初デュエルをカードパワーの暴力で押し切った俺はその後、『今度は俺とやろーぜ!』と鼻息を荒げる田中くんとデュエルをしたり、『もう1回! もう1回お願いします!』と再戦をおねだりしてくるゆまと再度デュエルをしたり……そうこうしているうちに日が暮れてきたので、互いの連絡先を交換した後に自宅へと戻ってきた。
「ふっふっふ……女の子の連絡先、ゲットだぜ……!」
飯と風呂を終えた俺は今日のデュエルの結果を踏まえ、ベッドの上でのんびりとデッキの再調整を行なっていたのだが……ふとスマホを取り出して、その中で燦然と輝く“宮田ゆま”という連絡先を見て口元を緩める。
いやー、まさかあんなところでゆまと出会えて仲良くなれるとは。嬉しい誤算だ。
確かに“彼女欲しいなー”とは思っていたけれど、やっぱり自分からいきなり女子に話しかけるってのは難易度がめちゃ高いわけで。向こう側から話しかけてくれたのは本当にラッキーだった。ゆまのおかげで女の子との話し方が分かった気がするぜ! デュエルを挑めばいいんだな!
この調子で女の子と交流の輪を広げていけば、やがては彼女を作ることだって夢じゃないハズだ。世の中やっぱコネだよコネ。ツァンとかゆきのんとか、アカデミアには可愛い女の子がいっぱいだからな。
ちなみにツァンはクソ真面目すぎるその性格が災いして『見た目は可愛いんだけどなあ……』と煙たがられてるが、ゆきのんは男子から普通に人気だったりする。もちろん俺も好きだ。だって色気が凄いしね。そして女優志望だからか、男のあしらい方もうまいし。はぁー、ゆきのんと恋人関係になってイチャイチャしてぇなあ。
だがやはり彼女に認められるには、某赤帽子並のスキルが求められるのだろう……。今からでもあの赤い帽子とジャケット着るようにすりゃ、俺がコナミ君だって事になんねーかな。無理か。
「ってえ!」
とそのようにアカデミアの女子たちに思いを馳せてニヤニヤしていた俺であったが、突如として全身に電気のような衝撃が走り抜け、そのショックでスマホを取り落としてしまう。
ここがベッドの上でよかった。フローリングの上だったら(スマホが)即死だったぜ。
「おー、いていて……」
落としたスマホを拾い上げつつ、俺はこの怪現象の犯人であろうカード──ぼんやりとした光を放っているように見える、重騎士プリメラへと目を向ける。
「うーん……やっぱアレだよなぁ……」
デッキにピン積みだというのに──まだ試行回数は少ないが──やけに手札にくる特性。急上昇した俺のドロー力。そして不自然な発光現象にこの衝撃……!
これってやっぱあれだよね。憑いてるよね。オリ主もの二次創作でいっぱい予習した俺には手に取るようにわかるぜ。
「でも俺、そっちの才能はないみたいなのよなあ」
確かメインキャラである龍可が精霊方面には強かった筈だから、どこかで交流持てればいいんだけど……高等部の俺が、どうやって交流を持ったもんか。
一応、アキさんや遊星経由でなら交流は持てそうだが……そういう仲間を安売りするみたいな真似はやってくれなさそうだし。
でもプリメラがカードの精霊だったとして、それが見えたら毎日楽しそうだよなあ。憧れちゃうよなあ。でも見えたら見えたで厄介事に巻き込まれそうでもあるんだよな。確かDSのワールドチャンピオンシップの主人公が、精霊界との交信がどうのこうのでディヴァインおじさんに拉致られてたし。
「ま、なるようになるか……」
面倒臭くなってきた俺は思考を放棄すると、中断していたデッキの調整作業を再開する。
とりあえず罠モンスターの面影は残しつつも、全力でレガーティアを介護するデッキに変えてみるか……。大型モンスターのプロレスは見栄えが良くて、アカデミアの先生方やギャラリーからの受けもいいんだよね。
「しっかしダグナー編はシティにいれば安全として、問題はWRGP編か。アポリアが市街地、めっちゃ荒らしてたよな……。アーククレイドルの事も考えると、満足町に逃げたいけど……」
俺はあーでもないこーでもないとデッキを弄りながら、この世界が今後、辿るであろう未来へと。そしてその未来において、自分がどのように動くべきかを脳内でシミュレートしていく。思考実験……というにはガバガバで、そこまで真面目に考えてもいないから、ただの遊びのようなものだが。
まあZONEに全部ぶっちゃけられたら、それが一番のハッピーエンドの道なんだろうけど……そこに辿り着くまでの道中が危険すぎて、流石にねえ。なんか
◇
「俺は重騎士プリメラと重騎兵エメトⅥで、プレイヤーにダイレクトアタック!」
「ぐわあああー!?」
