ネオドミノのテッペンに立ちたくて   作:ジェム足りない

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謎のスーパーブルーノちゃん

 俺が脳に超古代生物の墓場を植え付けられてからしばらくの日時が経過して、レインもクラスに馴染んで──というかクラスメイト側がレインに慣れて──きた、とある日のデュエルアカデミア。

 

「はい、それじゃあ本日の授業はここまで! ちゃんと復習しとくのよ!」

「よっしゃー! 飯だ飯だ飯だ!」

「場所取り頼んだぞー!」

「ねぇ、今日は何食べる〜?」

 

 先生が授業の終わりを告げると共に、急に騒がしくなる教室の中。カフェテリアに飯を食いに行こうと、俺が席から立ったそのタイミングで。

 

「ん、レインか。何か用でも?」

 

 いつも通りの無表情でスタスタとレインが近寄ってきたかと思えば、そのまま俺の席にコトリとハンカチで包まれた弁当箱らしきものを置いて一言告げた。

 

「これ……あげる」

 

 レインが口を開くと同時に、急に教室が静まり返り……そして次の瞬間。

 

「うわあああああ! 手作り弁当だとおおお!?」

「ええい、アイツばっかり何故こうも……!?」

「言うてアイツ、実技も座学もバッチリな出来杉君だし……」

「凄いわレインさん、あなたは勇者よ……!」

 

 教室が爆発した。

 

「……騒がしい」

「え、ええと……『あげる』って、これ、プレゼント……って事でいいのか?」

 

 周囲から注がれる、大量の好奇の目線。それらをあえて無視しながら、俺はしどろもどろになりながらレインへと問いを返すのだが。

 

「……それ以外に、何かある?」

 

 何当たり前の事を、という感じの返事を返されてしまい……教室がより一層騒がしくなる。女子たちはキャーキャーと歓声を、男子たちは罵声やブーイングを、という感じで実に騒がしい。あと、なんかツァンがめっちゃ睨んできてて怖い。マジギレですわよ。

 そしてこの騒動を引き起こした元凶であるレインは、そんな盛り上がる周囲を見て眉を顰めると、ゆっくりと口を開き──。

 

「この前……デュエルに付き合ってくれた、お礼」

 

「はい解散! かいさーん! しゅーりょー!」

「あーつまんね。お前にはガッカリだよユージ……」

「面白いものが見られると思ったのにな~」

 

 何かを期待するかのような教室内の空気は一瞬で霧散。期待外れだと好き勝手な事をのたまりながら、我が愉快なクラスメイトたちは──ある者は弁当箱を取り出し、ある者はカフェテリアに移動して──次々と昼食の準備に取り掛かるのだった。

 

「……?」

 

 ああ、首を傾げてるレインは純粋で可愛いね。そのままの君でいてくれよな。

 

 

 

 

 

 

「レイン恵……ボク、あの電波娘苦手なのよね」

 

 教室から場所を移して、カフェテリアのテラス席。俺はレインから貰った弁当を口に運びつつ、サンドイッチ片手に愚痴をぼやくツァンの相手をしていた。

 それにしても、この出汁巻き卵は美味いな。しっとり具合といい味付けといい、実に俺の好みド真ん中だ。やるじゃんレイン。

 

「あはは……ツァンさんってば……」

「ふーん? 確かに変わってはいるけど、別に害のあるタイプじゃないと思うんだけどなあ」

 

 苦笑しながらも愚痴を止めないゆまの様子から察するに、なんか一悶着あったらしい。でも“あの”レインがツァンを相手に揉め事? なんかイメージ湧いてこねえなあ。

 

「あの子さぁ、昨日ボクに対して、いきなり『相川雄二との交友は、控えた方がいい』なーんて言ってきたのよ? 失礼しちゃうわよね」

「ほーん、そんな事がねぇ……」

「なんでも『彼とあなたでは、住む世界が違う』ですって。意味がわからないわよ。別にアンタって高貴な家の出でもなんでもないでしょ? しかもそれだけじゃなくて──」

 

 あっ……。本来の歴史ならいない異物って事ですねわかります。すまんツァン。レインの指摘、実はバリバリ正しかったりするんだわ。

 でも待てよ? 実はイリアステル側で、裏事情を割と知ってるレインが縁切りを推奨するって事はつまり……もうすぐ始末するから関わらない方がいいよ、ってコト!? やはり俺ちゃん大ピンチ!?

 いやいや、もしそうならこうやって弁当をプレゼントしてくれるワケ──そういえばイタリアのマフィアは暗殺前に贈り物をするって漫画で読んだ覚えが……でもあのレインがそんなムダ知識を……?

 

「──ってボクが言い返したらね? 『……私には、ある。私は、彼と同じ世界を生きているから』ですって。あの子の目には何が見えてんのかしらね。電波にも程が……ってアンタちゃんと聞いてる!?」

 

 あ、やっべ。考え事しててマジで聞き流してた。いやだって、命の危機かも知れないんだし……ねえ? 許してヒヤシンス。

 

「ああ、悪い悪い。レインの今までの行動を思い返しててさ。確かに何もないとこに話しかけてたりする不思議ちゃんだけど、自分の世界に他人を巻き込むような子には──」

「へぇ、アンタはあの子の肩を持つんだ……」

 

 それっぽいこと言って誤魔化そうとしたら地雷踏んだぁ! ツァンが据わった目で睨んできてる! コワイ! 先生、この状況からでも入れる保険ってあるんですか!?

