ネオドミノのテッペンに立ちたくて   作:ジェム足りない

33 / 34
結成!チーム・アカデミア(前編)

「ようよう聞いたぜ~? やるじゃねえかお前!」

 

 偽ジャック騒動が終わって早々の月曜の朝。自分の席に着いた俺に対し、俺の後ろの席に座るクラスメイトの男子、杉山君がニヤニヤとした笑いを浮かべながら語り掛けてきた。

 

「ん? 何の話だ?」

 

 なにやら俺をからかっている様子だが、生憎と俺には、特にそうしてからかわれる心当たりがない。故に、俺はその理由を聞き返すわけなのだが……。

 

「何とぼけてんのよ! もう噂になってるわよ。相川君が金曜の夜、マーカー付きのワルに絡まれてたレインさんをさっそうと助け出したってハ・ナ・シ!」

 

 そこに急に緑髪の活発な女子──なんでもDホイーラーに憧れているらしく、ライセンス持ちに絡んでくる事が多い子だ──が割り込んできて、俺の問いに答えてくれた。

 しかしなるほど、そういう事かー。クラスに入った途端、やけに注目されるなーと思っていたけど、これなら納得納得……なわけあるかい! いや噂になるにしても早すぎない?

 

「…………はぁ?」

「とぼけても無駄よ~? こうやって、グループチャットにきっちり動画も上げられてるんだからね!」

 

 とりあえず時間稼ぎのためにとぼけてみたところ、Dホイーラーに憧れているその彼女は、自分のスマホを取り出してその画面を俺に見せつけてきた。そうして彼女が見せつけてきたその画面には──。

 

『もしオレが勝ったら、後ろの可愛い嬢ちゃんをオレに渡してもらうぜぇ……』

『じゃあ、俺が勝ったら?』

『このまま黙って引いてやる……』

 

 マーカー付きのオラついたチンピラと、そのチンピラからレインを庇うように立つ俺の姿が……! レインの顔(無表情)が絶妙に隠れてることといい、俺の背に縋りつくポーズといい、どう見ても“怯えるレインを庇う俺”なシーンに仕上がってて草。

 

「前科持ちの大柄で怖そうな男に、不敵な笑みを浮かべつつ立ち向かう……真面目にカッコいいわよ相川君! 私なら間違いなく惚れてるわ!」

「デュエルが強くて度胸もある……いつの間にか、すっかりヒーローキャラになっちまいやがってよぉ。落ちこぼれ同盟の絆はどこ行った~? この、この!」

 

 女子生徒は笑顔で俺の背をパンパンと叩き、杉山君はうりうりと肘で俺の腹を突いてきて……ノリノリで囃し立ててくる2人に、俺はとりあえずハハハと愛想笑いで返しておく。

 裏事情を知る俺にとっては、ぶっちゃけ茶番にしか見えなかったので雑に突っ込んでいって対処したんだが……でも、他人からしたらそう見えるのか。なるほどな、勉強になった。んで、こんな動画が出回っているってことはつまり。

 

「oh……」

 

 ツァンの方をこっそり見てみたら、案の定暗黒オーラを背負ってら。ツァンの爆発に巻き込まれることを恐れてか、周囲の席もポッカリと空いているしよお。

 ちなみに、ゆまは別の女子と談笑してるから機嫌が読めん。まあセーフっぽいからヨシ。レインは……あ、目が合った途端にこれ見よがしに頬染めてきやがった。そしてそんな俺たちを目ざとく見つけたツァンの背負うオーラが悪化して……!?

 

「ホントよねー。まさかあの相川君が、ここまで垢抜けるなんて。ツバつけとけばよかったかも~」

「あー、彼氏持ちがなんか言ってる~。チクっちゃおっかな~?」

「だめーっ! それだけはお許しをーっ!?」

 

 緑髪ちゃんに釣られてか、彼女の友達だろう女子たちがちらほらやってきて、なにやら姦しくなってきた周囲から意識を逸らしつつ……俺は教科書を開いて、1限目の予習を始めるのであった。

 ツァンのご機嫌取りをしなくていいのかって? いやまあ、今回の件は俺に非が全く無いからな。ツァンもそこらへんは承知してるはずなので、何も言ってこないだろうし。ていうか、逆にご機嫌取りに行くと怒られるヤツ。

 なのでここで俺が取るべき行動は、今回の事件について盛り上がるクラスメイト達に過剰反応しないこと……!

