ミゾグチとのデュエルを終えた後は、だいたいが俺の記憶通りだった。御影さんから遊星発見の連絡を受けて、大慌てで現場へ急行すれば──ちょうど誘拐犯たちがライディングデュエル中の遊星を始末すべく、高所からトラックを落下させたところだった。
まあそのトラック自体は、アキさんがスターダストを実体化させて受け止めたのだが……その影で万が一に備えて、俺もこっそりレガーティアを“召喚”しようとスタンバっていたり。数々のモンスターを葬ってきた、レガーティアの
そんなこんなで、遊星の誘拐騒動が終わった翌日の昼。俺はというと。
「ここか……指定の場所は」
ネオドミノの臨海公園へとやって来ていた。何故かって? いやあの後家に帰ったらさ、なんか手紙が来ててさ? このご時世に手紙とか珍しいなーと思いつつ中を開けてみれば、あらまびっくり果たし状ではありませんか。
なのでこうして“貴公にライディング・デュエルを申し込む。明日の正午、臨海公園に来られたし”とだけ書かれたそれに従ってやってきたのだが……。
「うーむ。イタズラだったのかなあ」
それっぽい奴がいねえんだよなあ。デュエルディスクでデュエルを楽しんでいる子供たちならいるが、Dホイールに乗ってるのは俺だけだ。そんな俺のすぐそばでプリメラ、トゥルーデア、アトリィの三人娘も“物足りねえ……”とでも言わんばかりに得物を振るっているぜ。頼もしいねえ。
「どんな奴が待ってるか、ワクワクしてたんだけどな〜」
でもいないものは仕方がない。10分……いや20分ほど待って、それでも来ないならテキトーにハイウェイで辻デュエルでも仕掛けるか。せっかくここまで出てきたんだしな。
「ん? あれはまさか……」
……などと思っていたら、ロットンやボマーのDホイールには劣るものの、かなりデカ目のDホイールがこちらへやってくるではありませんか。噂をすればなんとやらだな。
「……待たせたようだな」
そのDホイールは俺の近くで停車すると、そのまま運転席に座る──フルフェイスのヘルメットをしっかりと被り、素顔の見えない──男が話しかけてきた。どうやら、この男が果たし状の送り主らしい。
古めかしい果たし状を送りつけてきたイメージ通り、そこそこお年を召したオジサンのようだ。ヘルメット越しのくぐもった声だが、まあ声を聞いた感じではそうだろう。
「あー、こいつの送り主さん?」
「如何にも」
念のため果たし状をヒラヒラと手で振って確認するが、どうやら間違いないらしい。
「我が挑戦を受けてくれた事、感謝しよう」
「ま、デュエリストがデュエルを挑まれて、逃げるわけにはいかないっしょ?」
「良い心構えだ……こちらの準備は完了している。いつでも始められるぞ」
それにしても喋り方がお堅い事で。なんかこう、普段俺が相手してるスポーツマン系やチンピラ系のDホイーラーと違って調子が狂うな。……なんでこんな人間が俺にデュエルを挑んできたんだ? まあいいか! よろしくなあ!
