ようこそ享楽至上主義の教室へ【特殊タグ無し版】   作:アネモネ

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The wolf knows what the ill beast thinks.

(ククッ。少しは楽しめそうな教室じゃねえか)

 

 入学初日。乱暴に扉を閉める少年にクラスの視線が集まるも、みなすぐに視線を戻した。怖がった、というよりは慣れている、あるいは気にしていないという類のものであったことに、彼は愉悦を感じていた。

 

 龍園(りゅうえん)(かける)が高度育成高等学校に進学したのは単純な理由だった。過剰なまでの外部との連絡遮断。胡散臭すぎる謳い文句、いや実際その書き方からはこちらを騙くらかそうという悪意が読み取れた。少なくとも世間一般で想像されるようなただのエリート育成校ではない、というのを敏感に嗅ぎ取り。それは彼のような、お世辞にもいいとは言えない経歴の人間でも入学が許可された時点で明らかな確信へと変わっていた。

 

 1年Cクラスの教室には龍園や彼の出身の地区の人間と似た雰囲気の生徒が多く見受けられた。もちろんその荒くれ者筆頭は彼自身だが──ゴツい黒人の生徒までいるのには流石の龍園も少し驚いてしまったくらいだ。留学生、ということなのだろうか。それともハーフなのか。

 

 席は既に決まっていた。ど真ん中の最後尾。クラス全体を見回しやすい位置だろう。その席に満足した彼はドカリと乱暴に座った。

 

 教卓のほうに目を向けると、黒髪の女子生徒が隣の女子と話しているのが目についた。その顔にどこか見覚えがあるように感じたものの、すぐには思い浮かばない。龍園はたいしたことではないだろうと結論づけ、ぐるりと己が支配する予定の教室を見渡した。この室内はもちろん、校舎のそこらに監視カメラがある。暴力の使い道には慎重にならざるをえなかった。

 

 

 入学式やら校舎の紹介やら退屈な時間を終えさっそくクラスを暴力で染め上げようとした龍園だったが、女生徒がすぐに教室から出て行ってしまったことでそれは後日に回された。あの黒髪の女子生徒、京楽(きょうらく)菊理(くくり)。それが龍園の予定を崩した人物であり。彼と同じ小学校に通っていた少女だった。京楽を尾行したところ着いたのは進路相談室。強引に入るのはどんなペナルティが科されるかも不明な状況、流石の龍園もその扉の前で聞き耳を立てるにとどめた。

 

 龍園は小学校時代、不本意ながら彼女に助けられたことがあった。いや、今思えば助けられたというのも正解なのかわからない。不良に喧嘩を売って囲まれていた龍園のところを、通行の邪魔だとでも言うように薙ぎ倒しながら通り過ぎていっただけだ。

 

 その後しつこく追い回した結果……少なくとも単純な『力』ではかなわないということ、時々鋭いが基本天然バカであることがわかり、何をしようと敵対の意志がまったく現れないので基本放置するという結論に至っていた。中学に入るとまったく音沙汰なしだったが、まさか同じ高校に通うことになるとは思ってもみなかった。あの名前で同姓同名はあり得ないし、顔には昔の面影がある。自己紹介で彼女が名乗っているのを耳にしたときにはだから見覚えがあったのかと納得したものだ。

 

 龍園は京楽が苦手だ。おそらく一生苦手なままだろう。楽しめるならときたま自分の命すら厭わないアホの子、頭がそこそこ回るおバカ、気分屋で言ってることとやってることが矛盾したりする。扱いかねる、と言った方が的確かもしれない。龍園には昔から彼女の思考回路が理解不能だ。人に対してふざけたあだ名をつける上に、ククリと呼ぶことまで強要してくる。だからこそ龍園は彼女を高校では京楽と呼び続けることを決意しているし、さらに『たっつー』などとは金輪際呼ばせないことも────まあ、それはともかくとして。

 

 進路相談室での坂上と京楽の会話から学校やSシステムについておおよそ察することができた龍園は彼女が去ってからさらに問い詰め、この不可思議な学校の『ルール』と『クリア方法』を探った。それからクラスを支配する算段を整え。そして。入学式の次の日、Cクラスの王となる宣言をした。京楽のようないつ爆発するかわからない爆弾を抱えたままちんたらする余裕なぞ龍園にはなかったのである。彼女がまだ学校に慣れていないうちにクラスを掌握し終える必要があった。