 

 

 

 

 

 

 そして時間は流れて昼休み。1限目の休み時間に入った際、男子連中からレインの件で「よ、白馬に乗った王子様!」とからかわれ、それによってツァンの機嫌が急降下するというイベントこそあったものの──なんやかんやで機嫌を自己回復させたツァンと、そしてゆまと共に、俺たちはカフェテリアで昼食タイムへと突入していた。

 

「むー。悔しいけど、あの子の料理の腕前って凄いわよねえ。どこで身に付けたのかしら……?」

 

 俺がいつも通りにレインの作った弁当に舌鼓を打っていると、ふとツァンがそんな事を言い始めた。

 ツァンもなんか最初はレインの弁当についてうるさかったけど、少し分けてあげたら一発で黙っちゃったんだよね。これは……確かに美味しい……って感じで。

 しかし確かに、どうしてレインは料理上手なんだろうな。いやまあレインはライディングロイドなので、料理人のデータをインストールすれば一発だろうけど。

 

「ふふーん。私、知ってますよぉ〜!」

 

 そうしてツァンのふと漏らした疑問の声に答えたのは、まさかのゆまだった。

 ゆまもツァンと同様に、レインから俺との関係を断つよう迫られたらしいけど……持ち前のキャラで「なんでそんなこと言うんですか、ひどいです!」「……ごめんなさい」的なやり取りをして、速攻で和解したらしいよ。さすがゆま、陽の極みだね。

 

「なんでもレインさんってば、身内にとってもえらーい博士さんがいてですねぇ。その博士さんの身の回りのお世話をしているうちに覚えたらしいですよ?」

「ふーん」

「そうなんだー」

 

 ドヤ顔のゆまがもたらした情報に、ツァンと俺は気の抜けた返事を返す。いや、なんか思ってたより普通の答えだったし……。でもなるほど、創造主であるZ-ONEのためだったか。父親思いのいい子やね。

 

「でも身内が博士かぁ、納得。それであの子、あんなに世間知らずなんだ」

「何の研究をしている博士なんだ?」

 

 うんうんと頷きつつ、自分のパスタへとフォークを伸ばすツァンはさておき。せっかくだし、俺もゆま経由でレインの情報を仕入れておくことにするか。今後、レインと何かあった際に有利を取れるかも知れねえからな。

 

「うーん、そこまでは聞いていなかったです……。でも、『一見穏やかに見えて、実は物凄く我が強い』人で、あと『割と傲慢で外道なところもある』人らしいですっ!」

「へぇ……」

「けっこう言うじゃない、あの子……」

 

 仮にも創造主に対して、すげえ物言いだなレイン。でも過去の歴史を変えようだなんてしているんだし、確かに捉え方によってはその通りか。レインなりにフラットな目線で人物評価をしようとした結果なんだろうな。

 そうして俺たちが談笑しながら食事をとっているところに──。

 

「よう。お前ら、少しいいか?」

 

 逆立つツンツンヘアーとデカいヘッドバンドが特徴的な一人の男子生徒……黒門暗次が近寄ってきて、そのまま俺たちに話しかけてきた。

 

「アンタは……」

「おう、暗次か。なんか久々だな」

 

 不良を自称しており、実際に素行もそんなに良くはない暗次を見てツァンは渋い顔だ。しかし俺としては別にこれといった悪感情を抱いている相手ではないので、普通に返事をする。いや今口にした通り、なんか最近はこいつの顔を見なかった気がするから気になるんだよな。

 

「ああ、ちょっくらデュエルの修行で数ヵ月ほど山に行っててよ。それでアカデミアに来てなかったんだ」

「ハァ? じゃあ授業はどうしたのよ?」

 

 なんでもない事のように返してきた暗次の言葉を聞き、ツァンがさっそくツッコミを入れる。……が。

 

「いや“デュエルの修行で山籠もりします”って言ったら普通に許可出たぜ?」

 

 しかしここはデュエル至上主義のデュエルアカデミア。ツァンの常識的なツッコミはあっさりと返されてしまう。

 

「な……」

「まあ、デュエル修行の定番と言えば山籠もりだしな」

「だろ? オレさまもそう思って担任に相談してみたら、なんかアッサリとGOサインが出てな。大会で結果を残せば休学中の単位も全部くれるらしいぜ」

「おお、太っ腹ぁ」

 

 唖然とするツァンを尻目に、俺と暗次は会話のキャッチボールを続けていく。

 いいなあ山籠もり修行。俺も興味はあったんだが、俺の場合は遊星たちを相手にデュエルを挑んだ方が効果ありそうだったんで諦めたんだよなあ。

 

