小学六年生になった健と十代は受験シーズンというものを迎えていた。そして、この世界の日本ではまず進学候補に挙がるのがデュエルアカデミアである。
デュエルアカデミアの試験は筆記と実技の二つに分けられる。そして、健と十代にとっては筆記が鬼門だった。
筆記で万全を期するためには存在する全てのカードの名前、効果、絵柄、フレーバーテキスト、攻撃力、守備力に加えて特殊な処理を含めたルールを覚えなければならないという科挙のような暗記勝負だった。さらに一般教養科目もあるためそちらも油断できない。
正直言って難しいのだ。オマケに倍率も高いから手におえない。
デュエルアカデミア中等部の受験を決めた健と十代はそれこそ死ぬ気で勉強しようとした。
「んっ、ここに載ってる『亜空間物質転送装置』って『ユベル』と相性良いんじゃね。いざというとき逃げられるし」
「ホントか? 何ページだ?」
十代はバラバラと参考書のページをめくった。
「ほら」
健が持っていた教科書を開いたまま十代に見せる。
『亜空間物質転送装置』
通常罠
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、
このターンのエンドフェイズ時までゲームから除外する。
「へえ、これなら『ユベル』をさらに進化させられるしいいな! よし! ちょっとカードショップ行こうぜ!」
「落着け落着け。たしかこのカードなら持ってたはず。ちょい待ち。えーと、あった! ほれ、これだ」
健は十代に『亜空間物質転送装置』を渡す。
「サンキュー健。よっしゃ! 試しにデュエルしようぜ!」
「うーん、まあいっか。やろう」
このように気付いたらデュエルをしていたり、デッキを作ったりしていたのだ。
遊戯王の教科書などルールを除けばカードのカタログみたいなもの。まだ小学生の彼らにとってそれは抗いがたい誘惑だった。
「うへぇ、やっぱ勉強は苦手だぜぇ。決闘がしてえよぉ」
十代は情けない声を上げる。
お守りを身に着けてからというものユベルにより対戦者が意識を失うこともなくなった。その結果、負い目がなくなった十代は決闘馬鹿と化していた。
「しょうがないって。二人で受かるには勉強あるのみなんだから」
一方の健も口ではそう言いながらかなりだれていた。
「でもオーナーやってる海馬所長って大和さんの知り合いだろ。頼んだら実技だけにしてくんねえかな」
「無理だろ。あの伝説の社長だぞ? どうせ『俺のアカデミアに凡骨はいらん。入りたければ実力で勝ち取るがいい。フ八ハハハハハッ!』とか言うに決まってる」
「そうかぁ。でも決闘は理論より実技なんだから別に良いと思うけどなー」
「まあね。でもある程度は知らなきゃダメでしょ。効果を知らなかったら『ユベル』に攻撃しちゃうかもしれないし」
「それはそうだけどよお」
「てかグチグチ言ってないで勉強しよう。まあ、それでも分からない問題があったら鉛筆転がせばいいさ。選択問題限定だけど」
「それいいかもな」
もうかなり重症である。
「じゃあ、この天津神神社特製の開運コロコロ鉛筆をあげよう」
「サンキュー。いざとなったら使わせてもらうぜ」
「正気か? 冗談なのに」
健は呆れた目をしていた。
とうとうやってきた試験当日。
二人はなんとか筆記試験を突破する。それがコロコロ鉛筆のおかげかは定かではない。ただ十代は健に礼を言っていた。
そして、いよいよお待ちかねの実技試験。会場では既に試験が始まっていたが十代はまだ来ていなかった。
「試験当日に遅刻とか。やっぱ一緒にくるべきだったか?」
『試験番号九十九番!』
「おっ、もう出番か」
十代の番号は百十番。健より後だ。しかしデュエルスペースは四つあるので、わざと長引かせても無意味。なにより筆記の成績が悪い健がそんなデュエルをしたら不合格になるだろう。
「でも時間かかるデッキだし長くなっても仕方ないよね。間に合ってくれよ十代」
そう神に祈りながら健はデュエルフィールドへと向かった。
試験前日、健は大和に呼び出されていた。
「いいか健。お前に与えられた加護は本土にいれば協力無比なものだ。フラグを警告にするためにもう一度言うぞ。お前の加護は本土を離れれば弱まる可能性が非常に高い」
「加護ってなにさ? 神社生まれだから?」
「いいから真面目に聞け。幸いにも高等部と違い、中等部は本土にある。だから本土で決着をつけるんだ」