土曜日。俺はこの前ゆまと出会ったカードショップとはまた別の店にやってきており、そこで開催されていたデュエルモンスターズ大会に参加していた。目的は、優勝賞品であるフォーチュンカップの観戦ペアチケットだ。
まあ俺はこの大会の結末を知ってるんだけど……それでもこの大会には遊星、ジャック、アキさん、そして龍可に龍亜と未来のチーム5D’sのメンバーが勢ぞろいなのだ。
やっぱり、遊戯王ファンとしては生の遊星たちを見てみたいというか? あとこの世界にとってのキーパーソンでもあるシグナー竜も見てみたいというか? そんな感じで、俺は他の参加者たちを蹴散らしていたわけだ。
「クソッ、あいつ強えぞ……」
「奴はアカデミアの罠モンスター使い。デッキの性質上、初見の相手にはめっぽう強い男だと聞く……」
「いや、普通にモンスターで殴られて死んだ」
「なんだと? そんなの僕のデータに無いぞ!」
いやー、にしてもアレだわ。こうやって画面に映ることのなかった一般市民たちとデュエルしていると、センチュリオンの無法っぷりがよくわかるね。
レガーティア1枚でどうやって戦えばいいんだ……と思っていたけど、意外と行ける。ていうか普通に強い。めっちゃ強い。アカデミアやらデュエル塾に通っていない人たちのレベルが予想以上に低かったってのもあるけどさ。
伏せカード0枚の大胆なガイアナイト棒立ちで『サレンダーしてもいいんだぜぇ?』と煽られた時はあまりの男らしさに感動すら覚えたよ。まあ遠慮なくセンチュリオンの絆☆パワーを叩き込ませてもらったが。
……とはいえ、そういう連中に混じって普通に強い人も出てくるから油断はできないんだけど。別の試合では
「さてさて、次で決勝か。お相手は誰かな〜ってゲッ!?」
準決勝をサクっと終えた俺は、決勝の相手を確認しようとトーナメント表を確認しに戻ったのだが……そこに書かれている名前を見て呻き声を上げてしまう。
「……人の名前を見て『ゲッ!?』だなんて、いい度胸してるじゃない」
俺の決勝の相手、それはアカデミアでも屈指の実力者であるピンク髪の大魔神……ツァン・ディレであったからだ。
「いやー、ツァンさんと大会で出会ったら、誰だってこういう声上げるって……。だって滅茶強いじゃん……」
「フン、なら棄権でもしたら? その方がボクも時間が節約できてありがたいし」
弱音を吐く俺に対し、ツァンは相変わらずの毒舌をプレゼントしてくれる。
いやー、でもしょうがないじゃん? センチュリオン手に入れる前の俺のデッキって罠モンスターだからさ、ツァンとは死ぬほど相性悪くて、もうボロッカスに負け続けてたんだよね。先攻渡したらほぼ確実にモンケッソクカゲキカゲムシャ……やらかしてくる相手とか苦手意識持っても仕方ないっしょ。
超ハイレベルな美少女であるお前がアカデミアで煙たがられてるの、たぶんその封殺系のデュエルスタイルも大きいぞ。
苦紋様の土像立てて、パリパリカードを割ってくる俺の旧デッキも似たようなもんだろって? 俺は勝率5割くらいで、普通に負けてたからいいんだよ(怒)
ドロー力の問題か、苦紋様が引けないことも多いし──なによりあいつら、俺が相手だとわかった途端に、デッキにサイコショッカーぶち込んできやがる。許せねえよなあ?
「ハッ、それこそまさかだ。今まで散々好き勝手にボコしてくれた、その礼をするチャンスだってのによ……!」
「……ゆまから聞いたわよ。デッキを大改造したらしいじゃない」
ニガテ意識を押し殺しつつ啖呵を切ってみれば、ツァンからそんな言葉が返ってきた。あらやだバレテーラ。ゆまちゃんネタバレやめちくり〜。
「いいわ、あの子の敵討ちってわけじゃないけど……アンタには格の違いを教えてあげる。付け焼き刃のデュエルが通用するほど、ボクは甘くないんだから」
「お、おもしれーじゃん。是非とも教えてもらいたいもんだ」
アカン(アカン)なんかめっちゃやる気出しとるやん。
こりゃ先攻取られたら2シエンに奈落勾玉添えくらいやってくるやつや。うおおおお我が手に先攻よ来たれ来たれ来たれええええ……!
などと表面上は強がりつつも、内心では戦々恐々としつつ──俺はツァンとの決勝戦を行うため、デュエルフィールドへと歩を進めていく。
「さあ、行くわよ──」
「今までの借りを返してやるぜ──」
デュエルフィールドへと着いた俺とツァンはデュエルディスクを起動。モーメントが回り始め、ディスクに虹色の光が灯る。
「デュエル!」
「デュエル!」
VSツァンのデュエルが長くなりすぎたので、一度ここで分割です。
今更ですがオリ設定や独自解釈が出てくる場面もあると思うので、そこら辺はご容赦ください(タグ表記忘れゴメンね)