年齢詐欺じゃなくて本当に子供なエルフが魔法を極めるのは間違っているだろうか   作:ぺんたこん

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初めてなんでご容赦ください


1話 たぶんスタートライン

 

 

 

4年前???の森

 

 

「グァァァーーーー!!!」

「ハァーッハァーッハァーッ」

 

妖精の森、そんな言葉が似合いそうな人里離れた森の奥深くで、一人の翡翠の髪をした、まだ幼さを残しながらも美しいという言葉が似合うような少年がモンスターの群れに襲われていた。

 

ザンッ

「ァァァァァァァァァァァ」

 

少年の体躯の2倍はあるだろう蜘蛛型のモンスターの前足による一撃を受けた少年は、声にならない絶叫をあげながら小柄な体を中に浮かし、冗談みたいな速度で吹き飛ぶ。体は、モンスターの一撃を受けて木にたたきつけられたせいか、今も体から流れ出ている血のせいか、まともに言うことを聞かない。目の前の怪物の群れから逃げようとするも、折れた足では立つことすらままならない。ましてや、今年10歳になったような子供の足では、例え万全の状態であったとしても、とてもこの数の怪物の群れからは逃げられはしないだろう。

 

そんな、子供でなくても泣き叫んで助けを乞うような状況においても、その少年はどこか呆れを含んだ眼差しで、数瞬後には自分を殺すであろうモンスターを眺めていた。

 

そして、

「ウォーーーーーー」

瀕死の少年にとどめを刺そうとモンスターの鋭い爪が眼前に迫る。

だが、次に聞こえてきたのは少年の叫びではなく場違いとも言える女の声だった。

 

「今は特に、人助けなどする気分ではないのだがな」

 

そう呟きともとれる小さな声を発したと思われる女は、目が覚めるほどの美女だった。長い灰色の髪に閉じられた目、漆黒のドレスを身に纏うその女の美しさと相まって神秘的にさえ見えるほどだった。そして、何をするまでもなく女の纏う絶対強者としての覇気にモンスターは気圧されて動きが止まる。女はそんなモンスターの様子を気にもとめずに武器も、魔法も使わずにただ圧倒的なまでのステイタスと極め抜かれた技によって怪物を蹂躙し始めた。モンスターの攻撃は全て空をきり、逆に女の放つ手刀はモンスターを一方的に屠っていく。そして、1分とかからずモンスターの群れは全て灰となっていた。

 

数十体はいたであろうモンスターを1人で殲滅してしまった女に少年が改めて目を向けると、その女は、木に体を預けて座り込んでいた自分をどこか、観察するかのように見つめていた。

 

そして

 

「お前、名前は」

 

そんな唐突な問に少年は、血が流れでたせいで震える口を無理やり動かし答えた。

 

「ルフィリア」

 

それだけ聞くと、少年にポーションを頭からかけ、立ち去ろうとした。

しかし、今度は怪我が治りまともに動くようになった口を開け、少年が問うた。

 

「貴女の名前は?」

 

そう問いかける声に、少しの間を置いて女が答えた。

 

「アルフィア」

「助けてくれてありがとう、アルフィア」

「何故魔法を使わなかった?」

 

そう言われた少年は驚いたように目を開く。

 

「死にたかったのか?」

「僕は・・・・・・」

「グァァァーーー!!」

 

少年が口を開こうとした時、先程の戦闘音によってか1匹の大型の熊に似た体をしたモンスターが、その体躯に見合わず、恐ろしい速さで少年と女に襲いかかった。

 

「危なっ」

「【福音】」

 

少年が言葉を発し終える前に、モンスターは、女の超短文詠唱の魔法によって文字どうり塵となって消える。その圧倒的な魔法に、少年は、自分が使える魔法、神の恩恵によるものではなく、マジックユーザーたるエルフの自分が使う先天的な魔法ではどう足掻いても辿り着けない高みを見て少年は言葉を失い、呆然としながらも、今の今まで感じたことのなかった興奮に身を焦がしていた。

 

「どうすればそこまでの魔法が使えるようになるんですか」

「何?」

 

気がつけば少年はそんなことを聞いていた。

 