何故だかわからないが高等部は絶海の孤島にある。きっと社長の趣味だろう。
「決着ってなんの?」
「三幻魔を巡る争いだ」
「三幻神じゃなくて?」
「ああ。これだ」
そう言って大和は四枚のカードを健に渡した。
描かれているのは『神炎皇ウリア』『降雷皇ハモン』『幻魔皇ラビエル』『混沌幻魔アーミタイル』の四枚。ちなみにOCGの方である。フィニッシャーとしてはある程度優秀だが、結構簡単に倒すことが出来てしまう。まあ、アニメでもばんばんやられていたが。
「四枚あるじゃん。三幻魔なのに」
「アーミタイルは三体を融合した姿だ」
ちなみに三幻神すべてをリリースして特殊召喚できる『光の創造神ホルクアクティ』というカードも存在する。ただし、この世界では公の場に出ていないため全く知名度がない。
「ふーん。で、このレアカードが狙われてるってこと」
「そんな感じだ」
「でもこれってどうせ親父が創った偽物なんでしょ」
「そうだ。本物はアカデミアの高等部がある島に封印されている。故にこの四枚をお前に託し、相手の目をかく乱しようというわけだ」
「中学生になろうとしている子供にそんな役目を押し付けるとかないわー」
健は茶化したように言うが、本当に面倒くさそうである。デュエルならともかくリアルファイトでこられたらどうするんだとも思っていた。
「そういうわけでお前が幻魔を持っているとアピールするためにそのカードを使って試験官を倒せ」
「まだ了承してないんだけど、てかネフティス様で勝とうと思ってたのに」
三幻魔をしようするとなるとそれぞれ専用のデッキを組む必要があるだろう。アーミタイルならば猶更だ。せっかく試験用に組んだデッキを崩さなければならないのは健も嫌だった。
「偽物とばれないよう決して誰かに奪われることのないように。頼んだぞ」
「おい、話聞けやハゲ。会話のキャッチボールしろ」
「他にもカードやるぞ?」
「任された!」
そんなやりとりが二人の間で交わされていた。
「(いつにもまして意味不明なこと言ってたな)」と健は回想を終える。
健の前には試験官。対戦者が変わる度にデッキを変えているようで、それに比べれば自分のデッキはまだマシかと健は考え、やっぱりこっちのがキツイと結論付ける。
「(三幻魔って噛み合わないんだよなー)」
「初めまして。試験だからといって過度に緊張せず、全力でくるように」
「はい。よろしくお願いします」
健は腰を折って礼をした。
「「デュエル」」
健 LP4000
試験官 LP4000
「先攻は受験者である君からだ」
「はい。先攻ドロー。あり?」
抜いたはずの『ネフティスの鳳凰神』が手札に来た。さらに抜いたはずの『伊弉凪『伊弉波』『雷帝神』『月読命』も手札にある。
「どうしましたか?」
思わず停止している健に試験官が声をかけてきた。
いつまでも呆けてはいられないので健はかぶりを振って気を取り直す。
「いえ、なんでもないです。『荒魂』を召喚」
「スピリットとは珍しい」
「家が神社なもので」
「なるほど。続けて」
健がまさかと思いながらデッキを確認すると抜いたはずの『荒魂』『和魂』『八俣大蛇』以外のスピリットモンスターが残っており、ラビエルを召喚するために入れたはずの悪魔族カードがほぼすべて抜けている。さらに『武神-ヒルメ』という知らないカードが入っていた。
健はまた親父の仕業かと訝しんだ。
「(これラビエル出せるかな?)とりあえず、デッキから『和魂』を手札に加えます」
「手札を五枚捨てて永続魔法『守護神の宝札』を発動」
「聞いたことのないカードだ」
「このカードは手札を五枚捨てることでカードを二枚ドローし、自分のドローフェイズの通常ドローを二枚にすることができるんです」
健 手札0→2
「そうすると、五枚捨てるということはカードアドバンテージを取り戻すのに三ターンかかることになる。また、そのカードが破壊されない保証もない」
「その通りです。でも『和魂』が墓地に捨てられたことで一枚ドローします」
健 手札2→3
「さらに『強欲な壺』を発動。カードを二枚ドローします」
健 手札2→4
「そして、手札から永続魔法『王家の神殿』を発動」
健の背後にエジプトにあるような神殿が音を立てて出現する。フィールドの『荒魂』とはミスマッチかと思えば、魂だからか意外と馴染んでいる。
『王家の神殿』
