しかも基本の「Fateルート(セイバールート)」「UBWルート(凛ルート)」「HFルート(桜ルート)」だけでも厄介なのに各スピンオフによって「第五次聖杯戦争で起きてる事象」はさらに違うっぽくて、ルート横断再構成をしなければならない都合話の収拾がつかなくなってきた
「このルートではこの日程にこの現象が起きる」のリストが欲しいぜ!!!
という言い訳で投稿が遅れたのを許してもらえないかなァ!!!!
同日、同時刻、冬木市某所。
蔦が生い茂る、怪しげな洋館。黒魔女の住むようなその西洋邸宅は、実際に魔女が住む家だった。
その魔女、正確に言うならば魔女術を用いる女魔術師の名を、沙条綾香という。
眼鏡をかけた黒髪の、陰気な少女だった。
彼女は数年前に冬木市に移住してきた魔術師の一人であり、時計塔の
彼女の今日は、いつも通りの無難な日だった。穂群原学園に通う彼女は、今日も氷室鐘、蒔寺楓、三枝由紀香の陸上部三人娘ととりとめのない(そして歴史知識がびっくりするほど深い)雑談をしてきた。
そして、帰宅し、一般女子高生ではなく魔術師としての彼女は、研鑽のために魔術回路を起動した。
そこまでが、彼女の日常だった。
瞬間、ぴりり、と胸が痛んだのだ。
胸の中央には、まるで一枚の羽のような、あるいは槍のような痣。
「令呪、だよねこれ」
それは、聖杯戦争の参加権とも言える赤い痣。
令呪は、基本的には手の甲に発現するものだ。少なくとも、綾香が知る事例ではすべて。
(でもまあ、魔術回路の一種なんだから「どこに」発現しても別にいい……のか?)
ただし、手の甲に発現しなければいけない理由も特にない。令呪は魔眼同様の外付け魔術回路に過ぎず、体表に存在し、本体の魔術回路と接続さえしていれば正常に機能する。未来の話であるが、ジェスターのように腰に発現したり、銀狼のように頸部に発現することさえありうる。
機能的には問題がないとはいえ、他のマスターにマスターだと気づかれづらいのは長所だ。とくに、そう大きくないとはいえ胸の谷間だから、覗きこまれることもそうはないだろう。
(でも、なんで私に令呪が?
彼女は知らない。
本来であれば、彼女に宿る令呪の「枠」などなかったこと。
7人目の参加者、アレセイア・クリキュラステラが、7騎目のサーヴァントとして呼び出したシールダー、共に死徒だったこと。
「死徒」と「英霊」は相反するものであるため、召喚されたシールダーが「7騎目のサーヴァント」としてカウントされなかったこと。
そのため、「いるべき」7騎目のサーヴァントを呼び出させるために、聖杯が令呪の「補欠合格」を行ったこと。
そして選ばれたのが、沙条綾香という、今現在冬木市内にいる、マスターではない魔術師であった。
一言で表すならば「バグ」である。
「いやでも、どうしようか」
再度言うが、綾香に、聖杯に託す願いなどない。
もし彼女が魔術師としてまともならば、根源への到達でも願ったのだろう。
それでも沙条綾香は魔術師というよりは凡人的な思考回路を持っていたし、「沙条家」としてみても、姉が根源に接続して生まれてしまっている以上、わざわざ根源に到達する必要はあまりなかった。
(私は、怖い目に遭うのが嫌いだ。痛い目に遭うならなおさらだ)
普通に生きていればそれでいいのに、何故、大半が惨たらしく死ぬ聖杯戦争なんぞに参加しなければならないんだ。
「そりゃあ、私だってタダでくれるなら貰うけどさ」
それでも、沙条綾香という女は、この冬木市から逃げなかった。
沙条綾香という善良な女子高生は、友達を、街の人々を見捨てることなどできなかった、ということだ。
だからこの聖杯戦争では、参加者でないにしても、極力被害を防げるように、極力友達たちが死なないように立ち回る必要があった。
それは蛮勇だろうか?英雄たちの蔓延る聖杯戦争で、凡庸な若い魔術師一人ができることなど知れているというのに?