 

「あの子は相変わらずアンタの事をじーっと見てるし……アンタもアンタで、事あるごとにあの子の方をチラチラ盗み見ては、目が合っては嬉し恥ずかしで目を逸らす……」

「う゛……」

 

 いやしゃーないやん? サーキットの件で警告されて以降、レインの目線が気になって気になって仕方がないんよ。んで「まだ監視してるかな?」とチラ見しては「うわ、やっぱ監視されてる」って感じで目を逸らしてるって感じで……。ツァンにサーキットの事とか言えるわけがないので、黙っているしかないんだけど。

 でもまあ、美少女と目と目がガッツリ合って気恥ずかしいって気持ちもあるのは否定しないが。じゃあツァンの指摘は正解じゃねえかって? ……その通りだガリアード。お前の言ってることはすべて正しい。

 

「もういいわ、知らない! デュエルのお礼にってちょっとお弁当貰ったくらいで鼻の下伸ばして!」

 

 机をバンと叩いてツァンはどこかへ行ってしまい、その音と怒声に周囲が驚いた目で俺たちの方を見たが……去って行ったのがツァンである事を確認したとたん「なんだツァンディレ(いつもの)か」と興味を失って目線を外す。

 ……まあ、割とよくある事だからね。俺が対応ミスった結果、ツァンがキレてどっか行っちゃうの。んでもって、5分くらいしたら「なんでカッとなっちゃったかなぁ……」と自己嫌悪に陥って落ち込んでるのもいつもの事だ。熱くなりやすいだけで、根は超いい子ちゃんだからね。俺と違って。

 

「ユージさん、今のは“ない”ですよぉ? 女の子が悩みを吐き出している時に……」

「うん、反省してます……」

 

 そして俺の対応はゆまから見ても落第点だったらしく、呆れの目で見られてしまった。……もっとゆっくり食いたかったんだがしゃーない。ちゃっちゃと残りを食って、ツァンを追いかけねーとな。

 

 このあと、案の定自己嫌悪モードになってたツァンに平謝りしたら、「今回だけなんだからね!」といつものツンデレムーブをかましながら許してくれた。

 プリメラとアトリィが『面倒だから放っておけばいいのに』『あんなのよりレインって子と仲良くした方がいいよ』と左右でうるさかったけど。

 まあ俺としても、イリアステルとの窓口になってくれるかもしれない&個人的に好きなキャラだったレインと仲良くってのには同意だが……だからといって、ツァンと縁を切る必要なんてないだろうに。相変わらず、うちの子たちはツァンへの当たりが強いんだから。

 

 

 

 

 

 

 あれから、なんやかんやでレインの弁当が純粋な善意であることが判明したり、あと腕前を称賛したら気を良くしてくれたのか、レインが不定期で弁当を作ってくれることになったりして……なんやかんやで迎えた休日。

 

「ウリィーッス! 俺ちゃん参上! 遊星いるー?」

「しーっ……!」

 

 遊星のガレージに遊びに行ってみれば、クロウから「静かにしろ」というジェスチャーで出迎えられてしまった。不思議に思って部屋の奥を見てみれば、何やらめっちゃ嬉しそうな顔で謎の男と話し込んでいる遊星の姿が……!

 おお、あれはブルーノ! みんな大好きブルーノちゃんじゃないか! もちろん俺も大好きだぜブルーノちゃん! 大好きすぎててもう地球が爆発しそう……ビッグバン!

 それにしても、これで遊星たちもついにフルメンバーになったんだなぁ。俺も感慨深いぜ……(後方師匠面)

 

「なあなあ、あれ誰?」

 

 まあそれはそれとして、一応クロウに質問入れとかないとね。だって“初対面”ですし。

 

「遊星が雇ったスーパーメカニックなんだって! カッコいいよねー!」

 

 なんか気が抜けてダラーンとしているクロウに代わって、龍亞が答えてくれた。つまんなさそーな顔してる他のメンバーと違って、一人だけ目が輝いてるわ。

 

「ふーん。メカニックか……優しそうな人だし、頼んだら俺のDホイールも改造してくれるかな?」

「龍亞と同じこと言ってる……」

 

 おっと、龍可から呆れの目を向けられてしまった。というかやっぱ発想はみんな同じか。

 それにしても遊星ってば、俺が来たことに全く気付いてないな。せっかくブルーノちゃんがやってきてくれたんだから、ここは1つデュエルでもして、友好を深めたいと思ったんだが……。

 

「せっかく来てくれたとこ悪いけどよ、遊星ずーっとあんな調子でな。今日は……というか、しばらくの間はかまってくれないと思うぜ?」

「遊星め、あんな怪しい男を簡単に信用しおって……!」

 

 だろうね。何かデュエル挑める雰囲気じゃねえわ。

 相変わらずやる気なさげなクロウが、俺たちへ言外に帰宅を促し……そしてジャックは不機嫌さを隠そうともせず、ブルーノに首ったけな遊星への不満を口にする。

 

「クロウの言うとおりみたいだな。遊星、俺たちに全く気付いてねえ」

「そうね、私は帰るわ。ここにいてもお邪魔みたいですもの……!」

「魔法発動、おジャマジック!」

「は?」

 

 嫉妬プンプン状態のアキさんを茶化したらガチ睨みされた……黒薔薇の魔女怖いよぉ……。クロウや龍亞どころか、ジャックまで冷や汗流して引いてるし……。

 

「誠にごめんなし! 誠にごめんなし!」

「ハァ……」

 

 即座に連続土下座モードに入った俺を見て、アキさんはため息を吐くと回れ右。そのまま階段を降りて部屋から出て行き……それと同時に、俺たちもほっと一息。

 

「お前ってなかなか怖いもの知らずだよな……」

「へっへっへ、そう褒められると照れるぜ」

「褒めてねーよバカちん。さ、お前らも帰った帰った。まあ……遊星も来週ごろには元に戻ってるんじゃねーかな?」

「はーい。じゃ、またねクロウ」

「お邪魔しましたー」

 

 改めてクロウに帰宅を促され、龍亞と龍可は素直な返事を返して部屋から出て行き……。

 

「あ、そういやジャックにお土産。新製品だってさ」

 

 俺は帰る前にと、コンビニのレジ袋をジャックに向かって放り投げた。ジャックは放物線を描いて飛んできたレジ袋をキャッチすると、中身を確認し……。

 

「……激辛☆外道麻婆ヌードルか、ありがたくもらっておこう。お前も気をつけて帰れよ」

 

 うむ、とひとつ頷くと礼の言葉を述べた。

 カップ麺をお土産として持って行くと、ジャックは露骨に態度が甘くなる。これ豆な。……とはいえ、遊星から相手されない現状が堪えるのか、いつもより大人しい態度だが。普段はもっと偉そうな返事だもん。

 

「確かこの後は……」

 

 そうして遊星たちのガレージを後にした俺は、ハイウェイにてDホイールを走らせながら、今後起きる騒動について考えを巡らせていた。

 

「イェーガー捕獲作戦、だっけな?」

 

 この後は遊星とブルーノが徹夜で作ったプログラムをイェーガーが盗み出し、遊星たちはそれを追跡しているうちにイリアステルの秘密工場に到達。侵入したところをプラシドに発見され、ガードロボによる足止め&工場爆破のコンボでピンチ……と言う流れだ。

 俺が頃合いを見て「バックアップ取っとけよー」的な事を言えば防げる騒動だが……この騒動って色々と連鎖するから、防いだら逆にまずいんだよな。でも万が一にでも遊星に何かがあったら困る。という訳で……。

 

「アトリィ、頼めるか?」

 

 またアトリィをこっそり派遣して、ヤバそうなら独自判断で助けてもらうって形式でええか。

 そう判断した俺がアトリィに声をかけると、霊体化したアトリィが即座に現れ、二つ返事で引き受けてくれた。

 

「悪いな、何度も頼っちまって」

 

 なんかここ最近、アトリィに頼りまくりな気がするが……でも飛行能力と物理的破壊力を併せ持つ、ガーゴイルⅡがあまりにも優秀すぎてねえ。

 ん? なら今度、実体化して海馬ランドに行きたい? いいともー!

