ネオドミノのテッペンに立ちたくて   作:ジェム足りない

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前編後編の連続投稿で、こちらは後編になります。


卒業検定ライディングデュエル(後編)

「私のターン、ドロー!」

 

 ゆま:LP4000 手札:5→6 SPC(スピードカウンター):0

 

「私は手札からE・HEROブレイズマンを召喚ですっ!」

 

 E・HEROブレイズマン

 DEF/1800 星4

 

 ゆまが召喚したのは、朱色の仮面とプロテクターを身に着けた炎のHERO。本来なら召喚成功時にデッキから融合をサーチできる効果を持っているのだが、しかしスピードスペル以外の魔法カードを使用できないライディングデュエルでは、その効果は失われていると言ってもいいだろう。

 だがブレイズマンは融合のサーチ以外にも、もう1つ強力な効果を持っている。

 

「ブレイズマンの効果! デッキからE・HEROを1体墓地に送ることで、ターン終了時までそのモンスターと同じ属性とステータスを得ます! 私がデッキから墓地に送るのは、E・HEROシャドー・ミスト!」

 

 E・HEROブレイズマン

 DEF/1800→1500 炎→闇

 

 デッキに眠る仲間の力を受け継ぐという効果により、ブレイズマンはシャドー・ミストの力を獲得してダーク・ブレイズマンへと進化。全体的に黒っぽい色となり、その拳に纏う炎を闇の炎へと変化させた。

 え、ステータス上ではむしろ弱体化してる? ……こまけぇこたぁいいんだよ!

 

「E・HEROシャドー・ミストは墓地に送られたとき、デッキからHEROを手札に加えられます! 私が手札に加えるのはE・HEROエアーマン!」

「ほう。墓地にモンスターを送り込みつつ、手札の補充をこなすか。大したお嬢ちゃんだ」

 

 シャドーミスト経由でエアーマンを手札に加えたゆまを見て、牛尾さんが感心の声を上げる。牛尾さんから褒められたゆまは照れくさそうに笑った後、2枚のカードを魔法&罠ゾーンに差し込んだ。

 

「私はカードを2枚伏せ、これでターンエンドですっ!」

 

 E・HEROブレイズマン

 DEF/1500→1800 闇→炎

 

 ゆま:LP4000 伏せカード:2枚 手札:3枚

 

 ゆまのターンが終了したことで、ブレイズマンの効果も終了。ダーク・ブレイズマンは素のブレイズマンへとその姿を戻していた。

 

「俺のターン!」

「私は永続罠、フルスロットルを発動! この効果で、私はスタンバイフェイズに増えるSPCの数を1つ増やしますっ!」

 

 牛尾:LP4000 手札:5→6 SPC:0→1(ゆまSPC:0→2)

 

 牛尾さんがドローフェイズに入るのと同時に、ゆまはライディングデュエル専用の永続罠を発動。これこそがライディングデュエルにおいて融合召喚を行うための作戦の1つ。その名もSPCさっさと貯めてスピード・フュージョン使おうぜ大作戦だ。

 対策としては普通過ぎるって? いーじゃんかよ。変に凝ったことをするよりも、こうやって単純に行く方が上手くいくんだよ。

 

「なるほどな。これなら倍のスピードでSPCが貯まっていき、次のあの子のターンにはスピード・フュージョンが解禁。以後は融合召喚し放題って寸法か」

 

 ゆまの狙いを理解したクロウが、腕組みをしながらしたり顔で頷く。

 

「しかもそれだけじゃない。SPCの貯まる量が倍になるということは、そのぶん強力なスピードスペルの解禁タイミングも早くなる。さらにスピード・ワールド2はSPCを使うことで、様々な効果を発動できるしな」

 

 さらに続けて行われた遊星の解説を受け、龍亞龍可が「なるほど~」といった顔で感心していた。

 

「へ、だったらSPCが貯まりきる前に、速攻をかけるまでの事よ! 俺は手札から、切り込み隊長を召喚!」

 

 切り込み隊長

 ATK/1200 星3

 

 そう言って牛尾さんが呼び出したのは、戦士族の中でも屈指の知名度を誇る大ベテラン。入手難易度も低い上に、チューナーと非チューナーを同時に並べられるという利便性から、ネオドミノでもかなりの使用率を誇るモンスターだ。

 

「切り込み隊長は召喚に成功したとき、手札からレベル4以下のモンスターを特殊召喚できる! 俺はジュッテ・ナイトを特殊召喚!」

 

