せカード1枚 手札なし
「俺のターン、ドロー!」
お、この状況でサイクロン引くか。まあ先ほどのやり取り的に、あの伏せカードは十中八九で役に立たないカードなんだろうが、念には念をという事で破壊しておくか。純粋に何を伏せたのかも気になるし。
「魔法カード、サイクロンを発動。その伏せカードは破壊させてもらおうか!」
カードより現れた竜巻が、マッチョAのフィールドに伏せられたカードへと向かっていく。そうして竜巻に飲み込まれた伏せカードは、破壊され粉々に砕け散るその直前、ほんのわずかな時間だけその姿を晒す。マッチョAが伏せていたそのカードは、墓地から戦士族を回収する魔法カード、戦士の生還だった。
……なるほどね。ちょっとした疑問も解けたことだし、決めに行きますか。
「俺は手札から魔法カード、誓いのエンブレーマを発動。デッキから
竜騎兵ガーゴイルⅡ
ATK/2000 星8
幻影として現れたツヴァイは、特殊召喚されるのと同時に、得意気な表情のまま大型クローを構えた決めポーズを取る。うーん、物凄い自信満々な態度だ。でもコイツ、つい先ほどアークシーラ状態でウェーブ・フォースを食らって、悲鳴を上げながら吹っ飛んでいったんだよなあ。
「そして手札からメンタル・チューナーを通常召喚」
メンタル・チューナー
ATK/200 星3 チューナー
ツヴァイに続いて現れたのは、白衣のようなものを着て、緑色の工具らしきものを手にした胡散臭いオレンジ髪のサイキック族。こいつはレベル調整ついでに、墓地や除外ゾーンに干渉できるから、かなり便利なカードだ。
「メンタル・チューナーの効果発動。墓地から闇属性のカオス・ソーサラーを除外することで、このカードのレベルを1上げる」
メンタル・チューナー
星3→4
よし、これであの爽やかマッチョを葬る準備は整った。特にこれといった恨みはないけれど、懺悔の用意はできているか!
「俺はレベル8のガーゴイルⅡに、レベル4となったメンタル・チューナーをチューニング! 天頂を目指し駆ける鋼の騎士よ、絆の力で起動せよ! シンクロ召喚──来てくれ、騎士皇レガーティア!」
アークシーラではなくレガーティアが呼び出されるからか、メンタル・チューナーの変化した4つの光の輪を、少々不満げな表情のツヴァイが潜り抜け。そうして目も眩むような光が弾けると同時に、純白の装甲の巨大ロボが俺のフィールドに降臨した。
騎士皇レガーティア
ATK/3500 星12
「ガーゴイルⅡはシンクロ素材となった時、墓地から手札に回収できる。さらにレガーティアが特殊召喚に成功したことで、墓地に存在する騎士の絆の効果も発動。墓地のこのカードを除外する事で、墓地のプリメラを魔法&罠ゾーンに復帰させる!」
墓地から手札に回収し、墓地から除外ゾーンに放り込み、墓地から魔法&罠ゾーンに移動させ。いやあ、チェーンが重なってるから処理が多いな。わっせ、わっせと。
「そしてレガーティアは特殊召喚に成功した時、デッキからカードを1枚ドローし、その後相手フィールド上で最も攻撃力の高いモンスターを破壊できる! カレッジ・ブラスター!」
そうして一通りの処理を終え、最後にレガーティアの腰部アーマーが分離・合体した巨大なビット砲台が極太のレーザーを発射。マッチョAのフィールドにいた、V・HEROアドレイションを一撃で蒸発させる。
ここまで来ると、もはや逆転の目は完全にないと理解したのか。マッチョBも小さく諦めの笑みを浮かべていた。悪いけど、こっちもジャックに勝利を託されちゃったからね。あえてトドメをささずに制圧し、万全のフィールドを築いてからジャックに回す……って事もできなくはないが、それをやるのは失礼極まりないし。あとジャックに『何故決めに行かん!』と怒られそうだし。
「俺は魔法&罠ゾーンにいるプリメラの効果を発動! プリメラを特殊召喚し、その効果でデッキから
重騎士プリメラ
ATK/1600 星4 チューナー
さーて、やろうと思えばここからさらに追加でシンクロ召喚もできるが……無駄ソリティアからの無駄オーバーキルになるし、控えておくのが賢明か。プリメラもフィニッシャーを務められそうな気配を感じて、ちょっと嬉しそうに槍ブンブンしてるし。
「バトルだ! 俺は騎士皇レガーティアで、V・HEROウィッチ・レイドを攻撃! ヴァリアント・スマッシュ!」
騎士皇レガーティア ATK/3500 VS V・HEROウィッチ・レイド ATK/2700
マッチョA(マモナカ)LP1200-800=400
「ぐぅ……! だが私がダメージを受けたことで、墓地のV・HEROたちが幻影として蘇る!」
最後まで諦めず、決して処理をサボらないデュエリストの鑑やね。私はお前のような熱い男は嫌いではない。 だがデュエルは非情だ……。
「これで終わりだ! 俺は重騎士プリメラでダイレクトアタック!」
「ぐああーっ!」
マッチョA(マモナカ)LP400-1600=0
プリメラの振るった槍がマッチョAの胴体を横薙ぎにし、マッチョAの残りのライフを全て削り取っていった。いやあ、長く苦しい闘いだった……!
