キヴォトスで生徒とイチャイチャするだけの先生アーカイブ 作:微糖珈琲 -砂糖増増-
公安局としての務めとは何だろう。
ブラインダー越しに見える景観。
ある生徒同士は何かしらの会話で笑顔を見せて、
ある生徒達は結託して何かを叫びながら銃を乱射している。
あ、爆ぜた。
……良くも悪くもいつも通りだ。
全く。
えと……何を考えているんだったか。
あぁ、そう。
公安局としては、こんないつも通りの日常を送っているキヴォトスを守っていかなければならない訳で……。
「局長!」
「……どうした?」
「あっ、いえ……!その、コーヒーのおかわりは」
視線を外から室内の方へ移す。
公安局所属の生徒、つまり私の部下が立っている。
次に持っていたコーヒーカップに視線を落とす。
空っ。
「気が利くな、頼む」
「にへへ〜了解しました!」
「そんな気の抜けた声を出すな。いつ如何なる時でも、緊張を緩めるなといつも言っているだろう!!」
カップを渡す際に、眦を吊り上げて吠えて見せると、部下は反省半分くらいで「ひぇ〜!」と声を上げながら私のカップをパクっていった。
……時々思うが、私は少しナメられているのだろうか。
『狂犬』という異名が巷で流行り始めて少し経つが、まさかこの異名は私を嗤う為に付けられたモノナノではないかと不安になってきた。
「はぁ……」
色々考えてしまい、それら全てを溜め息として外へ吐き出す。
そして少し間が空き、手元が寂しくなった私は、両手をアウターのポケットに突っ込んだ。
因みに、コーヒーカップは返ってこなかった。
後であの部下は拷問だ。
***
「そういえば先生、今日はどこへ行くんだ?」
「今日は公安局だよ」
時期は春。だんだんと暖かくなってきたキヴォトスの道端には小さな、けれども確かな生命が芽吹いてきている。
私とミナは、今公安局を目指していた。
「ヴァルキューレに、何の用が?」
「ちょ、ちょっと……何その目は」
誰が人の足喜んで舐めそうな顔してるんじゃい!!
と、ノリでツッコミが出そうだったが、そんな事口走ったら即刻山海経with玄龍門送りにされそうなので堪えた。
ミナは「ふぅ」と息を漏らした。
「別に疑っている訳ではないが……その……少し心配だ」
「なっ、なななな、何がよー!!」
「山海経に居た頃から、公安局の『狂犬』の話は聞いている」
「え?」と素っ頓狂な声が出る。
何でここでカンナが出てくるんだろう。
というかミナ、なんか凄い険しい顔してる。
カンナと面識あったのかな。
「大丈夫だよ、そんな怖い子じゃないから!」
「わ、私を人見知りの子供だと思っているのか!」
顔を真っ赤にしながら反抗してくるミナに「可愛い〜」と笑うと、彼女はばつが悪そうに私から顔を背けた。
「……その、なんだ。先生は狂犬の事をどう思ってるんだ」
「んぇ」
どう……?
まぁ、仕事ができて羨ましいな〜程度には。
……っは?!
いけない!!こんな、生徒を軽視しては!!
私はぶんぶんと首を振り、声高々に答える。
「とっても大切な生徒だよ!!」
「先生はいつもソレだな……」
でもそうか。
ミナは最後に「ふふ」と笑ってくれた。でも、どこか寂しそうにも見えた。
その後、私より先に先行して歩き始める。
その表情に、小さな疑問を抱きつつ。
私は彼女の背中を追うのだった。