否、それは英雄のような輝かしい勇気であった。
ただし。
聖杯戦争に参加する気などなかったが、それは
魔術師であり、この街から逃げない以上。令呪に選ばれる可能性があることは承知していたし、そして、令呪に選ばれたとして準備をしていなければ「死」あるのみだからだ。
だから。
「クル・クシェートラの石板。マハーバーラタの大英雄たちに繋がる、超一級の触媒」
引き出しの中から取り出された石ころは、クル・クシェートラの「戦争」について記された碑文の一部。叙事詩マハーバーラタの原典テキスト。
パーンダヴァのユディシュティラにビーマにアルジュナ、ナクラにサハデーヴァの5兄弟。あるいは
誰が呼ばれても超一流であり、かつ「最も性質の近い」英霊が呼ばれる故にマッチングの外れが少ない。
文句なしの最強格の触媒のひとつだった。
だが、それも「機能すれば」の話。
公には、冬木の大聖杯で呼べるサーヴァントは、「聖杯」の概念を持つ西洋圏の英霊に限られるからだ。
「お姉ちゃんが言うには、『これ』で大丈夫だって言うし、
そもそも、「
だが、現にそれ以前の英霊である、紀元前27世紀メソポタミアの英霊であるギルガメッシュが第四次聖杯戦争では召喚されている。
更に言うのであれば、「アサシン」のクラスでの召喚では必ず選定されるというハサン・サッバーハ。彼らはイスラム教の一派、ニザール派の宗教指導者であり、教義上「聖杯」を認めていないはずだ。それ故、そもそもの根底ルールの時点で歪みが存在することになる。
「最初からそうだったのか、途中からおかしくなったのかはわからないけど。お姉ちゃんと先生が言うなら、おそらくはインドの英霊も呼べる」
エルメロイ2世の考察によるならば、例えば、これが「日本の英霊」などの場合、やや危険性が高まるという。日本の伝承には「願いを叶える器」に近い概念がほぼ存在しないためだ。
聖杯の概念が存在する、という意味にもよるが、インド神話には、「トヴァシュトリの杯」というものがある。鍛冶神にして最古の創造神トヴァシュトリの鋳造した、月とも同一視される杯。なみなみと湛えた神酒ソーマには、人を不老不死の神に変える力があるとされる。
メソポタミア神話における聖杯の原典、「ウルクの大杯」を知るギルガメッシュ王が召喚された以上、この程度の聖杯との縁でも召喚は可能ではないか、という仮説を立てていた。
(そもそも、お姉ちゃんが言う
そも、ほぼ全知全能に近い綾香の姉、沙条愛歌がそう言うのであれば、それは正しいのだ。綾香は、姉の能力だけはどこまでも信用していた。人格は兎も角。
(とりあえずありものの霊薬霊草で儀式の準備をするか)
30分ほどで準備を終え、魔法陣を描いた綾香は、英霊召喚の詠唱を始めた。
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
沙条綾香という魔女は、大鍋で霊草を煮立てるタイプの古典的な黒魔女だ。
本来は鶏の首を断ち蜥蜴を干物にするような「動物を犠牲とする」黒魔術を用いていたが、その善良な性格も、その魔術回路の性質も、そうした陰湿な黒魔術には向いていなかった。
「
故に偉大なる略奪公、ロード・エルメロイ2世は、「動物ではなく植物を犠牲にするという方向性もある」と指導。
同じ生物ではあっても、人間は一般的に植物を痛めつけるのに良心の呵責を覚えない傾向にある。故に、善良な綾香であっても「黒魔術」ができる、という考察であったが……
それは、目論見を大幅に超えて成功した。沙条綾香というへっぽこ魔女は、時計塔の
「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
冬木という歪んだ、そして日本屈指の霊地に自生する霊草の数々は、鶏や蜥蜴どころか生半可な生娘の生き血をも凌駕するほどの神秘を帯びる。
土地と、素材が揃い、めきめきと上達することでメンタルも上向く。元々の才能もあり、沙条綾香はこの街で、間桐臓硯、遠坂凛に次ぐ第三の魔術師となった。
「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」
霊草を丹念に煮出した、濃緑のどろりとした液体で描かれた魔法陣の上で。
魔女服に身を包み、杖を持って行う詠唱は、他の誰よりも「一般的に想像される魔女のテンプレート」に沿っている。
本来、聖杯戦争の英霊召喚は大部分を大聖杯が行うため、ここまで丁寧な下準備は必要ない。
それでも、神経質な沙条綾香という少女に言わせれば、「やれることをやりきらずに失敗するのが一番怖い」のだ。
「人理の轍より応えよ。汝星見の言霊を纏う七天。糾し、降し、裁き給え」
そして、この召喚は成功する。平行世界の
「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――――!!」
そして、英霊は顕現する。
「サーヴァント、
純白の外套に身を包んだ、浅黒い肌の男。
知らないクラスだ。おそらくはエクストラクラス。「起業家」とも読めるが、おそらくは「発射装置」、「
その手には、本来であれば多くのサーヴァントが保有するような武器は見当たらない。ただ、青白い光の弾だけが周辺に浮遊していた。なるほど、おそらくあれはブラフマーストラだろう。インド神話において多く登場する飛び道具ではあるが、具体的な形はよくわかっていない。それがおそらくこの英雄の、
だが、それ以上にその真名。
「マハーバーラタの主人公格、
「でも、『似た性質』のサーヴァント……?」
アルジュナは、インド屈指の大英雄だ。沙条綾香の自認は、陰湿な駄目な子だ。
根暗で陰湿で、臆病な割に傲慢で、正義感はあるけど視野が狭くて空回りしがち。
どうしても、「数ある候補から一番性質が似たサーヴァント」が召喚される触媒が機能したとは思えない。
「ま、まあ、とりあえずお茶でも飲む?霊草から煮出してるから苦くてあんまり美味しくないけど、多少の魔力賦活効果があるんだ」
ただとりあえず、これからの方針を詰めなくてはならない。インドの王子様に出せるほどよいお茶もお菓子もないが、聖杯に託す願いとか、これからどういう方針で、誰を仮想敵として戦っていくかとかを話し合わないといけないから。
彼女に誤算があったとすれば、アルジュナという英雄が、
想像以上に彼女と性質が似た英霊だったということだった。
そして1日が過ぎ……
アルジュナという大英雄は、堕ちた!!!
