貴方が怪しまれる番【名探偵コナン】   作:シズキ

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5話 取り繕われた仮面

「あー、希実さん。すみません、ご迷惑でしたよね」

 

 

店を出されて呆然としていると、共に追い出された安室さんは肩を落とした。

出会ってまだ数時間だが、コロコロと表情が変わる人だ。

 

 

「そんなことないですよ。ところで安室さんはどこをお住まいで?」

 

 

そう安室さんに尋ねると、何とも言い辛そうに重々しく口を開いた。

 

 

「**市**って場所なんですが……」

 

「あ、結構ご近所さんですね」

 

「そうなんですね」

 

 

そうのんびりと返事をする安室さんをバレないようにこっそりと観察する。

やっぱり何かこの男は色々と可笑しい。

 

『ここはどこですか?』なんて言ってきた時のあの様子が嘘のようには思えない。

むしろ、張り付けた胡散臭い笑顔を振りまく今の彼より、あっちの方がまだ素らしい。

 

 

そしてなにより、きっと彼は

現在位置を完全に知らなかった可能性が高い。

 

まるで知らない場所に場所にいきなり飛ばされたかのような、そんな必死さをあの時は感じた。

 

 

じゃあどこからだ。どこから、彼は平常心を取り繕うことが出来たのか。

 

唯一の存在はやっぱり……。

 

 

「————さん、希実さん!」

 

「あっ、は」

 

 

思い耽っている所に安室さんに呼ばれてハッと現実に戻る。

慌てて顔を上げると、安室さんの顔が目と鼻の先ぐらい接近していて思わず固まった。

 

「あ、あの、安室さん近いです」

 

「あぁ、すみません。何か考え事でもしているご様子だったので」

 

 

安室さんはそう言うと、結構あっさりと引いてくれた。

ちょっとドキッとしたが、それが彼の狙いか。まさかハニトラか。

 

もし誰彼構わず、さっきの行動を振りまいているのなら無差別殺人が起こるぞ。

 

 

「安室さん、むやみにそういうのは止めた方が」

 

 

日本の未来のためにやんわりと注意しとく。

これ以上、少子化社会が促進したら恐い。

 

 

「もしかして、照れてますか?」

 

「やめてください」

 

 

そう私が食らいつくように言うと、安室さんはくすくすと笑った。

 

 

「ところで何を考えておられたんです?」

 

 

散々笑った後に安室さんはさも普通に、会話を繋げるようにそう言葉を発した。

 

けれども、どう見ても安室さんの顔は笑っているが、目が笑っていない。

そして私はこの目を知っている。奴らと同じ目だ。

 

 

「安室さん、貴方は一体何者ですか」

 

 

もし彼が本当に組織の人間で、この日本に害をなす存在ならば、私は一切容赦しない。

その意を込めて、私は安室さんと見つめ合う。

 

あくまでもまだ、九条希実として、彼の前に立った。

 

「出会った時から、ずっと違和感を感じてたんです」

 

「違和感、ですか?」

 

 

安室さんは困ったように笑いながら聞き返した。

私は頷いた後、言葉を続ける。

 

 

「安室さんは余りにも土地勘が無さ過ぎるんです。最近こちらに引っ越してきたとしても、貴方が先ほど提示してくれた住所と、私と出会った場所はそう遠くないはず。仮にも探偵が数十分先の家の位置が分からなくなるのはどうかと思いますが?」

 

「今日、引っ越して来たばかりなんですよ。その件については僕も探偵としてまだまだですね」

 

「今日ですか」

 

「えぇ。何か疑いは晴れましたか?」

 

 

例え引っ越してきたとしても、“今日”とは予想外で反応してしまう。

そんな私を見て、あくまでも余裕そうな安室さんがそこにいた。

 

でも引っ越し云々は最初からあまり興味ないのだ。

 

 

「いいえ、まったく」

 

 

私がそう告げると、安室さんは不思議そうにこちらを見る。

 

 

「なぜです?」

 

「もしこの付近の土地に自信が無かったのなら、すぐに現在地を確認できるスマホを手に置いておきたいはず。えぇ、もちろん安室さんはちゃんと持っていました。でも完全にスマホの存在を忘れていましたよね? 初めて会った時の様子からもスマホを使う余裕がないように感じましたが、ただの迷子でねぇ」

 

 

そこで言葉を切って、なにも言わなくなった安室さんを尻目に、もうひと押しと再び口を開ける。

 

 

「おかしな話ですが、ここが東京ってことすら知らなかったのではないですか? スマホでなにか見ていたようですけど、そこに住所か何かが書いてあって、それを私に教えたのでは? そうすると全て辻褄が合う」

 

「貴方は一体何を言いたいのですか」

 

 

「安室さんは何者かに無理やり連れてこられたのではないか、という考えに最終的に辿り着きました」

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