魔女姉妹の転生長女は自己犠牲を厭わない   作:書鳳庵カルディ

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第二十三話 これからのこと

「……ところで、私がやろうとしていることにどうやって気づいたのかしら。ボロは出していなかったと思うのだけれど」

「私は姉さんの言動に違和感があったので気づきました。デメテル姉さんは、持ち前の直感で気づいたみたいです。イストス姉さんは……その……」

「ウールギアお姉ちゃん抜きで家族会議を開いた時に、へカーティに教えられるまで気づいてなかったんだよね!」

「デメテル! 姉さんにそのことは話さないって約束だったろ!」

 

 私の計画が無に帰し、妹たちとの家族団欒が落ち着いたところで、冷静になった私が発した言葉に妹たちが反応する。

 その結果、イストスとデメテルの姉妹喧嘩が始まった。

 何気ない疑問だったのだが、イストスにとっては地雷だったらしい。

 

 じゃれついているイストスとデメテルを見ていると、いつも通りの日常に帰ってきたようで何だか気が抜けてしまう。

 だが、実際のところ世界はそのままだ。

 魔女差別と飢餓が蔓延ったままで、何も変わっていやしない。

 

「それにしても、これからどうしようかしらね。とてもじゃないけれど、魔女差別が解決できないのならこの国では暮らせないわ。いっそのこと、どこか魔女のいない遠い場所まで逃げてしまおうかしら」

「その必要はないですよ、ウールギア姉さん。こうなることは分かっていましたから、魔女差別を解決する別の計画をあらかじめ用意しておきました。もう、全ての重荷を姉さんだけに背負わせるわけにはいきませんから」

「そう……それなら、私も協力しないとね。今まであなたたちが、私に協力してくれたように」

 

 そう言いながら、私はへカーティの傍に歩いていき、彼女の顔を覗き込む。

 

「ね、姉さん? どうしたんですか?」

「涙の跡が残っていたから拭いてあげようと思って。嫌だったかしら?」

「嫌じゃないですから拭いてください。計画の話は後でします」

「そう? 話をしながらでもよかったのだけれど」

 

 私はポケットからハンカチを取り出し、へカーティの目元を拭いてやる。

 すると、彼女はさっきまでの真面目な顔から一転して表情を緩め、されるがままになっていた。

 ああ、やはり妹たちには笑顔が似合う。

 

 それから、へカーティの顔を拭き終えてふと視線を横にやると、いつの間にか喧嘩を終えていたイストスとデメテルが羨ましそうにこちらを見ていた。

 

「お姉ちゃん! 私にもそれやってくれる?」

「ええ、いいわよ。イストスも分かってるから、いい子で待っててちょうだい」

 

 イストスに"待て"をして、たくさん泣いたからか涙の跡がひどいデメテルの方に私は歩いていく。

 ところが、その道中で何故だか視界が揺らぎ、足に力が入らなくなってしまった。

 これは……魔力切れの症状か、疲労によるものか、或いはその両方だろうか。

 草原の中で仰向けに倒れこむと、ぼやけた視界に慌てた様子で駆け寄ってくる妹たちの姿が映る。

 

「姉さん!」

「……大丈夫、少し眠たくなっただけよ。ちょっと疲れたから……眠るだけ……」

 

 体調はよくないのだろうが、不思議と気分は悪くない。

 耐えきれずに瞼を閉じると、誰かにひょいと横抱きで抱えられる。

 苦も無くこんなことができるのは、まぁ十中八九イストスだろう。

 

「おやすみ姉さん、いい夢を」

『おやすみなさいイストス、ありがとう』

 

 心の中でそう返して、私は意識を手放した。

 

 ++++++

 

 目を覚ますと、見慣れた自室の天井が目に映った。

 外を見る限り、時刻は昼頃だろうか。

 僅か一週間の間に二回も意識を失って運びこまれることになるとは、なんとも情けない限りである。

 

「ん~? 起きた? お姉ちゃん」

「ええ、おはようデメテル。今回はどれぐらい寝ていたのかしら?」

「丸一日ぐらいだね。一応お医者さんにも診てもらったんだけど、やっぱり魔力切れだったみたい」

 

 私の真横に寝転んで、添い寝を満喫していた様子のデメテルに質問すると、そんな答えが返ってくる。

 やはり、"魔女の概念を変化させる魔法"で魔力を使い切ってしまったのが原因だったらしい。

 

「あ、そういえばへカーティが"お姉ちゃんが起きたら呼んで"って言ってたっけ。多分ダイニングにいるから、準備ができたら行ってあげて。ちゃんと伝えたからね!」

 

 そう言って、デメテルは私の部屋から出ていった。

 これからというところで気絶してしまった手前、へカーティをまた待たせるわけにはいかないので、私もさっさと身支度をして部屋を出ることにする。

 

 そうして階段を降り、一階のダイニングに向かうとそこには、向かい合わせで椅子に腰かけて、話し込んでいるへカーティとエフノールの姿があった。

 そう、あの衛兵のエフノールだ。

 

「お待たせへカーティ。それから、久しぶりねエフノールさん。また何か事件でもあったのかしら?」

「こちらこそお久しぶりです、ウールギア様。本日の用件については……へカーティ様から説明いただいても?」

「はい、エフノール様。ちょうどいいタイミングですね、ウールギア姉さん。これから、昨日話した魔女差別を解決する計画について話し合いをしようとしていたところなんです。こちらの第四王子の方を相手に」

「……はい?」

「秘密にしていて申し訳ありません。僕はヴァシリオ王国第四王子、エフノール・フォン・ヴァシリオと申します。これまで通り、エフノールと呼んでいただければ幸いです」

「その……へカーティ? もう少し説明が欲しいのだけれど」

 

 衝撃の事実を前にして、頭の中がはてなマークで埋め尽くされた私は、ひとまずへカーティの隣に座ってから、彼女を問い詰めることにしたのだった。

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