 

 後日、アトリィから『こっちの仕業だと悟られないよう、さりげなく脱出の支援をしてきたよ!』という報告を受けた俺は、ほっと胸を撫でおろし──無事に任務を果たしてくれたアトリィを、いっぱいよしよしするのだった。

 

 

 

 

 

 

「ういーっす! 今度こそ遊びにきたぜ遊星ー!」

「ユージか、よく来たな」

 

 そして週末。クロウの助言通り1週間の間を空けてガレージを再訪した俺を、普段のテンションに戻った遊星が──いつも通りにDホイールを弄りながら──出迎えの声をかけてくれた。午前中ということもあってか、龍亞龍可とアキさんはまだ来ていないようだ。甘寧一番乗り!

 

「クロウから聞いたんだが、先週も来てくれていたらしいな……。気付かなくて悪かった」

「いやまあ、勝手に押しかけたのコッチだし。あとなんか盛り上がってたから、邪魔しないようコッソリ帰ったんだ。だから気付かなくても当然だよ」

「そう言ってくれると助かる」

「あれ、お客さんかい遊星……って君は確か……」

 

 そうして俺と遊星がとりとめのない話をしているところに、青髪の穏やかそうな顔付きの青年がドアを開けて現れた。言うまでもなくブルーノだ。

 そしてブルーノの反応から察するに、既に遊星から俺のことは聞いているようだ。まあ俺も事前知識とかは抜きにして、クロウからブルーノの事情について聞いているからおあいこだが。

 

「一応、初めまして……でいいのかなぁ?」

「あはは……先週はごめんね? 僕はブルーノ。しばらくの間、ここで遊星に面倒を見てもらう事になってね。君の事は、遊星から聞いているよ」

 

 ブルーノは階段を降りながら謝罪&簡単な自己紹介をすると、そのまま俺に歩み寄ってきて──左手を差し出しかけた後、あわてて引っ込めて──右手を差し出してきた。

 ふぅん、相手を気遣うその態度……実に好印象だぞ。胸キュンポイント100点追加だ!

 

「よろしくね、ユージ」

「こちらこそよろしくお願いするよ、ブルーノ!」

「うん!」

 

 俺もブルーノと同様に手を差し出して、ガッシリと手を組んだ後、軽く上下に動かす。そうして挨拶を終えたのならば、あとはもちろん──。

 

「じゃあお互いのことをよく知るためにも、まずはデュエルといこうじゃないか!」

 

 当然、デュエルだ。遊星からブルーノがデュエリストであること、そしてデッキを持っていることは確認済みだしな。当然、アンチノミーとしてのTGデッキではなく、偽装用のデッキだろうが……それでもまあ、夢にまで見たブルーノちゃんとのデュエルだ。あー、ドキがムネムネしてきた。俺の心臓の鼓動でネオドミノが滅んだらどうしよう。

 

「ははは、遊星の言う通りの子だね……いいよ、デュエルしようか。でもここだと危ないから、外でやろうね。遊星、予備のデュエルディスク借りるよ」

「ああ、いいぞ」

 

 俺からのデュエルの申し込みを受けたブルーノは、苦笑しながら了承の意を告げてくれた。……なんか引っかかる言い方だが、奥で遊星がしたり顔で頷いているのを見る限り、俺の選択は間違っていないだろう。

 そうしてガレージの外にある噴水広場に出た俺とブルーノは、互いに距離を空けて向き合うと、同時にデュエルディスクを起動──したところで、向かいのカフェで優雅にコーヒータイム中のジャックと目が合った。ガレージにいないと思ったら、あんなとこにいたんだ。まあ、そんな事はさておき……。

 

「デュエル!」

「デュエル!」

 

 人もまばらな噴水広場に、俺とブルーノのデュエル開始の宣言が響き渡った。

 

「先攻は俺だな、俺のターン! む……」

 

 デュエルディスクの先攻後攻決めに従ってカードをドローしてみれば、引いたのはツァンとのタッグデュエルで手に入れた絆のカード。

 ほとんどツァンがシエンで無双していて、俺はそこまで働いていなかったような覚えもあるが……まあ、とりあえず絆のカードということでいいだろう。ちなみにデッキから抜くとツァンの機嫌がマリアナ海溝なので、デッキから抜けない呪いのカードでもある。強いし面白いし、何よりツァンとの思い出のカードだから抜かないけどさ。

 

「自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。太陽風帆船(ソーラー・ウィンドジャマー)を特殊召喚! さらにクレボンスを通常召喚!」

 

 太陽風帆船

 ATK/800 星5

 

 クレボンス

 ATK/1200 星2 チューナー

 

 俺のフィールドにSFチックな宇宙船と、緑色のキューブでジャグリングをする道化師、2体のモンスターが連続で現れる。ちなみにこのクレボンスはおじさんから借りパクしたカードではなく、自力でパックから引き当てたカードだ。

 

「いきなりシンクロ召喚とは豪勢だね!」

「俺はレベル5の太陽風帆船に、レベル2のクレボンスをチューニング! シンクロ召喚──来い、月朧龍ヴァグナワ!」

 

 月朧龍ヴァグナワ

 ATK/1500 星7

 

 シンクロ召喚の演出である光が弾けると、周囲が薄暗くなると同時に月が輝き──その月を背景として、長大な体躯を持つ蒼い竜が姿を現した。

 ヴァグナワが完全に姿を現すと同時に周囲の景色は元に戻ってしまったが、なかなか豪華な演出だ。カフェのテラス席から俺たちのデュエルを観戦しているジャックもご満悦だし。