永続魔法
このカードのコントローラーは、罠カードをセットしたターンでも発動できる。
また、自分のフィールド上のこのカードと「聖獣セルケト」を墓地へ送る事で、
手札・デッキ・融合デッキからモンスターカードを1枚選択し、特殊召喚できる。
「永続罠『魔封じの芳香』をセットし、『王家の神殿』の効果で発動します」
不気味な香炉が現れてフィールドに煙と香が立ち込めはじめ、神殿や荒魂と合わせてフィールドがより怪し気な雰囲気に包まれる。
『魔封じの芳香』
永続罠
このカードがフィールド上に存在する限り、
お互いに魔法カードはセットしなければ発動できず、
セットしたプレイヤーから見て次の自分のターンが来るまで発動できない。
「カードを一枚伏せてターンを終了。『荒魂』が手札に戻ります」
「私のターン。ドロー。
なるほど、『魔封じの芳香』を使えば『サイクロン』や『大嵐』などの発動を遅らせることが出来る。しかし、攻撃への対策はしているか?
私は『切り込み隊長』を攻撃表示で召喚」
『切り込み隊長』
効果モンスター
星3/地属性/戦士族/攻1200/守 400
このカードが召喚に成功した時に発動できる。
手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。
このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
相手は他の戦士族モンスターを攻撃対象に選択できない。
「効果を発動。もう一枚の『切り込み隊長』を特殊召喚。これにより戦士族を攻撃対象に選択することはできなくなり君の攻撃は封じられた」
フィールドには二人の『切り込み隊長』。この場では一体どっちが隊長なのだろうと健は益のないことを考えた。
しかし、絵面はともかく『切り込み隊長』二枚によるロックはお手頃でありながら強力である。
「バトル! 『切り込み隊長』二体でプレイヤーに直接攻撃!」
「手札から『バトルフェーダー』を特殊召喚。バトルフェイズは終了されます」
『バトルフェーダー』
効果モンスター
星1/闇属性/悪魔族/攻 0/守 0
相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚し、バトルフェイズを終了する。
この効果で特殊召喚したこのカードは、
フィールド上から離れた場合ゲームから除外される。
「最近、出回り始めたカードか。よく持っていたね」
「実はこのカードの開発を海馬コーポレーションに頼んだの自分なんです。父経由ですけど」
「これは思わぬ未来の大物に出くわしたかもしれないな。でも手加減はしないよ」
「望むところです」
「ならば『切り込み隊長』によるロックをどう捌く?」
「こうします。罠カードオープン。『底なし流砂』」
『底なし流砂』
永続罠
相手のエンドフェイズ時に1度だけ、
フィールド上に表側表示で存在する攻撃力が一番高いモンスターを破壊する。
自分のスタンバイフェイズ時に自分の手札が4枚以下の場合、
このカードを破壊する。
「さすがだ。私はカードを三枚伏せてターンエンド」
「この瞬間、『底なし流砂』の効果発動。片方の『切り込み隊長』を破壊します」
試験官のフィールドが砂漠に変化し、一人の『切り込み隊長』は流砂に呑みこまれて呻き声を上げながら沈んでいった。
神殿に砂漠とフィールドのエジプト感も極まってきている。
「まず『守護神の宝札』の効果で二枚ドロー」
健 手札1→3
「スタンバイフェイズ、手札が四枚以下のため『底なしの流砂』は破壊されます」
試験官のフィールドにあった砂漠が消えて元に戻った。
「手札から『和魂』を召喚。そして『和魂』の効果で『和魂』と『バトルフェーダー』を生贄に、『八俣大蛇』を通常召喚してカードを一枚ドロー」
健のフィールドに日本人なら誰もが知る有名なお酒大好きモンスター八俣大蛇が現れる。その姿は神殿に合わせたのかキングコブラっぽくなっており、首同士がぶつかりあって少々動きづらそうだ。
『八俣大蛇』
スピリットモンスター
星7/炎属性/ドラゴン族/攻2600/守3100
このカードは特殊召喚できない。
召喚・リバースしたターンのエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。
このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、
自分の手札が5枚になるまでデッキからカードをドローする。
「カードを一枚セットし、バトル。『八俣大蛇』で『切り込み隊長』を攻撃」
「罠カード発動『聖なるバリア-ミラーフォース-』。『八俣大蛇』は破壊される」
「『王家の神殿』の効果で先ほど伏せたカウンター罠『神の宣告』を発動。ライフを半分払い『聖なるバリア-ミラーフォース-』の発動を無効にします」
健 LP4000→2000
「なに!?」
「屍山血河!」
『切り込み隊長』の前に現れたバリアは消え去り、『八俣大蛇』八つの頭の内一つが『切り込み隊長』を宙に突き飛ばして別の頭が丸呑みにした。
試験官 LP4000→2600
「『八俣大蛇』の効果発動。このカードが戦闘でダメージを与えたとき、デッキから手札が五枚になるようドローします」
健 手札1→5
「メインフェイズ2。『心鎮壺』をセットして発動。伏せカード二枚を封印します」
出現した壺に伏せカード二枚が吸い込まれ、重しを乗せて蓋をされた上に紐で結ばれて封印された。
『心鎮壺』
永続罠
フィールド上にセットされた魔法・罠カードを2枚選択して発動する。
このカードがフィールド上に存在する限り、
選択された魔法・罠カードは発動できない。
「くっ」と試験官は思わず呻く。伏せていた『大嵐』と『サイクロン』が使えなくなったからだ。
「さらに手札から『天使の施し』を発動。三枚ドローして二枚捨てます。そして、墓地の『伊弉凪』様と今捨てた『荒魂』を除外して手札から『ダーク・シムルグ』を特殊召喚」
「『ダーク・シムルグ』?」
「このカードが表表示でフィールドに存在する限り相手はカードをセットすることが封じられます」
「なんだと!?」
『ダーク・シムルグ』
効果モンスター
星7/闇属性/鳥獣族/攻2700/守1000
このカードの属性は「風」としても扱う。
自分の墓地の闇属性モンスター1体と風属性モンスター1体を
ゲームから除外する事で、このカードを手札から特殊召喚する。
手札の闇属性モンスター1体と風属性モンスター1体をゲームから除外する事で、
このカードを自分の墓地から特殊召喚する。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
相手はフィールド上にカードをセットする事ができない。
シムルグとはイランの神話に登場する不死鳥であり、ユダヤ教では陸のベヒモス、海のレヴィアタンと並び、空のジズと三頭一体の怪物とされている。でも知名度は最も低い。
しかし、その効果は絶大。このカードと『魔封じの芳香』『心鎮壺』により試験官はモンスターのみでこの状況を打開しなければならなくなった。
この魔法・罠封じに加えて地盤沈下とおジャマなどでモンスターまで封じられたらサレンダーものである。
「カードを一枚伏せてターンエンド」
八俣大蛇が手札に戻ってくるが、その巨体で迫ってくるものだから健は尻もちをつきそうになった。
「私のターン。ドロー。私は『コマンド・ナイト』を守備表示で召喚」
『コマンド・ナイト』
効果モンスター
星4/炎属性/戦士族/攻1200/守1900
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
自分フィールド上に表側表示で存在する戦士族モンスターの攻撃力は400ポイントアップする。
また、自分フィールド上に他のモンスターが存在する場合、
相手は表側表示で存在するこのカードを攻撃対象に選択する事はできない。
「正直ここまで行動を封じられるとは思わなかったよ。素晴らしいロック戦術だ。私はターンを終了する」
このターン試験官はほとんどなにも出来ていない。しかし幸いにもロック戦術を使う者同士、二人の間に不穏な空気が流れることはなかった。
最上級モンスターによるワンショットキルなどのパワーゲームが人気の中、バーンやロックは人気がない。プロでもヒール役がほとんどである。そんな中、子供でありながらロック戦術を使う健は珍しいのだろう。試験官は微笑ましそうに見守っていた。
次のターンが来るまでは……。
「『守護者の宝札』で二枚ドロー」
健 手札2→4