「オーケー、じゃあ始めようぜ! 念のため聞いとくが、マニュアルモードでいいよな?」
「問題ない」
俺はDホイールに飛び乗るとアクセルを踏み込み、一気に加速。背後にオッサンがついてきている事を確認すると、デュエルモードを起動した。
「さあ行くぜ! フィールド魔法、スピード・ワールド2、セット・オン!」
〈デュエルモード・オン。レーンセレクション、使用可能な最適レーンをサーチ。デュエルレーン、セントラルに申請──AUTHORIZATION〉
デュエルモードを起動すると、即座に治安維持局に申請が飛び……数秒ほどの待ち時間の後、Dホイールのモニターにマップと現在地点、そしてこのライディングデュエルで使用するコースが表示される。
『デュエルが開始されます。デュエルが開始されます。ルート上の一般車両は直ちに退避してください。デュエルが開始されます──』
もはや聞きなれた放送が響くと共に、海を割ってライディングデュエル専用のデュエルレーンへと繋がる連絡通路が次々とせり上がってくる。俺とオッサンはハンドルを切り、そうしてせり上がって来た道を走り抜けてデュエルレーンへと入り込み──。
「第一コーナーを制した方が先攻だ!」
「よかろう……!」
「じゃあ行くぜ!」
そのまま一気に加速。やはり大型故か、オッサンのDホイールは加速が悪い。そうだよそうだよ、これが普通なんだ。ロットンはやけに食らいついて来たが、これが普通のDホイールだよ。あのDホイールは何かがおかしい。
「いよっし、先攻は貰ったぜ!」
「ぬぅ……」
危なげなく第一コーナーを制して先攻を奪った俺は、デッキトップから初期手札となる5枚のカードを引き抜きながらデュエル開始の合図を宣言した。
「ライディングデュエル・アクセラレーション!」
「ライディングデュエル・アクセラレーション!」
よし、カードホルダーに差し込んで初期手札を確認して、と。うんうん、悪くないな。
そうしてふとモニターへと目をやり、なんとなく対戦者名を見てみると。
「Unknown……?」
予想外の不開示に戸惑いの声が漏れる。名乗らないままデュエルを開始して、名を呼ばないままデュエルを行い、デュエルが終わってそのまま解散……というのも珍しくはない事ではあるが、それでもたかが名前の開示を拒否るとは珍しい。しかしフルフェイスのメットといい、怪しさが一気に増したな。
「訳あって、な。別に怪しい者ではない。このデュエルが終わった後ならば……いくらでも名乗ろう」
「ふーん……まあいいか。俺のターン!」
まあデュエルは既に始まってるんだ。仮になんか怪しい行為をしても、こっちにはプリメラを始めとした精霊組がいるんだし問題はないだろう。俺本体はともかく、うちの精霊組はリアルファイトがクソ強いからな!
そう判断した俺は、気を取り直してデッキからカードを1枚ドローした。
雄二:LP4000 手札:5→6
「俺は手札から
竜騎士アトリィ
ATK/1800 星4 チューナー
本日の一番槍はアトリィだ。俺がカードをDホイールのディスク部分に置くと、Dホイールで高速走行する俺と並走するようにアトリィが現れ、そのまま軽く跳び上がって決めポーズを取る。かわいいぜ……。
「さらに俺はアトリィを墓地に送ることで、竜騎兵ガーゴイルⅡを手札から特殊召喚だ! アトリィ、換装だ!」
竜騎兵ガーゴイルⅡ
DEF/3000 星8
アトリィは何処からともなく飛来した強化アーマーを装着すると、ドヤ顔で黄色い炎の翼を広げ──すぐに防御態勢を取って、その身に青いエフェクトを纏うのだった。いやそんな不満ですって顔されても。だってねー、攻撃力2000ってのはねー。ちょっと心もとないっていうかー?
「カードを2枚伏せて、俺はこれでターンエンド!」
雄二:LP4000 伏せカード:2枚 手札:2枚
「私のターン、ドロー!」
Unknown:LP4000 手札:5→6 SPC:0→1
謎のオッサンがカードをドローするのと同時にSPCが1つ貯まる。さて、このオッサンはどんなデッキを使ってくるのか……ワクワクしてくるな!
「私は手札から影六武衆-フウマを通常召喚!」
影六武衆-フウマ
ATK/200 星1 チューナー
オッサンのフィールドに現れたのは、紫色の忍装束を纏って手裏剣を手にした忍者だった。どこかの自己顕示欲の強い
このオッサン、ツァンの親父さんだー! 門限がやけに厳しい過保護親父だってツァンがよくブー垂れてたし……。これって要はアレだろ? 娘の近くでウロチョロしてるガキの調査に、父親自ら乗り出した系だろ? いや絶対にそうだわ間違いねえ。
「そして自分が影六武衆の召喚に成功したとき、このカードは手札から特殊召喚できる。来い、六武衆の真影!」
六武衆の真影
ATK/500 星4
続けてオッサンことツァン父(仮)のフィールドに、真紅の鎧を着た幽霊(?)がぬるりと現れる。ていうかあんな六武衆いたんだ……初めて見た。
いやちゃうねん。影六武衆ってテーマが存在することは知ってるし、ビルドパック産だって事までは知ってるねん。でも『一万以上の種類があるOCGカード、自分が使った事ないカードの効果まで覚えてらんねーよ!』という、ストロング十九氏の残した名言があるじゃろ? つまりはその、そういう事だ!