 

「月朧龍ヴァグナワはシンクロ召喚に成功すると、次のターン終了時まで素材とした非チューナーのレベルの300倍攻撃力がアップし、さらにチューナーのレベルの300倍のダメージを相手に与える!」

「って事はいきなり600のダメージか……うわっ!」

 

 俺がヴァグナワの効果を牛尾さん方式で説明すると同時に、ヴァグナワが咆哮を上げる。するとその体を薄い光のオーラが覆っていき……それと同時にブルーノに向かって突風が吹き、そのライフを僅かばかり削り取っていく。

 

 月朧龍ヴァグナワ

 ATK/1500→3000

 

 ブルーノ:LP4000-600=3400

 

「先攻1ターン目からダメージを与えてきた上に、攻撃力3000のモンスターを出してくるとは……やるね、ユージ」

「へへ、猫パンチだけどな。俺はカードを1枚伏せて、これでターンエンドだ」

 

 にこやかな笑みを浮かべつつこちらを褒めてくれるブルーノに、思わず照れ笑いが浮かんでくる。いやあ、ブルーノは褒め上手だねえ。

 

 雄二:LP4000 伏せカード:1枚 手札:3枚

 

「僕のターン、ドロー! うーん、これは……」

 

 デッキからカードをドローしたブルーノは、手札を見て数秒ほど考えるそぶりを見せた後に、1枚のカードをデュエルディスクへと読み込ませた。

 

「よし。僕はまず永続魔法、補給部隊を発動だ。これで僕は1ターンに1度だけ、自分のモンスターが破壊されるとカードを1枚ドローできる」

「地味に厄介なカードを……」

 

 ブルーノのフィールドに表側で置かれたカードを見て、俺は軽く眉をひそめる。放っておくと確実にアドを持って行くカードだからさっさと破壊したいが、生憎と今の手札に魔法・罠カードを破壊できるカードは無い。

 

「そして僕はグリーン・ガジェットを召喚! グリーン・ガジェットは召喚に成功したとき、デッキからレッド・ガジェットを手札に加えられるんだ」

 

 グリーン・ガジェット

 ATK/1400 星4

 

 続けてブルーノが呼び出したのは緑色の歯車を模したモンスター、グリーン・ガジェット。こいつを呼び出してきたってことは、ブルーノのデッキはやはりタッグフォースと一緒の……。

 

「僕はレッド・ガジェットを手札に加えて……手札のマシンナーズ・フォートレスの効果を発動。このカードとレッド・ガジェットを墓地に捨てることで、墓地から今捨てたマシンナーズ・フォートレスを特殊召喚だ!」

 

 マシンナーズ・フォートレス

 ATK/2500 星7

 

 地面と平行に空いた光の穴から、水色ボディの戦車型モンスターが飛び出してきて、ブルーノを守るよう立ちはだかる。やっぱマシンガジェか。安くて強いって事で、かつてのOCG次元ではよくお世話になったなあ。懐かしい。

 ところで、ここでリミ解を使われると俺はいきなり敗北するんだが……引かれてねえよな?

 

「うわっ、いきなり来たかぁ……」

「ふふ、その様子じゃこのカードの効果は知っているみたいだね。なら僕はこのままバトルフェイズに移行! マシンナーズ・フォートレスで月朧龍ヴァグナワを攻撃だ!」

 

 マシンナーズ・フォートレス ATK/2500 VS 月朧龍ヴァグナワ ATK/3000

 

 ブルーノが攻撃を宣言すると、フォートレスはヴァグナワに向かって突進しつつ、左肩のエネルギーキャノンを発射。しかしその砲撃はヴァグナワにあっさりと回避され……そのままお返しとばかりにヴァグナワの吐いたブレスを食らい、爆炎に包まれる。

 この演出を見る限り、どうやらリミ解は握ってなかったっぽいな。助かったぜ。

 

 ブルーノ:LP3400-500=2900

 

「くっ、バトルに敗北したマシンナーズ・フォートレスは破壊される……けれどこの瞬間、マシンナーズ・フォートレスの効果が発動! このカードはバトルで破壊されたとき、相手のカードを1枚道連れに破壊する! 僕は月朧龍ヴァグナワを破壊だ!」

 

 しかし爆炎の中からボロボロになったマシンナーズ・フォートレスが姿を現し、そのままヴァグナワに向けて捨て身の突撃を慣行。火の玉と化したフォートレスはヴァグナワに激突すると同時に大爆発を起こし、蒼き竜を道連れにすることに成功した。

 

「そして補給部隊の効果で1枚カードをドロー。よし、これでユージのフィールドはがら空き……僕はグリーン・ガジェットでダイレクトアタック!」

「ぐおっ!?」

 

 俺は飛び掛かってきたグリーン・ガジェットのパンチを食らい、その衝撃に一歩後ずさる。割と手痛いダメージを食らってしまったな。

 

 雄二:LP4000-1400=2600

 

「僕は墓地のマシンナーズ・フォートレスの効果を発動。手札からレベル8の機械族モンスター、マシンナーズ・メガフォームを墓地に捨ててこのカードを特殊召喚するよ」

 

 マシンナーズ・フォートレス

 ATK/2500 星7

 

 初手に星8を握っていたのか、それとも今引き当てたのか。なんにせよブルーノのフィールドに、さっき戦闘破壊したばかりの戦車が新品になって戻ってきた。

 

「さらにカードを2枚伏せて、僕はこれでターンエンド」

 

 ブルーノ:LP2900 伏せカード:2枚 手札:1枚

 

「よし、俺のターンだ! ドロー!」

 

 あ、大嵐引いたわ。初手に引いて逆襲用に温存していたトゥルーデアもいるし、これは勝ったな。

 

「魔法カード、大嵐! フィールドの魔法・罠カードを全て破壊──」

「させないよ! 僕はカウンター罠、大革命返しを発動! カードを2枚以上破壊する効果を無効にして、そのカードを除外する!」

 

 意気揚々と大嵐を発動したはいいものの、それはブルーノが伏せていた罠カードの効果によってあっさりと止められてしまった。

 うーん、今のは完全に読まれてたな。記憶を失ってはいても、流石はイリアステル滅四星の一角だ。高い実力の片鱗が伺えるぜ……。

 