 ジュッテ・ナイト

 ATK/700 星2 チューナー

 

 当然の如くチューナーを出してきたが、レベルの合計は5。これなら、もはやポリスモンスターの代名詞にもなっているゴヨウ・ガーディアンが出てくることはないだろう。出てくるとしたら、無難にカタストルあたりかね? あれもあれで普通に強い部類だし。

 

「俺はレベル3の切り込み隊長に、レベル2のジュッテ・ナイトをチューニング! 地獄の果てまで追い詰めよ! 見よ、清廉なる魂! シンクロ召喚──ゴヨウ・チェイサー!」

 

 ゴヨウ・チェイサー

 ATK/1900 星5

 

 しかし意外な事に、牛尾さんが呼び出したのはゴヨウ・ガーディアンを軽装にした感じのモンスター、ゴヨウ・チェイサーだった。

 うーむ、まさか後輩(ARC-V)のカードを先輩権限で分捕って使い始めるとは……この海のリハクの目をもってしても以下略。それにしてもアレだな。やはりセキュリティがカードを開発すると、どの世界線でもこのゴヨウシリーズに行きつくのだろうか。

 

「バトルだぁ! ゴヨウ・チェイサーでE・HEROブレイズマンを攻撃!」

 

 ゴヨウ・チェイサー ATK/1900 VS E・HEROブレイズマン DEF/1800

 

 ゴヨウ・チェイサーは縄付きの十手をブンブンと振り回したのち、勢いよくブレイズマンに向かって投げつける。猛烈な勢いで投擲された十手はブレイズマンを一撃で粉砕し、そのビジョンをガラスのように粉々に砕け散らせた。

 

「まだだ! ゴヨウ・チェイサーはバトルでモンスターを破壊したとき、そのモンスターの攻撃力を半分にして自分フィールド上に特殊召喚できる! カモ~ン、ブレイズマンちゃーん!」

「ええーっ!? 私のヒーローが!?」

 

 E・HEROブレイズマン

 ATK/1200→600 星4

 

 そして牛尾さんが効果を説明し終わるのと同時に、砕け散ったはずのビジョンが逆再生でもしたのかのように再結集。そうして復活したブレイズマンをゴヨウ・チェイサーは縄で絡め取ると、そのまま自軍へと引き摺り込んでしまう。それにしてもこの牛尾さん、ノリノリである。

 

「ハハハ、悪いな嬢ちゃん! そして当然、バトルフェイズ中に特殊召喚したE・HEROブレイズマンには攻撃権が残っている。俺はE・HEROブレイズマンでダイレクトアタックだぁ!」

「きゃあっ!?」

 

 ゆまLP:4000-600=3400

 

 奪われたブレイズマンによる炎のパンチを食らい、ゆまは可愛らしい悲鳴を上げる。ダメージ自体は大したことなくても、衝撃でDホイールがけっこう揺れるからな。慣れるまでは大変だろう。

 

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンドだ」

 

 牛尾LP:4000 伏せカード:2枚 手札:2枚

 

「私のターンですっ! ドロー!」

 

 ゆま:LP3400 手札:3→4 SPC:2→4

 

 さて、これでゆまのSPCは4個。ここからは融合も解禁され、ようやく本来の……いや、本来の動きというには程遠いが、それでもようやく動けるようになる。

 

「私はE・HEROエアーマンを召喚! そしてE・HEROエアーマンは召喚に成功したら、デッキから新たなHEROを手札に呼び寄せます! 私はこの効果で、E・HEROリキッドマンを手札に!」

 

 E・HEROエアーマン

 ATK/1800 星4

 

 ゆまは2つの回転翼付きグライダーを背負ったHEROを召喚すると、その効果によって融合素材となったときに真価を発揮するリキッドマンを確保。さて、この後は融合だろうが……ゆまはどの融合HEROを召喚するのだろうか。

 

「そして私は手札からSp-スピード・フュージョン*1を発動! 手札のE・HEROリキッドマンと、E・HEROレディ・オブ・ファイアを融合ですっ! 来てください、E・HEROアブソルートZero!」

 

 E・HEROアブソルートZero

 ATK/2500 星8

 

 リキッドマンとレディ・オブ・ファイアの2体が渦巻きエフェクトに飲み込まれていき、光と共に極寒の凍気を纏った氷のHEROが姿を現した。

 ライセンスの取得がかかったデュエルということもあってか、慎重な選択だな。

 

