魔女姉妹の転生長女は自己犠牲を厭わない   作:書鳳庵カルディ

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第十話 ダンジョンデート

「姉さんって、最近デメテルとへカーティによく構ってるよね」

「そうかしら?」

「そうだよ! こないだはデメテルに姉さん特製のマフラーを自慢されたし、先週はへカーティにデートの自慢話をされたし」

「二人とも何やってるのよ」

 

 デメテルと一緒に山林に行ってから数日後の朝のこと。

 みんなで朝食を食べているときに、イストスが見ての通り騒ぎ始めた。

 どうやら、自分だけ私に構われていないのが不服だったらしい。

 

「そういうわけで、今日は姉さんに付き合ってもらうから。確か今日は暇だったよね?」

「まぁ、特に予定は入っていないけれど」

「それじゃあ、今日の予定は決まりだね」

「ぶーぶー」

「デメテルは文句言わない!」

 

 ということで、今日はイストスと一緒に外出をすることになった。

 目的地は、この都市の中に出現したとあるダンジョンだ。

 

 ダンジョンというのは不思議なもので、基本的にはどこにでも自然発生する。

 そのため、洞窟や森林などの人の手が入っていない場所だけではなく、街中にもダンジョンが出現することがあるのだ。

 

 ダンジョンからは魔物が湧いて出てくるため、人が住んでいる場所にダンジョンが出現してしまった場合は、早急にそのダンジョンを制圧しなければならない。

 そのための依頼を、今回はイストスが引き受けたというわけだ。

 

 家を出て目的地に向かう道中で、私はイストスに話しかける。

 

「それにしても、あなたとダンジョンに行くのは久しぶりね。前回は何年前だったかしら?」

「三年前じゃないかな。農村の近くに出現したダンジョンに行った気がする」

「確かに、そうだったわね」

 

 懐かしい思い出だ。

 確かあの時は、魔物が大量発生したせいでイストスの仕事が回らなくなったので、私が手伝いに入ったという経緯がある。

 都市最強の冒険者であるイストスは、なんやかんやで忙しいのだ。

 

 と、そんな話をしながら歩いている内に、私たちは目的地のダンジョンの前に到着した。

 どうやら、商店の地下倉庫がダンジョンに変貌してしまっているようだ。

 

 ここで一つ補足説明をしておくと、この地下倉庫の中身はまだ消えていない。

 というのも、ダンジョンの最奥にあるダンジョンコアを破壊すれば、そのダンジョンは消滅して何もかもが元通りになるのだ。

 この地下倉庫も、ダンジョンコアさえ潰してしまえば元通りになるだろう。

 

「姉さん、準備はいい?」

「ええ、行きましょうか」

 

 そう話してから、私たちはダンジョンへの侵入を開始する。

 ここで装備について説明しておくと、私は山林に行った時と同じパンツスタイルの動きやすい格好で、イストスは革鎧装備に片手剣一本というシンプルな格好だ。

 ちなみに、この片手剣は私が竜の牙を加工して作った特注品である。

 

 侵入したダンジョンの内部は石レンガ造りの迷宮になっていて、湧いてくるゴブリンなどの魔物を倒しながら探索を進めていると、下へ降りる階段を発見した。

 どうやら、ここはどんどん下へ降りていくタイプのダンジョンのようだ。

 

 階段を下りて第二階層へと進むと、第一階層のときよりも強力なオークなどの魔物が私たちに襲い掛かってくる。

 しかし、魔物たちはイストスの前では無力だった。

 自身に身体強化の魔法を施した彼女は、常軌を逸した身体能力を有していて、ゴブリンもオークも一瞬で首を斬られて殺されてしまう。

 

 ゴブリンはともかく、オークの方はそこそこ強い魔物のはずなのだが、イストスは格が違った。

 今のところ、私の出番が一切ない。

 

「さっきから思っていたのだけれど」

「ん、どしたの?」

「イストスは本当に強くなったわよね」

「……まぁ、鍛えてるから」

 

 私の誉め言葉に対して、イストスは照れくさそうにそう答えた。

 まったく、強さに似合わず可愛い子である。

 

 その後も第二階層の探索を続けていると、私たちは地面に木製の箱が落ちているのを発見した。

 これは、ダンジョンに自然発生するいわゆる宝箱で、ダンジョン探索をする冒険者たちの目的の一つだ。

 がらくたが入っていることも多いが、運が良ければ魔導書や魔道具が中に入っている。

 

 以前も説明したように、役立つ魔法が記録された魔導書というのは非常に高価だ。

 それと同様にして、特殊な能力を持つ道具である魔道具も非常に高い値段がつくことがある。

 そのため、宝箱による一獲千金を目指してダンジョンに入る冒険者は少なくない。

 

 そんな宝箱を開けてみると、中には小さな道具が入っていた。

 

「これは……短剣かしら?」

「石製の短剣みたいだね。もしかしたら魔道具かもしれないから、一応持って帰ろうか」

 

 都市に帰れば、一見何の変哲もない道具が魔道具かどうかを確かめてくれる鑑定士がいる。

 この短剣が有用な魔道具だったら一獲千金ものだが、恐らくは何の効果もない普通の短剣だろう。

 夢を見るのもいいが、現実はそんなものだ。

 

 この後も、探索を続けて下に降りる階段を発見した私たちは、第三階層へと降りていく。

 ここでは、湧いてくる魔物には特に変化はなかったが、新たに落とし穴などのトラップが出現するようになった。

 こうなると、私にも出番が回ってくる。

 

 変化に関連する魔法は、ダンジョンの床や壁もある程度変形させることが可能だ。

 これによって、私は壁の穴から飛んでくる矢を防いだり、落とし穴を塞いだりといったサポートを行うことができる。

 ただし一つ制限があって、ダンジョンの床や壁に穴をあけることはできない。

 昔に色々と試したのだが、この制限だけはどうあがいても破れなかった。

 

 私がトラップを潰し、イストスが魔物を潰すという連携によって、私たちは順調にダンジョンの探索を進めていく。

 そうして、時折見つかる宝箱の中身を漁りながら、特に苦戦することなく階段を見つけて第四階層に降りると、これまでの石レンガ造りの迷宮とは違う広大な空間が私たちを出迎えた。

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