そもそもの話をしよう。沙条綾香は、魔性の女だ。
眼鏡を外せば美少女だが、眼鏡を外さなくても美少女。
根暗で庇護したくなるが、それでも英雄の如き意志と勇気を内に秘めたその在り方は、「英雄特効」と言ってもいい。
その上で、アルジュナという英雄にも問題があった。
シンプルに言うと、卑屈だったし、凡人過ぎた。
アルジュナ。インフレ激しい古代インド神話においてもなお最強格の大英雄。
だが、その「強さ」は、いわゆる「心の強さ」ではない。
ただ、純粋に武芸に秀で、多数の宝具を有し、単身で世界を破壊する戦略兵器となり得るだけ。
ただ、煌びやかな王子様として褒め称えられ、英雄として利用され祀り上げられただけ。
分不相応な立場と分不相応な才能に振り回されただけの根暗凡人メンタル。それがアルジュナという英雄だった。
そんな男が、自分を褒め称えず、かといって打算を以て利用したりせず、ただ一人の人間として、地元を守るために、並び立って力を貸してくれと誠心誠意頼んでくる。
はじめて、「授かりの英雄」としてでなく、「自分の意志で英雄として立つ」機会を与えてくれる。
そんなの、堕ちないわけがなかったのだ。
「ではマスター、いえ、綾香。これからどう動くおつもりか、再度確認させていただいてもよろしいでしょうか」
「基本的には『一般人に被害を出すようなマスター』を狙って殲滅、って話になるかな」
綾香もランチャーも、基本的には特筆すべき感知能力を有さない。綾香が多少の使い魔を飛ばし大規模戦闘を捕捉するか、ランチャーが高所に陣取り千里眼で目視するか、その程度だ。
だからできることは限られるが、基本的には「一般人に被害が出る事件」を足で調べ、関係するサーヴァントを撃退していく形になる。
「エルメロイ先生が教えてくれた前回の聖杯戦争の情報から考えると、監督役の言峰神父はキナ臭い。前回は遠坂家と組んでアサシンを召喚してたらしいし、遠坂のやつの養父でもある。今回も遠坂家と組んでる可能性があるし、極力情報は渡したくない」
本来であれば監督役である言峰綺礼に参加の届け出をするべきだが、それはしない。遠坂家と組んでいる可能性があるためだ。
彼らは知らない上に遠坂家と組んではいないので的外れだが、結果的な話だけをするなら言峰神父は黒幕なので正解の動きとなる。
「だから監督役から情報を得ることはできないんだけど、先生からはひとつ厄介なことを聞いた。この聖杯戦争、
「死徒、とは?」
「ああそうか、時代的にいないのか。死徒が人類史に出てきたのはここ2~3000年の話だから。要はろくでもない不死身のバケモノだよ。
そして、死徒二十七祖アレセイア・クリキュラステラの討伐。彼が「ロード・エルメロイ2世の事件簿」を追ってロンドンに現れてしまった都合、彼の行動がロード・エルメロイ2世に捕捉されることとなっていた。当然、冬木市に居ることも。
さらに言えば、死徒二十七祖が人類の天敵であることは魔術世界の常識だ。
3年前のフランス事変のように、小規模の都市であれば生存者を0にできる怪物は、冬木市に住む友達を守るため戦う綾香にとっても天敵であった。
「ですが、私が居ます」
「そうだね。ランチャーの宝具であれば、
この情報を知っていても、聖杯戦争に参加していない綾香ひとりではどうすることもできなかっただろう。
それでも今は、ランチャーが居る。
ランチャーの宝具は、インド神話でも最強クラスの宝具だ。アーチャーで呼ばれたときの
「私たちの手で、この街を守るんだ」
そしてその光赫は、正義感と多少の勘違いを以てこの街を害する怪物に向けられようとしていた。
というわけで。
1.この世界線は「氷室の天地」√(本来Prototypeの主人公である沙条綾香が冬木市に住んでる世界線)です
2.バグによって8騎目のサーヴァントが降臨します
これは『スピンオフ4コマ漫画であるはずの氷室の天地を経由しないとFate/strange Fakeに突入できない』という、型月世界特有の意味の分からない事象が原因です。
ちなみに綾香ちゃん陣営は
・マスターの魔術師としての才能
・サーヴァントの性能
・サーヴァントとマスターの相性
・陣地として有する霊地
・主人公補正(ここ重要)
がすべて高水準でまとまっており、実はアレセイアどころか原作勢をも上回る『最強陣営』だったりします。
そりゃあ「最初のFateの主人公」プラス「最新のFateの主人公(の声CV島崎信長)」だもん……