 

 4月、あの宣言以降、石崎やアルベルト、伊吹など龍園に反発する人間も多かった。喧嘩の場数なら石崎のほうが、肉体の強さならアルベルトのほうが龍園に勝っていた。が、最後まで立っていたのは龍園だった。何度負けようと、結果として勝てばいい。振り切れた暴力と諦めを知らない不屈かつ狡猾な精神は龍園にCクラスの王の座を与えた。

 

 尤もアルベルトに関しては暴力性で上回った、というより彼の心優しく仲間思いなところにつけ込んだという面が大きい。アルベルトは無用な喧嘩を好まないが、龍園に従うことが最終的にクラスメイトのためになると、クラスをまとめる最善策だと判断したのだ。とはいえ王は王。龍園はこの結果に満足している。

 

 どのクラスもまだまとまりきっていないため、クラスのトップに立ったのは龍園が最速だったに違いない。Aクラスでは葛城というハゲと坂柳という杖をついている女、Bクラスは一之瀬という女、Dクラスでは平田だとか櫛田だとかの名前をよく聞く。この辺りが龍園の敵になるのだろう。歯ごたえがあるかはわからないが。

 

 他の生徒では、例えばAクラスの橋本正義とかいうコウモリ野郎は目ざとく龍園の後をつけたり早速クラスの情報をもたらしてきたりしてなかなか優秀な男だった。上級生の様子や全体的な生徒のレベルから見てもAクラスには一般的に『優秀』と評価される人材が振り分けられていると考えていいと龍園は睨んだ。とはいえそんな学校側の評価など龍園にとってはどうでもいい。最終的に勝てた者こそが勝者なのだから。

 

 支配下においたクラスメイトたちに龍園はとりあえずポイントの提出を命じた。もちろん恐喝にはならないよう、十分に配慮して。暴力を用いる際には監視カメラの有無のチェックが必要だ。龍園は日々少しずつ校内の監視カメラの位置を調べ上げている。さらには京楽の目も気にする必要がある。あれはこういった刺激的な行為を楽しんでいるため、定期的に見せてやらないと駄目だ。かといってあまり喧嘩のやり方を見せすぎて学習されてもいけない、ただでさえ手に負えないのが余計にひどくなる。さじ加減が重要なのだ。

 

 4月時点では学校の把握に努めているのか、京楽に大きな動きはなかった。同級生の女子より上級生との接触が多いくらいだ。その情報を聞くため龍園は何度か彼女に接触したが、完全に初対面の相手への態度となっていた。敬語を使ってきたり普通に話したり龍園に対する口調が定まらないのはアホだからだろう。京楽が龍園を忘れているのか、知らないふりをしているのかは不明。だが面倒なので龍園も京楽に過去のことは持ち出さなかった。彼女と腹を割って話すにはまだ準備が足りない。

 

 京楽はクラスでは伊吹澪や椎名ひよりとよく一緒にいる。ひとまず京楽を伊吹に監視させようとしたが、しかし(かたく)なに拒まれた。友情というものなのか、義理なのか。よくわからないがここで伊吹に強要しては京楽に悟られ本末転倒になる危険性も高い。一旦龍園はその作戦を諦めた。

 

 5月になるとこの学校の実態の一端が明らかとなった。Aクラスで卒業しなければ意味がない。夢のような謳い文句とは裏腹な実態に龍園は嗤いを堪えきれそうもなかった。やはりこの学校は面白い。

 

 Cクラスのクラスポイントがマイナス510されたのには授業中に端末をいじっていた等の授業態度の悪さだけではなく龍園の暴力行為やらが含まれているのか。どのように査定しているのか、どうすればクラスポイントが増えるのか。問題が起きた際の学校側の対応は、生徒会の能力は、権限は。それらを調べるべく龍園はまずはBクラスにちょっかいをかけることを決めた。お人好しの集まりのBクラスは前哨戦に丁度いい。仲間割れを誘発できれば儲けものだ。