「……補給部隊は破壊しておきたかったんだけどな。まあ仕方ない、なら俺は従騎士トゥルーデアを通常召喚だ!」

 

 従騎士トゥルーデア

 ATK/1000 星4

 

 俺のフィールドに現れたトゥルーデアは笑顔でイラスト通りのポーズを取ると、全身から炎を吹き出しつつ、ドヤ顔で右腕を天に掲げる。

 

「トゥルーデアの効果発動! トゥルーデア自身とデッキのセンチュリオンを自分の魔法&罠ゾーンに永続罠扱いで置くことができる! 俺はデッキから重騎士プリメラを永続罠扱いで呼び出すぜ!」

 

 するとトゥルーデアが大量に吹き出した炎をゲートとして、半透明のプリメラが俺の魔法&罠ゾーンに姿を現し……力を大量に消耗したトゥルーデアもまた半透明となり、魔法&罠ゾーンに引っ込んでいく。お疲れ様、トゥルーデア。

 

「永続罠扱いのセンチュリオンは、お互いのメインフェイズに自分自身を特殊召喚できる。俺はこの効果を使い、プリメラを特殊召喚だ!」

 

 重騎士プリメラ

 ATK/1600 星4 チューナー

 

 そうしてトゥルーデアと入れ違いに現れたプリメラは、いつも通りに槍を掲げて自身の効果を発動。それと同時にデュエルディスクのサーチ機能が起動して、1枚のカードが排出される。そのカードとは勿論……。

 

「プリメラが特殊召喚に成功したことで、俺はデッキからフィールド魔法、スタンドアップ・センチュリオン!を手札に加え……そのまま発動!」

 

 俺がデュエルディスクのフィールド魔法スロットにカードをセットすると、見えない力場がデュエルフィールド全体に一気に広がった。

 

「手札を1枚捨て、スタンドアップ・センチュリオン!の効果を発動。デッキから重騎兵エメトⅥを永続罠扱いで魔法&罠ゾーンに呼び出し──重騎兵エメトⅥを自身の効果で特殊召喚だ!」

 

 重騎兵エメトⅥ

 ATK/2000 星8

 

「す、凄い……従騎士トゥルーデアの召喚から、モンスターと魔法カードの効果が連鎖して途切れない。遊星から話は聞いていたけど、これが絆の力か……」

 

 センチュリオンの基本展開、その一連の流れを見たブルーノが感心の声を上げてくれるが……さすがにそんな純粋に感動されると心が痛むぜ……。クロウみたいに「なんか胡散くせえな!」と素直に言ってくれれば、こっちも開き直れて気が楽なんだけどね。

  まあこっちの世界にも──アキさんのグローアップ・バルブ*1やクロウのBF-精鋭のゼピュロス*2のような──強力なカードが普通に存在するせいなのか、俺のセンチュリオン組を見ても「やるなあ……」的な反応を返して来る人が多いんだが。

 

「行くぜブルーノ! 俺はレベル8の重騎兵エメトⅥに、レベル4の重騎士プリメラをチューニング! 頂点を目指し駆ける鋼の騎士よ、絆の力で起動せよ!」

 

 プリメラはエメトⅥに飛び乗ると、そのまま前方へ向かって4つの光輪を放ち、ブースターを吹かして光輪が連なるトンネルの中へ突っ込んでいく。すると眩いばかりの光が弾け──。

 

「シンクロ召喚──来てくれ、騎士皇レガーティア!」

 

 騎士皇レガーティア

 ATK/3500 星12

 

 光の中から騎士型巨大ロボット、レガーティアが姿を現し、機体の各所から魔力炎を吹き出しつつポーズを決める。

 

「これがレベル12のハイレベルシンクロか。直接見ると凄いプレッシャーだねぇ」

 

 いや、そんなにこやかな表情で“凄いプレッシャー”だとか言われましても。おっとり風に見せかけて胆力あるよねブルーノちゃん。まあ記憶喪失前のことを考えれば当然なんだが。胸キュンポイント100点追加!

 

「レガーティアが特殊召喚に成功したことで、俺はデッキからカードを1枚ドロー。そしてその後、相手フィールドで最も攻撃力が高いモンスター、マシンナーズ・フォートレスを破壊できる!」

「マシンナーズ・フォートレスは相手モンスターの効果対象に選択された時に発動するカウンター効果がある。けれど騎士皇レガーティアの効果は……」

「そう、対象を選択するタイプじゃない。なのでマシンナーズ・フォートレスの効果も不発……というわけでカレッジ・ブラスター!」

 

 カードをドローした俺は、ブルーノが困り顔でした説明を引き継ぐと、そのままレガーティアの効果名を叫ぶ。俺の言葉を聞いたレガーティアは、待ってましたとばかりに腰のビットを分離・合体して巨大ビットを形成すると、そこから極太のビームを放ちマシンナーズ・フォートレスを粉砕した。

 

「でもこの瞬間、補給部隊と墓地に存在するマシンナーズ・メガフォームの効果が発動するよ! まず補給部隊の効果によって、僕はデッキからカードを1枚ドロー!」

 

 これで合計2枚ドローか……もうカード発動の元は取られてしまったな。せっかくの大嵐を止められたのが地味に効いてきた。

 

「そして今破壊されたマシンナーズ・フォートレスをゲームから除外することで、墓地からマシンナーズ・メガフォームを特殊召喚だ!」

 

 マシンナーズ・メガフォーム

 DEF/1500

 

 レガーティアのビームによって粉砕されたマシンナーズ・フォートレスが、同陣営に所属するギアフレームとピースキーパーの2体と合体した強化フォームになってブルーノのフィールドへと帰還する。さっきから墓地とフィールドを行ったり来たりで働き者だな。

 

「なら俺はレガーティアでマシンナーズ・メガフォームを攻撃だ!」

「ちぇー、やっぱり狙ってくるよね……」

 

 そしてバトルフェイズに移行した俺がメガフォームへの攻撃を宣言すると、ブルーノは残念そうな声と表情で反応を返してくる。

 確かにブルーノのフィールドには攻撃表示のグリーン・ガジェットがいるので、レガーティアでコイツを攻撃すれば、2100の大ダメージを与えてブルーノを一気に追い込める。でもメガフォームは放っておくと、マシンナーズの切り札であるマシンナーズ・カーネルを呼び出すからな……ここで戦闘破壊しておかないと不味いだろう。

 

 騎士皇レガーティア ATK/3500 VS マシンナーズ・メガフォーム DEF/1500

 

 レガーティアは肩当てのように浮遊するシールドを念力で構えると、その中心部から魔力の槍を形成してドリルのように高速回転させる。そして防御態勢を取るマシンナーズ・メガフォームへと向かってブースターを吹かして突撃し──ドリルランスによるランスチャージを叩き込んだ。マシンナーズ・メガフォーム、玉砕!