◇
ジャックとのタッグデュエルを終えたあくる日。アカデミアの授業を終えた俺は、即座に遊星のガレージへと駆け付け、クロウと遊星と共に、ジャックの件について話し合っていた。
「……ほう。あのジャックが、自分の面接デュエルの決着を他人に譲るとはねえ。少し意外だな」
「デュエルは主義主張をぶつけ合うだけではなく、その人間の生き様の証明でもあるからな。ジャックもそのデュエルを通じて、何か思うところがあったんだろう」
俺からデュエルの内容について聞いたクロウと遊星が、仕事着スタイルのまま、それぞれの感想を口にする。
なんとなーくそんな気はしていたが、やはりジャックはタッグデュエルの件について、遊星たちにも大雑把にしか語っていないようだった。……いやまあ、要は面接デュエルをしましたってだけの話だし、別にそんな詳しく語らなきゃいけないようなもんでもないんだけどね。
「ま、非常勤の仕事とはいえ、働いて金を入れてくれるってんなら、コッチは何でもいいけどよ。ウチの馬鹿のために、手間かけさせて悪かったな」
クロウの言う通り、あれからジャックは一応採用されることになった。そうして次のショーに出演するために、他のメンバーとの練習を開始することになったのだが……。
「問題は、どれだけ持つかだな。少しは続いてくれるといいんだが」
遊星の言う通り、ジャックは採用自体は勝ち取れるんだけど、長続きしないのが問題なんだよなあ。ていうか遊星、シレっと容赦ないこと言うね。クビになった前科多数とはいえ、ジャックのこの信頼のなさよ……いや、これは逆の意味で信頼されてんのか?
「まあそこら辺は、相手側が上手くジャックを操縦してくれることに期待するしか……」
簡単な面接で即採用していた他の職場とは違い、あそこは面接デュエルでけっこうな激戦を繰り広げたのだ。ジャックの人となりを理解した上で、扱いこなす自信があっての採用だと信じたい。まあ先にクロウが述べた通り、メインのメンバーとしての採用ではなく、『出演できそうな舞台があったら声をかけるね』って扱いなんだけど。
「おっと、もうこんな時間か。んじゃ、そろそろ俺は帰るね」
「なんだぁ、もう帰るのか。ずいぶんと慌ただしいな」
「ああうん、ちょっとこの件で世話になった子からの、アッシー君としてのお役目がね……」
まあ正確にはデュエルのパートナーとしてのお役目がメインで、アッシー君はそのついでなんだが。雪乃からは別に強制されたわけじゃないんだけど、こっちから面倒な頼みごとをしておいて、向こうのお願いは拒否……だなんてわけにはいかないからね。
なので別に鼻の下は伸ばしてないよ、ホントだよ? 雪乃に抱き着かれながらDホイールに乗るの、役得だとか思ってないよ? だからプリメラもツヴァイも、その槍とクローでチクチクするのをやめて欲しいなって……。
「あー、藤原雪乃って子か。いや、本当にわりいな。ジャックのせいで面倒かけて」
「いや、お互い様って事でいいんじゃない? 俺も遊星やクロウには、色々と世話になってるからなー」
2人には主にDホイール関連で──遊星にはメンテ方面で、クロウにはドラテクの手解き方面でって感じで──世話になりまくってるしな!
「それもそうか。じゃあお互い様ついでに、ブラックバードデリバリーについても宣伝しといてくれや」
「いや雪乃は素行不良とはいえトップスのお嬢様だし、胡散臭い弱小業者よりも、ちゃんとした業者に頼むんじゃないかなあ」
「なんだとぉ、オレの宅配便がマトモじゃねーだとぉ? そういうことを言うやつは、こうだーっ!」
「ぐぇー。遊星、助けてくれ遊星~」
クロウからめっちゃ手加減されたコブラツイストを決められ、やる気のない悲鳴を上げる俺。そんな俺たちを見て遊星はやれやれと肩を竦めると、そのまま寄ってきて1枚のチラシを俺のポケットに突っ込んできた。
「ならご近所でも割と評判のいい、俺の修理業について宣伝しといてくれ」
二ッと笑いながら親指を立てる遊星を見て、俺とクロウは顔を見合わせた後に笑い声を上げるのだった。
投稿が遅れまくって申し訳ないです。今回のデュエル、物凄い苦戦していました
マッチョコンビに何のデッキを使わせるかで、二転三転していまして
あと連休前の追い込みだったのか、ちょっとリアルも忙しくて……
まあそんなことより【祝】センチュリオン新規【しかも二枚】
【一人にして分隊】ガーゴイルⅡのパイロットちゃんの名前と素顔判明【空の英雄】
いやあ、ついに来ましたねセンチュリオン新規。名前がわからないので、苦肉の策でツヴァイ呼びしていましたが……これでようやく本名で呼んであげられますね!
聖王の粉砕も「センチュリオン関係か!?」と一部で話題になっていますが、一体どうなるんでしょうねえ。ワクワクが止まりません!
……一通り出たから次は間が空くぞって? そんなぁ~
ところで白き森いいよね……白き森センチュリオン、出したいなぁ……でもシンクロチューナーとカードパワーの壁がね……
小ネタ
龍可はプリメラ(精霊組)を応援しているが、遊星は“人間の女の子とくっついて両親を安心させて欲しい”と内心思っている。口には出さないけど