目の前の勝利を追いかけて   作:後藤 カルム

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週一投稿めざしてがんばろうと思います。

遅れることがあってもお許しください。何でもすることはできませんが。


ライバルの進撃 ークラシック戦線のはじまりー

 朝日杯FSに見事勝利し、GⅠウマ娘の仲間入りを果たした。そんな彼女であったが、URA賞のジュニア級部門の一角として選出され、授賞式のためトレーナーとともに都内某所に訪れていた。

 表彰台に2人のウマ娘が並んで立つ。他方は阪神JFを勝利したウマ娘である。ともに表彰を受け、インタビューに入る。

 

「朝日杯FSで勝ったことによって、クラシック戦線の有力候補との呼び声が高くなっておりますが、今年のレースプランについては考えておりますでしょうか」

「さ、三冠路線に進むことを考えております。皐月賞に向かいますが、その前にレースを挟むかどうかは体調次第で、トレーナーと相談して決めるつもりです」

 

 URA賞の授賞式というレース後の会見とは違う雰囲気の中、記者からの質問に緊張しながらも答えていく。そして各部門にて受賞したウマ娘の記者会見が終わり、年度代表ウマ娘の会見となる。クラシック級ながらシニア級混合のGⅠレースを2勝し、多くのファンを魅了したウマ娘である。

 

「身が引き締まる思いです。これからもファンの皆様の期待に応えられるよう、頑張っていく所存です」

 

クラシック級ながらシニア級混合のGⅠレースを2勝し、多くのファンを魅了したウマ娘の記者会見は、自分とはキャリア1年しか変わらないとは思えないほど堂々と、慣れたような態度であった。そして目に入った年度代表ウマ娘の鍛え上げられた姿とその精神性から、クラシック級を走りきるということ、シニア級と鎬を削ることの厳しさ、偉大さを僅かながら感じることができた。

 

―――

 

「ん~、どの料理もおいしいですね~!」

 

 URA賞授賞式が終了した彼女とトレーナーは、とあるビュッフェ形式レストランにて食事をしていた。その机の上には、多くの空皿が積み重ねられている。

 

「おいおい、少しは加減しておけよ。出禁の店が増えてもおれは知らんぞ」

 

 トレーナーが呆れながら彼女に注意する。彼女はトレセン学園内でも有名になるほどの健啖家で、あのオグリキャップやスペシャルウィークにも肩を並べるのではと言われているほどである。特にレースに勝つようになってからは、その食欲も一回り旺盛になったのではとトレーナーは考えていた。

 

「強い身体は食事から、食事は人生のオアシス、ですよ。トレーナー!」

 

 そして注意すると決まってこれを言うのだ。彼女のモットーでもあるらしい。言っていることは間違っていないし、その後はちゃんとトレーニングして食べた分も消費しているので、トレーナーもあまり強くは注意しないのだが、体重の変動が激しいことは身体によくはないため、いつも冷や汗をかきながら様子を確認している。

 

「……明日はプールでトレーニングだ。これからは中距離を走れるようにスタミナを鍛える方向が主軸になる」

「プール! いいですね。明日からも頑張ります!」

 

 プールでの有酸素運動はスタミナ強化に最適である。身体への負担も比較的少なく、彼女が最も好きなトレーニングの1つであるため、大食いをした後のトレーニングに選択されることも多い。上機嫌になった彼女は、「デザート持ってきます!」と席を立った。

 

「……ま、頑張るか」

 

 彼女は身体が丈夫でヘビートレーニング後も食事量は変わらない。間違いなく世代を動かす名ウマ娘になる。これからの1年が忙しくなることを予見し、密かに笑みを浮かべた。

 

 なお、帰ってきた彼女が持っていた、皿いっぱいに盛られたミニケーキの山を見て思わず渋い顔を浮かべてしまったが、致し方なしというものだろう。心中で誰にともなく言い訳をするトレーナーであった。

 

―――

 

「『共同通信杯』?」

「あぁ。朝日杯でお前と戦ったウマ娘が数人走るからな。同期の様子を見るのもいいトレーニングだぞ」

 

 2月某日、トレーナーに連れられて北風吹き付ける府中、東京レース場に彼女はいた。

正直トレーニングをしていたいという思いが強かったが、『トレーニングの一環』と言われてしまったため、気分は乗らなかったがともに訪れていた。

 

「でも、なんで共同通信杯なんですか? 皐月賞のトライアル競争じゃないですよね?」

「確かにそうだが、このレースの勝者はその年のクラシック戦線で大きな活躍を見せることが少なくない。特に近年はこのレースの勝者が皐月賞を勝利する出世レースのようになる傾向がある。ダービーと同じ東京レース場を経験できることからも、年明けの始動戦に選択する陣営も多いんだよ」