「貴女のようになるにはどうすれば良いのですか」

 

女は少年の言葉を聞き、少し悩んでいると、女よりも先に少年が再び口を開いた。

 

 

 

 

 

「僕に魔法を教えてください」

 

 

 

 

 

 

その少年は天才だった。

天才と言っても、どこかの才禍の女王と違い全てができるわけではなかったが、魔法という一点においてのみ、その才能の権化であった女と同等かあるいは上回るほどの圧倒的な才能を持っていた。

一度教えてもらえば、すぐに教えた者よりも上手く魔法を放ち、自分で魔法研究を行い、新たな魔法を作り出してしまうほどだった。

 

その少年はエルフだった。生まれもよく、マジックユーザーたるエルフとして、子供でありながら、魔法においてなら大人数人を纏めて倒すほどの、狂気的なまでの魔法の才だった。

 

そして、少年は当然のように周囲に、「神童」「精霊に最も愛された子」などともてはやされた。その時の少年は幼く、深く考えずにそれらの賞賛を聞き流していた。

 

 

8歳の頃、少年は里の外に興味を持ち、少年にとって唯一の親友とも呼べるエルフの少女と一緒に里を抜け出した。そのエルフの少女もまた天才と呼ばれる者だった。少年には及ばないものの、天性の魔法技術を持ち、唯一少年と魔法において対等に語れる仲だった。

 

しかし、里を抜け出した先で運悪くモンスターの群れに囲まれてしまった。本来の少年の力ならば、一人でもモンスターを殲滅できただろう。

 

だが、初めてのモンスターとの会敵、そして、初めて感じる死の気配は少年の動きを鈍らせるには十分だった。

 

そして、数十にも及ぶモンスターと、2人の子供による戦いは、少年の魔法が、狙いを定めたモンスターの頭に当たらずに掠って、仕留めきれないという普段の少年ならば絶対にありえないだろうミスにより終わることになった。

 

先ず少年がミノタウロスのような見た目のモンスターの蹴りをまともに受けてしまい、死にはせずとも重症を負う。そして、少年いなくなった分の穴を埋めきれずに、少女もまたモンスターの攻撃を受けて倒れ伏す。

 

モンスター達はまるで魔法を恐れるかのように、しばらく動かない2人の子供を見ていたが、やがて我先にとモンスターが少年と少女に襲いかかる。

 

少年は、少女だけでも助けようとし、魔法の詠唱を試みるが、肺に上手く空気が取り込めず失敗に終わる。そんな少年を嘲笑うかのように、先程少年を蹴り飛ばしたミノタウロスに似たモンスターは、どこで拾ってきたのか一本の剣を握って少年へと突きだした。

 

そしてその剣が少年を貫こうとする瞬間、少年の目に映ったのは、モンスターと少年の間に体を割り込ませて、少年を庇って剣に貫かれる少女の姿だった。

 

そこから先のことは少年はよく覚えていない。里からいなくなった少年たちを探していた、里の中でも先鋭の魔法使い達によって少年が助けられたということしかわからなかった。

 

少女を亡くし、食事も喉を通らず、呆然としていた少年がふと思い出したのは、周りの称賛の声だった。「神童」「精霊に最も愛された子」などと言われながら親しい人一人も守れなかったことに、少年は自分自身に失望し、好きで才能にも恵まれた魔法をそれ以来使わなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

現在『黄昏の館』

 

都市北部、メインストリート沿いから外れたところにあるいくつもの塔が重なってできたような長大な建物。

 

オラリオ有数の大手ファミリアであり、オラリオの中でも【フレイヤファミリア】に並ぶ屈指の実力者集団として知られる【ロキファミリア】本拠地。

 

その門の前では、フードを被った14歳位の少年が、門番を勤めていたエルフとヒューマンに話しかけていた。

 

「あのー、すみません。」

「なんだい」

「【ロキファミリア】が入団者を募集しているって聞いて来たんですけど」

「入団希望かい」

「はい」

「わかった。今から面接を受けてもらうことになるけれど大丈夫かな」

「よろしくお願いします」

 

少年が幼いからか、優しく対応してくれる門番に、僕は、内心感謝しながら門番の後ろをついていった。少し歩くと目的の場所には、すぐに着いた。

 