「この瞬間、融合素材となったE・HEROリキッドマンの効果が発動します! デッキからカードを2枚ドローし、その後手札を1枚捨てます!」

「見事な流れだ。やるなあ、あの子」

 

 エアーマンの召喚から始まった一連の流れ。それを見ていたクロウより、ゆまの腕前に対する賞賛の声が上がった。

 

「行きますよーっ! 私はE・HEROアブソルートZeroで、ゴヨウ・チェイサーを攻撃──」

「そうはさせねえぜ! 罠発動、進入禁止!No Entry!! この効果によって、全てのモンスターは守備表示になる!」

 

 しかし、ゆまが意気揚々と攻撃を宣言しようとしたところで牛尾さんは1枚の罠カードを発動。

 突然2名の警備員が出現したかと思えば、その警備員たちは全力で警笛を吹き鳴らす。そしてそれを聞いた双方のモンスターたちは全員揃って耳を抑え、守備表示になってしまう。

 

「む、むむむぅー!」

「はーっはっは! そう簡単に俺のライフを奪えると思うなよぉ?」

 

 折角の攻撃チャンスをふいにされたのが悔しかったのか、全力で悔し声を上げるゆまと、そんなゆまを上機嫌な様子で煽る牛尾さん。実に大人気ない光景だ。

 

「牛尾のヤツ、調子に乗りまくってやがるぜ」

「十六夜に負けたのが悔しかったんだろうな……」

 

 おっと、クロウとジャックの2人も呆れ顔してら。……それにしても、ゆまがあそこまで悔しがるとは珍しい。という事はあの伏せカードはアレだろうな。連続攻撃で華麗に牛尾さんを仕留めるつもりだったのに、失敗して悔しいってところか。

 

「わ、私はカードを1枚伏せて、ターンエンドです……」

 

 ゆま:LP3400 伏せカード:2枚 手札:1枚

 

「俺のタァーン!」

 

 牛尾:LP4000 手札:2→3 SPC:2→3(ゆまSPC:4→6)

 

「さぁて、そろそろ決めに行かせて貰おうかね? 俺はヘル・セキュリティを通常召喚!」

 

 ヘル・セキュリティ

 ATK/100 星1 チューナー

 

 牛尾さんのフィールドに、頭にパトランプを乗せた一頭身の悪魔が現れる。直前に行われた、アキさんとのデュエルでも使われていたチューナーモンスターだ。

 セキュリティしか使えないポリスモンスターという割に、効果自体はかなり控えめだったりするんだが……この状況で牛尾さんがチューナーを召喚したということが厄介だ。

 

「俺はレベル4のE・HEROブレイズマンに、レベル1のヘル・セキュリティをチューニング! シンクロ召喚──出でよ、ヘル・ツイン・コップ!」

 

 ヘル・ツイン・コップ

 ATK/2200 星5

 

 牛尾さんがシンクロ召喚で呼び出したのは、連続攻撃能力を持つヘル・ツイン・コップだった。

 大型のバイクに乗車した、1つの体に2つの頭を持つ悪魔刑事(デカ)──牛尾さん曰く、泣く子も黙る双子の野獣刑事──がズシンとコースに降り立ち、そのまま走行を開始する。空中を浮遊するのではなく、土煙を立てて地面を走行するあたり芸が細かい。

 

「ゴヨウ・チェイサーを攻撃表示に変更し……バトル! まずはゴヨウ・チェイサーでE・HEROエアーマンを攻撃だ!」

 

 ゴヨウ・チェイサー ATK/1900 VS E・HEROエアーマン DEF/300

 

 ゴヨウ・チェイサーは縄付き十手をエアーマンに向かって投擲すると、縄の部分でエアーマンを縛り上げ──先ほどのブレイズマン同様、ゆまのフィールドから一本釣りしてコントロールを奪い取った。

 

「ゴヨウ・チェイサーの効果! バトルで破壊した相手モンスターの攻撃力を半分にして、俺のフィールドに特殊召喚する! E・HEROエアーマンも頂いていくぜ!」

「うぅ、また私のヒーローを……!」

 

 E・HEROエアーマン

 ATK/1800→900 星4

 

 これでゆまのフィールドには守備表示のアブソルートZeroが1体のみだ。とはいえ、アブソルートZeroにはフィールドを離れた際に相手モンスターを道連れにする厄介な効果があるのだが……牛尾さんはどうこの効果を捌くのだろうか。