「手札の『八俣大蛇』を除外して伏せていた『七星の宝刀』を発動。デッキから二枚ドローします。そして手札から『幻銃士』を召喚」
『幻銃士』
効果モンスター
星4/闇属性/悪魔族/攻1100/守 800
このカードが召喚・反転召喚に成功した時、
自分フィールド上に存在するモンスターの数まで自分フィールド上に
「銃士トークン」(悪魔族・闇・星4・攻/守500)を特殊召喚する事ができる。
また、自分のスタンバイフェイズ毎に自分フィールド上に表側表示で存在する
「銃士」と名のついたモンスター1体につき相手ライフに
300ポイントダメージを与える事ができる。
この効果を発動するターン、自分フィールド上に存在する
「銃士」と名のついたモンスターは攻撃宣言をする事ができない。
「モンスターの数は2。よって二体の銃士トークンを特殊召喚。これぞ三銃士!」
健はそう言うが、現れた三体の銃士は有名なあの三銃士とは似ても似つかない悪魔である。
「そして三銃士を生贄に捧げ、『幻魔皇ラビエル』を特殊召喚」
大地を割いて現れたのは『オベリスクの巨神兵』のような青い魔神。幻魔の皇という称号を冠する最強の幻魔である。
『幻魔皇ラビエル』
効果モンスター
星10/闇属性/悪魔族/攻4000/守4000
このカードは通常召喚できない。
自分フィールド上に存在する悪魔族モンスター3体を
生け贄に捧げた場合のみ特殊召喚する事ができる。
相手がモンスターを召喚する度に自分フィールド上に「幻魔トークン」
(悪魔族・闇・星1・攻/守1000)を1体特殊召喚する。
このトークンは攻撃宣言を行う事ができない。
1ターンに1度だけ、自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる事で、
このターンのエンドフェイズ時までこのカードの攻撃力は
生け贄に捧げたモンスターの元々の攻撃力分アップする。
ラビエルの名前の由来はおそらく四大天使ラファエル。名前に神は癒されるという意味をもつ癒しの天使である。堕天してラビエルになったのだろうか?
「な、なんだそのモンスターは?」
試験官はその威容に圧倒されていた。
いや彼だけではない。観客席だけでなくその場の誰もがデュエルを中断し『神炎皇ウリア』に釘付けになっている。それだけのプレッシャーがそのモンスターにはあった。
「なんか三幻魔とかいうカードらしいです。凄そうな割に意外とあっさりやられちゃうんですよねー。まあそれはいっか。『神の恵み』を伏せて『王家の神殿』の効果で発動。そして『魔封じの芳香』『心鎮壺』『神の恵み』三枚の罠カードを生贄に『神炎皇ウリア』を特殊召喚」
フィールドが裂け、噴き出したマグマが火柱のように立ち昇り、その中から赤い竜が現れる。その姿はまるで伝説のデュエリスト武藤遊戯が使っていた神のカード『オシリスの天空竜』のようだった。
『神炎皇ウリア』
効果モンスター
星10/炎属性/炎族/攻 0/守 0
このカードは通常召喚できない。
自分フィールド上に表側表示で存在する罠カード3枚を
墓地に送った場合のみ特殊召喚する事ができる。
このカードの攻撃力は、自分の墓地の永続罠カード1枚につき
1000ポイントアップする。
1ターンに1度だけ、相手フィールド上にセットされている
魔法・罠カード1枚を破壊する事ができる。
この効果の発動に対して魔法・罠カードを発動する事はできない。
名前の元ネタは神の炎だけに四大天使のウリエルだろうが、どう見ても天使ではない。
『神炎皇ウリア』の攻撃力は墓地に存在する永続罠の数×1000アップします。墓地には『底なし流砂』『魔封じの芳香』『心鎮壺』『神の恵み』の四枚があるので『神炎皇ウリア』の攻撃力は4000」
神炎皇ウリア 攻0→4000
「そして、『神炎皇ウリア』の特殊効果発動。相手フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊します。マジックデストラクション!」
ウリアの凄まじい咆哮により、試験官のフィールドに伏せられていた『サイクロン』と『大嵐』は破壊される。
「ぐおっ!」
そのバインドボイスのような威嚇に試験官は身を竦ませて呻き声を上げた。
「(『サイクロン』と『大嵐』か。ウリアを召喚した時に発動されなくて良かった)」
「『魔封じの芳香』がなくなったことでさらに『強欲な壺』を発動。デッキから二枚ドロー。」