 このままグリーン・ガジェットも破壊して大喝采といきたいところだが……生憎と、俺のフィールドに攻撃権を残している仲間はいない。なので。

 

「カードを1枚伏せ……このエンドフェイズにレガーティアの効果が発動。墓地のプリメラを魔法&罠ゾーンに復帰させる。俺はこれでターンエンドだ」

 

 雄二:LP2600 伏せカード:1枚 手札:1枚

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 このドローでブルーノの手札は3枚か。伏せカードもまだ1枚残ってるし、さてどう動いて来ることやら。

 

「僕はイエロー・ガジェットを通常召喚。イエローガジェットの召喚に成功したことで、僕はデッキからグリーン・ガジェットを手札に加えるよ」

 

 イエロー・ガジェット

 ATK/1200 星4

 

 ブルーノのフィールドに、今度は黄色い歯車を模したモンスターが現れる。またフォートレスでも握ってるのかね?

 

「そして自分フィールドに機械族モンスターが2体いることで、僕はさらに手札から魔法カード、アイアンドローを発動。デッキからカードを2枚ドロー!*3

 

 手札を補充したブルーノは引いたカードを見て頷くと、意外なモンスターを呼び出してきた。

 

「僕はフィールドのイエロー・ガジェットと手札のグリーン・ガジェットを墓地に送ることで、手札から起動提督デストロイリボルバーを特殊召喚だ!」

 

 起動提督デストロイリボルバー

 ATK/2500 星8

 

 噴水広場の大地が割れ、その中からズゴゴゴとせり出してくるのは古の罠モンスター、機動砦ストロング・ホールド……をアップグレードしたような感じのモンスターだ。やべえな、コイツは初めて見るわ。ブルーノちゃん、こんなカードをデッキに仕込んでいたのか。

 

「おお、デケェ……!」

「ふふ、驚いてくれてありがとう。僕のお気に入りのモンスターさ」

 

 そうして地中から現れたデストロイリボルバーは盛大に蒸気を噴出しながら、両手を上げて威嚇のポーズを決めるのだが……このデストロイリボルバー、実にデカい。俺のレガーティアに負けず劣らずの大きさであり、噴水広場が一気に巨大ロボの戦場になってしまった。

 ちらほら歩いていた人たちが感心の目をこちらに向け、ちびっ子が「でけえすげえ」とはしゃいでいるぜ。

 

「起動提督デストロイリボルバーの効果発動。1ターンに1度、フィールドのカードを1枚破壊できる。僕はユージが前のターンに伏せたカードを破壊する!」

「ち、ミラフォが破壊されたか……」

 

 デストロイリボルバーが巨大な手を俺の伏せカードに向けると、そのまま伏せていたミラーフォースのカードが砕け散ってしまう。残念ながら、今日のミラフォ先生は不調なようだ。

 

「そして永続罠、機動砲塁パワー・ホールドを発動! このカードは発動後、モンスターとして特殊召喚される。そして、手札及びデッキのガジェットを装備カードとして装備するんだ。僕はデッキのゴールド・ガジェットを装備!」

 

 機動砲塁パワー・ホールド

 ATK/0 星4

 

 ブルーノが発動させたカードから、右肩に巨大な砲を装備した鈍色のロボットが現れ……その胴体部分の穴にゴールド・ガジェットが飛び込んでガッチリと嵌る。

 名前といい見た目といい、ストロング・ホールドの亜種って感じのカードなんだろうな。

 

「そして機動砲塁パワー・ホールドの攻撃力は、装備したガジェットの攻撃力の倍の数値となる!」

 

 機動砲塁パワー・ホールド

 ATK/0→3400

 

「いきなり攻撃力3400だと!?」

 

 なんか予想以上に強いぞこの罠モンスター。すっげえ雑に3000ラインを超えてきやがった。

 

「でも俺のレガーティアの方が攻撃力は上だ! それにプリメラは永続罠扱いのとき、レベル5以上のセンチュリオンに効果破壊への耐性を付与するからな! そう簡単には超えられないだろう!」

「ふふ、それはどうかな? 僕は手札から魔法カード、リミッター解除を発動! 機械族モンスターの攻撃力を2倍にするよ!」

 

 グリーン・ガジェット

 ATK/1400→2800

 

 起動提督デストロイリボルバー

 ATK/2500→5000

 

 機動砲塁パワー・ホールド

 ATK/3400→6800

 

 ブルーノがリミッター解除のカードを発動させると、ブルーノのモンスターたちが一斉にバチバチと火花を散らしつつその攻撃力を跳ね上げさせた。

 雑に攻撃力を倍加してレガーティアを超えてきやがったか! くそ、これだから機械族は!

 

「本当ならこういうカードは、ダメージステップに発動するのが正しいんだろうけどね。でも……こっちの方がカッコいいだろう?」

 

 ブルーノは気恥ずかしそうに頭を掻きつつ、少し離れたところで俺たちのデュエルを観戦していた子供たちへとチラリと目を向ける。

 

「うん、わかる。俺もアカデミアで、勝敗も大事だが見栄えも重要だってよく言われるし」

「そうだね、楽しんでこそのデュエルだもんね。それじゃあバトルフェイズ、行くよ?」

「おっと、なら俺はその前に永続罠扱いのプリメラとトゥルーデアの効果を発動! こいつらを守備表示で特殊召喚だ!」

 

 重騎士プリメラ

 DEF/1600 星4 チューナー

 

 従騎士トゥルーデア

 DEF/2000 星4

 

 不敵な笑みを浮かべつつ、プリメラとトゥルーデアの2人が魔法&罠ゾーンから飛び出てきて防御態勢を取る。

 

「プリメラの効果で俺はデッキから竜騎士アトリィを手札に加え……さらに墓地にいる重騎兵エメトⅥの効果を発動! トゥルーデアを魔法&罠ゾーンに戻すことで、墓地から特殊召喚!」

 