 

 また、何よりも龍園の気を引いたのは『2000万ポイントを払えば好きなクラスへ行けること』だった。坂上にそれが本当なのか念の為もう一度確認したほどだ。一番クラスポイントを多く稼いだクラスがAクラスになるだなんて不確証なものより、龍園はこちらの道を選ぶことを決めた。すなわち8億ポイントものプライベートポイントを集めて、40人まるごとAクラスへと移籍させる道を。

 

 そのためにはやはり、京楽を飼い慣らす必要がある。単純な『力』というものはどこまでいっても通用する。味方であれば有用だが敵に回られてはただただ厄介だ。加えて、自主退学なんてのをされてもクラスポイントが差っ引かれる可能性が高い。それに。野生の勘のような鋭い直感が彼女には備わっている。そのことは発表された小テストの結果からも明らかだった。

 

 京楽とひよりが100点を取ったのには何らかのからくりがある。それを悟った龍園は彼女たちと、それに次ぐ成績を取った金田を呼び出し、過去問の存在を確認した。4月から入手するというのは流石の龍園も思いつかなかったし、やろうとして実行できたかどうか。京楽は謎に直感を働かせて決行できたらしい。こういうただのアホではないところがあるから侮れないのだ。

 

 ひよりのほうもよくわからない人間だ。京楽と仲が良いのも頷ける。金田ともどもCクラスの中ではトップの頭脳の持ち主だが金田は『使える』人間なのに対しひよりは使えるが『使えない』人間だ。京楽とコンビで働かせれば少しはマシになるとわかったためひとくくりに扱っているが、いずれはどうにかしなければならないだろう。

 

 ともあれ、2年生からも過去問を奪い取り、間違いなく同じ問題が出題されるであろうことを確信した龍園は王としてクラスへ中間試験前にこれを配ることにした。支配力を高めるためと単純に退学者を出さないため、そしてクラスポイントの増加が見込めるためである。

 

 そこに問題はなかったのだが、その過去問を配る直前にヘマをやらかしたバカがいた。なぜか試験範囲の変更を知らなかったDクラスにわざわざ「お前らは異なった範囲を勉強している」と伝えてくれたのである。このバカ、山脇にはきっちり制裁を加えたが、予想外のことが二つあった。一つはこの騒動の際に京楽が山脇の腕を“軽く”掴んだこと。どうも彼女は力加減をコロッと忘れることがあるらしく、山脇は垣間見えた京楽の『力』に怯えていたのである。おかげで龍園はそれを忘れさせるべく必要以上に山脇を痛めつけなければならなくなり、余計な手間がかかった。もう一つはDクラスに須藤という喧嘩っ早いバカがいることがわかったこと。こちらは良い方向に想定外であり、おかげで龍園はDクラスに対しての愉しい策略を思いついた。監視カメラのない特別棟あたりに須藤を呼び出して挑発し、わざと殴られることで裁判を起こす、という。中間試験終了後、石崎たち3人組にでもやらせようと龍園は決めた。

 

 

 そして。

 

 6月のとある雨の日。龍園は通りかかった京楽を見て、丁度いい機会だと考えた。クラスの掌握も一通り終えた。後は彼女を制御すれば一段落つく。

 

 京楽が開いた傘は随分とメルヘンな『不思議の国のアリス』の柄のものだった。龍園はAクラスの女王を連想して不愉快な気持ちになる。坂柳有栖。しかしあの女はその名前とは異なり童話に出てくるアリスのような可愛らしくて素直な少女ではない。「首をはねろ!」と騒ぐハートの女王あたりがふさわしいだろう。葛城のほうとも密かに接触はしているものの、坂柳とは比ぶべくもない。Aクラスの内部分裂とは名ばかりで、あれは(もてあそ)ばれているだけとみていい。やはり坂柳以外はマークする対象にならないようだ。

 

 そう考えていると、気づけば京楽に問いを投げかけていた。

 

「お前は────王に何を求める」

 

 キョロキョロと辺りを見回してから、ようやく自分へ言ったのだとわかったらしい京楽はのんびりと話した。

 

「王とは、人を楽しませてくれる存在だと思います」

 