使ったことも使われたこともないテーマのことは……わ、わかんないっピ……。
「私はレベル4の六武衆の真影に、レベル1の影六武衆-フウマをチューニング! 来たれい、真六武衆-シエン!」
真六武衆-シエン
ATK/2500 星5
そんなこんなで俺の内心の動揺などつゆ知らず、ツァン父(仮)はシンクロ召喚で真六武衆-シエンを呼び出していた。ツァン父(仮)のフィールドに、もはや見慣れたといっても過言ではない真紅の鎧武者が降り立つ。先攻が奪えて本当によかった。
「私はカードを2枚伏せてターンエンドだ」
Unknown:LP4000 伏せカード:2枚 手札:2枚
「俺のターン、ドロー!」
雄二:LP4000 手札:2→3 SPC:1→2
さあて、これでSPCは2個。ここから順次スピードスペルも解禁されていくわけだな。先攻が有利すぎないかという気もするが……まあ、Dホイーラーたちに必死に先攻争いをさせるための仕様なんだろう。きっと。
適当なDホイールだと先攻は取れねえぜ? 先攻が欲しいというのなら……わかってるね? そう、最新のパーツを買うのです……みたいなDホイール業界の利権も絡んでたりして。まあそんなことはさておき。
「俺は永続罠、リビングデッドの呼び声を発動。墓地のアトリィを復活させる!」
「そうはさせんぞ! 私は真六武衆-シエンの効果を発動! 1ターンに1度、相手の魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する!」
俺の発動したリビデを無効にすべく、真六武衆-シエンは刀を頭上に掲げて謎の念力を発動する。発動して表側になったリビデのカードに、何やら赤い光がまとわりつく──のだが。
「チェーンして罠カード、ブレイクスルー・スキルを発動! 真六武衆-シエンの効果を、ターン終了時まで無効にする!」
「なんだと……!」
しかしそんなシエンに俺の伏せていたもう1枚の罠、ブレスルの効果が炸裂。シエンになんかデバフっぽいエフェクトがかかる演出と共に、リビデにまとわりついていた赤い光も消失した。
「よって、リビングデッドの呼び声は成立! 戻ってこい、アトリィ!」
竜騎士アトリィ
ATK/1800 星4 チューナー
地面に空いた光の穴をくぐり抜け、アトリィが俺のフィールドへと帰還を果たす。うーん……ガーゴイルⅡを操縦するアトリィと、今呼び戻したアトリィでアトリィがダブってしまった……。
2人のアトリィが同時に振り向きつつ、こちらへ向かって小さくピースサインをする。可愛いと可愛いが合わさって、天国のようなフィールドだ。
「俺はレベル8のガーゴイルⅡに、レベル4のアトリィをチューニング!」
ダブルアトリィが天高く舞い上がり、そのうちチューナー側のアトリィが光の輪へと変化。トンネルのように4つ連なる光の輪の中に、ガーゴイルⅡがブースターを吹かして潜り込む。
「天を駆ける一条の光よ、最強の騎士となりて我が元に舞い降りよ! シンクロ召喚──来てくれ、
騎士皇アークシーラ
ATK/3000 星12
そうして弾けるシンクロ召喚特有の眩いばかりの光を、両手に握る炎の剣で十字に切り裂いてアークシーラが現れた。どうやら昨日のデュエルで、不退の荒武者の召喚演出に内心でイイねを送っていたのはお見通しだったらしい。
「ガーゴイルⅡはシンクロ素材になったとき、墓地から手札に回収できる。そしてアークシーラは特殊召喚に成功したとき、デッキからセンチュリオンカードを手札に加えられる。俺は
レガーティアをシンクロ召喚してシエンの破壊を狙ってもよかったが、確実にプリメラを手札に引き込んでおきたかったのでアークシーラだ。向こうにはあらゆる破壊に反応する六尺瓊勾玉もあるし。
それにアトリィは自分を使ってレガーティアを、プリメラは自分を使ってアークシーラを出されることを嫌がるんだよな。とはいえ嫌がるだけで、頼めば普通にやってくれるんだが……しかし彼女たちの意向を優先すると、なんとデッキのテンション(?)が上がって、よく回るようになるというメリットもあるのだ。まあ、カードに意思が宿る世界だからね。