 そしてトゥルーデアが魔法&罠ゾーンに引っ込むのと同時に、こちらも大地を割ってエメトⅥが帰還。プリメラが即座に飛び乗って、展開した魔法陣により防御面積の増えた盾を構える。

 

 重騎兵エメトⅥ

 DEF/3000 星8

 

「ちなみにレガーティアは、攻撃力2000以下の仲間をバトルによる破壊から守る効果を持っているからな。つまりこいつらはバトルでは破壊されない!」

「壁となるモンスターを増やしてきたか……でも残念だね。僕の機動砲塁パワー・ホールドは今、キミの騎士皇レガーティアを遥かに超える力を持つ! 僕は機動砲塁パワー・ホールドで騎士皇レガーティアを攻撃!」

 

 パワー・ホールドの攻撃宣言を聞いた子供たちから「巨大ロボは?」みたいな声が聞こえてくるが、それやると勝てないから仕方ないね。

 まあなんにせよ、ブルーノの攻撃命令を受けたパワー・ホールドはその命令を遂行すべく、右肩の大砲をレガーティアに向け。

 

「今だ! 罠カード発動、スノーマン・エフェクト! レガーティアの攻撃力に、プリメラとエメトⅥの攻撃力を加算する! これで攻撃力は逆転だ!」

 

 騎士皇レガーティア

 ATK/3500→7100

 

 攻撃宣言時に発動されたカードの効果により、レガーティアの攻撃力はプリメラとエメトⅥからの魔力供給を受けて跳ね上がった。

 なんで攻撃宣言時に使ったかって? ブルーノと同じだよ、映えだよ映え。バエルの元へ集え!

 

「何だって!?」

 

 再度逆転した攻撃力を見て、ブルーノが驚愕の声を上げるのだが時既に時間切れ。攻撃宣言の処理が終わっている以上、パワー・ホールドの攻撃は今更止まることなく……右肩の大砲から、レガーティア目掛けて高エネルギーの塊が発射され──。

 

 機動砲塁パワー・ホールド ATK/6800 VS 騎士皇レガーティア ATK/7100

 

 普段はビームランスを生やして攻撃に使っている、肩のシールドを構えたレガーティアによってその砲撃はあっさりと防ぎ止められ。反撃として繰り出されたランスチャージを食らって、パワー・ホールドは爆散。ブルーノに反射ダメージが襲い掛かった。

 

 ブルーノ:LP2900-300=2600

 

「くっ……まさか、そんなカードを伏せていただなんて。僕は補給部隊の効果でカードを1枚ドロー! 僕はバトルを終了して、手札から永続魔法、機甲部隊の防衛圏(マシンナーズ・ディフェンスリジョン)を発動する!」

 

 補給部隊の効果でカードをドローしたブルーノは、引いたカードをそのまま発動してきた。

 それにしてもまた知らないカードだな……。まあ名前的に防御寄りの効果なんだろうけど。

 

「そして最後にカードを1枚伏せ……エンドフェイズにリミッター解除の効果を受けたモンスターが破壊される。でも起動提督デストロイリボルバーは、フィールドにガジェットが存在する限り破壊されない」

「なるほどな、デメリットの踏み倒しか」

 

 グリーン・ガジェットが「え、俺だけ破壊されんの?」といった感じでキョロキョロと仲間を見回した後、「ヴォー!?」みたいな野太い声を上げて爆発した。グリーン・ガジェット……いいヤツだったよ……。

 

「そしてグリーン・ガジェットが破壊されたことで、機甲部隊の防衛圏の効果が発動。自分フィールドの機械族が破壊された場合、墓地の機械族を手札に加えることができる。これで本当に僕のターンは終了だ」

 

 ブルーノは墓地から回収したマシンナーズ・メガフォームのカードを律儀にこちらに見せると、ターンを明け渡してきた。

 

 ブルーノ:LP2600 伏せカード:0枚 手札:0枚

 

「俺のターン、ドロー!」

「僕はこの瞬間、罠カード戦線復帰を発動! 墓地のゴールド・ガジェットを守備表示で特殊召喚だ!」

 

 ゴールド・ガジェット

 DEF/800 星4

 

 俺がカードをドローするのと同時に、ブルーノは俺もよく知る万能蘇生罠の戦線復帰を発動してゴールド・ガジェットを墓地から呼び戻してきた。それにしても何故このタイミングで蘇生カードを……?

 

「機甲部隊の防衛圏は僕のフィールドにレベル7以上の機械族モンスターが存在する限り、相手は僕のレベル6以下の機械族モンスターを攻撃対象に選択できず、効果の対象にもできなくなる!」

 

 とか俺が思っていると、ブルーノがその理由を説明してくれた。なるほどな、機甲部隊の防衛圏の効果を活かすためだったのか。正直知らなかったからありがたい。

 

「つまり俺はゴールド・ガジェットを攻撃して、起動提督デストロイリボルバーの耐性を剥がすことが出来ないってワケか」

「うん。君のカードが互いに強固な絆で結ばれているように、僕のカードたちもまた絆で結ばれている……ってコトだね」

 

 ニコニコ笑顔で厄介な布陣を敷いてくれるじゃないか。でもその布陣にも穴はある!

 

「でも甘いぜブルーノ! 俺は手札から速攻魔法、禁じられた聖槍を発動! 起動提督デストロイリボルバーの攻撃力をターン終了時まで800ダウンさせる!」

 

 起動提督デストロイリボルバー

 ATK/2500→1700

 

 天空より飛来した一本の槍がデストロイリボルバーに傷をつけ、その攻撃力を僅かばかり奪っていく。いや800って僅かというほどの数値ではないか。そこそこ大きいわ。

 

「……そうか、起動提督デストロイリボルバーは破壊できなくても、僕にダメージを与えることはできる。キミはその隙を突く気なんだね」

「ご名答だぜ! 俺はさらに墓地のスキル・サクセサーの効果を発動! 墓地からこのカードを除外することで、レガーティアの攻撃力をターン終了時まで800アップ!」

 

 騎士皇レガーティア

 ATK/3500→4300

 

「いつの間に……ってそうか、フィールド魔法の手札コスト!」

「さあ、コイツでフィニッシュだ! 俺はレガーティアで起動提督デストロイリボルバーを攻撃! ヴァリアント・スマッシュ!」

 

 騎士皇レガーティア ATK/4300 VS 起動提督デストロイリボルバー ATK/1700

 