 人がどうこう、というより自分が楽しめればそれでいいのだろう。それをよく知っている龍園は鼻で笑った。

 

「ハッ。お前、俺といて楽しいのか?」

 

「はい。龍園君のクラスは楽しいですよ?」

 

 間髪入れずに続けられた言葉に笑いが漏れる。京楽は本気で楽しんでいるのだ、龍園による恐怖政治を。

 

「それに、つまらないなら勝手に楽しみますし」

 

 もしクラスがつまらなくなったと判断したらこいつは本気で何かしでかすな、と龍園は感じた。敵になっても厄介だが味方にいても面倒なタイプの人間である。

 

「しかし、まさか同小のヤツがいるとはな」

 

「覚えていたんですか」 

 

「テメエみたいな妙ちきりん、忘れる方がどうかしてる」

 

 龍園がある意味『勝っていない』のは彼女だけだ。他の対戦相手は皆屈服させてきた。京楽には龍園に対する敵意がない以上、そもそも勝負を始めてすらいないと言えばそうであるのだが。

 

「小学校以来だよねたっつー。なんか老けた?」

 

 以前の呼び名に戻してきた京楽に龍園は純粋に殺意を覚えた。あと小学生から高校生になったのだから成長しているのは当然のことである。

 

「殺す」

 

 軽く、軽く殴りかかる。監視カメラがあるのでお遊び程度の速度だ。それでも避けられると妙に苛つく龍園だった。

 

「ちっ、避けるな」

 

「いや避けますよ普通に」

 

 バカにツッコミを入れられると余計に苛つく。

 

「別に私はたっつーの邪魔をするつもりはないし、暴力で従えようとしなくても……過去問だってあげたし、情報掲示板のパスワードだって教えたし、ちゃんと貢献してると思うの」

 

 京楽は上級生から掲示板の使い方などを教わったらしく、確かにその情報は龍園に利益をもたらしていた。だがそんな正論は龍園という暴君には通用しない。

 

「そりゃ当然のことだ」

 

「…………」

 

 監視カメラに映ったり録音されたりしないよう、黙り込む彼女の耳元に囁きかける。

 

「覚えとけ。お前が裏切れば、死んだほうがマシと思うような目に遭わせる。力で負けようがあらゆる手を使ってお前が壊れてぐちゃぐちゃになるまで犯し尽くしてやる」

 

 ここで釘を刺しておけば、しばらくは効き目があるだろう。龍園の言葉に京楽は薄く笑った。

 

「……なら私はいつか、たっつーをバッキバキに打ちのめしてくれる人が現れるのを楽しみにしてるよ」

 

 自分から龍園を倒す気はさらさらないらしい。

 

「ククク、テメエではやらねえのか」 

 

「だって痛いの嫌だし。か弱い女の子だもん」

 

 龍園の辞書の中で『京楽菊理』とはか弱いの対義語である。涼しい顔で硬貨をクニュっと曲げられる人間をどうしてか弱いなどと言えるものか。そもそも本当にか弱い女の子は自分のことをか弱いなどと称さない。

 

「心配しなくても、みんなを楽しませる王でいてくれたら裏切らないよ」

 

 おまえのその『楽しい』の基準がわからねえんだよ、と龍園は心のなかで毒突いた。

 

 ともあれ、彼女の鼻先に人参をぶら下げておけば間違いないのだろう。『楽しさ』という人参を。

 

 Aクラスに上がるためにはやらねばならないことが多い。雨の中に消えていく京楽を見ながら龍園はそっとため息を吐いた。握りしめていた拳を開くと少しだけ、少しだけ汗が滲んでいた。

 

 

 7月。Dクラスの須藤を陥れて開いた裁判は、呆気ない幕引きとなった。龍園の手駒の石崎たちが逆に陥れられてしまったため訴えを取り下げ、事件自体がなかったことになったのである。これを指図したであろう堀北鈴音に宣戦布告した龍園は上機嫌だった。

 

 目に見える範囲以外の監視カメラを設置しているかどうか、そして学校側の動きもある程度わかった。故にこの裁判で得た成果は悪くはない。期末試験に関しても、龍園が何も言わずとも金田が手を回して赤点になりそうなバカのフォローをしていた。龍園のクラス統治に陰りはない。なかったのだが、一つ問題が発生した。

