貴方が怪しまれる番【名探偵コナン】   作:シズキ

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4話 探り合い

「ところで、そう言う希実さんもちゃんとお休みになられてないのでは?」

 

「えっ?」

 

 

この男の事も大概にして、帰られたお客様の席を片付けようとカウンターから離れようとした。

だけど、それは安室さんが許してくれなかった。

 

カウンター席から伸ばされた手は、がっしりと私の手首を掴んで離さない。

そしてなにより、その手を振り払うことが出来なかったことに衝撃を受けた。

 

いくら性別でハンデがあったとしても、私は常に死と隣り合わせだ。

そのために普通の男性だったら振り払うのもわけない。

 

 

「だって、ほら希実さんの指先凄く冷え切ってますよ。それに爪も結構荒れていますね」

 

 

ダメですよ、女性なんですからとにこりと笑う安室さん。

 

 

「そして、これは?」

 

 

人差し指の辺りをスーとなぞる。

 

 

「まるで拳銃でも扱っていたような……」

 

 

その言葉にひやりと背筋が凍った。

 

 

「それは女性に対して失礼なのでは? 拳銃なんてそんな物騒な」

 

 

それでも希実を繕う。

すると安室さんは、私の手を離した。

 

 

「です、よね。すみません! つい気になっちゃいまして、これも探偵の性ですかね」

 

 

拳銃、そう彼が口にした時に見せた鋭い視線とは打って変わって、さっきまでの柔らかな笑みを浮かべる安室さんだ。

 

 

「探偵、ですか」

 

「はい! まだまだ修行の身ですが、何かあれば連絡ください」

 

 

そう言って手慣れた手つきで、名刺を渡された。

 

「へぇ、安室さん、探偵なんだ」

 

 

いつの間にかマスターが後ろから名刺を覗き込む。

 

 

【毛利探偵事務 弟子 安室透】

 

 

名刺には確かにそう書いてあった。

 

 

「はい、マスターも何かあれば」

 

 

そんな安室さんにマスターは可笑しそうに笑う。

 

 

「まず僕達の前に、迷子の安室さんをなんとかしないとね」

 

「あぁ、そうでした」

 

 

マスターに言われて、今思い出しましたというような飄々とした態度を見せた。

そこには初めて出会った時の焦り、戸惑いそれらはどこにも無かった。

 

そこに少し違和感を抱く。

この短時間で彼はどうして変わったのか。

 

スマホの存在を思い出したから? 人はそれだけで安心を得れるのだろうか。

 

 

「安室さん、お家はどこなの? 一人で帰れる?」

 

 

そうマスターは安室さんに尋ねる。

 

 

「はい、スマホで地図のアプリを見ながら向かおうかなと」

 

「……へぇ、携帯は家に帰るまで持たなそうだけど?」

 

 

マスターは彼のスマホを指でトントンと叩くと安室さんは眉間に皺を寄せた。

 

 

「なんなら希実ちゃん、お貸ししますよ?」

 

「はい?」

 

 

いつもの突飛なマスターの発言に思わず声を上げる。

 

すると安室さんは少し考えた素振りを見せて、それじゃあお願いします、なんてほざいた。

 

 

「ちょっ、ちょっとマスター? 私仕事中だけど」

 

「希実ちゃん、疲れてるんだって? ちゃんとばっちり会話は聞いてたよ」

 

 

ちょっと無理させ過ぎたかなぁなんて言って考え込むマスター。

 

 

「ほいほいお疲れ様」

 

 

まるで追い払うかのように安室さんと共に店の外に追い出された。

なんてことだ。

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