 

「続けてヘル・ツイン・コップでE・HEROアブソルートZeroを攻撃だ!」

 

 ヘル・ツイン・コップ ATK/2200 VS E・HEROアブソルートZero DEF/2000

 

 ヘル・ツイン・コップは腰のホルスターから大型の拳銃を取り出すと、アブソルートZeroに向かってバイクで突進しながらその拳銃を乱射。防御態勢を取っていたアブソルートZeroは銃弾の雨を受け、そのまま爆散したのだが。

 

「でもこの瞬間、E・HEROアブソルートZeroの効果が発動します! アブソルートZeroはフィールドを離れたとき、相手のモンスターを全滅させるんですっ!」

 

 それを条件として、アブソルートZeroの道連れ効果が発動。冷気のエフェクトが牛尾さんのフィールドを覆い尽くし、牛尾さんのモンスターたちは哀れにも全滅──。

 

「甘いぜ! カウンター罠、大革命返し! フィールドのカードを2枚以上破壊するカードの発動を無効にし、除外するゥ! これでE・HEROアブソルートZeroの効果は無効だァ!」

 

 しなかった。逆に牛尾さんの発動したカウンター罠の効果を食らい、冷気の発生源であったアブソルートZeroごと次元の渦に飲み込まれてしまう。

 

「そ、そんなぁーっ!?」

「これで嬢ちゃんを守るモンスターはもういねえ。ヘル・ツイン・コップはバトルで相手モンスターを破壊した場合、攻撃力を800上昇させてもう一度攻撃ができる……」

 

 牛尾さんが口を開くのと同時に、ヘル・ツイン・コップが前を走るゆまに向けて再び拳銃を構える。

 

「ま、今回は運が悪かったと思って諦めな。来年の試験は、こんな落とすための試験じゃねえだろうからよ。ヘル・ツイン・コップで嬢ちゃんにダイレクトアタック!」

 

 牛尾さんからの攻撃宣言を受けたヘル・ツイン・コップは、ゆまに向けてバイクを突進させる。

 

「マズい! このままヘル・ツイン・コップと奪われたエアーマンの攻撃を受けたら……!」

「ゆま姉ちゃんのライフは残り3400だから……ええーっと、ええーっとぉ!?」

「3000足す900で3900のダメージを受けて、ゆまさんが負けちゃう!」

 

 今にもダイレクトアタックを受けて敗北しそうなゆまを見て、クロウと龍亞龍可が慌て始める。

 しかし外野がいくら慌てたところで、デュエルの流れが変わることはない。ゆまとの距離をある程度詰めたヘル・ツイン・コップは、そのまま拳銃を乱射。放たれた弾丸がゆまへと襲いかかるが……。

 

「罠カード、カウンター・ゲートを発動っ! 相手のダイレクトアタックを無効にし、デッキからカードを1枚ドロー! さらにそのカードがモンスターだった場合、攻撃表示で召喚できます!」

 

 ゆまの前に、突如として巨大な金属製のゲートが出現。そのゲートによって、ヘル・ツイン・コップの撃った銃弾は全て弾かれた。

 

「ふぃー、ヒヤヒヤさせやがるぜ……」

「クロウは大袈裟なんだよ。ゆまがあの程度で負けるわけないだろ?」

 

 冷や汗を拭う仕草をするクロウを見て、俺は苦笑しながら口を開く。一応、ゆまが“かなりやる”って事は何度も話してたはずなんだけどねえ。

 

「ゆまはああ見えて、アカデミアでも屈指の実力者だ。それに……」

「それに?」

 

 クロウの上げた疑問の声に、俺はニッと笑いながら回答した。

 

「ゆまのあのデッキ、実は俺も構築にけっこう関わっててな?」

「カウンター・ゲートの効果でドローっ!」

 

 ゆまが勢いよくカードをドローし、そのあと恐る恐る、といった感じでドローカードを確認する。できればモンスターを召喚して、エアーマンの追撃は防ぎたいところだが……なんかイマイチって顔してるな。

 ……いや。何かに気がついたのか、ゆまの目に強い光が宿ったのを感じる。

 

「……召喚は、しません!」

「モンスターを引けなかったのか、それとも引いたはいいが雑魚モンスターだったか……まあいい。ならば俺は、E・HEROエアーマンで嬢ちゃんにダイレクトアタックだ!」

 