「まだまだ行くぜ! 俺は続けて、
俺の発動したカードから、竜巻のように渦を巻くエネルギーが飛び出してくる。そのエネルギーは途中で枝分かれして、俺の魔法&罠ゾーンに残り続けているリビデとツァン父(仮)のフィールドにいるシエンへと襲いかかかった。
「甘いわっ! 墓地の影六武衆-フウマの効果を発動!」
しかし突如として現れた忍者が、その身を挺して真六武衆-シエンへと襲い掛かるエネルギーを食い止める。その忍者こと影六武衆-フウマは爆散したものの、肝心のシエンは無傷でピンピンしておられる。
「身代わりだと!?」
「その通りよ。影六武衆は自分フィールド上の六武衆がカード効果で破壊されるとき、墓地から除外する事でその身代わりとなるのだ!」
はえー、影六武ってそんな効果だったのか。そしてあの言い方だと、どうも身代わりは共通効果っぽいな。名前は知ってても、効果は知らなかったからなあ。勉強になったわ。次からはバックを破壊しに行くよう、チャートにちゃーんと書いておきましょう。
「ちっ、ならば俺は手札から重騎士プリメラを召喚!」
重騎士プリメラ
ATK/1600 星4 チューナー
俺のフィールドに現れたプリメラは、隣に立つアークシーラへと羨まし気な眼差しをチラっと向けた後、いつも通り手にした槍を掲げてサーチ効果を発動した。
「プリメラは召喚に成功したとき、デッキからセンチュリオンカードを手札に加えられる。俺はデッキから
デッキから排出されたエメトⅥのカードを手札に加えつつ、俺はモニターを操作してメインフェイズからバトルフェイズへと移行させる。
「アークシーラで真六武衆-シエンに攻撃! ボルテック・ブレイズ!」
俺の指示を受けたアークシーラが両手に握る炎の剣の出力を上昇させる。そうして派手に燃え滾る剣を勢い良く振るうと、まるでビームのような熱線が剣から放たれ──。
「そうはいかん! 罠発動、六武派二刀流!」
しかしシエンはその熱線をサイドステップで華麗に回避。六武派二刀流の効果によって現れたもう一振りの刀を掴むと、空中のアークシーラ目掛けて跳躍。右の刀でアークシーラに袈裟斬りを浴びせると、急降下しつつ左の刀で地上のプリメラを斬り付ける。
「六武派二刀流は自分フィールド上のモンスターが、表側攻撃表示の六武衆1体のみのとき発動可能な罠カード。その効果によって相手フィールドのカードを2枚、手札に戻させることができる!」
「……やってくれる」
六武派二刀流の効果によって、アークシーラはEXデッキに。そしてプリメラは俺の手札へとバウンスされてしまい、フィールドはがら空きになってしまった。やべえな、結構やるぞツァン父(仮)
「……俺はこれでターンエンドだ」
「何……? ならば私はエンドフェイズに罠カード、トゥルース・リィンフォースを発動! デッキからレベル2以下の戦士族モンスター、紫炎の影武者を特殊召喚する!」
紫炎の影武者
ATK/800 星2
そしてエンドフェイズに発動されたトゥルース・リィンフォースの効果によって、ツァン父(仮)のフィールドに赤肌の半裸剣士が現れる。いや、通常モンスターとか珍しいもん使ってんな。
雄二:LP4000 伏せカード:0枚 手札:5枚
「やれやれ、罠カードの1枚もなしとは……情けない。どうやらこの勝負、私の勝ちのようだな。私のターン!」
Unknown:LP4000 手札:2→3 SPC:2→3
ほー、言いたい放題言ってくれるじゃねえか。まあ、俺のフィールドは完全にノーガード状態。追加で攻撃力1500以上のモンスターを召喚してぶん殴れば、それで勝利って状況だから、調子づくのも仕方ねえか。だが俺の手札には……おっと笑うな、目線も向けるな。狙いがバレたらつまらないからねぇ、ヒョ〜ッヒョッヒョ!