 

 クラスの男子の一人が京楽に告白しようとしていたのである。夏休みが始まる前に彼女が欲しい、だとか思ったのかもしれない。確かに京楽は一見するとちょっとアホっぽいけど人当たりがいい、ただの可愛らしい少女に見える。そこは龍園も認めよう。小学校時代から彼女は自身の異常性を隠すのが上手かった。

 

 龍園とて人の子だ。目の前で紐なしバンジーを試みるバカがいれば止めるくらいのことはする。だからわざわざ告白を中止させてやったのに、クラスでは京楽が龍園の女だから手出しするなという意味で受け取られたらしい。アホらしいが都合がいいので放置しておいた。猛獣の檻を下手につつけば噛まれるだけでは済まないだろうから、クラスメイトが京楽に変に手出ししない状況というのは望ましい。

 

 

 夏休みに入ると二度の特別試験が行われた。坂柳が不在のそれらは龍園の独壇場に終わったが、懸念も残った。Dクラスの策士。その存在である。時任の反乱の兆しについては特に気にしていない。クラスに不満分子が出ることは元々織り込み済みであるし、何より彼では力不足すぎる。

 

 正体不明のDクラスの操り手の容疑者に綾小路の名前を挙げたのはいくつか理由があるが、そのうちの一つに京楽の存在があった。

 

 たっつー。ひよりん。リンリン。カピバラ麻呂。ロック。キャロル。バーティ。

 

 京楽の頓痴気な呼び名には法則性がない。だが、あだ名をつけられる人間それ自体に関してはある特徴が存在する。それは少なくとも雑魚ではない、ということだ。小学生の頃からそうだった。京楽の無駄に鋭い直感が作用しているのだろう。つまり、綾小路もただの堀北の金魚のフンではないと龍園は考えている。

 

 確たる証拠もない以上はゆっくり料理しなければならない。もしかするとDクラスにはさらなる強者が潜んでいて、そちらが堀北と組んでいる人物の可能性もある。それはそれで龍園にとっては嬉しい話だ。何せ(たの)しみが倍になるのだから。

 

 

 夏休み後半、様々な策略を練る龍園のもとに京楽が訪ねてきたことがあった。情報を与えなさ過ぎて不満に思われても面倒なので適当に南雲とかいういけ好かない2年の悪評を話すと、なぜか京楽は生徒会に入りたいと騒ぎ出した。わけがわからない。2年生全体を支配しており、女癖が悪いらしい(女子からとても人気)という噂を聞いて生物学的には女に含まれるとされている京楽がなぜ近づきたがるのか。理由はさっぱりの龍園だったが、南雲がどうしようと髪の毛一筋ほどの傷も付けられやしないだろうから勝手にさせることにした。それに生徒会の情報を仕入れられるのは単純にメリットが大きい。

 

 ただ、納得がいかないのは教師陣からの京楽への評価だ。生徒会に入ってもおかしくないと優等生扱いをしているが、彼らの目ん玉はビー玉か何かだろうか。坂上が彼女に信頼を寄せていることといい、龍園は不思議で仕方がない。

 

 

 

 

 新学期。午前中の体育館での始業式が終わり、授業としては午後に2時間HRが行なわれる。一旦寮に戻った龍園は昼食に出かけようとしていた。

 

 エレベーターに乗り込むと中には女子生徒が一人。

 

「ん、こんにちは龍園君。お昼食べるなら一緒に食堂行く?」

 

「ああ。いいぜ、何なら奢ってやるよ」

 

「およ、珍しいね。どうかしたん?」

 

「学校HPを見てみろ。次は体育祭だ。他学年から情報を得る必要がある」

 

 あ、本当だーと京楽は能天気に端末を操作していた。いつも通りバカっぽい。その様子を見た龍園はそういえば、と前から聞こうと思っていた言葉を口にした。

 

「おまえ、何でこの学校に入った」

 

「え? デスゲームが開催されそうな学校だったからだけど」

 

「………………そうか」

 

 (じゃ)の道は(へび)。龍園翔は京楽菊理のことを、よく理解する────ように努めている。

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