 

 間違いなくこのレースの勝者はクラシックにおいて大きな壁になる、と言いながら、トレーナーは顔をコースに向ける。直、本バ場入場が始まる時間だ。彼女もそれに倣ってコースに顔を向けた。

 今回はGⅢのレースなので、出走ウマ娘は固有の勝負服ではなく体操服を着用している。

1人、また1人と入場が進められていくうち、あるウマ娘がコースに姿を現す。

 

「あ、『リネアインヘニオ』だ」

 

『5』と書かれたゼッケンを身に着け入場したそのウマ娘は、朝日杯にて2番人気に推されていたウマ娘だ。後方に位置取りをしていたが、直線で伸びきれず5着に終わっている。

 

「聞いた話だとあの(朝日杯FS)時は調子があまりよくなかったそうだ。今回は以前に勝っている1,800mに戦場を戻してきたな。直線が長い府中ならその脚質も活かせるだろう」

 

 つまり同様に後ろから追い上げる末脚を武器に持つ彼女と位置取りが重なる可能性があるということでもある。彼女はそれを理解し、レースの視点を彼女に定めた。

 出走ウマ娘は合計11人。リネアインヘニオは1番人気に支持されている。第2コーナーの外側に設置されたゲートに集合し、ゲートに入っていく。

 

 全員がゲート入りを完了し、レースが始まった。

 

―――

 

『スタートしました! 2番タイミングが合わず出遅れ! 後方からのレースとなりました!』

 

 1人出遅れた2番のウマ娘が一際後方へ、それ以外のウマ娘は揃ってスタートダッシュを決め、各々の位置取りへ進む。リネアインヘニオは今回は先団に向かうようだ。

 

「なるほど。スローペースになることを見て先団に入ったか。悪くない」

 

トレーナーのレース分析を耳にしながらレース展開を注視する。8人のウマ娘が前方に、3人が後方に位置してレースは中盤へ進む。第3コーナーでは展開が動くことなく推移し、第4コーナーから直線に入るところで『8』のゼッケンを着た逃げウマ娘が1人、3バ身差を取る。

 そしてホームストレッチ、坂が始まるところで大外から攻め入るウマ娘の姿があった。

 

『外側からルーカス、追い込んでくる! 8番、最内粘って先頭をキープする!』

 

外ラチから末脚を切り込む『ルーカス』、対して先頭を走り続ける8番のウマ娘が残り200mを通過する。

 

『残り200mを通過! リネアインヘニオ現在3番手! そして先頭突き抜けたのはルーカス! ルーカスだ! ルーカス先頭でゴールイン!』

 

―――

 

 結果、勝ったのは先団の中でも後方に位置していたルーカス。リネアインヘニオは惜しくも2着だった。

 

「リネアインヘニオは今まで後方からの差し脚だったが、先行策の走りを覚えた。やはり皐月賞では一番の強敵になりそうだ」

 

 状況によって作戦を変えられることは、レースにおいて大きなアドバンテージだ。特に直線が短い中山レース場で行われる『皐月賞』においては、後方脚質のウマ娘が若干不利になりやすい。

 自分が先団について走ることがあまり向いていないことは、なんとなくわかっていた。自分はこれからどうするべきか、考えに耽っていると、トレーナーは口を開いた。

 

「『弥生賞』、走るぞ」

 

 トレーナーの声に反射的に顔を上げる。

 『弥生賞』は中山レース場にて行われる芝2,000mのレース。つまり、皐月賞と同じ条件にて行われるレースである。また、皐月賞のステップレースに指定されており、このレースにて3着以内に入ったウマ娘には優先出走権が与えられる、正しく前哨戦に相応しいレースでもある。

 

「そこで中山の走り方を身体に叩き込め。皐月賞に備えてコーナーの走り方や仕掛け時を見極めろ」

 

 次の目標が決まった途端、身体が震え上がるような感覚を得る。気持ちがレースへ向かっているのが自覚できた。

 

「お前なら勝てるレースだ。これからビシバシ鍛えていくぞ!」

「……はい!」

 

 標的が定まり、改めて気持ちを引き締める。

 クラシックの戦いは既に始まっている。気温は未だ低い日々が続いているが、着々と春への準備が始まっていることが微かに感じられた。




ライバルウマ娘の名前考えるの難しいけど楽しいです。

p.s.
本日のぱかライブ、カオス過ぎて情報をすべて受け入れるのに時間がかかった。
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