「私は影六武衆-ゲンバを通常召喚! ゲンバは召喚に成功したとき、除外されている六武衆を手札に加えられる。私は影六武衆-フウマを手札に!」
影六武衆-ゲンバ
ATK/500 星2 チューナー
ツァン父(仮)が召喚したのは、顔の鼻から下を灰色の布で覆い、大量のダイナマイトを装備したド派手な忍者。攻撃力は低いがチューナーだという事を考えると……。
「私はレベル2の紫炎の影武者に、レベル2の影六武衆-ゲンバをチューニング! シンクロ召喚──来たれ、アームズ・エイド!」
アームズ・エイド
ATK/1800 星4
シンクロ召喚の光の中から、遊星も愛用する機械仕掛けのガントレットが飛来する。あーなるほど、シエンの低攻撃力を補うためのカードね。
「これで終わりだ……私はアームズエイドでダイレクトアタック!」
装備効果を使ってしまうとダメージが足りないので、合体せず単独でこちらへと飛んでくるアームズ・エイド。どことなくシュールなものを感じる光景だが、しかしアームズ・エイドの攻撃力は1800と地味に高い。
「ぐああっ! く、くっそぉ~!」
雄二:LP4000-1800=2200
アームズ・エイドの体当たり攻撃を受けて、俺のDホイールは大きく揺れる。そしてライフポイントの数値が削られていき……。
「なーんてな。この瞬間、手札の妖竜マハーマの効果発動! 相手ターンに戦闘ダメージを受けたとき、コイツは手札から特殊召喚できる!」
妖竜マハーマ
DEF/2500 星5 チューナー
天から降り注ぐ光と共に、黄金の翼を持つ純白の美しい竜が俺のフィールドへと降臨する。その名に違わず、妖精のようなフォルムをしたドラゴンだ。ふつくしい……。
「なんと、このタイミングで壁モンスターを呼び出すか!」
ツァン父(仮)の方も、驚いてくれたようで何よりだぜ。でもこいつはただの壁じゃねえぞ?
「さらに妖竜マハーマは、自分が受けた戦闘ダメージを相手にも与えることができる! 俺の受けた痛みを貴様も味わうがいい! ハーッハッハッハ!」
「な、なんだと……ぐおおぉぉ!?」
Unknown:LP4000-1800=2200
妖竜マハーマはブレスを吐き、それが直撃したツァン父(仮)のライフが削れDホイールが大きく揺れる。
うっひょおおおお、楽C~! マハーマには受けたダメージを回復する効果もあるので、安定を求めてそっちを選択してもよかったのだが……こっちの方が面白い反応が見られるからな! フフ……なかなかいい眺めだぜ城之内。
「お、おのれ……まさかこのようなモンスターを隠し持っていたとは……! 私はアームズ・エイドの効果を発動! このカードを真六武衆-シエンに装備して、その攻撃力を1000アップさせる!」
真六武衆-シエン
ATK/2500→3500
メイン2に移行したツァン父は、さっそくアームズエイドの装備効果を発動した。シエンは刀を左手に持ち替えると、空いた右腕にアームズ・エイドを装着する。攻撃力3500で魔法罠カードを無効にしてきて、相手モンスターを戦闘破壊したら直火焼き……なかなかに厄介なモンスターと化したな。
「そしてカードを1枚伏せ、ターンエンドだ!」
Unknown:LP2200 伏せカード:1枚 手札:1枚
「俺のターン、ドロー!」
雄二:LP2200 手札:4→5 SPC:3→4
アークシーラの正規シンクロボーナスを得て、六武派二刀流で失った精神アドもマハーマのおかげで取り戻した……いい流れだ。その証拠にドローカードもかなりいい感じだし。
「俺は手札からカオス・ウィッチ-混沌の魔女-を召喚!」
カオス・ウィッチ-混沌の魔女-
ATK/1500 星4
俺が召喚したのは、周囲に炎を纏った骸骨を漂わせた銀髪の魔女。墓地から除外する事で真価を発揮する、我がデッキにおける影のエースだ。この子が墓地にいると、お手軽に高レベルシンクロに繋がるから爆発力が上がるんだよな。まあ今はその為の特殊召喚モンスターが手札にいないんだが。
「俺はレベル4のカオス・ウィッチに、レベル5の妖竜マハーマをチューニング! 蒼海を駆ける鋼の竜よ、その鋼鉄の咆哮で戦場を制圧せよ! シンクロ召喚──来てくれ、
碧鋼の機竜
ATK/2700 星9