 レガーティアとデストロイリボルバー、2体の巨大ロボットがそれぞれブースターを吹かし、あるいは地を蹴って同時に前へと出る。

 レガーティアは武装モードに切り替えたシールドよりビームランスを展開して、デストロイリボルバーを串刺しにせんとそれを突き出しながら。デストロイリボルバーはその巨大な拳でレガーティアを粉砕せんと、右腕を振りかぶりつつ突進し──2つの巨体は激突。その際に発生した衝撃波が俺とブルーノを襲った。

 

「うおっ!?」

「くっ……!」

 

 エース同士の激突ということで、ソリッドビジョン先生も張り切っておられるわい。予想外の衝撃にたたらを踏んでしまった。でも子供たちが喜んでいるからまあえやろ。

 そうして崩れた体勢を立て直した俺の目に飛び込んできたのは、レガーティアが高速回転するビームランスでデストロイリボルバーの胴体をぶち抜き、その機能を停止させている光景だった。

 

 ブルーノ:LP2600-2600=0

 

 レガーティアがランスを引き抜いて後方に跳ぶと、デストロイリボルバーがその場に崩れ落ち……そしてそれと同時に、ブルーノのライフが双方の攻撃力の差分だけ引かれていき、ゼロを示した。

 

 

 

 

 

 

「いやー、負けちゃったよ。強いね、キミは」

「いやいや、ブルーノこそ相当な腕前じゃないか。こりゃ記憶のあった頃は、相当名のあるデュエリストだったに違いねえぜ」

「ははは、おだてても何も出ないよ?」

「オイオイ、オレがいない間に何面白いことやってんだよ~」

 

 デュエルを終え、俺とブルーノが互いの健闘を称え合っていると、両手にスーパーのレジ袋を持ったクロウが急に割り込んできた。クロウは朝の買い出しに行ってたのか。

 

「あ、クロウお帰り。買い出しごくろうさま」

「おう。いい肉が割引だったから買ってきたぞ」

「へー、そりゃあご飯が楽しみだね……」

「デュエルの内容はともかく、見世物としては悪くなかったぞ」

 

 そしてブルーノとクロウが軽くやりとりをしているところに、コーヒータイムを終えたジャックも合流してくる。上から目線なのはいつものことだ。

 

「ああ、見ごたえのあるデュエルだった」

「ちぇー、見てねえのオレだけかよ。……そうだ!」

 

 同じく寄ってきた遊星から話を聞いたクロウは、軽く悔しがる素振りを見せたあと、ひらめいた! とばかりにポンと手を叩いて1つの提案をしてきた。その提案とは……。

 

「昼飯前の軽い運動として、オレたち5人でデュエル大会でもしようぜ! 優勝者は晩飯の肉多めで」

 

 デュエル大会の提案だった。ニシシと笑いながら優勝賞品を告げているけど、俺が優勝したらどうするんだろうか。俺、夜には帰るし。

 

「ん? そうだな……じゃあお前が優勝したら、ジャックのカップ麺やるよ。好きなだけ持ってっていいぞ」

 

 ということをクロウに聞いてみたら、なんか勝手にジャックのカップ麺が景品にされて草生える。案の定、それを聞いたジャックは怒りプンプンだ。

 

「おいクロウ、貴様なに人の物を勝手に……!」

「ならお前が優勝すればいいんだろ? もしかして……負けるのが怖いのかぁ?」

 

 おーおー、煽るねえクロウ。そんな風に言われたら、負けず嫌いのジャックが返す返事なんて1つしかないだろうに。

 

「フン! いいだろう、その挑発に乗ってやる! ちゃんと大盛りにするんだぞ、クロウ!」

「おーおー、もう優勝した気でいやがるぜ。んで、遊星はどうだ?」

「俺は別に大盛りには興味ないが……だが面白そうだな。乗った」

「優勝は無理かもしれないけど、僕も頑張るよ!」

 

 飯はともかくデュエルの部分には遊星も興味を示したことで、クロウの提案は全員賛成により無事可決。俺たちは1度ガレージに戻ってトーナメント表をパパッと作り──その1回戦目、俺vsジャックのデュエル。

 

「オレは手札から紅蓮魔竜の壺*4を発動、カードを2枚ドロー! さらに永続魔法、クリムゾン・ヘルガイアを発動! その効果で墓地から紅蓮魔竜の壺を回収して発動、2枚ドロー! 手札を1枚捨て、ツインツイスターを発動! 貴様の伏せカードを破壊だ!」

 

「破壊されたカードはやぶ蛇! 俺はレガーティアをEXデッキから特殊召喚! カードを1枚ドローしてジャックのレッド・デーモンズ・ドラゴンを破壊!」

 

「なら手札を1枚捨ててライトニング・ボルテックスを発動だ。お前のモンスターを全て破壊し、この瞬間クリムゾン・ヘルガイアの効果が発動。墓地からレッド・デーモンズ・ドラゴンを特殊召喚させてもらうぞ……」

 

「わァ……ぁ……」

 

 とてもひどいめにあった。俺の次にジャックと戦ったクロウも似たような目に合ってた。ヘルガイアでアニメ版紅蓮魔竜の壺を毎ターン連打するの犯罪だろ……。

 大会の優勝は勢いに乗ったジャックがそのまま掻っ攫っていき、その後噴水広場に俺とクロウの「インチキ! インチキ!」という負け惜しみコールが響いたのは言うまでもないことだろう。そしてそれを聞いたジャックに「貴様らに言われたくは無いわ! この元祖インチキコンビが!」とキレられたのはまた別のお話。

*1
アニメ版はデュエル中1度の制約なし

*2
アニメ版はデュエル中1度の(ry

*3
アニメ版は特殊召喚の制限なし

*4
アニメ版は召喚・特殊召喚不可のデメリットなし




夢にまで見たブルーノちゃん回!夢にまで見たブルーノちゃん回!!
最初はABCデッキで書いていたんですが、デストロイリボルバーの方がブルーノちゃんに似合うかなって思って急遽変更。
本作のレインはなぜか料理上手です。なんでだろうね。あと不定期とか言いつつ毎日用意してくるレインにツァンが爆発したりしなかったり。

誤字脱字の報告、本当にありがとうございます。助かっています。
やっぱり1話5000~6000文字くらいで無理矢理にでも区切るべきなのかなあ。そうすれば見直しもしやすいし……毎回どこか誤字ってて恥ずかしい。
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