コンコンッ

「失礼します。入団希望が来たのですが今よろしいですか」

「ああ、構わない。通してくれ」

 

そう中から声が聞こえると、ここまで案内してくれたエルフの男性は、頑張れよとだけ言い残し、自分の仕事に戻って行った。少し緊張しながらも、意を決して扉を開ける。

 

「失礼します」

「ルフィリア・リヨス・アールヴです。よろしくお願いします」

「「は?」」

 

 

 

 

1日前『黄昏の館』

 

「何っ!」

「どうしたんだいリヴェリア」

 

リヴェリアと呼ばれた、翡翠の髪色の美女がその女神にも勝るだろう美しい顔を歪ませて声を荒らげるのを聞き、黄金色の髪の少年のような外見の美男子、ロキファミリアの団長であるフィンが驚きつつも問う。

 

「あの子が、またいなくなったらしい」

「あの子って、あぁ君の弟か」

「いなくなったってどういうことなんだい」

「ちょうど2ヶ月前に書置きだけ残して家出したらしい」

「誰かの家出癖がうつったんじゃ」

「ほう」

「冗談だよ」

 

そんなやり取りを交わしながらもフィンは思考を巡らせていた。「(2ヶ月経って未だ見つかっていないとなると衝動的な家出とは思えない。そして、リヴェリアから聞いた話によるとその子はとても賢く、頭も回るらしい。つまり、目的を持って行動しているはず。エルフの王族である子供が頼んでも聞き入れて貰えないようなこと、あるいは場所か)」とそこまで考えてからフィンは口を開いた。

 

「まぁ、なんにせよオラリオの外の話では実質僕らは動けない」

「それもそうだな」

 

 

「オラリオに来ているようなら探しようもあるんだけどね」

 

そう苦笑しながらフィンが小さな声で呟いた。

 

 

再び現在『黄昏の館』

 

「ハハハハハハハハッ」

「ガアッハッハッハッ」

「へぇー・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

 

詳しく事情を聞き終わり、この場で話を聞いていた4人、ロキファミリアの主神であるロキ、フィン、リヴェリア、そしてロキファミリアの最古参のメンバーであるガレスがそれぞれ思い思いに反応していた。

 

ロキ、ガレスは、今が絶賛家出の真っ最中だということに吹き出し、フィンは、エルフの王族の里から1人でオラリオまで来たことに驚き、そしてリヴェリアは、額に青筋を立てながらも静かに聞きいっていた。

 

「ルフィリア」

「ハイッ」

「4年前にお前が家出をした時に説教したのが懲りていないようだな」

「イヤッ、ソンナコトナイデスヨォ」

「まぁまぁ、リヴェリア今回は一応置き手紙を置いていってたんやし」

「だからって」

「それにリヴェリアにも気持ちがわからんことはないやろ」

 

そう、リヴェリアがオラリオに来て冒険者になったのも、リヴェリア自身の家出が発端である。痛いところつかれたリヴェリアは少し間を置きため息をついて怒りを消した。

 

「そういえば大事なこと聞いてなかったなー」

「大事なことですか」

 

思い出したかのようにロキが言うと、他になにか話してないことがあったっけとルフィアが考え出そうとする前に

 

「どうしてルフィリアは冒険者になりたいんや」

 

まるで試すような視線を向けながら問いかけると、少年は強い意志がこもった声で答えた。

 

「魔法でいつか超えたい人がいるんです」

「それはリヴェリアちゃうんか」

「違います」

「ちゃうんかぁー」

「あとは・・・・・・託されたものもあるので」

 

そう語る目は、おおよそ14歳の子供とは思えないほどの力強さで、ロキ、フィン、リヴェリア、ガレスを射抜いていた。

 

「合格やな」

「みんなもそれでえーかぁー」

 

そう問いかけるロキの言葉に、フィンとガレスは頷きリヴェリアも、自分が冒険者になった時の騒ぎを思い出して痛む頭を抑えながら、諦めたように頷いた。

 

 

 

 

 

この日、後に下界で最も魔法に愛された眷属と呼ばれる少年が冒険者となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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