 牛尾さんからの攻撃命令を受け、エアーマンは背負っている回転翼から竜巻を発生させてゆまを攻撃。竜巻に飲み込まれたゆまは悲鳴を上げる。

 

「きゃあぁー!?」

 

 ゆま:LP3400-900=2500

 

 しかし悲鳴こそ上げていたものの、2回目のダメージだからだろうか。先ほどより大きな衝撃を受けているはずのDホイールを、ゆまは見事に制御していた。

 

「そして手札からSp-スピードストーム*2を発動! 相手プレイヤーに1000ポイントのダメージを与える!」

「くうぅぅぅ……! ま、負けませんっ!」

 

 ゆま:LP2500-1000=1500

 

 メインフェイズ2に移行した牛尾さんは、すかさずバーン効果を持つスピードスペルを使ってゆまに追加攻撃。カードより飛び出してきた竜巻がゆまを襲い、そのライフを削っていった。これで残りライフは1500……ゆまの伏せカードが俺の読み通りなら、ライディングデュエルにおけるセーフティラインを超えちまうな。

 

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ!」

 

 牛尾:LP4000 伏せカード:1枚 手札:0枚

 

「わ、私のターンです! あとは、あとはあのカードさえ来れば……」

 

 ゆまはデッキトップの上に手を置きながら深呼吸を繰り返し、やがて決心したかのように目を見開くと、力強くカードをドローした。

 

「ドローっ!」

 

 ゆま:LP1500 手札:1→2 SPC:6→8

 

「ライフと盤面は不利だが、これでゆまのSPCは8個になった」

「そうだな。この大量のSPCを活かすことこそが勝利のカギだろう」

 

 俺の呟きに遊星が反応し、遊星のその言葉に他の観戦メンバーも一斉に頷く。頑張れよ、ゆま。

 

「これは……!」

 

 お目当てのカードをドローできたのだろう。ドローカードを確認したゆまは、軽く頷いた後に伏せカードを発動した。

 

「私は罠カード、スピリッツ・フュージョンを発動します! このカードはライフを1000払うことで、墓地のモンスターを使って融合を行えるカード!」

 

 ゆまLP:1500-1000=500

 

 やっぱりスピリッツ・フュージョンだったか。漫画版の十代が使ったこのカードは、OCGにもある死魂融合(ネクロ・フュージョン)と違ってライフコストこそ要求するものの、融合素材は表側で除外&呼び出した融合モンスターはそのターン中にも攻撃できる便利な罠だ。

 ただまあ、ライディングデュエルだとこのライフコスト1000が地味に痛いんだが。実際に今のゆまもライフを支払った結果、残りライフはたった500。スピード・ワールド2の効果ダメージ800のライン、通称セーフティラインを下回ってしまったし。

 

「私は墓地の──」

「おおっとぉ、融合召喚はさせねえぜお嬢ちゃん。カウンター罠、ギャクタン!」

 

 しかし、牛尾さんは無情にもセキュリティ専用のクソ強カードでゆまの墓地融合を潰してきた。いや魔法が制限されるライディングデュエルでのギャクタンはマジでやべーよ。しかもアレ、いわゆる原作効果の強いヤツじゃん。

 サテライト時代にセキュリティと何度もやり合ってきていて、その効果をよく知るクロウが、俺の横で「ゲッ!?」と本気で嫌そうな声を上げているぜ。逆に、セキュリティのお世話になったことのないゆまはハテナ顔だが。

 

「相手の罠カードを無効にし、表側にしてデッキに戻させる! そして表側になったそのカードをドローするまで、相手は同じカードを発動できない!」

 

 牛尾さんが効果を説明するのと同時に、ゆまの発動したスピリッツ・フュージョンのカードにビリビリと電撃が走り、その発動を無効にされてしまった。

 

「そ、そんなぁ……これじゃ、もう……」

 

 頼みの綱の融合を阻止されたゆまは打ちひしがれた声を上げると、ガックシと肩を落とす……。

 

「……私の勝利確定ですっ! ぶいっ!」

 

 ようにみせかけて、満面の笑みを浮かべながらVサイン。後方を走る牛尾さんに対して、勝利宣言を叩きつけた。

 

「ぬわにぃ!?」

「えへへ……勝利の方程式は全て揃いましたっ!」

 

 勝利宣言をされた牛尾さんは、驚愕と困惑の入り混じった表情を浮かべつつ、素晴らしいリアクションを返してくれる。体育会系だけあって実にノリがいい。

 