シンクロ召喚の光の中から、軍艦のような姿をした機械竜が姿を現す。
本当なら灼銀の機竜でシエンを破壊しに行きたいところだが、ツァン父(仮)の墓地には影六武衆がいるしな。あと勾玉踏んだら即死だし。
「碧鋼の機竜は特殊召喚に成功したとき、墓地のチューナーの数まで相手フィールド上のカード効果をターン終了時まで無効にできる。俺は真六武衆-シエンとアームズ・エイドの効果を無効にする!」
真六武衆-シエン
ATK/3500→2500
碧鋼の機竜の発射したスタンニードルランチャーの電撃を食らい、真六武衆-シエンとアームズエイドはボロボロの状態に早変わり。まったく、企業を出し抜こうなど。身の程を弁えぬ駄犬には教育が必要です(メガネクイー)
「ぐぬぬ、我が家に伝わる切り札をこうもあっさりと……!」
効果を無効化され、苦悶の声を上げるシエンを見てツァン父(仮)がうめき声を上げる。我が家の切り札って言っちゃったよこの人。もう(仮)とか言わずに確定でいいんでね? ていうかあれって家宝とかそういうポジのカードだったんだな。いやまあ、確かにめちゃ強いけどさ。
……我が家に“伝わる”切り札との事だけど、シンクロ召喚ができたのはつい最近のはず? 知ら管。まあ元々は効果モンスターだったのが、時代に合わせてシンクロモンスターにアップグレードしたとか、そんな感じじゃない? 知らんけど。
「これでこいつが使えるぜ! 俺は手札からSP-エンジェル・バトン*1を発動! デッキからカードを2枚ドローし、その後1枚墓地に送る!」
ほー、これは面白いカードを引いた。もう一手早く引いていれば俺の勝ちだったんだが……まあ贅沢を言っても仕方ない。そうして2枚のカードを引いた俺は、墓地にエメトⅥを送り込む。
「バトルだ! 俺は碧鋼の機竜で真六武衆-シエンを攻撃! メタルストーム!」
碧鋼の機竜 ATK/2700 VS 真六武衆-シエン ATK/2500
碧鋼の機竜の全砲門による一斉射撃が真六武衆-シエンへと襲い掛かり、砲弾の嵐に呑まれたシエンはあっけなく破壊される。そしてその砲撃の余波を受けて、ツァン父(仮)にも微量のダメージが襲い掛かった。
「ぐおぉ……なんのこれしき!」
Unknown:LP2200-200=2000
「俺はカードを2枚伏せてターンエンド」
雄二:LP2200 伏せカード:2枚 手札:3枚
「くっ……このままでは……。私のターン、ドロー!」
Unknown:LP2000 手札:1→2 SPC:4→5
「手札からSP-エンジェル・バトンを発動。デッキからカードを2枚ドローし……ぬっ!?」
ほー。どうやらお相手さん、いいカードを引き当てたみたいだな。それまで渋い顔してたのに、ドローしたら急に元気になってら。
「フフフ、来たぞ……やはり天はこの私の味方だ! 私は手札から影六武衆-ハツメを召喚!」
影六武衆-ハツメ
ATK/1600 星3
ツァン父が威勢よく呼び出したのは超ミニの着物にスパッツを着用した、茶髪の美少女忍者。おやおや、これはこれは。いやあ、なかなかいい趣味をしてますねえお父さん。かくいう私も、見せスパッツは大好物でしてね……フッフッフ。
「私は影六武衆-ハツメの効果を発動! 私は墓地の六武衆の真影と影六武衆-ゲンバを除外する事で……墓地の真六武衆-シエンを復活させる!」
え、直接蘇生してくんの? チューナー吊り上げからの再シンクロとかじゃなくて? 何それ聞いてない。
「真六武衆-シエンよ、我がフィールドに蘇るがいい! 輪廻天生の術!」
真六武衆-ハツメが何やら複雑な印を結ぶと、ツァン父(仮)のフィールドに法陣が現れる。その法陣は六武衆の真影と影六武衆-ゲンバをエネルギー源として吸い込む事で光り輝き……やがてその中から、気力に満ち溢れた真六武衆-シエンが姿を現した。
真六武衆-シエン
ATK/2500 星6
「さらに私はSP-ヴィジョンウィンド*2を発動! 墓地からレベル2以下のモンスター、影六武衆-フウマを特殊召喚!」
影六武衆-フウマ
ATK/200 星1 チューナー
空だったツァン父のフィールドに、一気に真六武衆-シエンとそのお供となる忍者が2人並び立つ。あれれー? なんかこれと似た布陣を、ついさっきのターンに見たような気がするぞー?