健 手札0→2
「そして永続魔法『平和の使者』を発動します」
『平和の使者』
永続魔法
フィールド上に表側表示で存在する攻撃力1500以上のモンスターは攻撃宣言をする事ができない。
このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に100ライフポイントを払う。
または、100ライフポイント払わずにこのカードを破壊する。
「なぜそのカードを発動する?」
落ち着いてきたのか試験官は問う。
「これはただの生贄です。『守護神の宝札』『王家の神殿』『平和の使者』永続魔法三枚を生贄に捧げて『降雷皇ハモン』を特殊召喚」
室内だというのに天井に暗雲が広がった。雷鳴が響き、閃光が迸る。稲妻の落ちた神殿は崩れ去り、それは降りてきた。金色に輝く骸骨のような身体。その姿はまるであの『ラーの翼神竜』のよう。
『降雷皇ハモン』
効果モンスター
星10/光属性/雷族/攻4000/守4000
このカードは通常召喚できない。
自分フィールド上に表側表示で存在する永続魔法カード3枚を
墓地に送った場合のみ特殊召喚する事ができる。
このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、
相手ライフに1000ポイントダメージを与える。
このカードが自分フィールド上に表側守備表示で存在する場合、
相手は他のモンスターを攻撃対象に選択できない。
天使、天使ときてハモンの名前の由来は悪魔のアモン。悪魔の侯爵であり、蛇の尾をもつ狼だったり、鳥頭の男だったりする。
ちなみにアニメでは光属性雷族にも関わらず凍らせた水の中から出てくる。アカデミアの地下に封印されていたからかもしれない。
「特に意味は無いけど『幻魔皇ラビエル』の特殊効果発動。『ダーク・シムルグ』を生贄に捧げ、『幻魔皇ラビエル』の攻撃力を『ダーク・シムルグ』の攻撃力分アップさせます」
幻魔皇ラビエル 攻4000→6700
「これで見栄えも良くなったかな。最後に『神炎皇ウリア』『降雷皇ハモン』『幻魔皇ラビエル』を除外してエクストラデッキから『混沌幻魔アーミタイル』を特殊召喚」
三体の幻魔が融合し現れたのは三体をバラバラにしてパーツを組み合わせたかのような異形。
おそらく名前の由来は天使アルミサエル(Almisael)だろう。悪魔から妊婦や胎児を守護するのだという。うん、イメージとは程遠い。
そして、エクストラデッキに『武神姫-アマテラス』なんてカードがあったが、健は見なかったことにした。
『混沌幻魔アーミタイル』
融合・効果モンスター
星12/闇属性/悪魔族/攻 0/守 0
「神炎皇ウリア」+「降雷皇ハモン」+「幻魔皇ラビエル」
自分フィールド上に存在する上記のカードをゲームから除外した場合のみ、
融合デッキから特殊召喚が可能(「融合」魔法カードは必要としない)。
このカードは戦闘によっては破壊されない。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
このカードの攻撃力は自分ターンのみ10000ポイントアップする。
混沌幻魔アーミタイル 攻0→10000
「攻撃力10000だと!?」
「ふぅ、これでミッションコンプリート。四枚のカード全部使って倒せとかどんな無理ゲーかと思ったけど、意外といけるもんだな」
大和の言葉は「そのカード(の内どれか)を使って試験官を倒せ」ということで決して全部使って倒せと指示したわけではない。とはいえアピールとしては大成功だろう。
「『混沌幻魔アーミタイル』で『コマンド・ナイト』に攻撃。全土滅殺 転生波!」
アーミタイルから放たれた光は『コマンド・ナイト』を容易く葬り去り、試験官を飲み込んだ。そして、光が止んだ後には意識を失った試験官が横たわっていた。
試験官 LP4000→0
健 WIN
「あれ? 大丈夫ですか?」健は慌てて試験官の元に駆け寄った。
「駄目だ、起きない。やべえ、十代みたいなことになっちまった。さすがに迫力があり過ぎたか? あっでもこれで進行が遅れれば十代が間に合うかも」
その後、試験が一旦中段されたが十分ほどで再開された。問題の試験官は医務室に運ばれたものの一時間程で目覚めたとか。後日そのことをきいた健は一人胸を撫で下ろすのだった。