「まあオレさまの事はさておき、ツァンディレに宮田ゆま、おたくらDホイーラーのライセンスを取ったんだって? おめでとさん」

「え、ええ……ありがとう」

「ありがとうございますっ!」

 

 暗次から唐突にライセンス試験の合格を祝福され、ツァンは狼狽えつつ、ゆまはニコニコと笑顔を浮かべながら、元気よく礼の言葉を返していた。

 

「ちなみに、オレさまも以前からライセンスは持っていてだな。そして、今日はお前ら3人に話があって……まあ、その、なんだ。……わかるだろ?」

 

 自分から答えを言うのは恥ずかしいのか、暗次は何やら照れ臭そうに頭を掻いて誤魔化しながら言葉を濁す。

 まあ、わざわざライセンスについて口にした上で、俺たち3人全員に用があると来たら……。

 

「まさか……」

「?」

 

 ツァンも俺と同じ結論に至ったようで、暗次に対し真面目な表情を向ける。まあ、ゆまは理解していないようだが、キョトンと首を傾げる姿が可愛いのでヨシ!

 

「そのまさかよ。どうだお前ら、このオレさまと組んで、WRGPに出場しねえか? メインの走者が3人に、怪我やら不測の事態に備えた予備の走者が1人……合計4人で丁度いいだろ?」

「いいですねっ! やりましょうよツァンさん、ユージさんっ! みんなでWRGPに出ましょうよっ!」

 

 暗次の提案を耳にしたとたん、ゆまが全力で食いついた。ゆまがここまで食いつくとは思っていなかったんだろう。目をキラキラと輝かせ、興奮した様子で俺とツァンを誘うゆまの姿を見て、誘いをかけた暗次側も驚いている様子だ。

 

「ちょ、ちょっとゆま。声が大きいわよ!」

「ツァンさんも前に『ライセンスが取れたら考える』って言ってくれましたよね!? 今こそ絶好のチャンスですよっ!」

「た、確かに言ったけど……」

 

 そうして興奮した様子で、これ幸いとゆまがツァンの説得を始めたところに──。

 

「あら、ずいぶんと面白そうな話をしているじゃない」

 

 薄い笑みを浮かべた雪乃が乱入してきた。

 

「おーおー、誰かと思えばアカデミアの女王様じゃねえか。だが、今は結構大事な話の真っ最中でな。こいつらに用があるってんなら後に──」

「いいえ、用ならあるわよ。そしてヘアバンドのホウヤには残念なお知らせなのだけれど……」

 

 勧誘が上手く生きそうなところに割り込まれたせいだからか。暗次は眉を顰め、腕組みをしながら雪乃を追い払おうとする。

 しかし当の雪乃は涼しい顔で暗次の言葉を受け流すと、そのまま俺の方へと歩み寄り。

 

「WRGPに関してなら、このボウヤはもう私が先約済みなのよね♡」

 

 俺の腕に両手を回して抱き着きながら、そのような事をのたまってくれた。

 

「な、何ィ!? そうだったのか相川!?」

「え、いや初耳……」

 

 暗次が驚愕に目を見開きながら、俺に雪乃の発言の真偽を問いかけてきたので、俺は正直にその答えを口に仕掛けるのだが……。

 

「ね?」

 

 俺が口を開くのと同時に、雪乃が俺の腕をより強く抱きしめ──俺の腕に豊かな胸部装甲を押し付けつつ──耳元に唇を寄せて息を吹きかけながら、自身の発言に同意するよう迫ってくる。

 あーっ! 困りますお客様! お客様! そのような事をなされては! あーっ!?

 

「フッ……今思い出したぜ。確かに雪乃と約束していた覚えがある……!」

「嘘こけ! さっきポロっと初耳ってこぼしただろーが! 色香に惑わされてんじゃねーよボケ!」

 

 そうして一瞬で陥落した俺を見て、暗次が怒涛のツッコミを入れてくるのだが……いやしかし待って欲しい。ゆきのんのこの色仕掛けに対抗できる男などいるのだろうか?