「おいおいマジかよ、なんつー力押し……!」
「生憎と、正面から行くことしかできなくてな。それしか能が無い」
俺が半笑いしつつ上げた感想に、ツァン父(仮)が自信に満ちた返事を返して来る。有澤重工の社長さんみたいなこと言いやがって。
「私はレベル3の影六武衆-ハツメに、レベル1の影六武衆-フウマをチューニング! シンクロ召喚──再び現れよ、アームズ・エイドォ!」
アームズ・エイド
ATK/1800 星4
「私はアームズ・エイドの効果を発動! このカードを真六武衆-シエンに装備し、攻撃力を1000アップさせる!」
「罠カード、迷い風を発動! 相手が特殊召喚したモンスターの効果を無効にし、さらに攻撃力を半分にする! アームズ・エイドの効果を無効に──」
「効かぬわ! 真六武衆-シエンは1ターンに1度、魔法・罠カードの発動を無効にして破壊する! よって迷い風は無効! アームズ・エイドの効果は発動される!」
俺の発動した迷い風のカードより、いかにも体に悪影響を及ぼしそうな黒い風が飛び出してきてアームズ・エイドへと襲い掛かる。だが真六武衆-シエンは手にした刀を振るって、その黒い風を断ち斬ってしまった。
真六武衆-シエン
ATK/2500→3500
その後は2ターン前に行われたツァン父(仮)のターンを再現するかの如く、アームズ・エイドがシエンの右腕に装着されていき、攻撃力3500の直火焼き効果を持つモンスターが爆誕。本来なら大ピンチといえる状況だが……。
「これで終わりだ! 私は真六武衆-シエンで碧鋼の機竜に攻撃!」
真六武衆-シエン ATK/3500 VS 碧鋼の機竜 ATK/2700
「罠発動……迎え撃て、碧鋼の機竜!」
地獄から蘇った武者にもう一度引導を渡すべく、碧鋼の機竜はその全砲門を開いて嵐のような砲撃を開始する。しかし前のターンとは違い、今回は真六武衆-シエンとその装備品であるアームズ・エイドは効果が無効化されておらず、無傷の状態。
シエンは降り注ぐ砲弾に対しアームズ・エイドを向けると、そこから怪音波を放出。怪音波を浴びた砲弾は次々と爆発していき──そうして砲撃を無力化したシエンは碧鋼の機竜に一気に接近すると、その主砲に左手の刀を深々と突き刺して大爆発を引き起こした。
「…………!」
雄二:LP2200-800=1400
碧鋼の機竜が爆発した衝撃によって、俺のライフが削り取られていく。そしてこれだけではない。アームズ・エイドを装備した真六武衆-シエンによって、碧鋼の機竜が破壊されたという事は……。
「この瞬間、装備カードとなっているアームズ・エイドの効果が発動。アームズ・エイドを装備したモンスターが相手モンスターをバトルで破壊したとき、その攻撃力分のダメージを相手に与える! 食らえぃ!」
碧鋼の機竜を破壊した際の衝撃波を利用したのだろう。今だ宙に舞っている真六武衆-シエンは、その右腕に装着したアームズ・エイドを俺に向けると、そのクローを開いてエネルギーの奔流を放つ。が──。
「何っ……!?」
そのエネルギーは俺を守るよう展開されたバリアによって防がれており、その光景を見たツァン父(仮)が驚愕の声を上げる。
「残念だが攻撃宣言時に俺は罠カード、リフレクト・ネイチャーを発動していた。このカードは、相手のカード効果によるダメージを反射するカード……」
「なん……だと……!?」
そしてそのバリアはアームズ・エイドのエネルギーを反射。跳ね返されたエネルギーは、逆に驚愕の表情を浮かべているツァン父(仮)へと襲い掛かった。
「ば、馬鹿な……!?」
Unknown:LP2000-2700=0 Lose
反射されたエネルギーの直撃を受け、ツァン父(仮)のライフはゼロとなりデュエルは終了。強制停車モードが起動し、白い煙を吹いて停車するそのDホイールに合わせて、俺もまたDホイールを急停車させた。
「やっべえ……」
興奮にプルプル震える手を抑えながら、思わず漏らした呟きにプリメラが心配そうな表情で近寄ってくる。いやなんか勘違いさせて悪いけどね? そうじゃないのよね。これ、マイナスじゃなくてプラスの反応なの。何が言いたいのかって? そりゃアレだよプリメラ。
「マジ決まったわ。今の俺、超クールでカッコよくね?」
あ、プリメラがずっこけた。心配して損した? いや、待ってほしい。これは正常な反応なんだ。いいか、よく考えてみろよ? 必殺を期して放たれた相手の渾身の一撃をいなし、反射して華麗に逆転……これって超クールな勝ち方じゃね? 完璧に強キャラの勝ち方じゃん?