「行きますよ試験官さん! 私は手札から、復讐の女戦士ローズを召喚します!」

 

 復讐の女戦士ローズ

 ATK/1600 星4 チューナー

 

「ここでチューナーモンスターか……ということは、その残り手札はモンスターと、それを並べるためのカード……だが、俺のライフは4000! たかが1回のシンクロ召喚じゃ削り切れまい!」

 

 ゆまのフィールドに現れた赤髪の女剣士を鋭い目で見やりつつ、牛尾さんが丁寧に説明死のフラグを立ててくれる。

 だがそうか、なるほど。つまりさっきのターン、ゆまがカウンター・ゲートで引いたのは恐らく、強欲なあの男……。

 

「それはどうですかね? 私はカードを1枚伏せ……手札のE・HEROバブルマンの効果を発動ですっ! バブルマンは手札がこのカード1枚のみの場合、フィールドに特殊召喚できるんですっ!」

 

 E・HEROバブルマン

 ATK/800 星4

 

 シャボン玉のような泡が湧き上がるエフェクトと共に、十代のデュエルをずっと支えてきた水属性のHEROが現れる。やはりバブルマンだったか。カウンター・ゲートの追加効果は攻撃表示でしか出せないからな。だから温存のために出すわけにはいかなかった、と。

 

「私はレベル4のE・HEROバブルマンに、レベル4の復讐の女戦士ローズをチューニング! 不屈の闘志を持つ英雄よ、来たれっ! シンクロ召喚──ギガンテック・ファイターっ!」

 

 ギガンテック・ファイター

 ATK/2800 星8

 

 眩い光の中から、アーマースーツを装着した巨躯の戦士が現れる。シンクロ召喚されたギガンテック・ファイターは着地と同時に地面を殴り、派手に衝撃波と瓦礫を撒き散らしていた。

 

「ギガンテック・ファイターはお互いの墓地に存在する戦士族モンスター1体につき、攻撃力が100アップします! 私と試験官さんの墓地には戦士族が合計9体、よって攻撃力は900アップですっ!」

 

 ギガンテック・ファイター

 ATK/2800→3700

 

「攻撃力3700……!? クソッ、厄介なモンスターを呼び出してくれる。だが……!」

「まだですっ! ここで今伏せたカード、Sp-ファイナル・アタック*3を発動! ギガンテック・ファイターの攻撃力は、更に倍にっ!」

 

 ギガンテック・ファイター

 ATK/3700→7400

 

「こ、攻撃力7400だとぉ!?」

「ほぅ……やるではないか」

 

 強烈なオーラを纏い、攻撃力がえらい事になったギガンテック・ファイター。それを見た牛尾さんが思わず目を見開き、観戦していたジャックも感心の呟きを漏らしていた。

 

「バトルです! 私はギガンテック・ファイターで、ゴヨウ・チェイサーに攻撃っ! ガイアの鉄槌!」

 

 攻撃を宣言されたゴヨウ・チェイサーが「なんで俺が!?」といった感じで跳び上がって驚き、その両隣にいたエアーマンとヘル・ツイン・コップが助かったとばかりにほっと一息を吐いていた。いや、所業を考えたら当然だよなあ?

 

 ギガンテック・ファイター ATK/7400 VS ゴヨウ・チェイサー ATK/1900

 

 何度も何度も自分の仲間をゴヨウしてくれたゴヨウ・チェイサーへの恨みを晴らすべく、不屈の巨人が土煙を上げながら猛烈な勢いで大地を駆け──その巨大な拳を振るい、ゴヨウ・チェイサーを粉砕。

 

「そ、そんな馬鹿なぁ~!?」

 

 牛尾:LP4000-5500=0

 

 一撃で牛尾さんのライフを全損させ、このデュエルの決着をつけたのだった。

 

「やりましたぁ~!! やりましたよユージさぁんっ!!」

 

 Dホイールから降りて、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら喜ぶゆま。そんなゆまを見て、俺たち観戦組も思わず笑顔に。

 ゆまァ……お前ホント可愛いなァ……。今回のテーマは“祝福”だ!

*1
SPCが4個以上の時発動可能

*2
SPCが3個以上の時発動可能

*3
SPCが8個以上の時発動可能




ツァンはこの後普通に勝ちました
主人公の抱える心の闇が判明した回。プリンを与えられ、そして奪われる。その瞬間にこそ人は最も美しい顔をする……
それよりWRGPのメンバーマジどうしよう……深刻な男子不足……
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