 いやまあ、俺にはプリメラやアトリィといった嫁がいるから、別に対抗しようと思えばいくらでも対抗できるんだけどね? でもそれはそうとして、ここはゆきのんに乗っておいた方が面白いやん? ノリ的に。

 

「……サイテー」

「あ、あははは……」

 

 おっと、ツァンからは白い目で目で見られてしまったな。

 

「ふふ……まあ先約済みというのは嘘だけど、このボウヤに先に目を付けていたのは私よ? それを横から掻っ攫っていこうだなんて……悪い子ね?」

「なら、さっさと誘わなかったお前が悪いんだろーが。こういうのは早いモン勝ちだ!」

「あら、痛いところを突かれちゃったわね。でもヘッドバンドのボウヤ、アナタのデュエルの腕前はアカデミアの中でも中の上といったところ……。私のボウヤを誘うには、まだ早いんじゃないかしら?」

「さすがは女王様、言ってくれるねえ。だが『男子三日会わざれば~』って名言を知らねえのか? 今のオレさまをかつてのオレさまと同じだと思っていると、痛い目見るぜ?」

 

 何やら急にバチバチと火花を散らし合う暗次と雪乃。ついつい「私の為に争わないで~!」とふざけたくなる場面ではあるが、実行すると雪乃と暗次から「お前は黙ってろ」とダブルパンチを受けて撃沈すること請け合いなので黙っておく。俺はかしこいのだワハハ。

 

「どうだい女王様、ここはひとつ、ライディングデュエルで白黒つけるってのは」

「いい提案ね、賛成するわ。スタジアムの予約はこちらで済ませておくから……逃げちゃダメよ?」

「そりゃこっちのセリフだぜ。普段は温いスタンディングばかりやってるお嬢様に、ライディングデュエルの厳しさを教えてやるよ!」

 

 おっと、暗次vs雪乃の決着はデュエルアカデミアらしく、デュエルでつけることにしたようだ。修行を経て進化した暗次の腕前と、雪乃のライディングデュエル用のデッキ、双方を同時に確認できて、俺としてもありがたい提案だな。

 

「……ねえ。ところで、ボクの意見は? ボク、まだWRGPに出るとは一言──もっ!?」

 

 なんかツァンが水を差しそうだったので、俺はサッとツァンの背後に回ると、そのまま手でお口を塞いで強制的に黙らせておいた。真っ赤な顔をしたツァンに後ろ手でポコポコと腰のあたりを叩かれ、同時に「何するのよ!」的な抗議の目で見上げられてしまったが知ら管。

 

 

 

 

 

 

 そして放課後。俺とゆまとツァン、そして雪乃と暗次の5人は──ライセンスの卒業検定デュエルでも使われた──スタジアムへとやってきていた。

 

「それじゃあ、ルールはWRGPと一緒。運転はマニュアルモードで、第1コーナーを制した方が先攻よ」

「ああ、問題ねえよ」

 

 ライディングスーツに着替え、Dホイールに跨った雪乃と暗次がスタートラインにて横並びになる。

 スーツもDホイールも既製品の暗次と違い、雪乃の方は両方とも特注品っぽいな。ちなみに黒がメインでサブに黄色という暗次に対し、雪乃は青がメインで、そこに白とグレーをサブに添えた感じだった。

 まあそんなことはともかくとして、暗次と雪乃の前にソリッドビジョンが映し出したカウントが1つづつ減っていき……ゼロになるのと同時に、赤いランプが青いランプへと切り替わった。

 

「ライディングデュエル・アクセラレーション!」

「ライディングデュエル・アクセラレーション!」

 

 デュエル開始の宣言と共に、2人はアクセルを踏み込んで、Dホイールを一気に加速させていくのだが。

 

「クソッ、なんだその加速は……!」

「フフフ、先攻は貰ったわよ」

 

 やはりマシンの性能の差が大きかったか。雪乃はあっさりと暗次を追い越すと、そのまま危なげなく第1コーナーを突破していった。まあ、どう考えても雪乃のマシンの方が金かかってるしな。これはしゃーない。

 

「私のターン、ドロー!」

 

 雪乃:LP4000 手札:5→6 SPC(スピードカウンター):0

 

「私は手札から、深海のディーヴァを通常召喚よ」

 

 深海のディーヴァ

 ATK/200 星2 チューナー

 

 雪乃のフィールドに、深海の歌姫である人魚がその姿を現した。




デュエル前でいったん分割です。なんで分割するかって?そりゃ次のデュエル構成に自信がないから、ガバって修正祭りになってもいいようにゲフンゲフン。
 あと今週の頭にコロナに感染しちゃいまして、そのせいで頭がぼんやりしてて全然書けなくて……土曜にようやく治ってきたので、大急ぎで書ける分だけ書いて上げた感じです。

レインの言ってる“博士”とZ-ONEは別人です。念のため。そして雪乃のDホイールはコトブキヤのラピッドレイダーをイメージしていたり。あのバイク格好良くて好き。ぶきっちょなので組めないけど。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。