最初は白けた顔で俺の言い訳を聞いていたプリメラだが、聞いているうちにその考えを改めたのか、『そうかな……そうかも……』という感じで徐々にその表情も変化していく。
いやー、実にスガスガしい気分だッ! 歌でもひとつ歌いたいようなイイ気分だ! フフフフ……ハハハハ……!
◇
「いいデュエルだったな、オッサン」
その後、プリメラに『えい』とケツを刺される事で普段のテンションを取り戻した俺は、Dホイールを停車させたまま呆けているツァン父(仮)の元へと寄って声をかけてみた。ガッチャ、俺は楽しいデュエルだったぜ!
「……ああ。年甲斐もなく熱くなれる、いいデュエルだった」
ゆっくりと噛み締めるように、そう返事を返すツァン父(仮)
おおそうか、そっちも楽しかったか。それは何よりだ。なにせデュエリストの中には「うるせえ! 俺は勝つのが好きなんだよォ!」というタイプもそこそこいるからな。特にチンピラ系に多い感じがする。
「君は……強いな。終わってみれば、すべてが掌の上。手も足も出なかった」
「いや、そんなことはないと思うけどなぁ」
んー。でもまあ、負けた側からするとそう見えるのかな? とくに今のツァン父(仮)は放心状態っていうか、敗北のショックが強いように見えるし。
「ああ、そうだ……そういえば、まだ名乗っていなかったな。私は……」
「おおっと、そいつはちょっとストップだ」
「む……?」
ゆっくりとメットに手をかけ、素顔を表そうとしていたツァン父(仮)の手を止めさせると、ツァン父(仮)は訝しげな声を上げる。きっとこの人の頭の中では、俺はデュエル前の約束通り正体を知りに来た、という事になってるんだろうな。……もう正体はなんとなくわかるから、そんなことはどうでもいいんだが!
「せっかくだ、もう一戦デュエルしようぜ?」
「なに……? いや、私は……」
俺からの再戦希望を受け、ツァン父(仮)は困惑しながら返事を返す。でもなんだか、このままだと受けてくれなさそうな調子だ。覇気とかそんな感じのものが全く感じられない。……仕方ない、じゃあ少しだけ本音をポロリすっか。
「……娘の男友達が怪しい人間じゃないか、その目で確かめに来たんでしょう? そちらにとっても、悪い話ではないと思いますが」
「小僧……いったいいつから……」
なんか本気で驚いてて草。気付かれてないと思っていたのか。ほぼ最初からだよボケ! というのもなんかアレだし、まあ適当に濁しとくか。
「途中から、なんとなく? まあ、そういうわけでもう一戦しようぜ。デュエルをすれば、その人間の人となりがわかる~ってよく言うしな」
「……ああ、その通りだ。デュエルはその人間を正確に映し出す。他人を知りたければ、まずデュエルを挑め。対人関係における鉄則だな」
メット越しではあるが、その時俺は、ツァン父がニヤリと笑ったのを確かに感じた。落ち込みモードも終わったようだし、これで安心だな。デュエルをすれば絆が深まる、って遊星もよく言ってるしな。遊星が言うんだから間違いない。
「じゃあ第二ラウンド、行きますか!」
「次は負けんぞ、小僧!」
俺とツァン父は同時にアクセルを踏み込み、勢いよく発進。そのままデュエルモードを起動して、治安維持局にライディングデュエルの申請を飛ばす。
「ライディングデュエル・アクセラレーション!」
「ライディングデュエル・アクセラレーション!」
この後、日が暮れるまで滅茶苦茶デュエルした。
アルゴスターズめっちゃ可愛い!!
僕の一押しはやはり王道を行くアドラちゃんですね!!
ツァン父→設定上存在するけど資料は一切無いので事実上のオリキャラ。とりあえずお堅いイメージ。真六武は娘に渡しちゃったので影六武使いという独自設定。シエンは娘のデッキからこっそり借りてきた。
ツァン→今回の裏で一番得した。何をどう得をしたのかは次回にて(露骨な宣伝)
シエン→ツァンにこいつの3積みを許したのはミスだったと後悔してる。強いというより扱い辛い。貴重だから1枚しか持ってないことにすべきだった……。
スパッツ→嫌いな男とかいる? いねえよなあ!?